俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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今回は端から分割です。


第160話 学期末トーナメント ~3日目 前編~

トーナメント3日目。ここまでで、1学年約120人が8人にまで絞られた。

アドバンテージのある専用機持ちだらけと思われるかもしれないが、そこはトーナメント。専用機持ち同士の試合もあったため、1年生のトップ8の内、専用機持ちは4人だけになっていた。

 

 

 

「かんちゃぁぁぁん……」

 

ほんへ(本音)いひゃいいひゃい(痛い痛い)!」

 

朝飯時の食堂、目の下に隈を拵えたのほほんは、開幕簪の両方の頬を引っ張り始めた。

 

「あの粘着弾頭、封印って言ったの、覚えてるよね~……?」

 

普段のヘラヘラ顔が、今は織斑先生ですら逃げ出しそうな鬼の形相になっている。俺も怖くて近寄れねぇ。

 

「マドっちのサイレント・ゼフィルスについた粘着物、あれを剥がすのに整備科のみんながどれだけ苦労したか知ってる~……?」

 

ひょ()ひょれは(それは)……」

 

ギリギリという音が聞こえて来そうなぐらい、力一杯頬を引っ張るのほほん。簪は半泣きからガチ泣きに移る寸前だ。

 

「りった~ん……」

 

「お、おう!?」

 

なんか俺に矛先が来たー!?

 

「りったんからかんちゃんには、ちゃんと言ったの~……?」

 

「お、おう。一応お仕置きで、一晩簀巻きにして転がしておいた」

 

あと、打鉄弐式の拡張領域を強制査察して、危なそうなものは全て没収しておいた。だから簪、サイクロプス・ボムをくすねるのをやめろ!

 

「そっか~、なら、りったんはいいや~……」

 

怒りの矛先が、再度簪に戻る。あ、危なかった……。

それと同時に、簪の両頬を引っ張っていた手を放す。

 

「うぅ……痛い……」

 

「かんちゃぁぁん、次()()使ったら――」

 

「つ、使ったら?」

 

 

「前当主様に告げ口して、本家にある『仮○ラ○ダー Blu-ray限定BOX』を燃えないごみの日に捨てちゃうよ~」

 

 

の、のほほん、それはさすがにライン超えだ……!

ほら見ろ、簪の顔が完全に青褪めてる!

 

「そ、それだけは……」

 

「なら、今日の試合はどうすれば分かるよね~?」

 

「はい……申し訳ございませんでした……」

 

床に膝から崩れ落ちて、そのままのほほほんに向かって土下座に移行していった。

 

「これ、剥離剤とか作っといた方がよかったか?」

 

どうせ封印されたもんだと思って、放置してたからなぁ。

 

「それを先に考えてよぉぉぉぉ!」

 

――ドスンッ!

 

「ほごぉっ!」

 

ガチ睡眠不足ののほほんが繰り出すボディーブローが、俺の鳩尾を抉った。そして俺の意識も綺麗に抉り取られた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「ということがあった」

 

「「知らんがな」」

 

アリーナに向かう途中、食堂で見かけたことを箒とシャルに話したら、この反応だった。

 

「というか一夏、そんな宮下君達を心配してる余裕ないでしょ?」

 

「そうだぞ。なにせ準決勝で私と当たるのだからな」

 

「あれ箒、もう僕に勝った気でいるの?」

 

俺が今日の準々決勝に勝てば、箒とシャルで勝った方と戦うことになる。だからシャルの言う通り、箒のセリフはまだ早い。というか箒、シャルに喧嘩売るなよ。

 

「むぅ~……!」

 

「ぐぬぅ……!」

 

 

「お前達、何をつまらんことをしている!」

 

 

――バンッ! バンッ! ヒュッ

 

「いったぁ!」

 

「っ~!」

 

「あっぶな」

 

俺達の脳天を攻撃(俺はギリギリ回避)した方を見ると、千冬姉が出席簿で肩を叩きながら立っていた。やっぱ今のは出席簿アタックだったか。

 

「それほど元気が有り余っているなら、試合前に校庭ランニング100周ぐらいしてくるか? んんっ?」

 

「いいえ!」

 

「結構です!」

 

千冬姉に睨まれた二人が、直立姿勢で返事をする。ランニング100周とか、逆に試合前に体力切れになるだろ。

 

「まったく……それならさっさとアリーナへ行け」

 

「はい!」

 

「分かりましたぁ!」

 

「おいちょっと! 待てよ二人とも!」

 

いくら千冬姉が怖かったからって、俺を置いてくのかよ酷くねぇか!?

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

本音に酷い目に遭わされながらも、学期末トーナメント最終日の試合が開始された。

 

なんでも、このトーナメントでは非公式(生徒会長黙認)のトトカルチョが行われているらしい。

3学年は唯一の専用機持ちであるケイシー先輩一択で、ほとんど賭けが成立しなかったらしい。そのため、1位から3位までを当てる3連複式になったんだとか。競馬か。

2学年はお姉ちゃんとサファイア先輩のどちらが1位になるかという感じだったらしいけど、2日目でサファイア先輩が脱落したから、ほぼお姉ちゃんの勝ちが固いらしい。

そんな中、1学年は専用機持ちが多いからか、こちらがトトカルチョの本命……にはならなかったらしい。

 

「本当はかんちゃんに賭けたかったんだけどね~。『更識さんが負ける光景が想像出来ない』ってことで、2位以下を当てる方式に変わったらしいよ~」

 

「ええ~……」

 

「もうこれ、簪がバケモノ枠になったってことか」

 

「私バケモノじゃいないもん!」

 

思わず叫んでいたけど、他に食堂にいた生徒からの視線は冷たかった。解せぬ。

 

 

と、とにかく、この準々決勝はちゃんと戦って――

 

「棄権しまーす」

 

「なんでぇ!?」

 

「昨日のマドっちみたいにトラウマ作りたくないでーす」

 

「やめてぇ!!」

 

まるで私がトラウマ製造機みたいな言い方しないでぇ!?

 

 

『生徒会から補足しておきます。1年4組の織斑マドカさんですが、今はカウンセリングを受けており、PTSD等は発症していないとのことです』

 

 

「虚さぁぁん!?」

 

その放送、いらないよね!? むしろ私の風評被害を助長してるよね!?

怒ってる!? 昨日私が粘着弾頭使ったから怒ってる!?

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「うん」

 

「知ってた」

 

隣のアリーナで行われるはずだった試合結果を聞いた僕と箒は、さもありなんと声を揃えた。

 

「それにしても、虚先輩もなかなかやるな」

 

「いやぁ、あれ完全に私怨混ざってるよ」

 

アリーナに入場して試合開始直前なのに、すごく和やかに話してるなぁ僕達。

 

そう考えていたら、試合開始のブザーが鳴った。

 

「それじゃ箒、一夏との対戦カードは僕がもらうよ」

 

「たわけが、渡すわけがないだろう」

 

それだけを言い合うと、レーザーとライフル弾の応酬が始まった。

 

「それっ!」

 

「当たるかっ!」

 

高速切替からのショットガンを、いとも簡単に避けられた。改修時に一度戦っているからか、動きが読まれている気がするなぁ。

 

「穿千!」

 

「甘いよ!」

 

だけど、それはこっちも同じだ。肩部の装甲が変形してからエネルギー・ビームを射出するまでのタイムラグさえ知っていれば、楽々回避できる。

 

「やはり、一度手の内を晒し合っていると面倒だ」

 

「箒もそう思う?」

 

「ああ。だが、私にはまだ奥の手が残っている」

 

「へぇ?」

 

奥の手、一体何があるって言うんだろう?

 

「食らえっ!」

 

拡張領域から何かを取り出して投げつけて来た。なんだろう、何かのカード? そんなヒョロヒョロ飛んでくるの、簡単に避けて――

 

 

「一夏の小学生時代の水着写真だ!」

 

 

「な、何だってー!?」

 

 

それを回避するなんてとんでもない!!

思わずキャッチした写真(今時珍しい、フィルムから現像したもの)を見ると

 

 

「か、可愛ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

今の一夏はカッコいい系だけど、エコール・プリメア(小学校)時代の一夏はちょっとやんきゃっぽくて、そこが可愛い!

 

――ガンッ!

 

「ごはっ!」

 

うん、僕だって分かってたさ。試合中にこんな隙だらけの状態を見せたらどうなるかって。

でも、でもこれは見なきゃいけないって思ったんだ!

 

 

「我が生涯に、一片の悔いなし……!!」

 

 

掴んだ写真だけは離さず、僕は箒に落とされた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

『試合中の不正行為により、篠ノ之箒選手は失格となります。また、シャルロット・デュノア選手は試合続行不能のため、準決勝は織斑一夏選手の不戦勝となります』

 

「箒ぇ……」

 

放送を聞いて、俺は脱力した声を上げていた。

準々決勝でクラスメイトの鏡さんを下して、どっちと戦うのか気になっていたらこれだよ……。

 

「しかもこれで、俺が更識さんと戦うことになるのか……」

 

今頃第1アリーナでは、準決勝の相手にメメントモリを叩き込んでいるんだろう。

あれが俺に……嫌だなぁ……。

 

 

 

この時は、本当にそう思ってたんだよ……。




簪、のほほんから怒られる。というか、整備科を代表して怒られてますね、これ。そしてオタクに限らず、コレクションを捨てられるのが一番ダメージでかいです。

簪、対戦相手に逃げられる。さらに虚の追撃。もう簪の(精神的)ライフはゼロよぉ!

箒vsシャル。さすが箒、汚い。


次回、もしかしたら中編が挟まるかも。
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