俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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はい、見事に中編になってしまいました。


第161話 学期末トーナメント ~3日目 中編~

学期末トーナメントの各アリーナの来賓席では、昨日と打って変わって笑いに包まれていた。

 

「な、なんだあの試合はww」

 

「実にティ、ティーンエイジャーらしいとは言えるが……ww」

 

「何をやっているんだ、シャルロット……」

 

「我が国の代表候補生になって、最初の公式試合でこれとは……」

 

各国の政府関係者が腹を抱えて笑っている中、日本政府の役人と、デュノア社社長であるアルベール氏はため息を付いた。

その日仏でも、アルベールは『仕方ない娘だなぁ』というニュアンスなのに対し、日本政府の役人は頭も抱えていた。

 

「しかしこれで、"1人目"が決勝進出したわけですな」

 

「ああ、あのブリュンヒルデの弟君か」

 

「当初は姉の七光りという話でしたが、最近ではそこそこ使()()()という噂らしいですよ』

 

「ほう。そうなのですか、ミスタ・アルベール?」

 

室内の視線が、アルベールに向く。

 

「ええ。娘から聞いた話では、他の専用機持ちとの模擬戦でも、白星を取れる場面が出て来たとか」

 

「そうなのですか」

 

「これは、()()よりも彼を代表候補生にするべきでしたかな?」

 

「いや、それは、あはは……」

 

他国の軽い嫌味に対して、日本側は言い返せなくなっていた。

 

しかし、とアルベールが話題を切る。

 

「どちらにせよ、ミズ・サラシキに勝てるとは思えませんな」

 

「サラシキ……ロシア国家代表の?」

 

「違いますよ李委員(中国さん)。その妹さんです」

 

「あ、ああ。『魔王』の方でしたか……」

 

「『魔王』……中国でもそう呼ばれ始めているんですか……」

 

簪は知らない。各国の政府関係者内で、自分が『魔王』『専用機狩り』『終末の破砕者』などと呼ばれていることを。

 

(私は関係ない、関係ないぞぉ……)

 

そして一社長であるアルベールも、知ってはいるが聞かなかったことにした。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

束さまの応援もあって、なんと私が準決勝にまで駒を進めてしまいました。

ですが、さすがに次の対戦相手が悪すぎです。

 

「えっと、クロニクルさんは棄権しないよね?」

 

「はい。出来る限り、全力で戦わせていただきます」

 

「良かったぁ……!」

 

普通、相手の棄権による不戦勝は喜ぶべきことなのに、なぜか対戦相手、更識簪さんはホッと胸をなでおろしていた。

……今更私と戦ったところで、貴女が『バケモノ』なのは変わらないと思いますが。

 

「それでは、参ります!」

 

「うん!」

 

ブザーと同時、私のアサルトライフルの掃射から試合が始まった。

そんな簡単に当たるとは思っていませんが、とにかく開幕瞬時加速からのメメントモリさえ潰せればOKです!

 

「さすがにこれだけやれば、警戒されちゃうか」

 

「ええ、貴女は専用機持ちの中でも最要注意人物ですから」

 

「脅威に思われてるのは分かってたけど……解せぬ」

 

何が解せぬですか。織斑マドカ以外を試合開始10秒以内に沈めた貴女を、要注意人物と言わずなんと言えと。

 

「それじゃあ陸にも怒られたし、メメントモリ以外も使おう」

 

「え?」

 

なぜでしょう、すごーく嫌な予感が……。

 

 

「山嵐、全弾発射!」

 

 

――ズドドドドッ!

 

「っ!」

 

そうだった! 打鉄弐式の武装には、48基のマルチロックオン・ミサイルがあるんでした!

というより、そもそもこっちが弐式本来の武装と聞いていました。それなのに失念していたとは……!

 

ドォォンッ!

 

「くはっ!」

 

大半はアサルトライフとマシンガンの掃射で迎撃出来ましたが、残りの数発を食らってしまい、さっそくSEが3割近く削られてしまいました。

ですが

 

「まだまだぁ!」

 

近接ブレードを展開して、ミサイルの爆炎に隠れて接近――!

 

「残念だけど、それには引っかかってあげられない」

 

――ドドドドッ!

 

「きゃっ!」

 

荷電粒子砲……じゃない!? これは……!

 

「榴散弾……!」

 

布仏さんと同じ榴散弾も撃てるの!?

 

「びっくりした? 本音しか使わないから、私は使わないと思った?」

 

また失念……! 同じ荷電粒子砲なら同じ弾種も撃てるって、すぐ気付けたはずなのに……!

それにしても

 

「私ごときに、こんなに手の内を見せて良かったんですか?」

 

「いやその、あんまりワンパターンすぎて、陸や織斑先生に怒られたから……」

 

「……」

 

いえ、そんな煽り文句みたいなことを、怯えた顔で言われても……。

 

「それでも、私は最後まで戦います!」

 

先日束さまに言ったように、全力を出すと。

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

そうは言っても、専用機と訓練機の性能差を引っ繰り返すのは無理難題。

少しずつSEを削られ、私は絶体絶命のところまで追いつめられていた。

 

(SE残量、残り1割……あと1回、大きな攻撃を受けたら終了ですね……)

 

「偉そうな物言いになっちゃうけど、クロニクルさんすごいよ。弐式に直撃を入れるなんて」

 

前置き通り傲慢なセリフですが、更識さんの言うことは正しいです。

このトーナメントで、更識さんは一撃も受けることなく完勝しているのですから。

そういう意味では、マシンガンを数発当てた私は大金星なのかもしれません。けど……

 

「それで満足しては、束さまの娘として誇れません……!」

 

どう考えても分が悪いですが、最後の賭けで接近戦に――!

 

「受けて立つ!」

 

更識さんも山嵐を撃つつもりなのか、ミサイルポッドが展開され

 

――シーン……

 

「……え?」

 

ポッドから何も出て来ないせいで、更識さんの目が点になっていた。

 

「チャンスです!」

 

近接ブレードを振り上げた私に対し、更識さんが最後に口にした言葉が

 

 

「ミサイルの補充されてない!? 虚さぁぁぁぁぁぁん!?」

 

 

だった。

 

……束さま、こんなのでも、勝利と呼べるのでしょうか?

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「あはははははははっ!」

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!」

 

観客席で、俺と束は腹を抱えて笑うしかなった。

今頃放送室では、虚先輩がのほほんから折檻を受けているんだろう。いつもとは逆の構図だ。

 

「粘着弾頭使われて腹が立ってたからって、ふ、普通整備に手ぇ抜いちゃうかなぁ!?」

 

「た、たぶん無意識だと思うぞ? さすがにあの虚先輩が私怨でとか……いやあるか! あははははっ!」

 

ホント、もう笑うしかない。

なにせ優勝候補筆頭の簪が、こんな理由で準決勝敗退したのだから、番狂わせもいいところだ。

 

「でもいいのか、束?」

 

「ん? 何が?」

 

「決勝戦、一夏とクロニクル、どっちを応援するんだ?」

 

「そんなの……はっ!」

 

腹を抱えていた束は、ガバッと客席から立ち上がった。

 

「そうだよ! 旦那様と娘、どっちを応援すればいいの!?」

 

さっきまで大笑いしてたのに、今じゃ頭を抱えて右往左往している。こいつも変わったなぁ。

 

「さて、そろそろ……」

 

 

「り゛く゛ぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 

「げふっ!」

 

か、簪……せめてハグする瞬間は勢い落としてくれや……。

 

「負けたぁ……」

 

「残念だったねぇ、決勝まで行けなくて」

 

「うぅ……最悪、国家代表を降ろされなければ……」

 

「降ろされないでしょこれは」

 

「でもこれ、簪が装備を自分で点検してればこうはならなかったのでは?」

 

「うぐっ!」

 

俺の指摘に心当たりがあったのか、簪が胸の中で矢が刺さったような声を上げた。

普段から、のほほんや虚先輩に任せっきりだったが故の失態だったな。

ああっ、分かった分かった。頭撫ぜてやっから、俺の制服で鼻水かもうとすんな。

 

「そ、それにしても、クロニクルさんは強かった」

 

簪ー、話を逸らそうとすんなー。

 

「本当に本当。IS学園に入ってから半年も経ってないのに、これだけISを乗りこなせるとは思わなかった」

 

「すごいでしょー!」

 

束、お前が威張ってどうする。いや、娘の良い所を見せびらかしたい母親心理ってやつか。

 

 

『これからお昼休憩に入ります。決勝戦は午後の1時半からの開始となりますので、みなさま――』

 

 

おっ、刀奈の声か。きっと虚先輩が使い物にならなくなったから、試合が終わって急いで放送室まで走ったんだろう。わずかに息が上がってた。

 

「クロニクルを回収しながら、学食行くか?」

 

「そうだねー、いこーいこー!」

 

「う~……(俺の背中に回っておんぶ)」

 

そうしてアリーナの出入り口でクロニクルと合流した俺達は、校舎内の学食に向かって歩き出した。

 

 

クロニクルと手を繋ぐ束に、簪をおんぶする俺。

 

 

なんだこの構図は……!?




箒とシャル、来賓から笑われる。そりゃ、あんな負け方(失格)したら、ねぇ?

簪は魔王。絶対何かしら二つ名付けられてそうだったので。

クロエ vs 簪。そしてまさかの勝敗。だって、このまま順当に簪が勝ったら、一夏一瞬で負けちゃうやん?(さも予定調和かのように)


次回、決勝戦 クロエ vs 一夏

あ、やばい。一夏イジメたい。
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