やめるやめる詐欺にならないよう、頑張ってスパートかけていきます。
第163話 トーナメント後の後始末
試験的に行われた学期末トーナメントは、大方の予想を思い切り裏切った結果となった。
優勝候補だった更識簪は3位(篠ノ之箒とシャルロット・デュノアがそれぞれ失格負けと試合継続不能だったため、3位決定戦は行われなった)に終わり、決勝戦で専用機持ちである織斑一夏を、訓練機に乗ったクロエ・クロニクルが下して優勝したのだから。
もちろん様々な奇跡(過失)があっての優勝ではあったが、勝ちは勝ちである。
そのため、彼女の所属する1年1組はその晩、学生寮の食堂で祝杯を上げたのだった。
そんな中、大会後も仕事に追われる者たちがいた……。
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――IS学園、整備室
「終わった~!」
「こっちもだ~」
そう言って整備室の床に倒れ込んだ俺と束の目の前には、修復の終わった一夏の白式が鎮座していた。
決勝戦の後、鬼の形相をした織斑先生からボディスラムを食らってからの記憶がない。
気付いた時には、束と一緒に首根っこを掴まれて、この整備室に投げ込まれていたわけだ。
『お前達が壊した白式だからな。お前達で直せ』
たぶん、入学してから一番怖い人相してたなありゃ。
「それにしても、想定より威力高くなってなかった? あの弾頭」
「束もそう思うか? やっぱヒュージキャノンで撃ったのが不味かったかぁ?」
単発で試験した時は、メメントモリ程度の威力に収まってたんだが……変な相乗効果が起こっちまったか?
もしあれだけの威力になるって知ってたら、クロニクルに渡してなかったんだが……失敗だったな。
「それにしても、ISってのはすげぇな。ある程度こっちで直したら、あとは向こうが自動修復してくれんだから」
「でしょー? それでも、今回みたいなのは最後にしたいよ。こっちで直さなきゃいけないほどのダメージって、結構よろしくないから」
「まあ、そうだろうな」
人間に例えれば、事故って自然治癒力じゃどうしようもない怪我したから、手術しますって感じだからな。そう何度もやるもんじゃない。
「お前達、ちゃんとやって……なんだ、もう直ったのか」
床に倒れたまま声のする方を向くと、逆さまになった織斑先生が。
「寝っ転がってこっちを見るな。スカートの中が見える」
――ブォンッ!
「あっぶな!」
なにこの教師! 普通生徒の顔面目掛けて蹴り入れてくるか!?
間一髪起き上がって回避してなかったら、ヒールの爪先が鼻っ面に突き刺さってたぞ!?
「それで?」
「今の危険行為に対する弁解はなしですかそうですか。とりあえず、白式の自己修復能力で直るレベルにまでは持っていきました」
「修復が終わるまで、どれだけかかる?」
「そうですね……ざっと2日ってところですか。なぁ束?」
「そうだね~。大体それぐらいかな?」
俺の大体予想に、束も同意する。
「そうか。明日は休校予定になっているから、明後日の授業までには間に合いそうだな」
「ああ、そうだったそうだった」
「ただ宮下、お前は休みではないぞ」
「へ?」
なして? Why?
「お前には、フレイヤだったか? あのバケモノ兵器でアリーナに開けたクレーターを埋める作業があるからな」
「ファーッ!? あれ俺一人で埋めるんですか!」
「当たり前だ。言っておくが、更識姉妹や織斑達に手伝わせるなよ。お前一人で直せ」
「マジっすか……」
あのクレーターの大きさからして……間違いなく、明日一日丸潰れだな。
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織斑先生に拉致られた陸が寮の部屋に戻ってきたのは、日付が変わる直前だった。
「それで、明日も作業することになったの?」
「ああ。織斑先生が言ってることも、あながち間違いじゃねぇからな」
「篠ノ之博士やクロニクルさんに手伝ってもらうのもダメなの?」
一応、共犯者と実行者ってことになると思うんだけど。
「クロニクルはダメだな。フレイヤのことを全部話した上で使ったならともかく、あの時はただの新型弾頭としか説明してないからな」
「そうねぇ。それで使用責任を追及するのは酷ってものね」
陸の説明にお姉ちゃんも同意する。確かに全容を知らずに使ったのなら、仕方ないかぁ。
「束はむしろ、こっちで穴埋めするより大切な仕事があるからな」
「大切な仕事?」
「織斑先生と一緒に、国際IS委員会のところに行く仕事」
「え?」
「博士が、織斑先生と一緒に?」
お姉ちゃんと私、一緒になって目が点になった。
あの博士が、IS委員会に呼ばれた織斑先生に付いていく? なんの冗談?
「ちなみに拒否った場合は、娘のクロニクルを代わりに連れていくと言って脅してたな」
『酷いよちーちゃん!!』って泣いてたと聞かされて、私はどんな顔をしたらいいのか……。
「まあ博士には、トーナメントでのことの他に、太陽光発電受信アンテナについても説明してもらう必要があったしね」
「ああ、先日本格稼働させたんだっけ?」
「そうよ。で、学園を運営してる日本政府には説明済みなんだけど、IS委員会の方々も説明を求めてきてね」
「面倒くさそう」
「簪ちゃん……」
うん分かってる。外じゃ言わないから。
「そういえば、2学年は刀奈が優勝したんだったよな」
「そうよぉ。さぁ、お姉さんを褒めていいのよ?」
「いや、褒めるって……」
「だって~、陸君にはまだ褒めてもらってないんだも~ん! 頭撫ぜて撫ぜて~!」
「簪はやったのか……」
「うん……」
お姉ちゃん、私達しかいない時は幼児退行してる気がしてならない。
「まぁ、刀奈も頑張ったのは事実だからな。やってやるか」
そう言うと、陸はお姉ちゃんに近づいて……
「よしよし」
「あ、あうぅ……///」
ほ、本当に頭撫ぜてる……そしてお姉ちゃん、すっごい顔真っ赤。
「今更頭撫ぜただけで、どうしてそうなるよ」
「そ、そうだけどぉ……///」
お姉ちゃん、あざとい。
「俺、明日もお仕事だからもう寝るわ」
「あらら……。私達も今日はもう寝ちゃいましょうか」
「うん」
ベッド(また2つをくっ付けた)に、3人一緒に横になった。うん、やっぱりこの形がいい。
「陸君を独り占めするのもよかったけど、やっぱりこの形が一番しっくりくるわね」
「そうか? まあ、簪がまた簀巻きにならなければ……」
「もう簀巻きは勘弁」
平行世界にいた時は我慢できたけど、すぐ近くに陸がいるのに別々で寝るとかもう無理。
「昨日簀巻きになってた分、陸成分を摂取する」
「あら、なら私も」
「頼むから、そのまま大岡裁きみたいにしないでくれよ……」
大岡裁きって、子争いのやつだっけ? 子供の腕を両方から引っ張るって話。さすがにそこまではしない……よね?
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――ラビット・カンパニー 社長室
「やっと終わったわね~……」
「ああ、ホントやっとだぜ」
オータムから渡されたコーヒーカップを受け取ると、私は一息付いてから黒い液体を飲み込んだ。ああ~、カフェインが頭に染みるわ~。
「IS学園へのアンテナ設置も終わって、私らもお役御免か」
「そう思うでしょ?」
残念ながら、あの紫兎は私達を解放するつもりがないらしいわ。仮に解放されても、
「あの博士、今度はIS技術を使った、地上と低軌道領域の往来船を作るらしいわよ」
「往来船って、スペースシャトルでも作るのか?」
「それにISのPICを付けた物らしいわ。なんでも、宇宙空間に物資を上げる際に、打ち上げ用のロケットもマスドライバーも要らなくなるんだとか」
「はぁ……相変わらず、頭のいい奴の考えることは分からねぇわ」
頭を掻きながらコーヒーカップに口をつけるオータム。
私も正直、全体の半分ぐらいしか分かってないわ。でも、あの博士の頭の中では勝算があるんでしょうね。
「それでも、今すぐにって話じゃないんだろ?」
「ええ。往来船の概要を国連に提出するらしいけど、それも来年度以降の話よ」
「国連? なんでまた」
「『好き勝手動いてるわけじゃない、一応筋は通してます』って建前作りのためらしいわ」
「建前作りか。あの博士がねぇ……」
オータムの言う通り、私も違和感があるわ。あの篠ノ之束が、私達と同じように立ち回ってるなんて。
「とにかく、すぐの話じゃないってんなら、私らのすることは決まってるな」
「そうね」
ええ、やっと特大プロジェクトが終わったんだもの。なら、やることは決まってるわ。それは――
「「グルメ! 温泉! エステ!」」
年末年始の連休でも使い切れなかった代休を、ここで一気に放出するわ! 4泊5日の旅行よ旅行!
「オータム、準備は?」
「問題ない」
自信満々に、いつかと同じように私に端末の画面を見せる。
「老舗とは言えねぇが、口コミで高評価だった旅館を予約済み。天然温泉露天風呂付の部屋を取ってあるぜ!」
「結構! 大変結構!」
「というわけで、さっさと帰って荷物をまとめちまおうぜ」
「ええ、そうしましょう」
こんな、温泉一つでワクワクしてるなんて、亡国機業にいた時ではあり得なかったわね。でも……
「今の方が、生きてるって感じがあるわね」
「ん? なんか言ったか?」
「いいえ、何でもないわ。さあ、残りをちゃちゃっと片付けて帰りましょ」
「ああ」
オリ主と束、白式の修復作業。元々白式は束が作ったんだから、束(+オリ主)が直すべきでしょう。倉持に持って行っても無駄ですし。(スッパリ)
刀奈、えらいえらーい。
スコール&オータム、一仕事終わる。この二人、気付けばギャグ枠から癒し枠になってるなぁ……。