俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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牛歩進捗。

8/21追記
なぜあとがきで誤字るんだ……。


第164話 面倒事

学期末トーナメントの翌日。IS学園の生徒達は休校となったこの日、思い思いに寛いでいた。

ある者は朝食後に2度寝を決め込み、またある者は友人たちと連れ立って学園の外へ出かけて行った。

 

そんな中、第1アリーナに出来たクレーターの周りでせっせと働く影と、それを眺める影が。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

そんなわけで、俺は朝から土方の兄ちゃんよろしく、タンクトップにニッカズボンという恰好でクレーターの穴埋めをしていた。

 

「陸、がんばー」

 

「せっかくの休みなのに、お前も酔狂だな」

 

「陸がここで作業してるし、お姉ちゃんもなんか忙しそうだったから。本音も駆り出されてるくらいだし」

 

「のほほんが? ってことは生徒会絡みか」

 

マジで忘れそうになる……というかほぼ忘れてるが、のほほんも生徒会役員なんだよな。却って邪魔になるから召集されないだけで。

そんなのほほんも駆り出されるとなると、よほど忙しいんだろう。

 

「虚先輩がいても回らないくらい忙しいのか」

 

「虚は今回動いてないわよ」

 

突然話に加わってきた声の方を向けば、ピットから刀奈がこっちに向かって歩いてきていた。

 

「様子を見に来たんだけど、さすがに陸君一人じゃ終わってないわよね」

 

「そりゃあな。織斑先生を拝み倒してなんとか陰流の使用許可はもらったけど、それでも午前中には終わんねぇよ」

 

なにせ、ピットを出てから歩いて10歩もないところにクレーターの縁があるのだから。つまり、そんだけでかいクレーターなわけで、それを埋めるとなったらえらい時間がかかる。

穴埋め用の土が入った麻袋が壁際にうず高く積まれているのを、えっちらおっちら運ぶのが重労働なんだよなぁ。これで陰流が使えなかったら、今日中に終わらんだろうな。

まあ、俺の肉体労働の話はいいとして

 

「それで、虚先輩が動いてないってのは?」

 

「あら陸君、今何月だと思ってるの?」

 

「何月って……」

 

もう少しで、2月も半分が終わる……ああっ

 

「そうか、卒業式」

 

「正解。来月で虚はIS学園を卒業するのよ。その式の準備を、虚にやらせるわけにはいかないでしょ」

 

「それもそうだ」

 

むしろ、そんな虚先輩をギリギリまで生徒会で働かせてたのかよ。

 

「というより、そんな虚さんをギリギリまで働かせてたの……?」

 

「か、簪ちゃん、視線が痛いわぁ……」

 

簪も同じことを思ってたらしい。そんな簪の視線から逃げるように、刀奈は話題を逸らす。

 

「そ、それよりも、ちょっとキナ臭い話があってね」

 

「キナ臭い話?」

 

「ええ」

 

そう言うと、冷や汗を垂らしていた刀奈の顔が、真剣なものに変わる。

そんな話、ここでしちまっていいのか?

 

()()()はしてあるから、盗み聞きとかの心配はないわ」

 

刀奈がそう言うからには、出入り口に立ち入り禁止の立札を置いただけとかはないだろう。

おそらく、更識の手の者を配置してるんだろうな。

 

「用意周到なことで。それで?」

 

「私達がイギリスから戻って来た時に、女性権利団体が壊滅したのは覚えてるわよね?」

 

「ああ、あれな」

 

「本部が崩壊して、各国で大捕り物になったんだよね?」

 

どこかの国の刑務所が女権団で満杯になったっていう、冗談のような話もあったよな。しかも事実らしいし。

その影響で、親が女権団にいた生徒が中退していったんだよな。特に1年3組はそういう女尊男卑主義者がそこそこいたらしくて、そいつら全員辞めてったんだと。

 

「そうね。簪ちゃんの言った通り、それで関係者の大半が刑務所行きになったんだけど……」

 

「その言い方から察するに、全部が捕まったわけじゃないんだな?」

 

「ええ。女権団の中でも特に過激派な面子が、行方を眩ませたの」

 

あの頭パーな連中の中で、さらに過激派? ほぼテロリストじゃねぇかそれ?

 

「それで最近になって、その過激派連中の足取りが分かったのよ」

 

「どこ?」

 

「自由の国(笑)」

 

「アメリカか……」

 

アメリカと言えばハッキング事件の時にやり合ったから、あんまいい印象ねぇんだよなぁ。ケイシー先輩には悪いけど。

 

「アメリカって、秋に学園に侵入してきたって……」

 

「その時返り討ちに遭った組織と、どうも手を組んだらしくてねぇ」

 

「マジか……」

 

それを聞いて思い出すのは、事後処理の話を織斑先生から聞いた場面だ。

 

 

 

『もう一度確認するが……これはお前が()()()のか?』

 

『ええ、俺がやりました』

 

『そうか……』

 

学園の地下区画で話す俺と織斑先生の周囲には、未だ飛び散った血と肉片の後が残っていた。

侵入者の死体()()()()()はすでに運び出されていたが、

アメリカは関与を否定し、遺体の受け取りを拒否した。当然か。受け取れば、自分達が襲撃を指示したと認めるようなもんだし。

そして身元を示すものが何もない以上、受取人不在の身元不明者として処理するしかないだろう。

 

 

 

「どっちからも恨まれるわなぁ……」

 

思わずため息をついていた。

片や所属する組織を壊滅させられ、片や部隊員を膾切り。そりゃヘイトも集中するわ。

 

「陸、大丈夫?」

 

気付けば、簪が俺の顔を覗き込んでいた。

 

「平気、ではないな。少し気が滅入ってる」

 

「でしょうね……ごめんなさい、私があの時、しくじってなければ……」

 

そう言って悲しそうな顔をする刀奈の頭を、そっと撫ぜる。

刀奈の言う"あの時"というのは、おそらく俺が侵入者を斬り捨てた時のことを言ってるんだろう。

 

「気にすんな。聞いた話じゃ、元々俺は命を狙われてたらしいからな。結局敵対する運命だったんだ」

 

束の話では、あのハッキング事件でアメリカは女権団と手を組む際に、俺の殺害を女権団から要求され、それを承諾したらしい。

それを聞いて、『そん時から恨まれてたのかよ……』と頭が痛かった記憶がある。

 

「あはは……気が滅入った陸君をお姉さんが慰めるはずが、私が慰められちゃった」

 

撫ぜていた手を退けると、刀奈は撫ぜていたところを手で押さえて『えへへ』と笑う。ぬぅ、可愛いじゃねぇか。

 

「お姉ちゃん、あざとい」

 

「ちょっと簪ちゃん!?」

 

だから簪、ジト目はやめとけ。癖になったら困るぞ。

 

「それで、その危ない連中が何かやらかすと?」

 

「そ、そうなの。ウチ(更識)の分析では、1か月以内に行動を起こすと予測しているわ」

 

「1か月か……最悪、卒業式に何か仕掛けてくる可能性もあるな」

 

「学園祭まで、何かイベントがあると襲撃されてた」

 

「簪ちゃんの言う通りなのよねぇ……」

 

『はぁ……』と俺達3人、示し合わせたわけでもないのにため息がハモる。

 

「まあ、いつ来るか分からん面倒事について悩むより、今は目の前の面倒事を片付けるか」

 

気合を入れ直してまた穴埋め作業に戻ろうとしたら

 

 

 

 

さっきまであったはずのクレーターが、綺麗になくなっていた

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

目の前の光景を処理し切れず、誰も声を発せない。

そしてしばらくして、辛うじて正気を取り戻した俺の口から最初に出たのは

 

「……は?」

 

だった。

 

( ゚д゚) ・・・

 

(つд⊂)ゴシゴシ

 

(;゚д゚) ・・・

 

(つд⊂)ゴシゴシゴシ

 

(;゚ Д゚) …!?

 

いつの間にか、陰流の待機状態が解除されていた。それはいい。よくないが。

だが、これは……

 

 

「「「キェェェェェェアァァァァァァウゴイタァァァァァァァ!!」」」

 

 

陰流が、誰も乗ってない陰流が動いてるぅぅぅぅ!?

 

『マスターがお話し中の間、わ、私が代わりにやっておきましたー』

 

「ソフィアー!?」

 

え、なに? お前が陰流動かしてんの!? というか、わざわざオープン・チャネルで話しかけてこんでも!

 

「コア人格だけで、ISって動かせるのね……」

 

「パワーアシスト機能とか考えれば、理屈では可能だと思うけど……」

 

簪と刀奈にもソフィアーの声が聞こえたのか、口元を引きつらせていた。

 

『マスター、私頑張ったので、ご、ご褒美欲しいです』

 

「コア人格からお強請りされたんだが。いや、確かに頑張ったのは認めるが」

 

俺の代わりに、クレーターの穴埋めやったからな。

 

「そもそもコア人格にご褒美って、一体何が欲しいんだよ?」

 

『そ、それはですね――』

 

 

『フンスッ( ง ᵒ̌∀ᵒ̌)ง⁼³₌₃ 陰流のオーバーホールと、コア磨きをお願いします!』

 

 

「……お、おう」

 

意外と普通だった。

 

「午前中は穴埋めで終わると思ってたから、ソフィアーが作業して浮いた分の時間でやるか」

 

『(*ノˊᗜˋ*)ノワーイ』

 

「ぐぬぬ……!」

 

「簪ちゃん、ソフィアーちゃんに嫉妬したら色々終わりだと思うわ……」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

束さんだよ~。さっきまで国際IS委員会とかいう連中に話をしてたんだけど、もう限界~……。

 

「ほら、しっかり歩け」

 

「だってちーちゃん、あいつら話通じないんだも~ん」

 

『それは○○とはどう違うのかね?』とか『△△の実現性は~』とか、知ったかで話の腰を折るなっての!

お前らの知ってることが世界の全てじゃねぇんだよKUSOGA!

 

「これならまだ、いっくんに説明してた方がいいよ」

 

「一夏に話したところで、1割も理解できんだろうがな」

 

「そだね」

 

それでもいっくんなら『へ~すごいですね~』って言ってくれるし。下手にイチャモン付けれられるよりはよっぽどいいよ。

 

「ねぇちーちゃん、もうお昼だし、どこかで食べてから帰ろーよー」

 

今、IS委員会日本支部とかいう場所にいるんだけど、ここからIS学園に戻ってたら束さん、お腹が減って動けなくなっちゃうよ~。

 

「お前という奴は……適当なドライブスルーでいいな?」

 

「ええー? おっ、キッチンカー発見!」

 

「あ、おい! 束!」

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

あのキッチンカーは当たりだったね。タコス美味し!

 

「出来れば動き出す前に、一言言って欲しいものなんだがなぁ?」

 

「んもー、ちーちゃんってば、あんまり怒ると眉間の皺が取れなくな(ゴンッ!)痛ぁ!」

 

ゲンコツは普通に痛いってぇ! 乱暴だなぁ!

 

――♪

 

「あれ、りったんからだ」

 

どうしたんだろう?

 

「アリーナの穴埋めが終わらなくて、泣き言でも言いたくなったか?」

 

「いやいやまさか……もすもすひねもすぅ~。どうしたのりったん?」

 

……

 

「ん~、これから学園に戻るちーちゃんに付いてくから、そっちで見せてよ。うん……りょ~かい」

 

なるほどなるほど。まったく、りったんの周りは面白いことで溢れてるよ。

 

「宮下のやつ、どうかしたのか?」

 

「さっきまでアリーナの穴埋めしてたらしいんだけど――」

 

 

「陰流のコア人格が、勝手に機体を動かしたんだって」

 

 

「……」

 

今さっきりったんから聞いた話をしたら、ちーちゃんは深呼吸をし始めた。

そして

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!!」(絶叫するビーバー)

 

 

良い絶叫! ちーちゃん、いい感じで壊れてきたね~♪




卒業式の準備中。虚が卒業したら、来年度の生徒会どうなるんだろう? 原作は一夏を拉致ったから大丈夫なんでしょうけど。

キナ臭い話。ラスボスにしてはショボいなぁ。

ソフィアー頑張る。なんか、性格がどんどん更識姉妹に寄っていってる気が……。

千冬、ビーバーになる。説明不要!
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