俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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だんだん難産になってきました……。


第168話 迎撃準備

みんなは『マーフィーの法則』って知ってるだろうか?

言ってしまえば、経験則をまとめたユーモア集みたいなものだ。

 

『トーストを落とした時、バターを塗った面が下になる確率は、敷いてあるカーペットの値段に比例する』とかが有名だろうか。

要は『嫌なことほどよく起こる』『可能性がゼロでなければ、いつか必ず起こる』ってことだ。

 

 

……ホント困ったことに、嫌なことというのは必ず起こるものなのだ。

 

 

その日、最初に異変に気付いたのは、学園周辺を監視するレーダー群だった。

このレーダーは先日、ラビット・カンパニー(の所属になってる陸)協力のもと、ステルス機も発見できるように強化されたばかりだった。

 

――ビーッ! ビーッ!

 

そのレーダーが、学園沖合の第一警戒線を突破した、所属不明機を感知したのだ。

学園の教師部隊は直ちに出撃準備を整え、各学年の専用機持ちにも召集がかかったのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「すまん! 遅れた!」

 

最後に一夏が会議室に入って来て、これで専用機持ち全員が揃ったことになる。

 

――ゴンッ!

 

「遅い! まあいい、状況を説明する」

 

「ひゃい……」

 

腕を組んでいた織斑先生は一夏の脳天に一撃かますと、投影ディスプレイを展開した。

 

「先ほど学園の長距離レーダーが、所属不明のISを補足した」

 

「それって……」

 

「ああ。おそらく先日話した、女権団の残党だろう。ついさっき、IS委員会から通達があった」

 

「IS委員会から? 何とおっしゃっておりましたの?」

 

「『女権団が隠し持っていると推測されていたISコアが、結局見つからなかった』だそうだ」

 

「すげー今更ですね」

 

そういうのって、もっと早く言うもんじゃねぇのか? 具体的には、女権団が壊滅した12月中に。

 

「宮下の言う通りだ。この件が終わったら、束を使って泣いたり笑ったり出来なくしてやろうと思う」

 

「お、織斑先生……」

 

「言ってること過激ぃ……」

 

片方だけ口角を上げる織斑先生に、デュノアと凰もドン引きだ。

 

「委員会が推測していたISコアの数は10。そして今接近しているISの数も10機だ」

 

投影ディスプレイに、さっき話してたレーダー画面が表示される。その円形スコープの右斜め上に、赤い点が10個映し出されていた。

 

「他所からちょろまかしたISコアを、さらに残党がちょろまかして機体を組んだってことっスか?」

 

「そういうことだ」

 

敵はISが10機。おそらくアンネイムドの連中もどこかに潜伏していて、波状攻撃を仕掛けてくるんだろう。

という想像を言ってみたところ

 

「私も宮下と同じことを考えていた。そこで専用機持ちには接近するISの迎撃を行ってもらう」

 

「とすると、アンネイムド(歩兵連中)は教師部隊が?」

 

「そうだ。本来であれば、教師部隊が敵ISを迎撃するべきなんだが……」

 

そう言って別のディプレイが展開されると、そこに映っていたのは……

 

「紅、椿?」

 

「まさか……」

 

篠ノ之が乗る第4世代機に外見が酷似した、深紅のISだった。

 

「どうやら、倉持技研に送られていたデータが流出していたようだ」

 

「また倉持……」

 

ボソッと呟いた簪が『どうしてくれようか』って顔してやがる。ホント、何がしてぇんだよ倉持技研……。

 

「これがお前達に迎撃させる理由だ。敵ISの性能がオリジナルと同じ第4世代相当だった場合、第2世代機に乗る教師部隊では荷が重いと判断した」

 

ちなみに、織斑先生とアーリィはIS迎撃組、山田先生はアンネイムド迎撃組を指揮することになった。

アーリィの強みである速さを活かすなら、遮蔽物の少ない屋外がベストだし、山田先生もハッキング事件の時、防衛に参加した経験があるという理由で抜擢したらしい。

 

「確かに、これならオレ達がIS迎撃組に出た方がいいか」

 

「そうだな。幸い我々専用機持ちは敵より多い。教員二人を足して14人もいれば何とかなるだろう」

 

「マドっち、IS迎撃組は先生達を含めて15人だよ~?」

 

のほほんが不思議そうな顔で首を傾げる。

確かに、専用機持ちが1年10人、2年2人、3年1人で13人。そこに教員二人を足せば15人なんだが……。

 

「……」「……」「……」

 

俺も含め、全員がのほほんの方を見た。その視線が語っている。

 

『お前、まさか前線に出る気か?』

 

「え、ええ~……どうしてみんな、そんな目で見るの~?」

 

「それは、なぁ……」

 

「そうですわね……」

 

 

「お前にフレンドリーファイアされたら堪ったもんじゃない。大人しくしていろ」

 

 

「「「「「ラウラぁ(さん)!?」」」」」

 

うぉぉい!? ボーデヴィッヒの奴、みんなが言いにくいことをはっきりと!

そりゃタッグマッチの時、のほほんのナインテールは更識姉妹の脳天をぶち抜いたけどさぁ!

 

「お、おぉぉぉぉぉ……!」

 

「本音!?」

 

よほどボーデヴィッヒの言葉が刺さったのか、胸に手を当てたまま膝から崩れ落ちちまった。

まぁ、のほほんのことは置いておいて……

 

「先生、お願いがあるんですが」

 

「お願いだと? 言ってみろ」

 

一瞬眉をひそめられたが、続きを促されたので俺は、そのお願いの内容を口にした。

 

「俺の陰流は第2世代機です。今の説明だと俺も足手纏いになりそうなんで、アンネイムド迎撃組に回してもらえませんか?」

 

「陸!?」「陸君!?」

 

いやいや、そんな驚くことじゃないだろ。

実際問題、俺はISに乗ってるより、生身で刀を振り回してた方が役に立つはずだ。

 

「確かに一理あるな。だが、建前だけでなく、本心も話せ。それが条件だ」

 

「本心?」

 

「宮下が、何か隠してるってことですか?」

 

「別に隠してたわけじゃねぇんだけどな……」

 

陰流が第2世代機だからって理由はついでだ。本当にアンネイムド迎撃組に映りたい理由は

 

 

「手前ぇの尻ぬぐいは、手前ぇでやるべきだと思ったからですよ」

 

 

「……いいだろう、許可する」

 

「どういう意味だ? なぁ千冬姉「織斑先生だ(ゴンッ)」ぐぉ……!」

 

なんだ一夏、最近織斑先生の出席簿アタックを回避してると思ったら、拳骨はサポート対象外か。

 

「敵ISは、あと20分ほどで学園上空に到達する見込みだ。各員の配置データを送信するから、各自指定ポイント上空で待機しろ」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「宮下と布仏は地下区画入口だ。そこで山田先生の指揮下に入れ」

 

「分かりました」「了解です~」

 

「よし、解散!」

 

織斑先生の号令で、各々が慌ただしく会議室から出て行く。

その顔に、不安や悲壮感はない。実戦続きだったせいか、みんな場慣れしちまったんだろう。いい意味でも悪い意味でも。

 

「宮下」

 

「はい?」

 

呼ばれて振り向くと、

 

「……なんて顔してるんですか」

 

「別に普通の顔だ馬鹿者」

 

そんな悲しそうな顔で言われてもなぁ。

 

「それで、なんですか?」

 

「お前には、また泥を被らせることになるかもしれん(いや、血を被らせる、が正しいか)」

 

「でしょうね」

 

むしろそのために、俺はアンネイムド迎撃組に回ったんだ。

 

ハッキング事件の時、俺は連中のお仲間を切り捨てた。そのことについて後悔はしていない。

もし斬り捨てずに米国へ引き渡していたとしても、今回の襲撃がなくならず、女権団単体で行われたかもしれない。

それでも、もし俺の行動が引き金だった可能性があるなら……

 

「さっきも言った通り、手前の尻ぬぐいは手前でします」

 

「……そうか。分かった、ならばこれ以上は何も言わん」

 

最後に織斑先生は

 

「死ぬなよ」

 

それだけを言って、先に会議室を出て行った。

 

「なぁ陸、尻ぬぐいってどういう――」

 

「ほら一夏、急いで急いで! アンタの指定ポイント、ここから一番遠いんだから!」

 

「ちょっ、鈴まっ!」

 

俺に話しかけようとした一夏だったが、俺が反応する前に凰が引っ張っていっちまった。

むしろその方がありがたい。ちっとばっかきつい話になっただろうからな。あいつは、知らない方がいい。

 

そして最後の俺が会議室を出ると、簪と刀奈が待っていた。

 

「お前達は行かなくていいのか?」

 

「大丈夫。さっき配置図を見たけど、私とお姉ちゃんのポイントは近場だったから」

 

「そうか」

 

「陸」「陸君」

 

「ん?」

 

 

「「ちゃんと、無事に帰って来てね」」

 

 

つま先立ちで背伸びした簪の額が、俺の額にこつんと当たる。それに続くように、背中から刀奈が寄りかかるのを感じた。

 

「心配するなって。こっちだって山田先生を始めとして、教師部隊がいるんだぞ」

 

「それでも、陸君なら単独で突っ込んでいきそうで不安なのよ」

 

「もしくは、誰かを庇って熱線で焼かれたり」

 

「刀奈、俺を昔の一夏と一緒にすんな。そして簪、いい加減福音の時のことは忘れてくれ」

 

まったく……

 

「むしろ、敵機の性能が未知数なそっちの方が心配だ。油断すんなよ」

 

「もちろん」

 

「分かってるわ」

 

神妙に、しかし余裕を持った顔で頷く二人。余計なお世話だったか、これなら問題なさそうだな。

 

「そんじゃ」

 

「うん」

 

「ええ」

 

 

「「「また後で」」」

 

 

そうして、俺達はそれぞれの指定ポイントに移動を始めた。

 

(大丈夫、ちゃんと生きて帰ってくるさ)

 

俺はちゃんと約束は"守る"性質なんでな。だから……

 

 

(アンネイムド、ここで禍根を断たせてもらうぞ……お前達の命と共に)

 

 

それが俺なりの尻ぬぐい。一夏とは相容れぬであろう、俺の"守る"だ。




ちーちゃんキレる。前に束をイライラさせたIS委員会、その束に倍返しされることが確定しました。

のほほん、IS迎撃組から外される。ラウラの正論パンチでKOされました。実際のほほんが出たら、敵味方関係なくボコられそう。(ちーちゃんとアーリィも危ない)

オリ主、IS迎撃組から抜ける。彼と一夏の"守る"は相容れないのは、大体お察しだと思います。

オリ主の"守る"は『大切な"1"のために、それを害する"10"を切り捨てる』
それに対する一夏の"守る"、その答えを次回以降で書けたらいいなぁと思ってます。
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