俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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IS迎撃組の話になります。


第170話 answer

会議室を出た後、俺達はISに乗って、それぞれの指定ポイント上空で待機していた。

 

『全員、配置についたな?』

 

『はい、大丈夫です』

 

千冬姉の確認に、代表して楯無さんが応える。

 

『作戦を説明する。まず初めに、迎撃班と遊撃班の二つを作る。迎撃班の各員が敵をそれぞれ抑え込んでいる間に、遊撃班が各個撃破していく』

 

『班編成は?』

 

『アリーシャ、それと織斑の二人。織斑達はツーマンセルで行動しろ』

 

「俺とマドカが組むのか?」

 

『私としては不満だが、仕方あるまい。子守もやってやるとしよう』

 

「誰が誰の子守するって?」

 

『お前達、痴話喧嘩はあとにしろ』

 

『「誰が痴話喧嘩だ(なんだよ)!」』

 

何言い出すんだよ千冬姉は!?

 

『お楽しみのところ申し訳ないけど、どうやら時間切れのようよ』

 

「っ!」

 

楯無さんが言うように、敵IS――女権団の残党――が目視できる距離まで来ていた。

 

『各自、作戦通り動け。いくぞ!』

 

号令を発した千冬姉を先頭に、迎撃組がその後に続いていく。

 

『さて、私達はチフユ達の左右から回り込んで、敵の背後を突くのサ』

 

『迎撃組と挟み撃ちにするんですわね?』

 

『そういうことサ。それと、一応言っておくけど……』

 

「アリーシャさん?」

 

 

『最悪の場合、敵の命より自分達の命を優先させるんだヨ』

 

 

「……!」

 

アリーシャさんの言葉に、俺は声が出そうになった。

それは、つまり……

 

『そもそもこれは試合ではなく実戦。殺すか殺されるかの世界だ。それぐらい承知している』

 

マドカは当然というような反応を返していた。

俺は……

 

『どうした一夏、やはりお前のような腰抜けには荷が重いのではないか?』

 

「だ、誰が腰抜けだ! そんなわけねぇだろ!」

 

『だ、そうだ』

 

『まったく……そんじゃ、始めるヨ!』

 

マドカに乗せられる形で返事をしちまったが、今更訂正する気はない。

やるんだ。俺だって戦って、戦って……たた、かって……

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

う~ん、号令をかけたはいいものの、イチカのメンタル面がちょっと心配サ。

代表候補生として訓練を受けていれば、戦う覚悟を持たされる。私の時もそうだったサ。

マドカの場合、人を殺した経験があるんだろうサ。だから動揺したりはしない。

けれどイチカの場合、ほんの1年前まではただの一般人だったわけで……

 

「とはいえ、今更抜けられても困るんだけどサ」

 

白式の零落白夜。あれはおそらく、敵のISにも通用するだろう。だからチフユも、彼を遊撃に回したんだろうサ。

 

「もう少しで接敵サね!」

 

赤いISと交戦中のダークグレーのIS――確かアメリカの、ダリル・ケイシーの機体だったネ――が視界に入ってるサ。

 

「おっ、さっそく来たか!」

 

「ぐぅ! 増援だと!?」

 

「ダリル、余裕そうだネ」

 

「ああ、第4世代相当かもって聞いてたから、どれほどかと思ったら……機体は良くても、乗ってる人間がダメダメだな」

 

「貴様ぁ!」

 

「おっと!」

 

自分のことを貶されて逆上した敵が、腕からビームを連射してきた。が、そんな攻撃が当たるわけないヨ。

 

「さしずめ、ビーム・マシンガンと言ったところカナ?」

 

ビーム・マシンガンとか、少し前なら瞠目してたんだろうけど、IS学園に来てから、この程度じゃ驚かなくなってるんだよネェ……。

 

――バキィィ!

 

「ほい終わりっと」

 

「ば、馬鹿な……第4世代機を解析して作られた、この緋蜂が……」

 

「さっきも言ったろ。機体が良くても操縦者がダメダメだって。どうする? 諦めて降伏するか、具現維持限界(リミット・ダウン)するまでオレ達にタコ殴りにされるか」

 

「かくなる上は……」

 

「? ……っ! そいつから離れロ!」

 

「何ッ!?」

 

私が声を出した時には、敵はダリルに肉薄、機体から赤い光を放って――

 

 

――ドゴォォォォォォンッ!!

 

 

「くぅぅぅぅ!!」

 

爆風に煽られながら、私は自分の悪い予想が当たったのを理解した。

 

(自爆だって!? 冗談じゃないのサ!!)

 

爆煙が止んだところで、全身の装甲がボロボロになったダリルが、ゆっくりと海に向かって落ちていく。

 

「間に合わせるサ!」

 

海面に向かって瞬時加速、すんでのところでダリルをキャッチ出来た。

 

「すま、ねぇ……ドジ踏んだ……」

 

「気にしなくていいサ。こっちもまさか、自爆特攻されるとは思ってなかったヨ」

 

けど、もし他の敵も自爆してくるようなことになれば……

これは、急いでチフユに伝えなきゃならないのサ……!

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「自爆だって!?」

 

「なかなかに狂気染みてきたな」

 

アリーシャさんからの全体通信を聞いて、俺は背筋が寒くなるのを感じた。

そんな簡単に、命を捨てるのかよ……!

 

「こうなれば仕方ないな」

 

「おいマドカ、仕方ないって、何をする気だよ?」

 

「決まっているだろう。『撃破』なんて生温いことは言ってられなくなった。本気で首を狩るぞ

 

「な……何言ってるんだよ!?」

 

それって、相手を殺すってことかよ!?

 

「下手に自爆されれば、こちらの被害も大きくなる。なら、その前に殺すべきだろう」

 

「ふざけんなよ! そんな簡単に殺すなんて……!」

 

「なら、お前の嫁共が自爆に巻き込まれて死んでもいいのか?」

 

「それは……」

 

「理解したな? なら――」

 

 

「こうなれば、お前も一緒に死ねぇぇぇ!」

 

「な、貴様!」

 

 

声のする方を見れば、箒が敵にしがみ付かれていた。そして敵の機体から、赤い光が……

 

「箒!?」

 

「ちっ!」

 

驚く俺を後目に、マドカがレーザーライフルを構えるが、

 

「間に合わんかっ! 離れろ! 自爆に巻き込まれるぞ!」

 

「そんなっ!」

 

何とか箒を助けようと瞬時加速をするが、赤い光がどんどん強くなっていって――

 

「一夏……」

 

 

「箒ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

手を伸ばしても、届かない。

守ると誓ったのに、守れない。

 

そして、赤い光が――

 

「……これ、は」

 

まただ……また、全てが止まった。

学園祭で、アラクネと戦った時と同じように。

 

『諦めちゃうの?』

 

「え?」

 

その声を聞いて、俺は驚いた。

前に聞いた声と、全然違う声だったから。

 

『守るの、諦めちゃうの?』

 

その言葉に、俺はハッとした。

そうだ、まだ俺は……!

 

「頼むっ! 箒を守る力をくれ!」

 

『どんな力が欲しいの?』

 

「そりゃ、敵が自爆する前に――!」

 

そこまで言って、昂っていた感情が冷めた。

俺は今、何を言おうとした? 敵が自爆する前に、なんだって?

そして、自分のことが怖くなった。

 

(俺、箒を守るためだって言って、敵を殺す力を求めようとした……?)

 

『本当に、その力でいいの?』

 

「……いいや」

 

問いかける声に、俺は首を振った。俺が欲しいのは、そんな力じゃない。

箒を、大切なものを守るためとはいえ、誰かの――例えそれが敵だったとしても――命を、大切なものを奪いたくない。

 

奪いたくないし、奪われたくない。

 

(そうだ……これが、俺が欲しかったものだ)

 

モンド・グロッソの第2回大会の時に誘拐され、千冬姉に助けられた時、俺が感じたのは喜びより悲しみだった。

俺が千冬姉から優勝を、未来を奪ったんだ、って。

 

だから守りたかった。誰も、何も奪われない世界が欲しかったんだ。

 

それはとても甘い考えで、非情になれない俺の弱さなんだろう。マドカなら鼻で笑うような絵空事だって、分かってるさ。それでも……

 

 

「それでも俺は、奪いたくないし、奪われたくないんだ。そのための力が、欲しいんだ!」

 

 

『……いいよ』

 

「え?」

 

『その望み、叶えてあげる』

 

そしてまたあの時と同じように、声が途切れ、時間が動き出し、白式の左腕から光が溢れ出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それが、お前の答えなのだな……織斑一夏』

 

『もう、いいの?』

 

『ああ。彼が答えを出したのだ。私がこれ以上出しゃばる必要もないだろう』

 

『そっか』

 

『今後は第三者として、彼の成長を見届けようと思う。だから、ここでバトンタッチだ、"白式"』

 

『うん。お疲れ様、"白騎士"』

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

篠ノ之が自爆に巻き込まれる。それは回避不可能だったはずだ。

 

「箒!」

 

「い、一夏!?」

 

「貴様、何をしたぁぁぁぁぁぁ!!」

 

あの距離では、瞬時加速をしても間に合わないはずなのに。よしんば間に合っても、敵の自爆を止める術は無かったはずなのに。

だが現実は、敵のISだけが海に向かって落ちていったのだ。

そして敵の拘束が解けた瞬間、篠ノ之をお姫様抱っこ。ここで惚気とか、ずいぶんと余裕だなおい?

 

「ごめん箒、みんなを助けにいかなきゃ」

 

「一夏!?」

 

「おい一夏、これは一体どういう――」

 

「説明は後だ!」

 

そう言って、奴は私に篠ノ之を預けて、さっさと他の連中のところに飛んで行ってしまった。

 

「おい篠ノ之」

 

「い、一夏が……一夏が///」

 

ダメだこりゃ。

 

「おいこら!」

 

「ひゃい! ……なんだマドカか」

 

「なんだじゃない。それで、奴は一体何をしたんだ?」

 

「それが、私にも分からんのだ。一夏が敵のISに触れたと思ったら、拘束が解けて……」

 

「そのまま敵は海に落ちた、と」

 

「ああ」

 

う~む。それだけでは全く分からん……。

 

「とりあえず、お前も遊撃に参加だ。あの馬鹿が一人で勝手に飛び出したせいで、ツーマンセルが崩れた」

 

「そ、それなんだが、一夏に助けられてから、紅椿の調子がおかしくてな……」

 

「なんだと?」

 

紅椿に簡易スキャンをかけてみたところ……

 

「なるほど。そういうことか」

 

「ど、どういうことなんだ?」

 

「あれを見てみろ」

 

そう言って私が指さした先には、デュノアと交戦している敵機に、一夏が肉薄しているところだった。

そして白式の左手が敵機に触れた瞬間、そこから紫電が散ったのだ。

 

「な、なんだあれは!?」

 

「おそらく、左手に発生させた電子パルスを叩きこんだのだろう。だから敵機は一時的にとはいえ機能停止して、自爆も出来ずに海に落ちた」

 

「電磁パルス、だと?」

 

「ああ。お前に簡易スキャンをかけた時、EMPの影響を受けた痕跡があった。それで納得したのだ」

 

「そんな力が、一夏に……」

 

「本当に、土壇場でやってくれる」

 

そうして私が呆れている間に、最初に自爆したものを除く、9機のISが海に墜落していったのだった。




ダリルん、ヤムチャしそうになる。抱き着いて自爆とか、完全にサイバイマンだと(書いてる途中で)思いました。

一夏、本当に欲しいものを得る。これが作者が考えた、一夏の守るです。
『"1"も"10"も、全てを失くさない』理想を力技でゴリ押す、ある意味イノシシ時代の一夏に回帰しましたね。
「弱さこそ、『優しさ』という強さの裏付けである」(by ナイト・オブ・ワン)

更識姉妹の活躍? それは次回のギャグパートで。
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