IS学園襲撃事件から数日。一般生徒の被害が全くなかったこともあり、日々の授業は滞りなく行われていた。
そして被害があった生徒も、この日久々の出席を果たしたのだった。
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「あっ、宮下君おはよー!」
「おう」
「負傷したって聞いてたけど、もう大丈夫なの?」
「一応な。ただ骨がくっ付くまで、IS実習は見学になりそうだがな」
久々に教室へ現れた俺に、クラスメイト達が次々に質問をぶつけてくる。
ほぼ女子校の中で居苦しいと思ってたのが、はるか昔に思えてくるな。
「そして、更識さんはいつも通りなわけね」
俺の左腕にしがみつく簪を指さして、クラスメイトが微笑ましい顔になる。
ああ、うん……もうそれでいいや。
と思っていたら
「「「「「「バンザァァァイ!!」」」」」」
「は?」
教室中の生徒が万歳三唱し始めたんだが!? どゆこと!?
そんな中で、エドワース先生が教室に入ってきた。
「みんな、SHR始め……えっと?」
先生も最初は困惑していたが、俺……正確には簪を見て
「も、もう大丈夫なの?」
すごい引き攣った顔で聞いていた。
「先生、それって俺に対しての『大丈夫』ですか? それとも……」
「宮下君もだけど……」
その視線は、間違いなく俺じゃなくて簪に向いていた。
ここで、俺の中に嫌な予想が生まれてきた。
「もしかして、俺が復帰するまでの簪って……」
「(コクン)」
無言で頷かれた。
(回想開始)
『さ、更識さん?』
『りくガシんパイ……はやクリくノトコろニいかナイト……!』
『ひぃぃぃぃっ!』
目からハイライトが消え、視覚出来そうなほど黒いオーラを纏った簪に、4組の生徒達は怯えることしか出来なかった。
陸が医療室にいる間、この流れがずっと続いていたという……。
(回想終了)
「簪ェ……」
「あ、あの時は色々心が不安定だったから……」
今はもう元に戻っているが、俺も医療室のベッドから動けない間はビクビクしてたからな……。
一緒に看病してくれてた刀奈も、今のエドワース先生のように口元が引き攣ってたし。
「そんなわけなんで、しばらくIS実習は見学でお願いします」
「何がそんなわけなのか分からないけど、見学については織斑先生から聞いてるわ。2週間ほどでいいのよね?」
「はい、医者先生からはそう言われてます」
「分かったわ。ほらみんな! 嬉しいのは分かったから、万歳三唱はやめて席に着きなさい!」
「「「「「「はーい」」」」」」
「私、万歳三唱されるくらい怖がられてたの……?」
「みたいだな。正直俺も怖かった」
「――っ!!」
いや、俺が悪かったから。だからそんな、この世の終わりみたいな顔すんなって。
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そうして復帰を果たした俺だったが……
「……それで、これは一体どういうことですかね? 織斑先生、束」
御前の授業が終わり、食堂に行こうとしたところを簪と一緒に拉致られたのだ。
そして俺達を乗せた黒のワンボックスカーは、市街地を抜けて郊外を走っていた。
「あははー! ちょっとお出掛けに誘っただけだよー? あ、かんちゃん、その目はやめて怖い怖い」
「やめろ束、私の方に流れ弾がくるだろう!」
左右向い合せの席の反対側に座っていた犯人2人は、今まさに簪の眼光にガタガタ震えている。なんだこれ。
というかこんなことせんでも、普通に呼び出せばよかっただろ。
「普通に呼んだ場合、宮下が来ない可能性があったからな。こんな手を使わせてもらった」
「いやいや、一体どこに連れていくつもりですか?」
「IS委員会日本支部」
「降りまーす」
「宮下ぁ!?」
後部座席のドアを開けようとしたところを、織斑先生に止められた。いやいや、その手離してくださいって。
IS委員会ってあれでしょ? これまでの事件の対応を後手後手にする原因を作った連中。なんでそんな奴等に会わなきゃならんのさ。
「陸、さすがに走ってる最中に降りるのは無謀」
「そ、そうだよな?」
「だから運転手の山田先生を潰すのが先」
「おぃぃぃぃぃ!?」
「わ、私ですかぁぁぁぁ!?」
あ、運転手山田先生だったのか。そっちは全然見てなかった。
「待って待って! 委員会連中のところに行く理由! それ聞いてからでも遅くないよ!」
慌てて簪を止めようとする束。さすがにここで夢現とか出さないとは思うが……簪、出さないよな?
そして束、もうお前は『振り回す側』でなく『振り回される側』になったみたいだな。簪限定かもしれんけど。
「それで、なんで俺達を委員会のところに?」
一応聞いてみた。どうせくっそつまらん理由なんだろうが。
「今日本支部に、国際IS委員会の委員共が集まってるんだけど……」
「そいつらに、ちょぉぉっと落とし前つけてもらうんだよ♪」
「行く」
それを先に言えよ。おじさん、頑張っちゃうぞ~!!
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――IS委員会日本支部 会議室
IS委員会日本支部から、私山田真耶がお送りします。
「うおりゃぁぁぁ!!」
――ドゴンッ!
「ぐはっ!」
「ボディスラム!」
「おー! りったんやれやれー!」
委員会の偉い人を頭から投げ落とす宮下君。まるでプロレスのように実況する更識さん。ご満悦で観戦する篠ノ之博士。もう滅茶苦茶ですよぉ! というか宮下君、肋骨がくっ付くまで安静じゃなかったんですか!?
織斑先生? 先輩なら宮下君が開幕ラリアットで一番偉い人(委員長)を沈めた時点で現実逃避してますよ!
「貴様ぁ!」
――ドサァッ!
「おごぉっ!」
「ショルダースルー!」
ああ……宮下君に立ち向かおうとした人(おそらく、委員と一緒に来ていた中堅幹部の方だと思います)が宙を舞って、そのまま顔面から床に……。
「これで最後ぉ!」
――ドンッ!
「ひぎゃっ!」
「エフユー!」
最後に残っていた委員が投げ飛ばされて背中から
こんなの絶対おかしいよ!
どうしてこうなったんですか!? 最初は『情報の展開が遅い』とか、委員会の不備を突いて謝罪してもらう予定でしたよね!? 肉体言語で語り合う予定じゃなかったですよね!?
「いやぁ、すっきりしたー!」
「陸、お疲れ様」
宮下君! そんな清々しい顔しないでください! 更識さん! ちょとは宮下君を止め(ギロッ)あ、いえ、何でもないです……。
そして先輩は現実逃避してないで働けぇ!!(錯乱)
「まあまあ。これでこいつらも、今後はまともに働くんじゃないかな?」
「だからって、こんなことする必要なかったじゃないですかぁ……」
「そうかなぁ? 女権団とかいう重しが取れて、浮かれてたっぽいからねぇ。その証拠に、壊滅後の連中の調査もおざなりだったみたいだし」
そうなんです。そこは博士の指摘した通りなんですよね。
女性権利団体が壊滅した後、彼女等が隠し持っていたISコア。これが残党に持ち逃げされたせいで、IS学園は再度襲撃された(少なくとも、アンネイムド単体よりは被害が大きくなった)わけで……。
「大丈夫だって。こいつらの頭の中を弄って、りったんにプロレスされた記憶からこっちに謝罪した記憶に書き換えておくよ。だから安心してよオッパイちゃん」
「誰がオッパイちゃんですか!! いえ、記憶を弄るとか、それもそれでいいんでしょうか……」
「へーきへーき! それとも、記憶そのままにしておく? プロレスされた爺共からの抗議が、学園に大量に届くよ?」
「……記憶消去で」
「まいどー!」
ええ、これは必要な処置なんです。別に、抗議が来た時の対処を私がやることになるからとか、そんな理由ではないですよ?
当初デュノアさんが男装してきた(そして女として入り直してきた)時の事務地獄を思い出したからでもないですよ?
だから、篠ノ之博士が倒れてる人達の頭に針のようなものを刺していても、それは必要なことなんです。ええ。
簪、教室でもヤンデレしていた。これ、再発しないよね……?
オリ主、IS委員会のお偉いさんをボコす。ガンシューティングゲーム『タイムクライシス4』のStage2ボスが元ネタ。突然プロレス実況を始めるオペレータに、初見で「は?」って声が出ましたね、ええ。
まーやん、汚れちまう。それが大人になるってことだよ、うん。(遠い目をしながら)
そろそろ卒業式回を書かないと……。