俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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やっとこさ、卒業式です。


第173話 卒業式

3月第1週の土曜日。IS学園は、いよいよ卒業式を迎えようとしていた。

講堂に1年から3年までの全生徒が集められ、卒業生の父兄はもちろん、各国要人も続々と来賓席に座っていく。

 

そして大勢の父兄と来賓に見守られる中、卒業証書の授与が厳かに進められた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「布仏虚」

 

「はい」

 

虚先輩が呼ばれ、壇上に上がっていく。

 

「――所定の課程を収めたことを、ここに証します」

 

学園長(爺様の奥さん)が卒業証書を読み上げて、その証書を虚先輩が受け取る。この流れは、IS学園だろうと変わらないんだな。

ちなみに、よく名前だけ読まれて『以下省略』となってないのは、虚先輩が今期(成績上)の首席で、最初に証書を受け取る役だからだ。

 

「これでIS学園らしくISの技能順とかだったら、今頃ケイシー先輩が壇上に上がってたかもしれないな」

 

「どうだろう。ケイシー先輩も虚さんと同じように訓練機に乗ったら、どっちが勝つか分からない」

 

「マジか。あの人整備科だったはずだよな?」

 

ISの操縦も整備も一流とか、優秀すぎんだろ布仏家。あ、のほほんも布仏だったか。今のやっぱ無しで。

 

その後も次々に名前が呼ばれ、証書が手渡されていく。

そして最後の証書が渡されると、

 

「続きまして、来賓の挨拶になります」

 

途端に、在校生、卒業生、来賓席がざわつき始める。反応が薄いのは父兄席ぐらいだ。

 

「陸」

 

「ああ。紛れもなく、奴だ」

 

コ○ラっぽいセリフを言ってみたが、おそらく全員、同じ人間を想像しているだろう。

 

 

「やっほい皆の衆、束さんだよ~♪」

 

 

ああ、やっぱり……。

壇上に現れたのは、毎度おなじみトラブルメーカー、篠ノ之束だった。……俺もトラブルメーカーだろうって? うっちゃい!

 

「し、篠ノ之博士!? IS開発者の!?」

 

「しゃ、写真写真!」

 

父兄席もようやっと慌て始めて、カメラのシャッター音が聞こえてきた。(今のご時世デジタルカメラばっかなので、フラッシュを焚いたりはしない)

 

「宮下君は何か聞いてないの?」

 

「うんにゃ。今回は束が何をするのか、俺も知らん」

 

クラスメイト達は、俺や簪が何か聞いてると思ってたんだろうが、あてが外れたな。

さてはて、今度は一体、何を言い出すのやら……。

 

「まずは卒業した面々、おめっとさ~ん!」

 

ざわざわ……!

 

滅茶苦茶適当な祝辞だったが、それを聞いた連中(俺も含む)に動揺が走った。

()()()()()()()()()()()()、だと……!?

 

「そんな、馬鹿な……!?」

 

「姉さんが……あり得ない……」

 

「しっかりしろ箒! せめて妹のお前ぐらいは信じてやれよ!」

 

最近現実逃避が上手くなった織斑先生に実妹である篠ノ之が、妖怪でも見たかのような顔をしていたのが、ここからでも分かる。

そして一夏、お前もそこそこ酷いこと言ってるからな? というか、お前も信じてやれよ。お前の嫁だろ。

 

「けど卒業した君達の大半は、すっごい大変だろうね。聞いた話じゃ、ISとは関係ない進路を選ばざるを得ない子ばっかだって聞いたし」

 

しーん……と、会場が沈黙に包まれる。

束お前、めでたい日になんつーことを……。

 

だが、言ってることは間違いじゃない。

ISコアが(公式で)467個しかない以上、パイロットなんて予備を含め1000人もいれば十分なのだ。

そこに整備や開発などの裏方を含めたとしても、IS学園の卒業生を毎年全員取り込めるほど、パイは大きくない。

そうなると当然『IS学園を出たのに、ISとは関係ない企業や学校に行くしかない』人間が出てくる。

 

「そんなあぶれた面々に朗報で~す!」

 

静まり返った中でも楽しそうに話す束が、壇の後ろに投影ディスプレイを表示させる。

 

「なんだあれ……」

 

「潜水艦……にしては、海上にないのも変だな」

 

父兄席や来賓席から聞こえてくるように、ディスプレイに映っていたのは、潜水艦のような形をしたものが平地に鎮座してる姿だった。

 

「それじゃ、スイッチオ~ン!」

 

「「「「ファッ!?」」」」

 

唐突に束がスイッチ(起爆装置のような握るタイプ)を押すと、映っていた潜水艦モドキが徐々に宙を浮き始めたのだ。

あ、ここまで見たら分かった。

 

「束、とうとうやりやがったか……!」

 

「陸、説明プリーズ」

 

「ありゃ、ISのPICを利用した宇宙船だ」

 

「宇宙船!? しかもPICを利用したって……」

 

何を驚く簪。お前だって、以前似たもん見てるだろ。

 

「あっ! 『アンサラー』!」

 

先に別のクラスメイトが正解に辿り着いたようだ。

 

「おっ、正解。そういうことだ簪」

 

「アンサラーって……ああっ!」

 

どうやら簪も分かったようだな。

以前束が宇宙に上げた、太陽光発電自律制御型無人機『アンサラー』。そのノウハウを使って、あの船を作り上げたんだろう。

ISのPICを利用出来れば、打ち上げ用のロケットもマスドライバーも要らなくなるもんな。

 

そうこう言ってる間に、宇宙船は大気圏を突破していた。いやいや、早ぇって!

 

「これによって、宇宙に安価で物資を送る目途は付いたんだけど、問題があってねぇ」

 

束曰く『宇宙空間に上がった船を駐機する拠点がない』とのこと。要は、低軌道領域に宇宙ステーションっぽいものを作りたいらしい。

 

「地上で作って宇宙に上げるとなると、PIC発生装置が無駄に大きくなっちゃうから、資材は船で上げて、宇宙空間で組み立てようと思ってるんだよねー」

 

「宇宙空間で組み立てるって……それってまさか!」

 

「おっ、気付いたのがちらほらいるね!」

 

声を上げた一人の卒業生に、ビシッを指をさす束。

 

 

「そんなわけで、ラビット・カンパニーでは『ISに乗って宇宙ステーションを組み立てる工員』を募集中でぇす!!」

 

 

「「「「な、なんだってー!?」」」」

 

 

講堂内が大きく揺れた。マジで声だけで揺れた。

そりゃそうだろ。諦めていたIS関連の仕事が、突然降って湧いたんだから。

普通なら『どこからISを調達するんだ?』って話になるんだろうが、言っているのはISを作った張本人である束だ。

推測だが、以前電波ジャックした時(第152話)に言っていた、"時結晶を使わないISコア"を用意したんじゃないだろうか。

 

「応募資格はISに乗った経験があること、待遇面は面接時に応相談ね」

 

「さあ夢を諦めた者共、敗者復活戦だよ! 我はと思うなら、ラビット・カンパニーに履歴書を送れぇい!!」

 

「「「うおぉぉぉぉぉっ!!」」」

 

束が宣言すると同時に、卒業生の3割近くが卒業式そっちのけで講堂を飛び出していった。おそらくIS関連の進路に付けなくて、泣く泣く別進路にした人達なんだろう。

 

「はい、これで束さんの挨拶終わりー! 最後にもっかい、卒業おめでとねー!」

 

散々荒らすだけ荒らして、束は悠々と壇を降りて行った。

その後、在校生送辞と卒業生答辞があったものの、誰も頭に入っていなかっただろう。それが分かってて、在校生(刀奈)卒業生(虚先輩)も当初の文から結構端折って読んでたし。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

卒業式の後、卒業パーティが校舎食堂で行われ、卒業生は立食式の会場で3年間の思い出を語り合っていた。その中には先ほど猛ダッシュで寮に戻り、履歴書を書いて郵送した生徒達もいた。

 

「いくら必死だったからって、式を飛び出すとかどうなんだよ?」

 

「ダリルには分からないわよ! こちとら将来がかかってるんだから!」

 

「そうよ! せっかくIS学園を卒業したのに、普通の企業に就職とか悔しいじゃない!」

 

「いやまあ、そうだろうが……いや、悪かったって」

 

アメリカの代表候補生って肩書がある、つまり進路が自動的に決まってるオレが、これ以上言うのは藪蛇か。

 

「篠ノ之博士は本当に……段取りが台無しです」

 

「お疲れさん、学年主席」

 

「やめてくださいその呼び方」

 

ジュースの入ったコップ片手にこめかみを揉んでいるのは、オレの呼び方が気に入らなかったからか、それとも卒業式のあれが原因か。

 

「いいじゃねぇか。もう生徒会は抜けてんだし、後始末は後輩共に任せておけば」

 

「そうしたいのは山々ですが、残っているのがお嬢様と本音だけですから……」

 

「……うん、すまん」

 

確かに目の前のキッチリウーマンからしたら、あのマイペースの二人に任せるのは不安で仕方ないんだろう。オレがその立場でも不安に感じる。

 

「まあ今日ぐらい、悩み事は頭の片隅に追いやっておけよ。それに……」

 

そこで言葉を切って、チョイチョイと近づくように布仏に指示する。

 

「?」

 

 

「どうせこの後、こっそり学園を抜け出して逢引すんだろ?」

 

 

「◎△$♪×¥●&%#?!」

 

 

おーおー、いい反応。

 

「ど、どどどうして!?」

 

「どうして知ってるかって? 宮下がお前の男から相談を受けてたのを、こっそり盗み聞きした」

 

「宮下くぅん!?」

 

正確には『弄るネタを提供してやるから、ちょっと協力しろ』と、わざと盗み聞きさせられたが正しいな。

 

「ほら、そろそろ出て行かないと、約束の時間に間に合わねぇぞ。いなくなったお前のこと聞かれたら、適当に返しておくからよ」

 

「……ありがとう」

 

最初は怪しんだ目でこっちを見ていた布仏だったが、最後にはボソッと感謝のセリフを言うと、頬を赤らめながら会場を出て行った。

 

「あ~……オレも後でフォルテのところ行こ」

 

布仏を見てたら、オレも人肌が恋しくなってきちまったや。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

生徒会主催の卒業パーティ(なぜか役員でない俺と簪も手伝わされた)も終わり、俺達3人は寮のベランダで空を見上げていた。

 

「終わったわねぇ……」

 

「ああ、終わったな」

 

「もう少し本音が働いてくれたら……」

 

「それを言ったらおしまいよ、簪ちゃん」

 

悪いが刀奈、それは俺も思った。来年度以降、特に刀奈が抜けた後、生徒会は大丈夫なんだろうか?

 

「この1年、あっという間だった」

 

「だな。色々ありすぎたんだよ」

 

「ええ、去年とは比べものにならないくらい濃い1年だったわ」

 

男性操縦者(織斑一夏)の入学、無人機乱入、VTS、銀の福音、亡国機業、学園ハッキング、エクスカリバー……

これだけのものが1年――正確には2学期まで――の間に起こったんだから、そりゃ濃いだろう。

 

「私も、あと1年で卒業なのよねぇ……もっと簪ちゃんや陸君との学生ライフを一緒したかったわ」

 

「なんだよ。まるで卒業後は縁が切れるみたいな言い方して」

 

「お姉ちゃん、卒業したら陸と別れるの?」

 

「別れません!」

 

「いや、俺も刀奈を捨てる気はねぇからな?」

 

だからお前ら、左右から俺の腕を引っ張るのをやめろ! マジで大岡裁きみたいになってっから!

 

「安心しろ。週末の外出日ぐらいは簪と一緒にそっちに行くからよ」

 

「だからお姉ちゃんは、しっかり当主のお仕事をお願い」

 

「うん……って、なんか私も虚と一緒に卒業するみたいな空気になってない!? こうなったらあと1年、簪ちゃんより陸君とラブラブしちゃうんだから!!」

 

「お姉ちゃん……かクゴハできテルの?

 

「だから怖ぇから簪ぃ!!」

 

姉妹の間で揉みくちゃにされる俺。普段俺のことトラブルメーカーみたいに言ってるが、お前らもつくづくじゃねぇか!

これは来年も、色々苦労することになるなぁ……。

 

(でもま……)

 

そんな未来を、楽しみに思ってる俺もいるわけで……

 

 

 

 

 

 

――そして、月日は流れる――

 

 

 

 

 

 

 




卒業式で、束ブッパ。実際IS学園を卒業して、IS関連の進路に付けない人間って多いと思うんですよね。ISが世に出てから10年やそこらしか経ってないんで、パイロットにしろ技術者にしろ、引退する年齢には全然達してないでしょうし。

虚、弾に向かって一直線。二人の行く末については……書いてもおまけ程度にしたいです。(話を膨らませすぎて、書くのに苦労しそう)

オリ主達、来年度について語る。いつぞやも書いた気がしますが、本音が会長の生徒会って大丈夫なんでしょうかね……?(まさか、強権使って一夏を拉致る?)


次回、キング・クリムゾンが発動します。
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