俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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第17話 クラス対抗戦、異形の乱入者

クラス対抗戦当日。

組み合わせは一夏と凰。専用機持ち同士の戦いとあって、アリーナの観客席は満員状態。聞いた話だと、会場入りできなかった人達用に、リアルタイムモニターが設置されているらしい。

 

そんな中、俺は4組のクラスメイト達と一緒に観客席に座っていた。

 

「どっちが勝つかなぁ」

 

「私織斑君~」

 

「凰さんって中国の代表候補生なんでしょ? 私は凰さんだと思うな」

 

「宮下君はどっちが勝つと思う?」

 

「俺か? 俺も凰が勝つと思うな」

 

「やっぱり~?」

 

「え~」

 

一夏には悪いが、よほど機体性能に差がない限り、乗ってる時間が多いであろう凰の方が有利なんだよなぁ。

 

「更識さんも同じ予想?」

 

「うん。本音に聞いた話だと、織斑君の機体には遠距離武装がないって」

 

「「「「ええ!?」」」」

 

「は? 遠距離武装が無い?」

 

隣に座ってる簪からもたらされた情報に、俺を含め、周りの人間全員が唖然とした。

 

「『雪片弐型』って近接ブレードしかないみたい」

 

「で、でも、後付武装で追加してたり……」

 

「ううん。なんでも拡張領域がそのブレードに占有されてて、他に何も積めないらしい」

 

「マジか……」

 

強制ブレード縛りとかないわー。いや、あれこれ考えるのが苦手そうな一夏にはちょうどいいのか? ……別にディスったわけじゃないぞ。

 

「それにしてもブレード1本で拡張領域全部持ってくとか、よっぽどすごい武装なんだろうな」

 

「どうなんだろう。そこまでは本音から詳しく聞いてなかった」

 

「まぁそれも、これから見られるだろ」

 

そう言ってアリーナの方に目を向けると、ちょうど一夏と凰が入場したところだった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

俺の視線の先には、IS『甲龍』を纏った鈴が、試合開始の時を待っていた。

 

『それでは両者、既定の位置まで移動してください』

 

アナウンスに従って、俺と鈴は空中で向かい合う。その距離5メートル。そこで、鈴からプライベート・チャネルが入る。

 

「一夏、今謝るなら少し痛めつけるぐらいで許してあげるわよ」

 

「そんなのいらねぇよ、全力で来い。ただ……」

 

「ただ、何よ?」

 

「"約束"については、あとで絶対謝る」

 

「は?」

 

「だから今は真剣勝負、お互い手を抜くのは無しにしようぜ」

 

「……そう」

 

鈴は一瞬キョトンとしていたが、

 

「いいわ。アンタが謝るっていうなら、今は勝負にだけ集中してあげる」

 

そう言って鈴が笑うと同時に

 

 

――試合開始のブザーが鳴った

 

 

その瞬間、俺と鈴は動いた。

 

――ガキィィン!

 

「くぅ!」

 

俺が展開した雪片弐型が、鈴が振り回す青龍刀――しかも二刀流――に弾かれる。

 

「ふうん。初撃を防ぐなんて、なかなかやるじゃない。それなら」

 

――ガキィン! ガキィン! ガキィン!

 

二刀流から繰り出される連撃に対して、俺の雪片弐型は1本だけ。今はなんとか捌いてるが、

 

(まずい! このままじゃ消耗戦になるだけだ! 一旦距離を――)

 

「甘いっ!」

 

――ドォン!!

 

「なっ!?」

 

な、なんだ……! 今、目に見えない何かに『殴られた』ような衝撃が――

一瞬飛びそうになった意識を慌てて取り戻すと、鈴の方を凝視した。すると

 

「肩部装甲が……」

 

肩の横に浮いている棘付き装甲(スパイク・アーマー)がいつの間にかスライドしていて、中心に球体が見えていた。まさか、あそこから?

 

「そこに気付いたのは褒めてあげる。でも、今のはジャブだから――」

 

鈴が不敵な笑み浮かべた瞬間

 

――ドォン!!

 

「ぐはっ!」

 

先ほどとは段違いの衝撃に、危うく地表に叩き付けられそうになった。これは、かなりまずい。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「あれは、『衝撃砲』ですわね……」

 

1組側の観客席で、セシリアが呟いた。

 

「セシリア、その衝撃砲とは」

 

「空間に圧力をかけて砲身を生成、その時生じた衝撃を砲弾として撃ち出す、第3世代型兵器ですわ」

 

「つまり、不可視の砲撃ということか……」

 

「ええ。一夏さん……」

 

心配そうなセシリアの視線を追うように、箒もステージの方を見た。

じりじりとシールドを削られる、一夏の姿を。

 

(一夏……)

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ……はぁ……」

 

「よく避けるじゃない。衝撃砲『龍咆』は、砲身も砲弾も見えないのが特徴なのに」

 

(ハイパーセンサーに空気の流れを探らせてるが、それじゃ間に合わない。どこかで、先手を打たないと……)

 

回避行動を取りながらそう考えたところで、俺は先週の訓練を思い出した。

 

 

 

「バリアー無効化?」

 

「そうだ」

 

聞き返すと、千冬姉は小さく頷いた。

 

クラス代表決定戦の後、セシリア戦で敗北になった理由を箒とあれこれ考えていたが、今ひとつ結論が出てこない状況だった。それに業を煮やした千冬姉がやってきて説明、今に至るというわけである。

 

「相手のバリアー残量に関係なく、本体に直接ダメージを与えることができる。さて、そうなった場合はどうなる? 篠ノ之」

 

「は、はいっ。ISの『絶対防御』が発動して、大幅にシールドエネルギーが消費されます」

 

「その通り。私がかつて世界一の座にいたのも、この雪片の特殊能力によるところが大きい」

 

「つまり、あの一撃が当たってれば俺が勝ってた?」

 

「当たればな。そもそも、なぜ負けたと思う?」

 

そうだ。そもそもそれが話の発端だった。

 

「それは、シールドエネルギーが0になったから……」

 

そこまで言って、俺はふと気付いた。まさか――

 

「雪片弐型の特殊能力の、せい?」

 

「ほう、お前にしては察しがいいな。そうだ、あの特殊攻撃を行うためのエネルギーとして、白式のシールドエネルギーが使われている」

 

「な、なんて諸刃の剣なんだ……」

 

箒が唖然とした顔で呟くが、俺も唖然とした。

しかも、白式にはそんな諸刃の剣以外、武装がまったく無い。これでどうしろと。

 

「そんな顔をするな。本来拡張領域用の空きが全部埋まるほど、雪片弐型に処理を回してるんだ。その分威力は全ISでもトップクラスだろうさ」

 

「それは……そうか……」

 

言ってしまえば、一撃必殺の攻撃を持ってるんだ。なら、それを当てる努力をした方がいいのか。

 

「一つのことを極める方が、お前には向いている。そもそも仮に白式に銃器が積めたとして、反動制御や弾道予測からの立ち回り……出来るのか?」

 

「……ごめんなさい」

 

雪片弐型しか武装のない白式に対して、千冬姉に『あれこれ考えずにやれることをやれ』という遠回しな言葉をもらってから、訓練は近接戦闘と基礎移動技能に費やした。

あとは気持ちの問題。今までやってきたことを信じて、やり切るだけだ。

 

 

 

そして衝撃砲をギリギリで躱した、このタイミングで――

 

「うおぉぉぉっ!」

 

「なっ!」

 

この1週間で身につけた技能『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』による奇襲。そこに雪片弐型の『バリアー無効化』を同時に発動させる。

おそらく2度は通じない奇襲と、自分のSEを消費することで発動する諸刃の剣。だけど、今の俺と鈴の実力差を埋めるには、これしかない。

 

「いけぇぇぇぇっ!」

 

バリアー無効化の刃が、一瞬動きの鈍った鈴に届きそうになった瞬間、

 

 

――ズドォォォォンッ!!

 

 

突然大きな衝撃がアリーナ全体に走った。

 

「な、なんだ……?」

 

周りを見渡すと、ステージ中央からもくもくと土煙が立ち上っている。どうやらさっきの衝撃は、アリーナの遮断シールドを『なにか』が貫通した結果のようだ。

 

「一夏、 試合は中止よ! すぐビットに戻って!」

 

鈴からのプライベート・チャネル?

 

「鈴? 一体――」

 

どういうことだ、という前に、ハイパーセンサーが緊急通告をしてきた。

 

――ステージ中央に熱源。正体不明のISと断定

 

――警告! 正体不明のIS、射撃体勢に移行

 

「あぶねぇ!」

 

反射的に急加速した直後、さっきまでいた空間が熱線で焼かれた。

 

「ビーム兵器かよ……しかもセシリアのより出力が上だ」

 

「一夏、平気!?」

 

鈴が、先ほどビームを撃ってきた"土煙"を迂回するように、こちらにやってきた。

 

「ああ、なんとかな。だが……」

 

その土煙が徐々に晴れていき、そこから姿を現したのは……

 

「なんなんだ、こいつ……」

 

全身装甲(フルスキン)、ですって……?」

 

 

肩と頭が一体化したような、首のないフォルム。つま先よりも下まで伸びた、異様に長く、そしてビーム砲口を左右4門もった手。

俺と鈴の目の前には、そんな異形な姿のISが中空に鎮座していた。

 




あれ? 一夏が主人公してる……?
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