俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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キング・クリムゾン発動!
前話から1年半ほど経過しております。

そして今話を含めて、あと2,3話ぐらいで本作完結となります。
もう少しだけ、お付き合いいただければと思います。


ENDING
第174話 モンド・グロッソ


ロシア連邦クラスノダール地方、ソチ。

黒海に面するロシア随一の保養地として有名なこの都市で、第3回モンド・グロッソの開催された。

 

ドイツで行われた第2回大会から間が開いたため、各国の代表の多くが代替わりを果たしていた。

無論、イタリアのアリーシャ・ジョセスターフを始めとする、前大会から続投した選手もいた。

 

そして多くの人達が注目する本大会の決勝は、大方の下馬評にかなり近い対戦カードとなった。

 

ーーーーーーーーー

 

「とうとう、この時が来たわね」

 

「うん」

 

モンド・グロッソ本大会決勝戦の舞台に、私とお姉ちゃんが対峙している。

打鉄弐式を完成させて、初めて決闘をしたあの時と同じように――

 

「でも大丈夫なの? 私が学園を卒業してからも、IS委員会から結構横やりが入ってたんでしょ?」

 

「うん。その度に、陸が荒れてた」

 

「あ~……やっぱり」

 

当初はGNドライブを含む永久機関だけが禁止になってたレギュレーションだったけど、陸(時々篠ノ之博士)が何か作る度に、禁止項目が増えていった。

ざっと挙げられるものだけでも

 

 

・永久機関(GNドライブを含む)

・GNコンデンサ

・GNファング

・拡散レーザー砲

・サイクロプス・ボム

・榴散弾(雷光)

・エナジーウィング  new

・GNキャノン     new

・ケイオス爆雷    new

 

 

昔織斑先生が、タッグマッチで禁止にしようとしたものばっかり……むしろ増えた?

そして禁止項目が増える度に、IS委員会日本支部の偉い人がボディスラムの餌食になっていた。それでも支部長の椅子にしがみ付くのは、正直凄いと思った。

 

「だから、メメントモリ以外はほぼ純粋に、打鉄弐式と私の能力だけ。そういう意味では、お姉ちゃんと同条件」

 

「む~、私のミステリアス・レイディだって、()()()()結構強化されるのよ?」

 

「知ってる。むしろ卒業してから何も変わってなかったら、逆にビックリ」

 

「言ったな~!」

 

そう。虚さんが卒業し、お姉ちゃんも卒業して半年。それだけの時間を経て、私達は今ここにいるんだ。

 

「さて、漫談もこれくらいにしましょうか」

 

「そうだね。そろそろ試合が始まるから」

 

かつてのように私が夢現を展開すると、お姉ちゃんも蒼流旋を展開、ナノマシンを操って水を纏う。そしてまた、かつてのように

 

 

――試合開始のブザーが鳴った。

 

 

――ガキィィンッ!

 

「っ!」

 

「くぅ!」

 

夢現と蒼流旋が激しくぶつかり合い、甲高い音がアリーナに響き渡る。

私も予想外だったけど、お姉ちゃんも初撃が接近戦だと思ったなかったみたい。

 

「簪ちゃん、春雷のこと忘れてなぁい?」

 

「お姉ちゃんこそ、ガトリングが4門も付いてるのに、使わないのは勿体ないよ?」

 

互いに軽口もぶつけ合うと、早々に距離を取る。なら次は――

 

「山嵐、全弾発射!」

 

――ドドドドドッ!

 

「っ! 清き激情(クリア・パッション)!」

 

――ドゴォォォォンッ!

 

ミステリアス・レイディを全方位取り囲んだマイクロミサイルが、水蒸気爆発に巻き込まれて誘爆していく。

 

「さあ、次はこっちから行くわよ!」

 

そう啖呵を切ると、ステリアス・レイディのアクア・クリスタルの色が赤に変わっていく。

 

「麗しきクリースナヤ、接続完了」

 

ミステリアス・レイディの高出力モード『麗しきクリースナヤ』、これの恐ろしさは、私自身が昔味わっている。

このモードになったら、本来チャージが必要なミストルテインの槍が――!

 

 

「いっくわよぉ! ミストルテインの槍!」

 

 

予想通り、アクア・クリスタルから生み出される大量の水を纏った槍が、こちらに向かってくる。けど!

 

「こっちも切り札を切る!」

 

私の声に反応するかのように、打鉄弐式の装甲が深紅に染まっていく。そして夢現から切り替わるように展開されたのは

 

「ベルゼルガァァァァァァァァ!!」

 

巨大なブレードライフル。その刃を、蒼流旋にぶつけるかのように薙ぎ払う!

そしてその二つがぶつかり合った瞬間

 

爆音が聞える間もなく、私とお姉ちゃんはアリーナの両端まで吹き飛ばされていた。

 

「ぐ、ぐぅぅ……」

 

「いったぁ……」

 

バイザーで確認すれば、ミステリアス・レイディの残SEは10%。対する打鉄弐式は20%近くあるけど、今のでベルゼルガーのブレード部分が折れた。

前は蒼流旋を破壊出来たのに……お姉ちゃんの言う、強化されたっていうのは本当だったんだ。

 

「一撃でSE満タンから1割って、どんだけよ……。でも、これでそっちの切り札はなくなったわね」

 

装甲がところどころ欠けながらも、再度蒼流旋を構えるお姉ちゃん。おそらく、最後の力でミストルテインの槍を放つ気なんだろう。

でも!

 

――ドンッ!

 

「っ!?」

 

瞬時加速で、槍を構えるお姉ちゃんに肉薄していく。その最中にも、折れたベルゼルガーを格納して――

 

「思い切りがいいわね。でもメメントモリを使うには距離が足りない! そして夢現じゃ、ミストルテインの槍は止められないわよ!」

 

「残念」

 

「え?」

 

ニヤッと、まるで陸みたいに笑う私を見て、お姉ちゃんの表情が固まる。

そう、メメントモリを使う気はない。夢現を展開しようとしているわけでもない。

 

(シャーリィ、準備はいい?)

 

『いいよぉ、派手にやっちゃおっかぁ!』

 

「切り札2枚目!」

 

「2枚目!?」

 

私が展開したのは――

 

「チェ、チェーンソー!?」

 

初めてベルゼルガーを見た時のように、お姉ちゃんの顔が驚愕に変わる。

 

ベルゼルガーがブレードライフルであるなら、これはチェーンソーライフルと言うべきもの。

そして、一つ一つが夢現と同じように超振動する刃が付いたチェーンが、唸りを上げて高速回転を始める。

 

「行こう――」

 

 

「テスタ・ロッサ!!」

 

 

下から振り上げるような軌跡を描いたテスタ・ロッサが、蒼流旋が纏った水とぶつかる。けど、すぐに

 

――ゾンッ!

 

「そん、な!」

 

蒼流旋は纏っていた水ごと斜めに切り裂かれ、それによって回路に異常を来したのか、先ほどまで赤かったミステリアス・レイディが元の青色に戻っていった。

 

「けど、まだよ!」

 

上半分がなくなった蒼流旋を捨て、お姉ちゃんは別の武装を呼び出す。

 

「ラスティー・ネイル!」

 

出てきたのは、蛇腹剣。在学中、見たことない武装だ。

その剣も水を纏い始める。槍と同じように、水の力で切断力を上げられるんだろう。

 

「正真正銘、これが最後の勝負よ、簪ちゃん!」

 

「うん!」

 

お互い、展開した武装を構える。

実際私には春雷がまだ残ってるけど、自分で詰めたこの距離で悠長に撃ってる余裕はないと思う。だから、両手で構えたテスタ・ロッサに掛ける。

 

 

 

「「いざ!!」」

 

 

 

そして――

 

 

ーーーーーーーーー

 

『これより、モンド・グロッソ第3回大会、表彰式を行います』

 

アリーナの観客席で俺とのほほんは、選手が表彰台に上がっていく姿を眺めていた。

 

「すごかったね~」

 

「ああ。選手達からしてみれば、これまでの集大成みたいなもんだからな」

 

言ってみれば、ISのオリンピックみたいなもんだからな。そりゃ選手の気合も段違いだろうし、試合だって白熱するだろうよ。

 

「ところで、りったんはここにいてよかったの~?」

 

「いいんだよ。一応弐式のエンジニアって肩書だが、整備は昨日のうちに終わってたし、今日の試合は決勝戦だけだったしな」

 

あとはラビット・カンパニーの()()エンジニアが、ピットでスタンバってればいい。俺の出番はないわけだ。

 

「不思議な話だよね~。りったんが正規職員じゃないなんて~」

 

「下手に正規職員になると自由が少なくてな。わざと非常勤にしてあるんだ。束も似たようなもんだな」

 

「知ってる~。それで『あの二人とは、いつコンタクトを取れるんだね?』って各国からチクチク突かれて、スコール先生……社長が涙してるって話だよ~」

 

「それは仕方ない」

 

『俺や束を自由にさせる』か『事務方の増員』か、選んだのはスコールだからな。……例えそれが、泣く泣く選んだものだったとしても。

 

「あ、総合部門の表彰だよ~」

 

「おっ、マジか」

 

スコールの涙より簪達の表彰の方が優先され、俺達の視線は再びアリーナ中央に向かった。

 

『モンド・グロッソ第3回大会、総合優勝。日本代表、更識簪』

 

「あ~! かんちゃんだよ~!」

 

「見えてるって」

 

のほほんが興奮しながら指さす先、表彰台の真ん中……つまり1位の場所――に簪が立つと、大会委員らしき人からメダルを首にかけられた。

その隣、2位の位置には、刀奈が銀メダルを下げた姿で立っていた。

 

「ロシアは第2回大会であまりいい成績を残せなかったから、今回準優勝で何とか面目を保てた感じかな~」

 

「国の面子ってやつか」

 

「そうだね~」

 

一夏じゃねぇが、面倒な話だ。

そんなことをのほほんと話していたら、表彰台の方は優勝者インタビューに入っていたようだ。

 

『更識選手、今の気持ちは?』

 

『すごい達成感で満たされてます』

 

『その気持ちを、まず誰に伝えたいですか?』

 

『大切な人です』

 

――ざわざわ……!

 

観客席がざわめき立つ。

すると、簪はインタビュアーからマイクをするっと奪い取って……っておい!

 

『私はかつて、ある人と契約をしました』

 

契約……なーんか記憶にある気が……

 

『『俺と契約して、モンド・グロッソ優勝者(ブリュンヒルデ)になってよ!』と』

 

「うぉぉい!」

 

言ってない! 俺それ言ってない! それ刀奈が変声機使って俺の声マネしてまでギャグネタ重ねた結果ぁ!

 

『そして契約通り、彼は私をモンド・グロッソを導いてくれました』

 

『今回、これで契約は終了になるのですが……私は今ここで、新しい契約を結ぼうと思っています』

 

「か、かんちゃん……?」

 

のほほんの頬に、たらーと冷や汗が流れる。ちなみに俺も流れてる。

 

『陸!』

 

「うぉ!?」

 

突然呼ばれて、思わず変な返事をしちまった俺に、

 

『ちょっと、それは私も一緒に言うわよ!』

 

隣にいた刀奈も加わり、二人はマイクがハウリングするのもお構いなしに

 

 

 

 

 

 

『私達と契約(結婚)して、更識(婿養子)になってよ!』

 

 

 

 

 

 

――この二人の発言は、中継を見ていた全世界が立会人となった契約として、後日ギネス記録に載ったという。

契約は成立したのかって? ……つい先月、俺は『宮下』じゃなくなったんだよ。わざわざ聞くなよ、馬鹿野郎。




ある意味、これが最終回と言えなくもない。


第3回モンド・グロッソ開催! そして因縁の対決へ。もうね、ちーちゃんとIS委員会の考えてることがほぼ一緒という。主催側だから逆らえず、それが故のボディスラムである。

最後の最後に新武装。せっかくシャーリィも登場したし、テスタ・ロッサ出したいなぁと思っていたら、本当に最後の方になっちまったぜい。

新しい契約。これがやりたくて、本作のタイトルが決まったまである。


次回は、一夏とハーレム達のその後とか書こうと思ってます。
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