俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

2 / 182
原作開始~クラス代表決定戦
第1話 ファーストコンタクト


――IS学園、1年4組の教室

 

さて、何だかんだでIS学園に入学した俺だが、居心地は正直言って悪いの一言。

元々ISが女しか乗れなかったせいだろうが、このIS学園、ほぼ女子校と言っていい場所だ。

そんなところに、たった2人だけ野郎が、しかも別々の教室に放り込まれたわけだ。つまり、分かるな?

 

「あれが2人目の男性操縦者なんだってー!」

 

「1組の織斑君はハンサム系だったけど」

 

「こっちのワイルド系もいいかも~!」

 

俺は上野のパンダかよ

 

教室内の女子生徒の視線が、ほぼ全て俺に集中しているわけだ。ストレスで禿げそう……。

 

ーーーーーーーーー

 

「SHRを始めますよー」

 

教室の前ドアから大人の女(たぶんあれが担任なんだろう)が入ってくると、今まで騒がしかった教室が静まる。

 

「まずは皆さん、入学おめでとう。私が1年4組の担任になったエドワース・フランシィよ。よろしくね」

 

「「「「よろしくお願いしまーす」」」」

 

「それじゃあさっそくなんだけど、皆に自己紹介をしてもらおうかしら」

 

そう先生が言うと、名前順に自己紹介が始まった。

自己紹介ねぇ……名前だけっていうのもダメだろうし、どうしたもんか……。

と考えている間に、俺の番が回ってきたようだ。早ぇな、俺の苗字『宮下』だから、だいぶ先だと思ったぞ。

 

「あー……先月の全国検査に引っかかってIS学園に来ました、宮下陸です。趣味も特技も機械弄りです。これからよろしくお願いします」

 

――パチパチパチ

 

どうやら、無難に終わらせられたようだ。良かった良かった。

『もうちょっと何かないの?』みたいなことを言われても困るからな。

 

「ちなみに宮下君は、ISに早く乗ってみたかったりする?」

 

いや先生、貴方が率先して話を振らんでくださいよ。

周りを見渡すと、他の生徒達もなーんか期待した目をしてるし……ったく……

 

「ないですね。俺はISに乗るより、研究・開発する方が興味あります。言ったじゃないですか、『趣味も特技も機械弄り』だって」

 

「あら、そういえばそうね。ということは、宮下君はメカニック志望かしら」

 

「そうなるでしょうね」

 

ここまで答えればいいでしょう? という感じで、俺は椅子に座った。

 

ーーーーーーーーー

 

で、入学日なのに、なぜかIS学園は授業がある。マジかよ。

そして授業内容については……

 

「――それでは、ここまでで質問がある人ー」

 

まあ、誰も手を挙げたりしないよな。

ここにいる面子は全員、超高倍率の入学試験を潜り抜けてきたわけだから、これくらいの内容わけないか。()()()()試験を受けた奴なら。

 

「宮下君は?」

 

「ええっと……ここのアラスカ条約の特記事項についてが――」

 

「あぁここね。そこは次のページの注釈に――」

 

「これですか。……ああなるほど、理解しました」

 

という俺と先生のやり取りを、周りのクラスメイトが生暖かい目で見てくるのが辛い……。

くそぅ……俺だってISの構造云々についてはそらで言えるぐらい頭に入ってるんだ。ただ、興味のない法律関係の知識を入れる脳内ストレージが小さいだけで。

前任者(ショウ)はIS開発者とマンツーマンで勉強してスラスラだったんだろ? チートだろチート。

 

「仕方ないわよ。宮下君のIS学園入学が決定したの、1週間前だったんだし」

 

そんな俺を見かねたのか、先生が援護射撃を入れてくれた。

 

「そ、そうなんですか?」

 

「それじゃあ宮下君、ISの知識がないのも仕方ないのかぁ」

 

「でもそれにしては、他の質問をされてませんが……」

 

クラスメイト達がひそひそ話を始めた。

 

「そういえば宮下君。IS学園入学が決まった時、参考書が渡されてたはずだけど」

 

「ああ、これですよね」

 

そう言って俺は、電話帳か広辞苑かと言いたくなる分厚さの参考書を掲げた。

 

「俺の頭じゃ、1週間で半分読むのが精一杯でした」

 

これを渡してきた人(鋭いツリ目で長い黒髪の、おそらくIS学園の教師)は『1週間で覚えろ。出来なければ死ね』と言わんばかりだったんだが、どうやっても無理だった。

 

「あら、半分読めたなら問題ないわね」

 

「え? そうなんですか?」

 

「ええ。だってその参考書、1学年を通して使うものだもの。それを半分読んだってことは、"半年分の予習が出来てる"ってことよ」

 

「……ああ、なるほど」

 

確かに、そう言われてみればそうなるのか。なんだよ、脅され損じゃねぇか。

 

「ただし、法関係の部分はこれからちゃんと覚えていきましょうね」

 

「うぐぅ……」

 

きっちり釘を刺された……周りからもクスクス笑いが聞こえてくるし、辛い……。

 

ーーーーーーーーー

 

昼飯を挟んで午後の授業も終わり、放課後。

 

いや、このIS学園はすげぇな。学校の学食っていうから、定食が2,3種類ぐらいから選ぶ感じかと思ったら、和洋中なんでもござれのレストランじゃねぇか。

久々に俺、刺身定食を食っちまったよ。(ちなみに金は、日本政府から『男性操縦者のデータ取り』という名目でいくらかもらえてる)

 

それはさておき、俺は放課後、行ってみたかった場所に足を向けていた。

 

――IS学園、整備室

 

そう、整備室! 訓練用のIS(入学前に乗せられた打鉄と、もう1つは確かラファールだったか)がずらりと並んだこの光景……これだけで白米いけるな。

 

「ん?」

 

そんな妄想に浸ってると、部屋の奥に整備中なのか、ISが1機鎮座していた。

 

「これは……打鉄、か?」

 

ぱっと見は打鉄だが、スラスターの形とか装甲の厚みとかが微妙に違う。バリエーション機か?

 

「……何してるの?」

 

「あ?」

 

振り向くと、眼鏡をかけた青髪の見知らぬ女が立っていた。 いや、見知らぬじゃねぇな。確か……

 

「更識簪、だったか?」

 

そうだそうだ、思い出した。同じ4組の更識簪だ。『日本の代表候補生』とかいう肩書が珍しくて、記憶の片隅に残ってたんだな。

 

「苗字で呼ぶのはやめて。嫌だから……」

 

「そうか。それじゃあ簪って呼ばせてもらう。っと、まだ俺の方が名乗ってなかった――」

 

「知ってる。宮下陸」

 

「……クラスメイトだし、お互い知ってて当然か」

 

「(コクリ)」

 

「まぁ、宮下でも陸でも、好きな方で呼んでくれや」

 

「じゃあ、陸で……」

 

「おう」

 

会話は一旦それで終わり、俺の視線はまた件のISに向いていた。

 

「これ、お前のISなのか?」

 

「そう、『打鉄弐式』。打鉄の後継機で、防御重視の打鉄に対して、機動性に特化してる……予定」

 

「予定?」

 

俺が聞き返すと、簪は視線を逸らして

 

「これはまだ、未完成だから……」

 

「未完成……」

 

つまり、この打鉄弐式は整備中じゃなく、未完成品ってことなのか……。

……ちょっと待て。簪は日本の代表候補生で、俺が『お前のISなのか?』という問いに頷いている。つまり、これは簪の、日本代表候補生の専用機ってことだ。

 

 

ならなんで、()()()()()()()()()()

 

 

普通こういうのは、どっかの機関や企業が作って、完品を渡すもんじゃねぇのか?

それなのに、未完成品がここにある。まさかとは思うが……

 

「もしかして、この打鉄弐式、簪が作ってるのか?」

 

「(コクリ)」

 

 

「はぁ!?」

 

 

「(ビクンッ!)」

 

「ありえねぇ! 日本政府か委託された企業か知らんけど、馬鹿なのか!?」

 

F1カーの組み立てをドライバーにさせるようなもんだぞ、正気の沙汰じゃねぇだろ!

 

「あの……未完成品を引き取ったのは私で……」

 

「は? なんで未完成品を引き取ったんだ?」

 

「それは……」

 

簪はそれだけ口にすると、また視線を逸らしてダンマリになった。

う~ん、モヤモヤするが……

 

「分かった、これ以上は聞かねぇ」

 

「うん……」

 

知り合って間もない俺が、あまりずかずかと簪の事情に深入りするのも良くないな。

誰しも、言いたくないことの一つや二つはあるだろうし、これ以上はやめておこう。

 

「それで、完成したら打鉄弍式はどんな機体になるんだ?」

 

暗くなった雰囲気を逸らすのと、元々興味があった質問をしてみたが、それが功を奏したのか

 

「う、うん。 この打鉄弍式には、連射型荷電粒子砲の『春雷』と6機×8門のミサイルポッド『山嵐』を載せる予定で……」

 

と、先ほどよりも流暢に話し始め、俺もそれを聞きつつ、時々質問や指摘を交え、気付けば1時間は話通しになっていた。

 

 

 

「話し込んじゃった……」

 

「ああ、これは俺も悪かったな。ついつい白熱しちまった」

 

おそらく、もうすぐ整備室も閉まる時間なのだろう。簪は諦めた顔をしながら工具を片付け始めた。

 

「俺も寮に行ったら、荷解きしないとなぁ……」

 

「陸、寮に入ったの……?」

 

「おう。本当は来週からのはずだったんだがなぁ……」

 

セキュリティの事情だか何だかで、急遽決まったらしい。しかも突貫調整だったらしく、本来なら男2人(俺と織斑)を1部屋に突っ込めばいいところを、別々の相部屋になったとのこと。つまり、女子生徒と相部屋なわけで……俺も織斑も、気ぃ使わないといけなそうだ……。

っていうか、まさかあの馬鹿神共が『一夏様と一緒になんてできませんわ!』みたいなことを言った結果じゃねぇだろうな……。

 

「エドワース先生から、鍵も渡されちまったし」

 

そう言って、SHRの後に渡された寮部屋の鍵をチャラチャラ振りながら、簪に見せた。

 

「そう、大変そう……え?」

 

「どした?」

 

俺の鍵を見て驚いた顔をした簪は、スカートのポケットをまさぐると、おそらく簪の部屋のであろう鍵を取り出した。

 

「これ……」

 

「……Oh」

 

鍵のキーホルダー部分に部屋番号が書いてあるのだが……俺が持ってるものと、簪が持ってるもの。番号が……まったく同じ。

 

「つまり……」

 

「そういう、こと……」

 

お互い、何とも言えない顔をしていた。

 

「あー……色々迷惑をかけるかもしれんが、よろしく頼む」

 

「う、うん。よろしく……」

 

とりあえず握手をしたが、めっちゃぎくしゃくしていたと言っておく。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。