そして業務連絡です。
更新頻度を、現行の隔日から週3(月・水・金の予定)に変更しようと思います。
本作のアクセス解析を見たところ、平日更新の方が土日更新よりUAが伸びていたので。
やはり、通勤・通学の間や休み時間にサックリ読めた方がいいですよね。
~~~♪
一夏の部屋を出て、自分の部屋に戻ろうとしたところで着信音が鳴った。
「また駄女神か?」
見ると……また知らない番号? 駄女神じゃない?
「もしもし?」
「やっほーりったん♪」
「もしかして、束?」
「そだよ~」
相手はまさかの束だった。って待てよ。
「俺、番号教えてないんだが?」
「そんなの、束さんにかかればちょちょいっと、ね?」
さいで……。
「それで、どうしたんだ?」
「実は、昨日もらった設計図なんだけどね」
「どっか分からないところとか不備があったか?」
なにせこっちの外史に来て以降に、昔の記憶を頼りに描いたもんだから、抜け漏れがないとも限らない。
「ううん、それは問題ないよ。もうちょっとでマイクロウェーブ送電システムの試作品が出来そうだし」
「マジか、早いな」
渡したの昨日だぞ? それで試作品が完成間近とか、完徹したとしてもどんだけ早ぇんだよ。
「でしょでしょ~? それでね、りったんに友情の証としてISコアをあげたけど、束さんの方が貰い過ぎな気がしてね~」
「俺としては、むしろこっちが貰い過ぎな気がしてたんだが」
ISコアって限定品に比べたら、こっちはただの設計図だしなぁ。
「いやいや、ご謙遜だよ。だから、何か追加で欲しい物とかあったら言って欲しいなーって」
「欲しい物かぁ……」
俺も俗物だから、欲しいものは色々思い浮かぶ。貰ったコアで専用機を組むための資材とか、下世話なところでは現ナマとか。だが……
「それなら、こんなもんでもいいか?」
「何かな~?」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「――っていうのは、出来るか?」
「……」
「束?」
「くふっ! あははははははははははっ!」
思いっきり束に笑われた。解せぬ。
「りったんって、とんだお人好しだね~」
「いやいや、お人好しは一夏だけで十分だから」
「いっくんは誰彼構わず手を差し伸べるお人好し。りったんは一度突き放してから助けるお人好しだよ」
「さよけ……。それで、出来そうか?」
「もちのろん! お届け先はちーちゃんでいいの?」
「ああ、あの人なら有効活用してくれるだろうからな」
あとは一夏達がどうするかだが、そこまではさすがに面倒見切れんよ。
「分かったよ。それじゃあまた連絡するから、かんちゃんにもよろしく伝えておいてね~」
「おう」
――プッ ツー、ツー……
「俺がお人好しねぇ……」
通話の切れたスマホを仕舞うと、俺は自分の部屋に向かって歩き出した。
ちなみに部屋に戻った際、簪に『俺ってお人好しに見えるか?』と聞いたところ
「それ以外の何なの?」
と返された。解せぬ。
ーーーーーーーーーーーーー
――コンコン
寮監室のドアを叩く音がしたのは、持ち帰った書類仕事が終わり、ちょうどビールを飲もうと冷蔵庫に手をかけた時だった。
「誰だ?」
お預けを食らった不機嫌さを極力隠してドアを開けると、そこには一夏とデュノアが立っていた。
「なんだお前達、こんな時間に一体どうし――」
「織斑先生、いや、千冬姉。相談があるんだ」
「一夏?」
いつもと違う弟の雰囲気に、私は訝しんだ。よく見れば、一夏の斜め後ろに立っているデュノアもだ。まるで、何か覚悟を決めたような。
「……入れ」
どうやら立ち話で済ませられそうにない。そう察して、二人を部屋の中に入れた。
ーーーーーーーーーーーーー
寮監室には小さいながらも4人用テーブルと椅子がある。そこに一夏とデュノアを座らせ、向かい合うように私が座った。
「それで、相談とはなんだ? 見たところ、デュノアも関係するようだが」
「ああ、それは……」
「一夏、僕が話すよ」
「シャルル、だけど……」
「ううん。本来これは、僕の問題だから。だから僕が織斑先生に説明しないといけないんだ」
「……分かった」
なるほど、デュノアの問題に、一夏が関わった形か。
「ではデュノア、説明してくれ」
「はい。そもそも僕は――」
デュノアの話を聞く度に、胃がシクシクと痛むのを感じた。
デュノア社の危機とは言え、愛人の子とは言え、娘にスパイをさせるなど正気の沙汰ではない。
そしてその特大の爆弾に、一夏が関わってしまっている。もしこのままデュノアのスパイが発覚していたら、一夏にも疑いの目が向いたはずだ。なにせ同室なのだ。共犯でなければ気付くはずだと言われる可能性があっただろう。
「……デュノア、お前も色々悩んだのだろうが、よく話してくれた」
「いえ、一夏が無理矢理連れ出してくれなかったら、僕一人じゃ……」
「そうか……一夏、よくやった」
一夏の方を向くが、様子がおかしいことに気付いた。いつもなら、褒められれば素直に喜ぶか、当然の事だと言い返すかだ。だが、今の一夏は、俯いたまま微動だにしていない。
「一夏?」
「違うんだ、千冬姉」
「違う? 何がだ」
私が聞き返すと、一夏はしばらく黙ったままだったが、
「俺は最初、陸に相談したんだ」
「陸……宮下にか?」
「ああ……そしてあいつに言われたんだ。千冬姉なら自分より伝手があるだろう、だから千冬姉に相談するべきだって」
確かにブリュンヒルデ時代の伝手を使えば、一夏達3人よりは情報も、取れる手段も多く得られるだろう。
「けど、俺は躊躇った。千冬姉に迷惑を掛けたくなくて……そうしたら言われたんだ。『もし今回の件がバレればお前にも疑いの目が行くし、千冬姉にも責が及ぶ』って……」
「それは……」
「俺、分かってなかったんだ……千冬姉に迷惑かけたくないって言いながら、結局迷惑を掛けてることに……」
そう言って上を向いた一夏の顔は、目は見開き、口は震え、まるで懺悔しているようにも見えた。
「一夏は悪くないよ。 悪いのは自分の人生なのに、選択を一夏に押し付けた、僕だよ……」
「一夏、デュノア……」
そんな二人に、私は席を立って二人に近づき、頭を撫でることしか出来ない。
「お前達はまだ子供なんだ。間違いなんていくらでもする。大切なのは、次にどうするかだ」
「千冬姉……」「織斑先生……」
「宮下の言葉があったからだとしても、お前達は『私に相談する』という"次"を選択出来たんだ。今はそれでいいだろう?」
そこで立ち止まらなければ、自分の殻に閉じ籠らなければ、それでいい。例え半歩であろうと、前に進めれば、それでいいんだ。
私は二人の頭を撫ぜ続けた。たまには一夏の姉として、保護者として、こういうのもいいだろう。デュノアもおまけでな。
ーーーーーーーーーーーーー
「えっと……ごめん、千冬姉」
「お見苦しいところをお見せしました……」
「気にするな。これも教師の役目だからな」
しばらくして、私に頭を撫でられているのが恥ずかしくなったのか、顔を赤くした二人を座り直らせて、私も再度二人に向かい合った。
「まず確認だが、学園内でデュノアが女であることを知ってるのは誰がいる?」
「たぶん、ここにいる3人以外では宮下君だけだと……」
秘密を知ってる人間は少ない方がいい。そういう意味では良い情報だ。
「よし、私が国家代表時代の伝手を使って情報を得るまでは、今まで通り生活して女であることをバレないように気を付けろ」
「分かりました」
~~~♪
私のスマホが鳴った。しかも、この着信音は……
「すまん、電話だ」
そう言って席を立とうとしたら
「もすもすひねもすぅ~。ちーちゃん、束さんだよ~」
通話ボタンを押してないのに勝手に束が話し始めたんだが!?
「た、束さん?」
「やっほーいっくん。青春してるかい?」
「あはは……」
「……」
突然の相手に、一夏は苦笑するしかなく、デュノアは完全に固まっている。
「束、一体何の用だ?」
こいつ、先日に引き続いてまた何かしでかす気か?
「今日の私はただの宅配便なんだよね~」
「宅配便? どういうことだ?」
「ちーちゃんの端末に送っておいたから、確認してよ」
「端末……」
束に促されるまま、私は仕事机に置いてある端末を取り、電源を入れた。
すると、身に覚えのないファイルが複数入っていた。
「このファイルか?」
「うん。ちーちゃんに届けるように頼まれたんだ」
「お前が他人の頼まれ事を? 一体誰から――っ!?」
ファイルを開いた私は、言葉を失った。
それは、デュノア・グループ内でのシャルル、いや、シャルロット・デュノアの暗殺計画や、計画を知ったアルベール・デュノアが娘をIS学園に逃がそうとした記録だった。
その中には動画ファイルも含まれていて、アルベール氏とロゼンダ夫人の会話シーンだった。
『本当に良かったのですか? 彼らの目をあの子から引き離すためとはいえ、あんな突き放すような態度ばかりで……』
『構わん。例え恨まれようとも、それであの子が、シャルロットが無事でいてくれるのならば――』
「これは……」
「そ、そんな……それじゃあ、僕は……僕は……」
横から端末を覗いていた二人も、真実を知って呆然としていた。
「それじゃ、束さんは設計図分のお仕事をしたから、バイビ~♪」
「お、おい束――」
私が何か言うより先に、束から通話を切られた。毎度毎度、こちらを振り回してくれる。だが、今回の情報はありがたい。
「これなら、デュノアの件は何とか出来そうだ」
「本当か、千冬姉!」「ほ、本当ですか!?」
「ああ」
そもそも向こうがデュノアをスパイにする気が無いことが分かったのだ。あとは暗殺計画に関与した連中をどうにかしてしまえば、晴れてデュノアは自由の身だ。国家代表時代の伝手と、束からの情報を使えば手の打ちようはある。
「良かったな! シャルル!」
「うん……うん……っ!」
それにしても束のやつ、"設計図分"と言っていたな。まさか……。
「千冬姉?」
「いや、何でもない。さあ、もう少しで消灯時間だ。早く部屋に戻って寝ろ」
「はい」「分かった」
肩の荷が下りたからか、二人は目を赤くしながらも、清々しい顔で寮監室を出て行った。
……あれだけ一夏とデュノアに説教しておいて、最後は束を使って
「ふっ、お人好しが」
他クラスの機械馬鹿を心の中で笑いながら、私は冷蔵庫のドアを開けると、お預けを食らっていたビール缶を取り出し、中身を一気に呷った。
ああ美味い。特に今日は特別美味い気がする。やはり、
これだからシリアスは難しい。
「やっぱりさ やるもんじゃないね、キャラじゃないことは」