俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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いつだったか「日刊は懲りた」と言ったな、あれも嘘だ。



第27話 今更やってきた専用機

「宮下、話がある」

 

職員室に学年別トーナメントの申込書を提出したところで、織斑先生に声を掛けられた。

 

「何か用ですか?」

 

「ああ。ここでは話せん内容でな……ちょっと来てくれ」

 

「分かりました。簪、お前は先に――」

 

「いや、更識にも関係する話だから、一緒に来てくれ」

 

「私も、ですか?」

 

俺も簪も首を傾げながら、とりあえず織斑先生の後に付いて職員室を出た。そして着いた先は、生徒指導室。

 

「先に言っておく。別にお前達を叱るためじゃないぞ」

 

「あ、そうなんですか」

 

「陸の場合、心当たりがあり過ぎるんじゃ」

 

「おいおい。少なくとも校則に引っかかるようなことはしてないぞ」

 

「そうだな。寮の門限破り以外は、な」

 

「「うぐっ!」」

 

先生、それを言われたら俺も簪も言い返せないっす。

 

「まぁいい。とにかく中に入れ」

 

促されるまま、俺と簪は指導室に入り、会議用テーブルとセットにあるパイプ椅子に座ると、 向かいには織斑先生が座った。

 

「さっそく本題だが……宮下、お前に専用機が手配されることになった」

 

「……は?」

 

「陸に、専用機?」

 

俺に専用機? なして?

 

「クラス対抗戦で更識が乗っていたISが、政府関係者の目に留まってな。そこから政府の連中、開発者である宮下に興味を持ったらしい」

 

「陸に興味って、今更ですか?」

 

「まぁ、それは、なぁ……」

 

織斑先生も言いにくそうにしている。まさか自分のネームバリューのせいで、(一夏)ばかりに注目が集まってたからなんて言えないだろうし。

 

「とにかく、そこで日本政府は考えた。『宮下に学園の訓練機を専用機として貸与しカスタムさせれば、男性操縦者のデータとカスタム機体のデータ、両方得られるんじゃないか』とな」

 

「はぁ……」

 

なんともやる気を失くす理由だことで。

 

「それで、俺はいつその訓練機を受領すれば?」

 

「今からだ」

 

「は? 今から?」

 

あまりにもフッ軽過ぎやしませんか?

 

「陸、良かったね。資材が無いから専用機が作れなかったけど、これで自分の機体を改造し放題だよ」

 

「……本音は?」

 

「これからは、トンデモ改造は自分の機体でね?(暗黒微笑)」

 

「先生、さっき出したトーナメントの申し込み、再提出させてください」

 

「嘘ですごめんなさいこれからもよろしく」

 

「……私はお前達の夫婦漫才を見るために、ここに呼んだわけじゃ無いんだぞ……?」

 

ゲンナリ顔でため息をつかれてしまった。それと、やっぱり簪はパイセンの妹だと再認識した。

 

「山田先生には私から連絡しておくから、お前達はこの後整備室に直行してくれ」

 

「分かりました。話はそれだけですか?」

 

「ああ。それとこれは、ちょっとした独り言だが……」

 

「「?」」

 

なんだ? 俺も簪も首を傾げていると、織斑先生は立ち上がり、腕を組んで窓の外を見た。

 

「一夏は……私の弟はどうも短絡思考なところがあってな。本来であれば、保護者である私がきちんと教育しなければならなかった。だが、教職の忙しさにかまけて、私は保護者としての義務を怠っていた」

 

「……」

 

「だが、どうもこの学園には『お人好し』がいるようでな。そいつのおかげで、一夏は道を踏み外すことなく前に進めている。私はその『お人好し』に感謝している」

 

そこまで言うと、織斑先生は振り返り

 

「さぁ、山田先生を待たせるわけにもいかんからな」

 

何事も無かったかのように、俺達に退室を促した。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

整備室に着くと、緑短髪の眼鏡先生が、2機のIS――打鉄とラファール――の横に並んで俺達を待っていた。

 

「待ってましたよ。宮下君はお久しぶりですね」

 

「そうですね。実技試験で酷い目に遭って以来ですね」

 

「うぐぅっ!」

 

俺の棘付き返答に、山田先生は崩れ落ちた。

 

「一体何があったの?」

 

「入学前の実技試験でこの先生、一夏相手に自爆ったらしくてな。織斑先生に怒られて気合入れ直したら、今度は初めてISに乗ったズブの素人の俺を容赦なくフルボッコ」

 

「ええー……」

 

「そ、その節はごめんなさい……」

 

俺は別にいいんだがな。ただ、実技試験は入学生がその時点でどれだけISを動かせるかを見るためのものなのに、俺も一夏も全く動かさずに試験が終わったから、山田先生は関係各所からこっぴどく怒られたらしい。

 

「は、話は織斑先生から聞いてると思いますが、宮下君に訓練機を専用機として貸与されることになりました」

 

「はい、聞いてます」

 

「それで、打鉄とラファール、どちらを選びますか?」

 

「打鉄で」

 

山田先生からの問いに、間髪入れず答える。

 

「いいんですか? もっと考えてからでも……」

 

「打鉄の方が、簪の弐式と互換性を持たせるのが楽ですから」

 

「互換性?」

 

「いちいち別の装備作るより、どっちの機体でも使えるようにした方が、開発の手間も省けるだろ?」

 

「なるほど(やっぱり宮下君()はメカニック馬鹿ですね())」

 

俺の説明に納得したのか、簪も山田先生も首を縦に振る。……変な副音声が付いてた気がしたが、気のせいだよな?

 

「分かりました。それじゃあ初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)を始めましょう」

 

「了解です」

 

俺は用意されていたISの内、打鉄の方に乗った。そして山田先生がISに接続されたPCで各種設定を行うこと30分。

 

初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)完了です。ところで、機体名はどうしますか?」

 

「機体名?」

 

「私の『打鉄弐式』みたいなもの」

 

「ああ、なるほど」

 

そうは言われても、すぐパッと思い浮かぶもんじゃ……いや、打鉄の主武装は()だ。なら……

 

「打鉄・陰流」

 

「陰流、ですか。それで登録しますね」

 

山田先生がPCを操作すると、機体名が登録されたのか、バイザーから『打鉄・陰流 オールグリーン』とステータスが表示された。

 

「ところで陸、陰流って何?」

 

「陰流ってのは剣術流派の1つでな、打鉄の主武装が刀だからふと思いついたんだよ」

 

「へぇ、宮下君は剣術の心得があったりするんですか?」

 

「心得なんてないですよ。昔、見様見真似で木刀を振ってたことがあるだけで」

 

そう、今はもう懐かしいとすら感じるほど昔に、な。

 

「それじゃあ宮下君、ISを待機状態にしましょう」

 

「分かりました。……すまん簪、どうやるんだ?」

 

簪がよく待機状態にしてるのは見てるが、やり方までは知らんのだ。

 

「えっと、『解除』って念じるというか……」

 

「念……」

 

とりあえず言われた通り念じてみる。すると乗っていた『陰流』が光り出し、

 

「うおっと!」

 

階段の2,3段目から飛び降りたような感覚がして、危うく着地に失敗するところだった。急に消えるんだな、ISの解除って。

そして俺の左腕にはさっきまで無かった、白地に赤と黒のラインが入った腕輪が付いていた。

 

「その腕輪がISの待機状態になります。展開する時は、待機状態にする時と同じようにしてくださいね」

 

「同じように……」

 

さっきと同じように念じてみると、今度は少し浮遊感を感じ、次の瞬間には陰流に乗った状態になっていた。

 

「う~む。この展開と待機を切り替える際の感覚は、回数こなして慣れるしかないか」

 

めっちゃ低いフリーフォールに乗ったような、少し気持ち悪さを感じる。

 

「山田先生、日本政府は俺にこいつをカスタムさせたがってるようですけど、資材とかは――」

 

「大丈夫ですよ。学園内の在庫を融通するように通達が出てますから、必要分を申請してください」

 

それはありがたい。

 

「それじゃ、これお願いします」

 

さっそく俺は、今までメモっていた欲しいものリストを山田先生に渡した。

 

「さ、さっそくですか!? ええっと……はい、これなら大丈夫だと思います」

 

「いいなぁ、開発資材……」

 

あ~、簪が拗ねちまった。 最初会った頃は、簪自身に非があった(一人で意地張ってた)事を差し引いても、どこからも援助を受けれなかったからなぁ。

そんな簪に、俺は

 

「(実は申請した資材の内、いくつかは弐式用だったりする)」

 

と耳打ちした。すると

 

「……グッジョブ」

 

簪、真顔でサムズアップ。

そもそも互換性のあるもん作ろうとしてるから、弐式用だの陰流用だの関係なかったりするんだがな。弐式に優先して持たせる装備用ってだけで。

 

 

 

そんなこんなで、俺の専用機受領は完了した。

だが待てよ。学年別トーナメントまで残り2週間ほど。その間に、俺は自分の機体をカスタムして、慣熟訓練しないといけないわけで……。

間に合うのか、これ?

しかもこれ、束から貰ったISコア使わないままじゃん。貰い物をそのままにして別の物使うとか、めっちゃ体裁悪いんだが。……いっそ、コア2つ付けてみるか?




本作の千冬は、大っぴらにオリ主にお礼を言えない立場です。オリ主が出来るだけ表に出ないよう、敢えて束経由で手を貸したのに、そこで自分が言っちゃったら本末転倒だと、千冬も心得ているので。(駄女神が暗躍してる時点で今更かもですが)

打鉄・陰流の名前の由来については、実は第3話から伏線を張りっぱなしにしてました。なのでここで回収をば。(誰も気付かないかもですが)
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