俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

29 / 182
やっとトーナメント開始です。


第28話 VTS

学年別トーナメント当日。

全生徒が慌しく走り回り、雑務や会場の整理、各国政府関係者を始めとした来賓の誘導などに駆り出されていた。

かくいう俺も、生徒会長であるパイセンと知り合いだったのが運の尽き。ぎりぎりまで雑務を押し付けられ、開会式が終わると大急ぎで男子用の更衣室まで走らされた。

 

「宮下君、大丈夫?」

 

「な、なんとかな」

 

ああそうか、デュノアはまだ男装してるからこっちの更衣室なのか。

 

「それにしても、すごいなこりゃ……」

 

一夏は我関せずで、更衣室に付いているモニターを見ていた。そこには、観客席に座る各国政府関係者、研究所員、企業エージェントなど、錚々たる面子が。

 

「3年にはスカウト、2年には1年間の成果の確認のために、それぞれ人が来ているからね」

 

「ふーん、ご苦労なことだ」

 

デュノアの説明に、一夏はあまり興味がなさそうだな。というか、ピリピリしてるな。

「なぁデュノア、一夏の奴、なんか気負ってないか?」

 

「一夏はボーデヴィッヒさんとの対戦だけが気になるみたいでね……」

 

小声で聞いてみると、どうも一夏はボーデヴィッヒに思うところがあるようだ。オルコットと凰が出場できなくなった原因と言えるから、分からなくもないが。

 

「一夏も、あまり感情的にならないでね」

 

「ああ、分かってる」

 

デュノアに指摘されて、一夏はおそらく無意識に握りしめていた左手をゆっくり開いた。

 

「あ、対戦相手が決まったみたい」

 

観客席を移していたモニターがトーナメント表に切り替わった。

さて、第1回戦は誰が相手……

 

「「――え?」」

 

一夏とデュノアはぽかんとした声をあげ、

 

「マジかよ……」

 

俺は天を仰いだ。

 

 

『Aブロック第1回戦 更識簪、宮下陸 vs ラウラ・ボーデヴィッヒ、篠ノ之箒』

 

 

一夏の獲物を、俺と簪が分捕る形になっちまった。ってか篠ノ之、お前なんでボーデヴィッヒと組んでんだよ?

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「陸、どう戦おう?」

 

「どうもこうも……」

 

アリーナに入り、簪と合流した俺の目の前には、篠ノ之と、銀髪で眼帯をしたチビッ子がいた。あの銀髪がドイツからの転校生、ボーデヴィッヒか。

頭の中に、昨日まで調べていた情報を展開していく。

 

「ボーデヴィッヒのISに搭載されてるAIC(慣性停止結界)、ありゃまずいな。対象を任意に停止させるとかエグ過ぎだろ」

 

「うん。特に陸は相性悪すぎ」

 

「だな」

 

なにせ俺のISには、実体系の武装しか積んでないからな。

 

「ところで陸、本当にそのISでよかったの?」

 

「何がだ?」

 

そのISも何も、ちゃんと渡された専用機である打鉄・陰流に乗ってるだろ。

 

 

「それ、渡されたままの未改修打鉄でしょ!」

 

 

「いやいや、ちゃんと武装は新規で作ったろ」

 

まぁそっちの慣熟訓練に時間を使い過ぎて、装甲やスラスターは据え置きになっちまったわけだが。

 

「だから日本政府の人達、目が死んでるんだよ……」

 

簪に指摘されて観客席を見ると……確かにあれは、冷凍サンマの方が活き活きした目をしてるな。期待してたカスタム機のデータが取れなくて残念だったな。そもそも適性D+で稼働時間も大してない俺が、カスタム機なんか乗っても使いこなせるわけないだろ。

それと倉持技研の馬鹿共、簪の専用機放り投げてアフターケアも無かったお前らに見せるデータなんざねぇよ。NDK? NDK? ちなみに弐式のデータは倉持技研に渡ってはいない。そこは開発が凍結された当時のパイセンが頑張って、倉持に権利を放棄させていたのだ。そっちから開発を放り投げたんだから、当然だよなぁ?

 

それはさておき、問題のボーデヴィッヒだ。

 

「ISの性能差も含めて、俺がボーデヴィッヒの相手をするのは無理がある。だから――」

 

「私がボーデヴィッヒさんを倒すか、陸が篠ノ之さんを倒して2対1に持ち込むまで耐えるか」

 

「俺の実力からして、篠ノ之を倒せるかあやしいんだがなぁ……すまんが任せた」

 

「任された」

 

作戦が決まり、相手側に向き直ったところで

 

試合開始のブザーが鳴ると同時に、俺と簪は別々の目標に向かって加速した。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「私の相手は宮下か」

 

「おうよ。ところで篠ノ之、なんでわざわざボーデヴィッヒと組んだよ?」

 

「し、仕方ないだろう!? 一夏がデュノアと組んだから、他に空いてる相手を探してる間に締め切りを過ぎてしまって、抽選でペアにされてしまったのだから!」

 

そういうことかよ。篠ノ之、もっと一夏関係者以外のダチも作ろうな?

 

「まぁ、こうなっちまった以上、ひとつ手合わせしてもらうぞ」

 

「ああ、もとよりそのつもりだ」

 

篠ノ之が刀を展開するのに合わせ、俺も武装を展開する。専用機受領から今日まで、作成と慣熟訓練に費やした、新規武装を。

 

「な、なんだそれは……」

 

「見ての通り、刀だ」

 

「そんなこと見れば分かる! だが、その長さは……」

 

篠ノ之が驚くのも無理はない。向こうが持ってる刀、『葵』の全長が約170cm。対して俺が展開した刀『長船(おさふね)』は2mを優に超えている。

 

「言ってしまえば大太刀ってやつだ」

 

その長船を軽く振って感覚を確かめてから、上段八双に構える。知らない人間が見たら、バットを構えてるようだと言うだろうな。

 

(オン)()()支曳(シエイ)()()()……天清浄(しょうじょう)、地清浄、人清浄、六根清浄」

 

集中力を引き出すための摩利支天経を口にする。見様見真似で口しつつ木刀を振るっていた、ここではない世界(かつていた外史)が懐かしい。

 

「タイ捨流、宮下陸。一手所望だ」

 

「っ! 篠ノ之流、篠ノ之箒。相手になろう」

 

俺の名乗りに反応して、篠ノ之も正眼に構える。

 

「「征くぞっ!」」

 

俺も篠ノ之も同時に飛び出し、間合いを詰める。

 

「ツェァアアアアッ!」

 

先に間合いに到達する俺の長船が、篠ノ之に襲い掛かる。

 

「ぐぅっ! ……はぁっ!」

 

――キャリリ……ッ!

 

「なに……っ!?」

 

篠ノ之は俺の上段袈裟懸けを真っ向から受けた……かと思えば、そのまま斬撃の向きだけを変えるように受け流す。

 

「凄まじいな……。返すので精いっぱいで、反撃まで持っていけなかった」

 

「そっちこそ、まさか初太刀を躱されるどころか、受け流されるとは思ってなかった」

 

「篠ノ之流を舐めるな、と言っておこう」

 

そんな言葉の応酬を経て、俺も篠ノ之もお互い刀を構え直す。

やっぱ、しばらく鍛錬をサボった上にISにも慣れ切ってないせいか、斬撃に剣勢(いきおい)がない。

こりゃ、簪に頑張ってもらうしかないな。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

(どういうことだ……! 織斑一夏以外の日本の専用機は、未完成のはずではなかったのか……!?)

 

ドイツで得た事前情報では、白式に人員を集中した結果、他の専用機開発は凍結されたはず。

であれば、目の前にいる日本の代表候補生、更識簪の乗る訓練機など物の数ではない。そのはずだった。

だが、実際は――

 

「はぁっ!」

 

――ドドドドドドドォォンッ!

 

「くそっ!」

 

奴のISから飛んでくる無数のマイクロミサイル――しかも、第3世代型兵器であるマルチロックオン・システム搭載――の嵐に、私は回避以外の選択を取れない。

 

「ならばっ!」

 

全力で距離を縮め、奴の懐に潜り込む。これならミサイルは使えまい。

 

「ふっ!」

 

「甘いっ!」

 

上段から振り下ろされた薙刀をAICで止める。あとはプラズマ手刀で――

 

「メメントモリ、起動!」

 

「何ぃっ!?」

 

奴が薙刀を手放し、右手で私の左腕を掴んだかと思えば、突然掴まれた箇所から赤黒い光が点滅し出した。

 

(し、シールドが!)

 

私のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』のSEが、恐ろしい勢いで減っていく。

 

「は、なれろ……っ!」

 

右腕のプラズマ手刀を振り下ろし、掴まれた左腕を離させる。

 

(なんなのだ、あれは……!)

 

気付けば、SEは残り1割を切っていた。

私の挑発で頭に血が上っていた分を差し引いても、イギリスと中国の小娘共より、強い。このままでは……

 

(このままでは……? まさか、負けるというのか、私は……!)

 

確かに相手の力量を見誤っていた私のミスだ。だが、しかし――

 

(私は負けるわけにはいかんのだ……!)

 

 

 

「どうして強いのか、か。……私には弟がいる。あいつを見ていると、強さとは何か、その先に何があるかが分かる時がある」

 

かつて教官に尋ねた時の、わずかに優しい笑みに、気恥ずかしそうな表情に、心がチクリとした。

 

「いつか日本に来ることがあれば、会ってみるといい。だが、ひとつ忠告しておくぞ。あいつは――」

 

(違う! 私が憧れるのは、強く、凛々しく、堂々としている貴女なのに……!)

 

許せない、教官にそんな表情をさせる存在を。認められない、教官をそんな風に変えてしまう(織斑一夏)を。

 

 

 

(決めたのだ。あの男を、私の力で敗北させると!)

 

だからこそ、こんなところで負けるわけにはいかない、いかないのだ……! そのためには――

 

――力が欲しいか?

 

私の中で、何かがうごめいた。

 

――汝、より強い力を欲するか?

 

(力があるのなら、それが得られるのなら、私によこせ! 例えこれが、悪魔との契約だろうと……!)

 

 

《 Valkyrie Trace System 》…… boot.




箒も返し技の一つぐらい使えるでしょう、と思って書きました。原作でも篠ノ之流は『けして受けることなく剣戟を流し』ってありますし。
え? 箒はもう一方の『相手より早く打ち抜き』の方だって? ……君のような勘のいい奴は嫌いだよ。

ラウラが打鉄弐式の情報を知らないのは仕様です。だって1度も公式試合に出てないですから。(姉妹喧嘩は非公式、対抗戦の無人機破壊は表向き無かったことになってます)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。