俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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戦闘シーンは軽めで。
原作でも、VTS起動から撃破まで12ページしか使ってないし。


第29話 貫きたい意地

「何だありゃ……」

 

さっきまで鍔迫り合いをしていた俺も篠ノ之も、今は手を止めて目の前の光景に唖然とするしかなかった。

そこには俺達と同じく唖然とする簪と、装甲がぐにゃりと溶け、どす黒い粘土のようなものに飲み込まれていくボーデヴィッヒが。

 

「何なのだ、あれは……」

 

篠ノ之も俺と同じように呟く中、ボーデヴィッヒのIS……いや、奴を飲み込んだ泥人形は急速に変形していく。

そしてそこに立っていたのは、黒い、しかし対抗戦の時に襲ってきたものとは似ても似つかない、全身装甲のISのような『ナニカ』。

その黒いISが手に持っている武器。それは――

 

「一夏の武器に、似てる?」

 

「確かにあれは、雪片弐型にそっくりだ……」

 

その形がそっくりな武器を振り上げ、

 

「っ! 簪!」

 

『っ!?』

 

俺が叫ぶ前に、簪も危険を察知したのだろう。右後方に緊急回避した瞬間、さっきまで居た場所を縦一直線に斬撃が走った。

 

「簪、無事か?」

 

「危なかった……」

 

合流した簪を含めた俺達3人と黒いISが、アリーナの中央で対峙する。

 

「さて、これからどうするかだが……その前に、篠ノ之に聞いていいか?」

 

「なんだ?」

 

「あの黒いIS、どうもお前の篠ノ之流っぽい技を使ったように見えたんだが、気のせいか?」

 

そう、さっきまでチャンバラしていた篠ノ之と、術理が似てるような気がする。

 

「ああ……あの縦一文字の斬撃、間違いなく篠ノ之流の技の一つだ」

 

「そして雪片弐型に似た武器と、あのシルエット……まさか」

 

篠ノ之の回答と簪の推測、そこから導き出されるのは――

 

 

「ふざけやがって! ぶっ飛ばしてやる!」

 

 

ってちょい待て! なんで一夏が白式乗って黒いISに向かって突撃してんだよ!?

 

「まずいっ!」

 

完全に理性を失った一夏の突撃など意に介さないかのように、黒いISは雪片弐型を弾き返し、返す刀であいつの首を――

切り飛ばすぎりぎりのところで、篠ノ之がなんとか一夏を引き離した。あっぶねぇ。

 

「馬鹿者! 何をしているんだ! 死ぬ気か!?」

 

「放してくれ箒! 許さねぇ、許さねぇ!」

 

 

「バカタレ!」

 

 

――ガンッ!

 

「ぐはっ!」

 

「り、陸……」

 

うん、この手(ゲンコツ)に限る。

 

「一夏、いいから俺達に分かるように説明しろ」

 

俺にぶん殴られて怒りのボルテージが多少下がったようだが、それでも一夏は拳を握りしめながら

 

「……あいつは、千冬姉のデータだ。千冬姉のものなんだ。それを……くそっ」

 

「やはりそうか……」

 

「篠ノ之流の技と、織斑先生がかつて使っていた雪片。つまりあれは、国家代表時代の織斑先生を模倣したもの」

 

ブリュンヒルデのコピー品、か。

しかもあのIS、簪への攻撃と一夏への反撃以外微動だにしないな。まるで防衛機能だけ付いた自動プログラムのようだ。

 

『緊急事態発生、緊急事態発生。トーナメントは一時中断します───』

 

「今回はちゃんとアナウンスも流れたか。ということは、鎮圧用の教師部隊が来るまで粘れば勝ちだな」

 

篠ノ之が言う教師部隊の練度がどれほどかは知らないが、少なくとも俺達が頑張らなくてもいいってことだな。

 

「だから一夏、無理に危ないところに飛び込む必要は――」

 

「違うんだ箒。『やらなきゃいけない』じゃない。俺が『やりたい』んだ。千冬姉を侮辱するあの黒いのも、そのわけわかんねぇもんに振り回されるラウラも、気に食わねぇんだ」

 

「馬鹿者が! それで、お前一人でどうにかできるとでも!?」

 

「いいや。悔しいけど、俺一人じゃ力が足りない。だから……」

 

篠ノ之とやり取りをしていた一夏が、俺と簪の方を向く。

 

「陸! 更識さん! 俺に力を貸してくれ!」

 

そう言って、俺達に頭を下げてきた。おいおい……。

 

「さっき篠ノ之さんが言った通り、その内教師部隊が来るはず。わざわざ火中の栗を拾う必要はない」

 

「だな。それでも一夏、お前は戦いたいのか?」

 

「ああ。ここであの偽物野郎を前に引いちまったら、もう俺は俺じゃねぇ。織斑一夏じゃなくなっちまうんだ……!」

 

やれやれ……なんつー熱血馬鹿だよ。だが……嫌いじゃねぇよ、そういうの。

 

「絶対勝てるんだな?」

 

「宮下!?」「陸!?」

 

「ああ、約束する」

 

「そこまで啖呵切ったんだ。負けたら……分かってるよな?」

 

「うぐっ……大丈夫だ! 負けないからな!」

 

よし、その言葉が聞きたかった。

 

「簪、篠ノ之、もし手ぇ貸して一夏が負けたら、焼肉奢ってくれるってよ」

 

「え?」「は?」「ファッ!?」

 

「負けたら分かってるんだよ、なぁ?」

 

俺がものすっごいゲス笑顔をすると、

 

「なら、私も参加する。牛タン、上カルビ、特上ロース……」

 

簪も暗黒微笑で乗ってきた。

 

「お、お前達……! ええい、私も乗ろう!」

 

半ばヤケクソになったのか、篠ノ之も乗ってきた。これで役者は揃ったな。

 

「作戦って言えるほどのものはない。俺、簪、篠ノ之の3人が奴を引き付けて、一夏が、あ~『零落白夜(れいらくびゃくや)』だっけ? エネルギー無効化の斬撃を叩き込む」

 

「すごいあっさりした作戦」

 

「大丈夫なのか、それで」

 

簪と篠ノ之は微妙な顔をしてるが

 

「下手に複雑な作戦より、シンプルでいいじゃねぇか!」

 

さすが一夏、ノリとセンスで戦ってただけはあるな。言うことが違う。

 

「中にボーデヴィッヒがいる以上、弐式の山嵐もメメントモリも使用は避けるべきだ。となると、一夏の攻撃が有力で、かつそれを当てるための作戦になっちまうわけだ」

 

「そういう事なら……」

 

「仕方ないな……」

 

そこまで説明して、ようやっと女性陣も納得したようだ。

 

 

 

「そんじゃ行くか、簪、篠ノ之」

 

「うん」

 

「分かった」

 

俺の号令を合図に、3人が三方に散らばる。

まず正面の左右2方向から、俺と篠ノ之が刀を上段に構え突撃する。

それに反応するように、黒いISが向かって右方向から近付く俺に刀を振り下ろす。

 

――ガキィンッ!

 

「ぐぅ……っ!」

 

な、何とか受けたが、斬撃が重てぇ! だが、このまま力を拮抗させて鍔迫り合いに持ち込めば――

 

「はぁっ!」

 

「ふっ!」

 

黒いISの武器は刀1本のみ。それを俺が止めていれば、左側の篠ノ之の刀、そして背後に回っていた簪の夢現を止めることは出来ない!

 

――ザシュッ!

 

二人の斬撃が、相手の両腕を切り飛ばす。

 

「行けぇ! 一夏ぁぁぁ!!」

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 

俺の合図をかき消すかのように、雄叫びを上げながら、白く輝く、日本刀の形に集約したエネルギー刃を携えて突撃していく。

そして俺と篠ノ之を間をすり抜け、刃を頭上に構えると

 

――ビュンッ!

 

縦に真っ直ぐ、黒いISを断ち切った。

 

「ぎ……ぎ、ガ……」

 

剣筋に沿って紫電が走ると、黒いISは真っ二つに割れて倒れた。

あとに残されたのは、ドロドロに溶けた装甲やフレームの残骸とコア。そして、気を失ったボーデヴィッヒだけだった。

一夏はそのボーデヴィッヒを抱きかかえると、

 

「……まぁ、ぶっ飛ばすのは勘弁してやるよ」

 

気の抜けたような、もしくは苦笑したような顔でそう呟いていた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

さて、一見落着と言えれば良かったのだが、世の中そうはいかないようで。

 

「で? なんであんな無茶な真似をした! 言え!」

 

事情聴取のために連行された生徒指導室で、織斑先生に説明を要求されたから

 

「一夏に焼肉を奢らせるために頑張りました」

 

「同じく」

 

「わ、私は一人だけ何もしないわけにもいかず……」

 

「あれ!? 負けなかったのに奢ることになってる!?」

 

あの黒いISと戦った経緯を説明したところ

 

「馬鹿どもがぁ!」

 

――ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ!

 

「いった!」

 

「あう!」

 

「ぐうっ!」

 

「な、なんで俺まで!?」

 

4人まとめて、ブリュンヒルデの教育的指導(ゲンコツ)を食らってしまった。解せぬ。

 

さらに事情聴取が終わって、晩飯を食おうと食堂に行くと

 

「僕を置いてくなんて……一夏の、一夏の馬鹿ぁ……」

 

一番奥のテーブル席で、デュノアがどす黒いオーラを周辺にまき散らしながらイジけていた。

そういやデュノアとペアだったのに、一夏の奴、頭に血が昇って置き去りにしちまってたのか。そりゃイジけるわ。




本作の一夏は、原作に比べナーフされてます。
最初に相対した完全武装時より、(シャルからエネルギーもらって)部分展開しか出来ない状態の方が強いとか、ちょっと反則過ぎませんかねぇ?
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