イジけるデュノアを一夏がなんとか宥め、食堂の利用時間ギリギリで晩飯を食べ終わり、篠ノ之が用事があるからと先に抜けたタイミングで、山田先生がこちらにやってきた。
「織斑君、デュノア君、宮下君、朗報ですよ!」
山田先生、ガッツポーズはいいんですが、めっちゃ胸が揺れて一夏が目のやり場に困ってます。ついでに俺も。
そして簪。悪かったから、みんなから見えない角度から抓るのを止めろ。地味に痛い。
「なんとですね! ついに今日から、男子の大浴場使用がOKになりました!」
「おお!」
3人の中で、一夏が一番喜んでいた。俺はそこまで風呂好きでもないし、フランス人のデュノアは、あまり湯船に浸かる習慣が無いんだろう。
「てっきり来月からだと思ってましたよ」
「本当は今日ボイラー点検があって、元々使用できない日なんです。ですが点検自体はもう終わっているので、それなら織斑君達に使ってもらおうって計らいなんですよー」
「マジですか!? ありがとうございます、山田先生!」
一夏の奴、感動のあまり山田先生の手ぇ握りしめてるよ。
「あ、あのっ、そんな握りしめられると、先生ちょっと困るというか、その……」
――ギュゥゥ!
「あだだだだ!」
「……一夏のエッチ」
うわぁ、デュノアに思い切りつま先踏まれてら。いったそー(棒)
「コホンッ! 大浴場の鍵は私が持っていますから、脱衣場の前で待ってます。なので3人とも、はやく着替え取りに行ってくださいね」
そう言うと、山田先生はすたすたと歩いて行ってしまった。
「大浴場なぁ……俺はパスでいいかな」
「なんだ陸、入らねぇのか?」
「別にそこまで風呂好きでもねぇし、デュノアと2人で入ってくれや」
「そっか。なら俺とシャルルで……っ!?」
直後固まる一夏。ようやく気付いたか、これからデュノア(女)と2人きりで裸の付き合いをすることに。
「ど、どうしよう……ね」
デュノアも困り顔だ。
「白馬の王子様を振り向かせるチャンスだぞ、頑張れお姫様」
ボソッとデュノアに耳打ちした俺は
「み、宮下君!?」
「そんじゃ簪、俺達は部屋に戻るか」
「? うん」
慌てる
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~~~♪
俺のスマホに着信。簪がシャワーを浴びてて近くに居ないことを確認してから、応答ボタンを押した。相手は……言うまでもない。
「もしもし?」
『エーーーークセレント!』
そう。毎度おなじみ、駄女神である。もうロキの奴、仕事乗っ取られてね?(今更)
『今回もあなたの助言により、一夏様は『誰かを頼る』ことを身につけました。これは今後の成長に対して、素晴らしき礎となるでしょう!』
「あっそ」
分かったから、その芝居がかった言い方は何とかならんのか。
『さらに此度の一夏様の活躍は、遍く世界に伝わるのです!』
「活躍……あの黒いISを斬ったことか?」
『そうです。あの場面で一夏様が銀髪娘を助けることが、ハーレム完成に不可欠なのですから!』
「その言い方だと、あのボーデヴィッヒも一夏の嫁候補だと?」
『その通りです』
マジで? オルコットと凰を挑発してボコボコにした奴が?
『問題ありません。あの娘も今は一夏様に惚れておりますから』
「ちょろインすぎぃぃぃ!」
一夏に関わった女、全員ハーレムに吸い込まれていくな。奴はダイソンか何かか? 魚雷カットインも吸っちまうのか?
「なぁ、ひとつ聞いてもいいか?」
『なんでしょう?』
「そこまで一夏一筋のお前達が、なんで"前の外史"に手を出していない?」
ロキから話を聞いた時から気になってたんだよ。ここまで原作至上主義な駄女神達が、なぜ"一夏が死んだ世界"をそのままにしているのか。
最初は俺も、
『
「……一気に話が低俗になったな」
コミケにSNSって、お前ら本当に北欧の神か?
『それに、もし前の外史を消去した場合、後の悪しき前例となるでしょう。そして気に入らないという理由だけで外史を消せるようになれば、最後には何も残らなくなってしまいます。我々も、そのような外史群の崩壊までは望んでおりません』
「なるほど、ある程度の節度はあると」
『ええ。なので
「うわー……」
引いたけど、自業自得だから擁護はしねぇぞ、ロキ。
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翌日のSHR、エドワース先生からあった説明は以下の通り。
ボーデヴィッヒのISが暴走?した事件で、学年別トーナメントは中止。一応、データ取りのために全員1回戦だけはやるらしい。それって俺と簪、それに篠ノ之とボーデヴィッヒはどうなるんだ? もう1回戦やるんだよな? まさかこのまま終わりか?
そんな事を考えていると
――ドゴォォォォォンッ!
「な、何々!?」
「今すっごい音したよね!?」
それなりに近くから、何かの破砕音が聞こえたんだが?
「今の音、1組の方からじゃない?」
「あ、それならいつものか」
音の発生源が分かると、さっきまで慌ててたのが何だったのかと思うほど、みんな冷静に席に戻り始めた。
まぁ、うん……1組の方から大きな音がするのが日常になっちまってるんだよな。篠ノ之の暴走とか、オルコットの暴走とか、凰の暴走とか。
「騒ぎにならないのは嬉しいけど、これでいいのかしら……?」
エドワース先生も、クラスの反応に微妙顔だ。
「先生」
「あら、更識さん、どうしたの?」
「今1組の友人からメールが来たのですが」
簪が手を挙げるのとほぼ同じタイミングで、俺にもメールが来た。差出人は、のほほんだ。
「織斑君のファーストキスは、ボーデヴィッヒさんが奪ったそうです」
「「「「はぁっ!?」」」」
俺の方に来たメール曰く、あまりにボーデヴィッヒの強奪キスがインパクト強すぎて、デュノアが決死の想いで告白した『女の子宣言』は軽くスルーされたそうだ。
デュノア、強く生きろ……!
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「よ~し、完成完成!」
りったんから貰った設計図にあったマイクロウェーブ送電システム、その試作品が完成して、束さんは満足じゃ~♪
「あとは太陽光パネルの付いた小型人工衛星を作れば、衛星軌道からの送電実験ができるね」
~~♪
ややっ! このゴッド・ファーザーのテーマは!
急いで作業台に置いてあったスマホを取ると、応答ボタンを押した。勢い余ってツールキットが散らばっちゃったけど、こっちが優先!
「やぁやぁちーちゃん、そっちから掛けてくるなんて珍しいねぇ」
『本当は掛けたくなかったがな……お前に聞きたいことがある』
「何かしらん?」
『今回の件、お前じゃないよな?』
「今回? 何だろ?」
惚けてるわけじゃないよ、全然心当たりがないんだよねー。
『VTシステムだ』
「ああ、あのISに付いてた寄生虫? 心外だなぁちーちゃん。あんな不細工なシロモノ、この束さんが作るとでも?」
というか、あれを作った研究所、2時間前に地上から消えてなくなったんだけどね。いやぁ、ゴー君Ⅲ号の動作テストに打ってつけだったよ。
『そうか。では、邪魔をしたな』
「邪魔だなんてとんでもない。ちーちゃんならいつでも掛けてきてOKだかんねー」
『……では、またな』
ぶつっとちーちゃんからの通話が切れた。
「ちーちゃんは大変だなぁ。さて、太陽光パネルから作り始めよう」
スマホをパッと手放して、私はまた作業場に戻っていった。臨海学校だっけ? そこでお披露目出来たらいいなー。
学年別トーナメント編終了です。
なんか自分でも短いなーと思ったら、ラウラの出番がほとんど無かったからですね。
だってシャルと違って、強制戦闘で仲間になるし。(暴言)