第31話 織斑(家族)計画
学年別トーナメントが中止となって数日。データ取りのための試合を消化し切り、そろそろ臨海学校の話題が出始めた頃、
『1組の織斑と4組の宮下は職員室まで来ること。繰り返す、1組の織斑と4組の宮下は職員室まで来い』
織斑先生のワイルドな校内放送を無視するわけにもいかず、俺はSHRが終わるとすぐに教室を出て、職員室に向かった。
「失礼しまーす」
「来たか」
俺が職員室に入ると、すでに一夏が織斑先生の机の前に立っていた。
「それで千冬ね(ガンッ!)お、織斑先生、俺達に何か用ですか?」
「ここではちょっとな。付いて来い」
そう言って織斑先生は席を立つと、俺と一夏(先ほど鉄拳制裁を食らって涙目)を職員室の外に連れ出した。
そして連れ出された先は……
「また生徒指導室ですか……」
「仕方ないだろう、間違っても人がやって来ない場所だからな」
そりゃ、好き好んでここに来る奴はいないでしょうよ。
「さあ入れ」
俺と一夏は指導室に入り、いつぞやのようにパイプ椅子に座った。
「さて、さっそく本題だが……織斑」
「はい」
「先日、国連および国際IS委員会の合同会議が開かれ、お前に対して特例で重婚が認められた」
「はぁ、重婚……重婚!?」
一夏は目を見開いて驚いてるが、(駄女神からある程度聞いてた)俺としては『やっとか』が正直な感想だ。
「どうして俺が重婚なんて……!」
「それはなぁ……」
あ~、織斑先生も説明しにくそうだな。仕方ない、俺がするか。
「一夏、お前は希少な男性操縦者だ。それはいいな?」
「あ、ああ。それは分かってる。だけどそれは俺だけでなく、陸だって……」
「お前は嫌がるだろうが、織斑千冬の弟って肩書や、篠ノ之博士と面識があることが影響してるんだろうな。要はそこの繋がり欲しさに、お前に女を宛がいたい各国のお偉いさんが結託したんだよ」
俺が
「ぐぅ……! ……はぁ」
俺の説明を聞いて悔しそうな顔をしつつも、途中で深呼吸をして何とか耐えたな。少し前なら『千冬姉は関係ないだろ!』って叫んでるところだが、これまでの出来事から色々学んだんだろう。
「一夏……」
弟の成長が嬉しいんだろう。そんな一夏を、織斑先生も優しい顔で見ている。あっ、俺の視線に気付いて顔逸らした。
「ん、んんっ! だからと言うわけではないが、これからはより一層、ハニートラップなどには注意するように!」
「は、はいっ」
確かにハニトラには注意しないといけないだろうが、ある程度は一夏ハーレムの面々が弾いてくれるだろう。
「そして宮下、お前には倉持技研から技術提出の要求が来てるが」
「バカめと言っといてください」
「は?」
「バカめだ!」
「言えるか馬鹿者!……本当は言ってやりたいがな」
あ、そこは本音が漏れるんすね。
「更識のことは私も聞いている。あんな連中に果たす義理は、私にはない」
「でしょうね。それにしても倉持もしつけぇなぁ……いっそ研究所にGNファングでも叩き込むか?」
「よく分からんがやめろ!」
よく分からんのに止められたでゴザル。せっかく弐式用装備の動作テストが出来ると思ったんだが。
「それにしても良かったじゃねぇか一夏」
「何がだよ」
「重婚許可なんて、これで名実共にハーレムじゃねぇか」
「陸、お前他人事だと思って……」
「ちょっと待て、ハーレムとはどういうことだ?」
織斑先生が驚いた顔で聞いてきた。あれ? もしかしてご存じない?
「篠ノ之、オルコット、凰。あとはデュノアとボーデヴィッヒもか?」
「な、なんで陸が知ってるんだよ……」
「篠ノ之達3人は前々から知ってるし、ボーデヴィッヒがお前の唇奪ったのはのほほんから聞いてる。そしてデュノアを
「まさかトーナメントの日、大浴場を断ったのは……!」
「正解。デュノアに発破かけるためでしたー」
「お前ェェェ!」
一夏が俺の胸倉を掴もうとするが、もう遅い。
「なん、だと……」
まさか弟の女性関係がそんな風になってるとは思ってもみなかったのか、織斑先生はよろよろと後ずさると、壁にぶつかったところで頭を抱えて込んだ。
「一夏ぁ、お前と言う奴はぁ……!」
「ち、千冬姉……」
一夏の頬に、つーっと冷や汗が流れる。気のせいか、織斑先生の胃の辺りから悲鳴が聞こえてきそうだ。
「宮下、これからこいつと急な話ができてな……」
「ああはいはい、俺は出て行った方がいいですね」
「すまんな」
そういうことなら仕方ない。
「えっ、り、陸?」
「そんじゃ失礼しましたー」
「陸ぅ!?」
俺は席を立つと、手を伸ばしかけた一夏をさらっと無視して生徒指導室を出て行った。家族会議は大事だよなー。
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そんなイベントを挟んで、放課後のアリーナ。
いつもなら整備室に直行なんだが、俺も専用機を持たされた以上、最低限の訓練はしないとな。簪の対戦相手兼データ取りにも使えるし。
というわけで、さっそく陰流の待機状態を解除した。
「あれ~? トーナメントの時と形状が違う~?」
「陸、いつの間に……」
簪達が驚くのも無理はない。今俺が乗ってる陰流は、肩部装甲をガッツリ削り、どちらかと言えば弐式に近いシルエットに仕上げてある。そう、すでにこいつ、カスタム済みなのである。
「俺も一夏に似て、大太刀持って相手の懐に飛び込む戦闘スタイルだからな。機動性重視にしてあるんだよ」
「なるほど~」
「射撃武器は?」
「もちろんあるぞ」
簪の問いに答えるように、左腕に武装を展開する。
「腕に装着するタイプ?」
「おう。刀を両手持ちするから、手に持つタイプよりこっちの方が都合がいい」
見た目はまんま、KMF月○のハンドガンだ。それを通常弾と散弾に切り替えられるようにして、中近距離に対応できるようにした。
「おりむーの白式と同じコンセプトだけど、きっちり弱点を埋めてあるんだね~」
「そういうこった。未だに白式の後付け武装を作れずにブレオン仕様にしてる、倉持への嫌がらせでもある」
「うわー……」
こらこらのほほん、ドン引きすんじゃねぇ。
「それじゃあ簪、まずは1戦すっぞ」
「特に装備の制限とかは無しで?」
「無しでだ。そもそも今まで弐式とまともに戦ったことが無いから、どれだけ強いか俺も実感しとかないとな」
機体性能や操縦者の実力差からして、俺が勝つ見込みはほぼ無いが、それでも何かしらは見えてくるだろう。
「分かった。それじゃあ――」
「おう」
簪が夢現を構えると同時に、俺も長船を構える。そして……
・・・・・・
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・・・
・・
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「まー予想はしてたよねー」
「陸、大丈夫?」
「体中痛ぇのを除けば」
弐式に乗った簪が上から覗き込む先には、陰流を解除した俺が仰向けでぶっ倒れていた。
もう、ギッタンギッタンにやられましたとも。
確かに簪の訓練は見てたよ? だけどまさか開幕に
消えたと思ったら、後ろから首掴まれてメメントモリとか、恐怖以外のナニモノでもねぇよ。そして恐怖以上に、絶対防御越しの衝撃による痛みがやべぇ。
「それで、かんちゃんの弐式はどうだった~?」
「自分で作っといてなんだが、どう倒せばいいか分からん」
クロスレンジ:メメントモリ
ショートレンジ:夢現
ミドルレンジ:春雷
ロングレンジ:山嵐
全範囲が有効射程で、おまけに簪自身の能力も綺麗にまとまってるから、全然穴がないのだ。そして漏れなく高威力。
少なくとも、俺の対戦相手としては壁が高すぎる。誰かいい相手は……
「一夏辺りと模擬戦でもすっかなぁ」
近接特化の白式なら、こっちのハンドガンを縛れば面白い戦いになるんじゃなかろうか。
それにあいつを呼べば、ハーレム連中も付いてきて色々な専用機とも戦ってデータが取れそうだし。
「それもいいかもね~」
「うん。他の専用機との模擬戦も、いい経験になる」
のほほんと簪も同意してるし、声かけてみるか。
その後、声をかけた面子の内で凰とデュノアが来てくれた。
おっ、デュノアは本当に男装から脱却したんだな。
「デュノア社の内部はまだゴタゴタしてるらしいけど、男装もスパイの真似事もしなくて良くなったんだ。自由って、いいものだね」
溢れんばかりの笑顔で、デュノアはそう語った。一夏もこの笑顔にやられたな?
そして簪、脇腹を抓るのを止めなさい。
「ほら、せっかく来てあげたんだから、さっさと模擬戦始めるわよ」
「おっとそうだった。それじゃあ二人とも、よろしく頼むわ」
「手加減はしないから、覚悟しなさいよ」
「よろしくね」
そうして二人がそれぞれのISを展開したところで、まずは俺と対戦。
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「アンタの搭乗時間からしたら、頑張った方じゃない?」
凰には青龍刀の手数に押され、
「僕の機体は中遠距離主体だから、そう簡単に近づけさせてあげられないな」
デュノアには一人弾幕をされて、全く歯が立たなかった。
まぁ仕方あるまい。ハンドガンを追加しただけで代表候補生に勝てたら苦労はしない。
そんで、少し休憩を挟んで簪と対戦したのだが
「もう無理。もうやんない」
「と、とりあえず、今日はここまでにしよう。ね?」
開始10分で、ぶっ倒れた甲龍とラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡから、そんな声が聞こえたのだった。
今更ですが、本作では
・ガンダム00
・コードギアス
上記の成分を含んでおります。
あと他作品も少々。