俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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……はい、次回からちゃんとストーリー進めますんで……


第33話 オリ主、バイトする

「ということで、バイトしていいですか?」

 

「宮下君、貴方ねぇ……」

 

金欠が発覚した翌日。俺はさっそく職員室に来て、エドワース先生の席の前に立っていた。

高校によってはバイト禁止だったりするが、IS学園はどうなんだろうと思ったからだ。

 

「基本、IS学園はアルバイトは禁止です」

 

「うわぁ……マジですかぁ……」

 

エドワース先生からの回答に、天を仰ぐしかない。

どうする? 初っ端から詰んだぞ。誰かに金借りるしかないが、それは最後の手段にしてぇなぁ……。

 

「宮下、お前には政府から補助金が出てたはずだろう?」

 

「あ、織斑先生」

 

隣の席に座っていた織斑先生が、椅子を回してこちらを向いていた。

 

「そうですよ。宮下君には『男性操縦者のデータ取り』という名目で、補助金が出てるじゃないですか」

 

「それなんですがねぇ……」

 

「なんだ? まさか次の支給が来るまで使い切ったとか、下らん理由じゃないだろうな?」

 

 

「補助金、打ち切られました」

 

 

「「はぁっ!?」」

 

先生達、驚愕した顔のまま、しばし固まる。

 

「み、宮下君!? 政府から補助を打ち切られるとか、一体何をしたんですか!?」

 

「むしろ、何もしてないから打ち切られたというか……」

 

 

端的に言ってしまえば、倉持技研からの嫌がらせだ。

連中、よっぽど技術提出要求を拒否られたのが気に食わなかったんだろうな。日本政府を唆して、ある種の兵糧攻めをしてきやがった。

実は、昨日織斑先生経由でやってきた要求、あれが4回目だったりする。補助が打ち切られたのは、確か2回目を拒否った辺りだったか。

おそらく、俺が折れて技術提出するまで続くのだろう。

 

 

という事情を話したところ、エドワース先生も織斑先生も頭を抱えていた。

 

「倉持に乗せられるとは、日本政府は馬鹿か……?」

 

「トーナメントの時はともかく、今は宮下君もカスタム機のデータを送ってるでしょうに……」

 

エドワース先生の言う通り、陰流のデータはちゃんと、IS学園経由でIS委員会に送っている。元々学園の訓練機を貸与されてるんだから、それが筋だろう。日本政府だって、支部に開示請求すればデータは見れるようになってるはずだ。倉持? 知らんな。

 

「しかしそれなら、ご実家から仕送……っいや、何でもない」

 

そうか、織斑先生は知ってるのか。俺に仕送りしてくれる()()()()()ことを。

 

「とまぁそんなわけで、臨海学校に必要なものを買う金を稼ぐために、バイトしたかったんですが……」

 

「なるほどな……」

 

織斑先生は腕を組んで考え込む仕草をすると、席を立って

 

「もしかしたら何とかなるかもしれん。付いて来い」

 

職員室のドアを開け、俺に向かってそう言うのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

そうして織斑先生に連れて来られた場所は

 

「整備室、ですね」

 

「そうだ。まさか見忘れたわけじゃあるまい?」

 

「それはないですね。ほぼ毎日見てますから」

 

それに、ハンガーに収まった打鉄とラファールが通路の左右にズラッと並ぶ光景は、そうそう見忘れるもんじゃないだろう。

ちなみに、いつもはその通路の先、整備室の隅の方を使って弐式を改造している。

 

「あれ、織斑先生と宮下君?」

 

奥のラファールの陰から、山田先生がひょっこり顔を出してきた。

 

「お疲れ様です、山田先生」

 

「どうも」

 

「珍しい組み合わせですね。一体どうしたんですか?」

 

「俺は織斑先生に連れて来られただけで……山田先生こそ、いつもは見かけないのにどうしたんです?」

 

「あはは……確かに宮下君達に比べたら、ここに来ることは少ないかもしれないですね」

 

いやいや山田先生、そんな俺や簪は整備室の主ってわけじゃ……心当たりがあり過ぎるな。

 

「私は訓練機のオーバーホールのために来たんですよ」

 

「学年別トーナメントが終わって、臨海学校の前に1度、訓練機の一斉オーバーホールを行う予定になっているんだ」

 

山田先生の説明を、織斑先生が引き継いだ。

 

「そこでだが……お前にその作業を手伝ってもらいたい」

 

「俺に、訓練機のオーバーホールを?」

 

「そうだ。お前が手伝えば、山田先生の負担が減る。そして私の裁量権の範囲で、お前にバイト代を出すことが出来る」

 

「なるほど。俺としては悪くないというか、むしろ好条件ですよ」

 

「私としても、手伝ってくれるのは嬉しいんですが……どうして織斑先生が、宮下君にアルバイトの斡旋みたいなことを?」

 

「それはですね……」

 

俺は山田先生に、職員室でした説明と同じことを話した。

 

「なんですかそれっ! 宮下君はちゃんと義務を果たしてるのに、おかしいですよ!」

 

「そういうわけですので、山田先生、宮下の事をお願いします。宮下、山田先生の指示に従ってうまくやってくれ」

 

「分かりました!」「はい」

 

「それじゃあ宮下君、さっそく打鉄のオーバーホールから始めましょうか」

 

「分かりました」

 

織斑先生が整備室を出て行くと、俺と山田先生は出入口に一番近い打鉄から作業を始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

宮下に山田先生の手伝いをさせて、私は私で面倒な書類仕事をこなしていた。

臨海学校での旅館の部屋割りなどは山田先生に任せているため、私の仕事は臨海学校中の警備プランの作成だ。

それも8割方終わり、ふと時計を見ると、あれから1時間ほど経っていた。

 

「……少し様子を見に行くか」

 

宮下の能力は疑っていないが、奴の機械馬鹿の面が顔を出して、山田先生に迷惑を掛けてないか少々不安でもある。

そして整備室で、私が見たものは――

 

「織斑先生、お疲れ様です……」

 

端末を手に作業をしている山田先生だった。だが、心なしか顔色が良くない。

 

「作業の方はどうですか? 宮下は迷惑を掛けてないですか?」

 

「いえ、迷惑なんて全然! というかですね……」

 

 

「全訓練機、オーバーホール終わりました……」

 

 

「はぁっ!?」

 

終わった!? ほんの1時間で、打鉄9機とラファール10機、計19機のオーバーホールが!?

 

「私も目を疑いました……」

 

そう言って、山田先生が端末を差し出してきた。

見ると、IS学園が管理している全訓練機のステータス画面が映っている。状態は……オールグリーン、つまり整備完了ということだ。

本来、臨海学校前日までに終わらせる計画だったんだが……。

 

「私が1機見ている間に、宮下君は4機のオーバーホールを終わらせてたんですよ……」

 

山田先生が1機やって、その間に宮下は4機。訓練機は19機あるから……

 

「……つまり、ほぼ8割は宮下がやったと?」

 

「はいぃ……」

 

これは、山田先生が情けない声を出すのも分からなくない。

普通なら手抜きを疑うところだが、学園の管理システムがオールグリーンと言っている以上、その可能性はほぼない。

一体、何をどうしたらそんな早さでオーバーホールが出来るんだ……?

 

「ところで、その宮下はどうしたんです?」

 

作業が全部終わったなら、奴はどこに行った?

 

「ああ、それなら……」

 

「山田先生ー! 直りましたよー!」

 

整備室内に別途区切られた部屋のドアが開き、そこから宮下が顔を出した。

あそこは確か、加工室だったな。装甲パーツなどの微調整のために、旋削加工機器が置いてある部屋だ。

 

「はい、これ」

 

宮下が山田先生に渡したのは、山田先生がいつもしている腕時計だった。さっきのセリフから、宮下が加工室で時計を修理したようだ。時計のような精密機器、普通は修理なんぞ出来ないはずなんだが……器用な奴だな。

 

「本当に動いてる……宮下君、ありがとうございます!」

 

「いえいえ、俺に直せる程度の故障で良かったですよ」

 

感動のあまり泣き出しそうな山田先生に、宮下は目を細める。

……時計が直っただけで、それほど喜ぶだろうか?

 

「山田先生、その時計に何か思い入れでも?」

 

「はい……この腕時計、お母さんに買ってもらったんです。私が代表候補生になった時に」

 

「そうですか……」

 

恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに語る山田先生に、思わず私も、宮下と同じように目を細めた。

 

「宮下、今日はご苦労だったな」

 

「いいえ、と言いたいところなんですが……他に作業ありません?」

 

「何?」

 

「ほら、俺ってまだ1時間しか働いてないじゃないですか? その時給分だけだと、さすがに……」

 

「……くっ! あははははははっ!」

 

先ほど山田先生に対して見せた顔と、今の何とも情けない顔のギャップに、とうとう笑いが堪えられなった。

 

「織斑先生! 俺にとっては結構死活問題なんですって!」

 

「安心しろ。時間給でなく、ちゃんと成果給で払ってやるさ」

 

「マジですか!? やったぜ」

 

「あ、宮下君。時計の修理代……」

 

「そんなのいりませんって。それじゃ俺はこれで! あっ織斑先生、今日のバイト代は早めにもらえると助かります!」

 

山田先生の申し出を断ると、宮下はさっさと整備室を出て行った。慌しい奴だな。

さて、あいつへのバイト代だが……19機の内8割、14,5機のオーバーホールを、仮に山田先生1人でやったと仮定した時の費用分を出してやればいいか。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「どうしたもんかなぁ……」

 

廊下を歩きながら、俺は今後について悩んでいた。

今回は織斑先生の厚意でなんとかバイト代をGETできたわけだが、そう何度も都合よく仕事があるわけじゃ無いし、何か収入源を見つけないとまずいよなぁ……。

 

(でも、倉持の連中にデータはくれてやりたくねぇな)

 

あのいけ好かない連中にだけは、白旗を振りたくはない。そんなことをするぐらいなら、虚先輩とかに頭下げて金借りる方を選ぶ。パイセン? あの人に借り作ったら、返す時に壮絶苦労しそうだから却下。

……いい案浮かばねぇから、一旦保留にしよう。

 

さて、あんまり簪達を待たせているわけにもいかないし、さっさと食堂に行くか。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

食堂で晩飯を食って、部屋に戻ってのんびりしていると、織斑先生がやってきて

 

「今日のバイト代だが、政府が補助金を送るのに使っていた口座に入れておいた」

 

とだけ伝えて帰っていった。もちろん、簪には聞かれないようにしてもらった。あんまりそういうとこ、見せたくないじゃん?

早めに欲しいとは言ったが、まさか日払いしてくれるなんて、非常に有り難い。

簪が先にシャワーを浴びてる間に、俺はネットから口座履歴を確認して

 

「んん!?」

 

形容し難い声を出していた。

……1時間、ISのオーバーホールしただけで、こんなにもらえるもんなの?




千冬は学園の予算について、多少の裁量権を持ってるというオリ設。
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