俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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アパム! 塩! 塩持ってこい! アパーム!!


第34話 初めてデート ミックスベリー味

バイトで何とか軍資金を手に入れた直後の週末。

前に調べたショッピングモール『レゾナンス』の前にある広場で、腕時計で時間を確認していた。

 

(時間は……9時24分)

 

待ち合わせの10時より、30分以上前に来ちまったことになる。ATMで金を下ろす分を考慮しても、早く来過ぎたな。

というか、同じ部屋から出発するのに、わざわざ待ち合わせをする必要はあるのだろうか? ……そんな風に考えてるから、今まで異性との付き合いがほぼ無かったんだろうな。

 

(さて、マジでデートなんぞ経験ねぇが、どうしたもんか……)

 

さっきも言ったが、異性と付き合った経験なんぞほぼ無いわけで、当然デートプランなんぞあるわけもなく、相談相手もいやしない。一夏? 最近朴念仁を卒業した奴に何を聞けと?

何なのだ、これは! どうすればいいのだ?!

なんて頭の中がぐるぐる空回りしている間に

 

「ごめん、待った?」

 

簪が集合場所にやってきた。俺、30分も固まったのか?

再度腕時計を見ると、9時30分。あれから数分しか経ってない。

 

「いや、俺もさっき来たところだからな」

 

「そう。でもまだ待ち合わせの30分前だよ?」

 

「そういう簪もな」

 

「それは……待ちきれなくて来ちゃったの……///」

 

「お、おう……///」

 

やばい、たぶん俺も簪と同じように顔が赤くなってる。

 

「そういえば、簪の私服って初めて見るな」

 

「そ、そう?」

 

いつも見るIS学園の制服ではなく、真紅のスカートに、ブラウスの上から薄手のケープを羽織っている。

 

「ああ、似合ってる」

 

「……陸の誑し///」

 

「いや、俺が誑しだったら、一夏とかどうなるんだ」

 

「朴念仁」

 

「……否定しないし出来ない」

 

すまん一夏、お前の名誉を守ることは出来ないようだ。

 

「と、とりあえず、当初の目的通り、水着買いに行こうぜ」

 

「うん」

 

頷くと、簪がいつも通り左腕にしがみ付こうとするが、

 

「簪、待った」

 

「え?」

 

俺はそれを制止して、簪の右手を握った。

 

「こっちの方が、それっぽいだろ?」

 

と言ってから気付いたが、手を繋ぐのと腕にしがみ付くの、どっちがカップルっぽいんだ?

 

「う、うん……///」

 

とはいえ、簪も満更じゃないようだし、今回はこれで行くことにする。

 

 

 

水着だが、俺の分は滞りなく買い終わった。

元々俺が拘りを持ってない上に、昨今の女尊男卑の風潮が関係しているのか、そもそも種類自体が少ないのだ。

適当にトランクスタイプにしたら、あとは3,4種類の色から1つ選ぶだけで終わってしまった。

 

だから、あとは簪が買うのを待っていればいい。そう思っていたんだが……

 

「どうしてこうなった……」

 

俺が今いる場所、それは女性水着売り場。どうしてそんな鬼門に立っているかと言えば

 

『陸に、選んで欲しい……』

 

と簪に上目遣いに言われたら、断れんだろう。

 

「これとこれ、どっちがいい、かな?」

 

そう言って簪が提示してきたのは、片方が黒色に白いフリルが付いたもの。もう片方がオレンジ色に花柄が付いたワンピースっぽいもの。

う~む。正直、どっちも似合いそうだから困る。

 

「……よし、両方買おう」

 

「え? 陸?」

 

両手に水着を持った簪を引っ張っていくと、俺はレジでさっさと会計を済ませた。

 

「あ、あとで払うから」

 

「いいからここは男の甲斐性を見せる手伝いだと思って、俺に払わせておいてくれ」

 

「……うん、ありがとう」

 

「その代わり、臨海学校の時は両方着たところを見せてくれよ」

 

「……陸のエッチ///」

 

「えぇ……?」

 

まさか簪からそんなセリフを言われるとは思わんかった……。俺、一夏の朴念仁がうつったか……?

 

ーーーーーーーーー

 

一番の目的だった水着が買い終わり、昼食を取るためにカフェに入って、二人で食後の飲み物(俺がコーヒー、簪がオレンジジュース)を飲んでいる時だった。

 

「あれ、織斑君?」

 

「何?」

 

簪の視線の先には、確かに私服姿の一夏と……隣にいるのは凰か?

 

「あれ……デートだよな?」

 

一夏と腕を組んで満面笑顔の凰と、照れながらも特に振りほどく素振りを見せない一夏。ラブラブ(死語)だな。

 

「たぶん、ハーレム内で争って、凰さんが勝ち残ったんだと思う」

 

「確かに一夏ハーレムの連中ならやりかねないな。それにしても、もしあれが"酢豚の約束"を知らないままの一夏だったら」

 

「きっと、凰さんの独り相撲で終わってたと思う」

 

だよなぁ……。ホント、世の中ちょっとしたことで未来が変わるな。

そう思いながら、ふと視線を移すと……うわぁ……

 

「……それで()()か」

 

「あれって……」

 

一夏と凰の後方、屋内に設置された観葉植物に隠れる、残りの一夏ハーレム達が。

 

「これはひどい」

 

「何やってんだ、あいつら」

 

他の嫁(候補)が一夏と何をしてるのか気になるのは分かるが、そんな尾行までするか?

ここからじゃ見えないが、全員の目のハイライトが消えてるような気がするし。

 

「……見なかったことにするか」

 

「うん」

 

俺達は会計を済ませると、一夏達とエンカウントしないように反対方向に歩き出したのだった。

 

ーーーーーーーーー

 

その後、俺の私服(施設から持ってきたものだと足りなくなってきた)を買ったり、簪の買い物(アニ○イト)に付き合ったり、気付けば日も傾き始めていた。

 

「それで、簪が寄りたいところってここか?」

 

「うん」

 

連れて来られたのは城址公園、元々城があった場所にできた公園らしい。そしてその公園の一角に、クレープ屋のキッチンカーが止まっていた。

 

「あそこのクレープ屋さんでミックスベリーを食べると、幸せになるらしい」

 

「幸せになる? なんだそりゃ」

 

「この前、4組の子達が話してるのを聞いて気になってた」

 

「なるほど、女子が好きな『おまじない』ってやつか」

 

「うん」

 

そんなやり取りをしながらも、俺達はバン車を改造したクレープ屋に入った。

 

「すみません、ミックスベリー二つください」

 

簪がそう言うと、店主であろう無精ひげにバンダナの男性が、人懐っこい顔で頭を下げた。

 

「あぁー、ごめんなさい。今日、ミックスベリーは終わっちゃったんですよ」

 

「あ、そうなんですか。残念……」

 

「まぁ売り切れなら仕方ない、他のを……」

 

そう言いかけて、俺はあることに気付いた。というか、()()()()に気付いた。まさか……

 

「なら、イチゴとブドウを一つずつくれ」

 

すると、店主が含み笑いをしながら俺の注文を受けた。ああ、やっぱりそういうことか。

 

「ほら、これ食って機嫌直せって」

 

代品を払ってクレープを受け取ると、簪にイチゴの方を差し出した。

 

「うん……あっ、美味しい」

 

「うん、確かに美味いな。こっちも食うか?」

 

そう言って、俺が手に持ったブドウの方も差し出した。

 

「う、うん……こっちも美味しい」

 

「そうかそうか。それで? ミックスベリーの味はどうだ?」

 

「え?……あぁっ!?」

 

そう、そもそもあの店に、ミックスベリーなんか()()()()()()()

ストロベリーとブルーベリーを、二人で分け合って食べることで『幸せのミックスベリー』になるってわけだ。

確かに、それが出来るぐらい仲が良ければ幸せだろうさ。

 

「でも、陸が注文する時『イチゴとブドウ』って」

 

「普通にストロベリーとブルーベリーって言ったら、簪が気付くかもしれないと思ってな。その辺り、あの店主も乗ってくれて良かったよ」

 

「う~……!」

 

おっと、ちょっと揶揄い過ぎたな。

 

「悪かったって。だから俺にもミックスベリーを食わせてくれよ」

 

「むぅ……はい」

 

膨れっ面をしながらも差し出されたストロベリーを齧りながら、俺は簪とミックスベリー味を堪能したのだった。

 

(ああ、こういうのを幸せって言うんだろうな……)

 

 

オマエニ、シアワセニナルシカクガアルノカ?

 

 

「っ!」

 

「陸?」

 

「いや、何でもない……クレープも食い終わったし、暗くなる前に帰るか」

 

「? うん」

 

ーーーーーーーーー

 

「うば~……」

 

外史の仕事をシギュンに半ば乗っ取られた(ロキ)は、神界で暇を持て余していた。

 

「何を暇そうにしているのですか」

 

「実際暇なんだよ。(シギュン)に仕事を乗っ取られたから」

 

「乗っ取ったとは失礼な。貴方が外史に介入しすぎて、あんな(一夏様が死ぬ)世界を作るからでしょう」

 

「はいはい、それについては反省してまーす」

 

もうそのセリフも聞き飽きましたー。

 

「それで? リクの方はうまくやってるの?」

 

「ええ、彼はなかなか見所があります。このままの調子で、一夏様を立派に成長させてくれるでしょう」

 

「さいで……」

 

過介入で怒られた僕が言うのもあれだけど、君も大概だと思うよ?

 

「いつも飄々としていながら、時には真摯な態度で物事に当たる、彼のメンタルの強さは実に素晴らしい」

 

「……シギュン、それは間違いだ」

 

「はい?」

 

そうさ、確かに普段のリクを見ていれば、頼もしく思えるだろうさ。でも、それは違うんだよ。

 

「リクはメンタルが強くなんかない。僕の配下ってことになってる現地作業員の中で――」

 

 

 

「あいつが一番、心が弱いんだよ」




唐突に意味深な伏線を持ってくるスタイル。
後々回収予定です。

さぁ、次回から海だー!(この時期に夏回を書くとは、これ如何に)
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