俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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雪はなくとも風が冷たい今日この頃、こんな時期に書く海回とは……


第35話 遊んで食って風呂入る、これぞ海の醍醐味

この外史に来て、かれこれ4ヶ月近く経つのか。

IS学園に強制入学させられて、整備室で初めて簪と出会って、のほほんも混ざって打鉄弐式を組み上げて、パイセンと決闘して。

その後もクラス対抗戦だったり学年別トーナメントだったりと、イベントには事欠かなかったな。

そして気付けば簪と付き合うようになって。ホント、人生ってやつは何があるか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマエニ、シアワセニナルシカクガアルノカ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海っ! 見えたぁっ!」

 

「っ!」

 

気付けばそこは、バスの中だった。

 

「陸、大丈夫?」

 

「あ、ああ……」

 

隣の席から、簪が心配そうな顔で覗き込んでいた。

 

「俺、寝てたのか……?」

 

「凄いうなされてた」

 

「そうか……あんまりいい夢じゃなかったからな」

 

くそっ、どうして今更になって……!

 

「そろそろ目的地に着くから、みんなちゃんと席に座ってねー」

 

「「「はーい」」」

 

エドワース先生の号令で、海を見るために右側に寄っていた左席の面子が席に戻り始めた。

もうひと眠り……する気にはなれんな……。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ほどなくして、バスは目的地の旅館『花月荘』前に到着。出迎えてくれた旅館の人に挨拶を済ますと、みんな自分の荷物を持って中に入っていった。

 

「なぁ陸……って、大丈夫か? 顔色悪いぞ」

 

「平気だ平気。バスの中で寝てたら嫌な夢見ちまっただけだ」

 

「そうか……。それで、お前の部屋ってどこだ?」

 

「俺のか? そういえば知らねぇな」

 

「俺も、女子と寝泊まりさせるわけにはいかないからって、別の部屋を用意するとしか聞いてないんだよ」

 

「一夏もか?」

 

部屋割り一覧にも載ってなかったし、まさか男二人床で寝ろとか言わんよな?

 

「織斑、宮下、お前達の部屋はこっちだ。付いて来い」

 

と織斑先生に呼ばれ、女子達の部屋からそこそこ離れた先のドアには『教員室』の張り紙が。

 

「えっと……俺と陸が同室ってわけでは……」

 

「それだと、就寝時間を無視した女子が押し掛けてくるだろう。だから却下になった」

 

「「はぁ……」」

 

俺も一夏も、ついでに織斑先生も、ため息しか出なかった。

押し掛けられても困るんだが。あとで簪に脇腹抓られるから。

 

「なので、織斑は私と、宮下は山田先生と同室になったわけだ」

 

「よろしくお願いしますねー」

 

「あー、お願いします」

 

隣の部屋から、山田先生がひょこっと顔を出した。俺はそっちの部屋でお世話になるわけですか。

 

「一応大浴場も使えるが、男のお前達は一部の時間のみ使用可能だ。お前達2人のために、他の大多数の使用時間を削るわけにもいかんからな」

 

「そこは仕方ないでしょうね」

 

「まぁ、まったく入れないよりはいいか」

 

「さて、今日は一日自由時間だ。荷物を置いたら好きにしろ」

 

「「はい」」

 

織斑先生の指示に返事をすると、俺と一夏はそれぞれ自分の荷物を持って部屋に入った。

 

「おっ、結構広いな」

 

中は2人部屋なのか、広々とした作りになっていた。外側の壁が一面窓になっていて、すでに何人かの女子が海に飛び出すのも見えた。準備早いなっ!?

 

「宮下君、荷物はそこに置いてください」

 

「分かりました」

 

山田先生に指定された場所にボストンバックを置くと、中から小さめのリュックサック(水着やタオル類入り)を取り出す。

 

「楽しんできてくださいねー」

 

手を振る山田先生に見送られる形で、教員室を出て着替えに向かったのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「あっ織斑君だ!」

 

「うそっ! わ、私の水着、変じゃないよね!?」

 

「わ~、かっこい~。鍛えてるね~」

 

「宮下君も、ガッチリ鍛えてる感じ?」

 

水着に着替えて海に出てきた瞬間、女子からの視線が辛い。

 

「陸ってあんまり運動してるイメージなかったけど、結構鍛えてるのな」

 

「何言ってんだ。ほぼ毎日、弐式や陰流の装甲やら武装やら持ち上げたり運んだりしてんだぞ? ある程度筋力がなきゃやってらんねぇよ」

 

「それもそうか」

 

戦車程ではないものの、ISの装甲もそこそこの重さがあるからな。操縦者もそうだが、整備員も太ってる奴は少ない。というか、まともに整備してたら太りようがない。

 

「俺は泳ぎに行こうと思うけど、陸はどうする?」

 

「俺はとりあえず、簪と合流してから考えるわ」

 

「あ、そうか。俺も箒達と合流した方が……」

 

「いや、その必要はないぞ」

 

「へ?」

 

俺が指さした方を一夏が見ると、そこには一夏ハーレムの5人が勢揃い。

 

「「「「「いーちかっ!」」」」」

 

「う、うわぁっ!」

 

あっという間に揉みくちゃにされる一夏。男冥利に尽きるねー。(棒)

 

「陸」

 

後ろから聞こえた声に振り返ると――

 

「どう、かな?」

 

黒色に白いフリルの水着を着た簪が、足をもじもじしながら立っていた。

 

「お、おう……すげぇ似合ってる……」

 

「そ、そう……///」

 

お互い、そのまま固まってしまった。

 

「あ~! りったーん! かんちゃーん!」

 

「本音?」「のほほん?」

 

フリーズしていた俺と簪が、のほほんの声がする方を向くと

 

「「はぁっ!?」」

 

全身がスッポリ収まる狐の着ぐるみ。それがのほほんの今の姿だった。

 

「お前、水着はどうしたよ?」

 

「これが水着だよ~」

 

「これが!?」

 

いやいや、どうやったらそれで泳げるんだよ!?

 

「それより二人とも、早くあそぼー!」

 

「ちょ、本音……!」

 

「おまっ、引っ張るなって!」

 

のほほんに腕を掴まれ、そのまま海に向かって引っ張られていった。

 

 

 

その後はビーチバレーを観戦したり、沖まで出ない程度に軽く泳いだり、砂遊びをしたりして過ごした。

 

「砂遊びってレベルじゃなかったけど……」

 

「立派なお城が出来たよね~」

 

のほほんが言うように、結構な力作だったぞ。リヒテンシュタイン城。

 

「それにしても、まさかビーチバレーに織斑先生が参戦するとは」

 

「すごかったもんね~。あのパーフェクトゲーム~」

 

「対戦相手のデュノアさん、涙目だった」

 

「逆にラウラウは、尊敬の眼差しだったよね~」

 

結局その二人は、織斑先生のスパイクサーブを攻略できず、逆に自分達のスパイクは尽く防がれ、のほほんの言うように完敗したのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

そんなこんなで日も暮れて、時刻は午後7時半。大広間を3つ繋げた大宴会場で、俺達は夕食を取っていた。

 

「それにしても、昼も夜も豪勢な食事だよなぁ」

 

「うん。IS学園は羽振り良すぎ」

 

そう言って、隣に座っている浴衣姿の簪も頷いた。

 

この旅館では『食事中は浴衣着用』、さらに座敷なので正座という決まりらしい。なんでだよ。

そんなわけで、ずらりと並んだ生徒は全員浴衣姿で正座だ。そして一人一人の前に膳が置かれている。

メニューは刺身に小鍋、山菜の和え物に、味噌汁と漬物。しかもなんと刺身はカワハギ(肝付)。金かかってんなぁ。

 

「っ~~~~~~~~!!!!」

 

「なんだ?」

 

くぐもった大声が聞こえた方を見ると、1組の列で、鼻を押さえて涙目になっているデュノアが。

 

「たぶん、わさびを一度に食べ過ぎたんだと思う」

 

「ああ、なるほど……」

 

隣に座っている一夏が茶を渡してるし、おそらく簪の推測が正解のようだ。

あ、オルコットが一夏に食わせてもらってる。正座が辛いのにかこつけて、おねだりでもしたか?

 

「まったく、お熱いこった。なぁ簪――」

 

1組の方を見ていた視線を戻すと、右側に刺身を持った箸が。

 

「あ、あ~ん……///」

 

「……」

 

すまん一夏。今日この時だけは、お前のことを笑えないようだ。

そして口にした刺身だが、気恥ずかし過ぎて、味なんて分からんかったぞ……。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「「ぷはー!」」

 

なぜか旅館で風呂入ると、自販機の瓶牛乳を飲みたくなるんだよな。隣で一夏が飲んでるのはフルーツ牛乳だが。

 

「なぁ、陸」

 

「ん?」

 

「俺、どうしたらいいんだろうな……」

 

「何がだよ。目的語を付けろ」

 

「いきなり重婚許可なんて言われても、俺、どうしたらいいのか……」

 

おいおい、まだ悩んでたのか。

 

「織斑先生とは家族会議したんだろ?」

 

「千冬姉は『不実な真似だけはするな』ってだけ……」

 

「なんだ、その通りじゃねぇか」

 

「いやだって、複数の女性と結婚って、どう考えても『不実な真似』になるだろ」

 

一夫一妻制の日本で生きてきた一夏からしたら、嫁が複数いるのは不実って考えにもなるか。けど、

 

「俺はそうは思わんがな」

 

「え?」

 

唖然とする一夏を余所に、俺は自販機でもう1本瓶牛乳を買った。今度はコーヒー牛乳にすっか。

 

「篠ノ之達のこと、好きなんだろ?」

 

「そ、そりゃあ……」

 

「ならそれでいいじゃねぇか。全員を平等に愛せずに、誰か1人を贔屓しそうだってんなら話は別だがな」

 

「そう、なのかな……?」

 

「それに、だ。そもそも一夏が結婚できるようになるのは、3年は先の話だろ」

 

「あっ」

 

あっ、じゃないが。お前まさか、学生結婚とかする気だったんじゃねぇだろうな?

 

「ま、今焦って決める必要はないってことが分かればいいさ。『各国のお偉いさん達が、あいつらと一緒にいる口実をくれた』程度に思っとけ」

 

「そっか……まだ考える時間はあるんだもんな……」

 

やっぱいつかの織斑先生が言ってたように、一度思い込むと空回りして視野が狭くなるのが一夏の弱点だな。

 

「サンキュ、陸。なんかモヤモヤしてたのが晴れた気がする」

 

「おう。報酬はツケておくな」

 

「お、お手柔らかにな……」

 

さわやか笑顔を若干引きつらせながら、一夏は教員室の方に去っていった。

 

「さて、俺も引き揚げるか」

 

空瓶を回収用のカゴに入れると、俺も一夏のあとを追うように歩き出した。

 

 

 

「そういや、明日は七夕か」

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