俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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臨海学校編、シリアスモード入りまーす。


第37話 戦場の洗礼

山田先生と織斑先生が手話を始めたと思ったら、突然自室内待機が言い渡された。何が何だか分からん。

 

「専用機持ちは全員集合だ! 篠ノ之も来い!」

 

そして旅館の一室に、俺を含めた専用機持ちが全員集められた。

 

「2時間前、ハワイ沖で試験稼働中だったアメリカ・イスラエル共同開発の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が暴走、監視空域より離脱したと連絡があった。また、衛星による追跡と進路予測の結果、福音はここから2km先の空域を通過することが分かった」

 

「……」

 

全員、厳しい顔をして黙り込む。

おい、まさかこれって……

 

「先生、まさか俺達専用機持ちに、その軍用ISを止めろとか言うんじゃないでしょうね」

 

「そのまさかだ。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することになった。その際、教員は空域及び海域の封鎖を行う。よって、福音の迎撃は専用機持ちに行ってもらう」

 

おいおい……いくら最新鋭のISに乗ってるからって、学徒隊とかシャレにならねぇぞ……!

 

「それでは作戦会議を行う。意見があるものは挙手するように」

 

「はい」

 

さっそく、オルコットが手を挙げた。

 

「福音の詳細なスペックデータを要求します」

 

「分かった。ただし、これらは2カ国の最重要軍事機密だ。決して口外するな。情報漏洩した場合、諸君には裁判と最低2年の監視が付けられる」

 

「了解しました」

 

代表候補生の5人と教師陣は、開示されたデータを元に相談を始めた。俺は当然として、一夏と篠ノ之も蚊帳の外だ。

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……オールレンジ攻撃が行えるようですわね」

 

「攻撃と機動力特化ね。しかもスペック上ではあたしの甲龍を上回ってる……」

 

「この特殊武装が曲者だね……ちょうどリヴァイヴ用の防御パッケージが来てるけど、連続しての防御は難しい気がするよ」

 

「それにしてもこのデータでは挌闘性能が未知数だ。偵察は行えないのですか?」

 

「無理だな。この機体は現在超音速飛行を続けている。アプローチは1回が限界だろう」

 

蚊帳の外から聞いてるだけでも、状況が芳しくないのがよく分かる。事前情報が無い状態で戦うことほど、怖いもんはねぇからな。

 

「1回だけのチャンス……ということはやはり、一撃必殺の能力を持った機体で当たるしか……」

 

山田先生の言葉に、全員がある方を見た。そう、一夏の方を。

 

「え……?」

 

「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ」

 

「お、俺が行くのか?」

 

「「「「当然」」」」

 

一夏ハーレムの声がハモった。

 

「私のメメントモリって手もあるけど……」

 

「織斑、これは実戦だ。もし覚悟が無いなら、無理強いはしない」

 

簪と織斑先生が一夏に逃げ道を用意するが、それは悪手だ。

 

「やります」

 

ほらな。そんな風に言ったら引けなくなるんだよ、一夏って奴は。というか織斑先生、それは明らかに一夏を追い込む言い方ですって。

 

「よし、それでは作戦の具体的な内容に入る。この中で、最高速度が出るISは?」

 

「それでしたら、わたくしのブルー・ティアーズが、。ちょうど本国から強襲用高機動パッケージが――」

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

……天井から束が降ってきた。文字通り、降ってきた。

 

「とぅ!」

 

その束は落下中に前宙を決めると、ス○イダーマンのようなポーズで着地した。

 

「かっこいい……」

 

簪、目をキラキラさせるな。あれはマネしちゃダメなやつだから。

 

「ここは断・然! 紅椿の出番なんだよ!」

 

「何?」

 

「ほら見てちーちゃん! 紅椿なら、すーぐ超高速機動ができるんだよ!」

 

束がそう言うと、数枚のディスプレイが織斑先生の周りに現れる。

 

「なるほど……それで束、紅椿の調整にはどれぐらいの時間がかかる?」

 

「お、織斑先生!?」

 

なぜかオルコットが慌て出した。

 

「(たぶん、高機動パッケージを持ってるのが自分だけだから、当然作戦に参加できると思ってたんだと思う)」

 

「(ああ、一夏との共同作戦って思惑が外されたわけか)」

 

「わたくしとブルー・ティアーズなら……!」

 

「オルコット、お前の言っていたパッケージは、量子変換(インストール)済みか?」

 

「い、いえ……」

 

「ちなみに、紅椿なら10分もいらないよ♪」

 

束の言葉で、結論が出たようだ。

 

「では、本作戦を伝える。篠ノ之が織斑を目標地点まで運搬。その後、零落白夜によって対象を撃墜する。作戦開始は30分後。各員、ただちに準備にかかれ」

 

織斑先生の号令で、全員が動き出そうと立ち上がったところで

 

「宮下と更識、お前達には織斑達の後詰をしてもらう」

 

「はい?」

 

「後詰、ですか?」

 

俺達も参加しろと? しかも俺と簪だけ?

 

「お、織斑先生! どうして宮下さん達だけ……!」

 

うん、オルコット言ってやれ。

 

「落ち着けオルコット。宮下達に後詰をさせるのは、万一不測の事態が発生して作戦を中止した時に、織斑達をキチンと撤退させるためだ」

 

「確かに、命令を聞かずに敵に吶喊しそうな二人だからな」

 

「わ、私はそんなこと……!」

 

「そ、そうだ! 俺だってそんなこと……!」

 

ボーデヴィッヒの指摘を否定する二人だが、誰も支持しちゃくれないと思うぞ。ちなみに俺もな。

 

「つまり、何かあったら一夏と篠ノ之を殴ってでも連れ戻す係ってことですか」

 

「そういうことだ。頼んだぞ」

 

簪の方を見ると、『しょうがない』って顔をしていた。たぶん俺もそんな顔をしてるんだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

そして現在、俺と簪は先行した一夏達を追う形で、海上を飛行しているわけだ。

 

「さすが束お手製のIS。スピードが圧倒的だな」

 

「でも、正直篠ノ之さんが使いこなせてるとは思えない」

 

「それなんだよなぁ……」

 

出発前に見たあの篠ノ之だが、ありゃ明らかに手に入れた(IS)に溺れてるな。

 

 

『なぁ箒、先生達も言ってたが、これは実戦なんだ。十分に注意して――』

 

『分かっているさ。 どうした? 怖いのか?』

 

『そうじゃねぇって。俺が言いたいのは――』

 

『ははっ、心配するな。お前はちゃんと私が運んでやる』

 

 

一夏との会話もご覧の通りだった。正直、一夏よりも篠ノ之を見てやんないとダメかもしれんな……。

 

「陸、織斑君達と対象の接触まであと20秒」

 

「何? もうそんなに先行してたのか」

 

『もう少しで目標ポイントだ。用意はいいか、一夏!』

 

『ああ! 絶対に成功させるぞ!』

 

オープン・チャネルで2人の会話も聞こえてくる。

 

『見えた! 一夏!』

 

『いくぜぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

織斑の威勢のいい声が聞こえたと思ったが

 

『一夏!?』

 

篠ノ之の驚く声が被る。

 

「おい、どうした!?」

 

こっちもオープン・チャネルで話しかけるが、返事が返って来ない。どうなってんだ!?

 

『一夏! せっかくのチャンスになぜ――!?』

 

『船がいるんだ! 海上は先生達が封鎖したはずなのに――密漁船か!』

 

「密漁船!? どうして……!?」

 

「簪、絶句してる暇はねぇ、急いで合流すっぞ」

 

「う、うん!」

 

 

 

全速力で飛ばして現場に着いた時、一夏の白式はすでにSE切れ寸前で、篠ノ之が何とか福音の攻撃を捌いて――

 

「馬鹿者! 犯罪者などを庇って――」

 

「箒!!」

 

「っ!?」

 

「そんな寂しいこと、言うなよ……。力を手にしたら、弱い奴のことが見えなくなるなんて……箒らしくないだろ……」

 

「わ、私、は……」

 

動揺した篠ノ之が、持っていた刀を落として……そして粒子になって消えた。あれは、具現維持限界(リミット・ダウン)! 篠ノ之のSEも限界が近いのか!

そして何よりまずいのは、あの二人が福音の目の前で動きを止めていることだ。

 

「あんのバカタレ共……!」

 

ここはアリーナじゃない、戦場なんだぞ!? そんなことしてる暇なんて……!

 

「陸! 福音の攻撃が来る!」

 

簪の悲鳴のような声と、福音がスラスターに付いた砲口を一夏達に向けていた。

 

「箒ぃ!」

 

何とか状況に気付いた一夏が、篠ノ之を庇おうと福音の射線上に出てきた瞬間、

 

 

俺はまた、何もできないのか?

 

 

俺の体は、自然に動いていた。

 

「陸!?」

 

後方から聞こえてくる簪の声も、

 

「陸!?」「宮下!?」

 

前方から聞こえてくる一夏や篠ノ之の声も、聞こえてはいたが、頭の中に入って来なかった。

 

気付けば、俺は篠ノ之を庇う一夏のさらに前、福音の真ん前に陣取っていた。

そこから見える、エネルギー弾の一斉射。ここまで飛んでくるのに消費したSE残量を考えれば、打鉄のカスタム機など、ひとたまりもないだろう。

間違いなく絶対防御を抜いてくる。命の保証なんてありはしない。それでも、

 

「それでも、俺は……」

 

そう呟いた直後、目を覆いたくなるような閃光と、体中を焼かれるような激痛が襲い掛かる。だが……!

 

「俺はぁぁぁっ!」

 

SEが切れる具現維持限界(リミット・ダウン)寸前で、無理矢理腕を伸ばして、福音のスラスターを鷲掴みにする。

 

「簪ぃぃぃぃぃっ!」

 

俺が叫ぶまでもなく、あいつは福音の背後に回り込んでた。以心伝心か、いいな……。

 

「これでぇ!」

 

弐式の右手が福音の首根っこを掴み、メメントモリ特有の赤黒い光が点滅する。

 

「La……」

 

福音の手が俺に向かって伸びてくる。そしてその指が俺の首を掴もうとしたところで、

 

福音が粒子化して消え、簪に首を掴まれた操縦者が残った。

 

「予定と違ったが……任務、完了、だ、な……」

 

「陸ッ!」

 

あー、俺の陰流もSE切れか。このまま真っ逆さまに落ちたら、海にドボンだな。絶対防御が生きてるうちに、海から拾ってもらうしかないなー。

 

(こんな俺でも……守れたよ……。なあ、刹那……ルルーシュ……)

 

大きな水音と背中に感じる激痛に顔を顰めつつも、海面から3()()()I()S()が見えることに安堵して、俺は意識を失った。




おやおや~? 白式が第二形態移行(セカンド・シフト)するタイミングが無くなっちゃいましたね~。どないしよ……。(ガチ悩み)
勢いで書いた結果がこれだよ……。

今後の展開で、何とか帳尻合わせます。はい。
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