俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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そろそろギャグ要素を詰めませんとね。


第3話 和解と会長とアームロック

翌日の放課後、俺は簪から買い物を頼まれて、整備室と購買の間を往復していた。教室にいる時に言ってくれれば、わざわざこの廊下を往復する手間も無かったんだがなぁ。

なんて思っていると

 

「だーれだ?」

 

誰かに視界を塞がれた。殺気や敵意の類が無かったが……それだけじゃ敵かどうか分らんな。というか、敵ってなんだよ。

さて、どう返したもんか……

 

「新東雲学園都市の丸目さん?」

 

「……そんな名前の都市なんか無いし、丸目さんって誰よ」

 

適当に知り合いの名前を挙げたら、呆れたような声が返ってきて、視界を塞いでいた手がどけられた。

振り向くと、簪のような青髪の……って、昨日写真を見たばっかだな。

 

「それで、俺に何用ですか? 更識生徒会長」

 

「あら、ちゃんと知ってるじゃない。関心感心♪」

 

「昨日入学パンフレット見せられるまで知らんかったですよ」

 

「えぇ……」

 

ニコニコ顔から一転、(ll´-д-)()みたいな顔になった。

えらく感情が顔に出る上に、コロコロ変わる人だな。

 

「それで、俺になんか用ですか?」

 

「もう、つれないわね。もう少しお姉さんの話に付き合ってよ」

 

「……」

 

俺はおもむろに更識会長に近づくと、左腕を取って

 

――バッ! ギュッ!

 

 

「があああああああ!」

 

 

アームロックをキメた。

自分でやっといてなんだが、乙女が出しちゃいけない声が出てるな。

 

「こ、こんなのすぐに……なんで、外れないの!?」

 

「申し訳ないですが、まだるっこしいのは嫌いなもので。それで、俺に何用ですか?」

 

――ギュッ! ギュッ!

 

「は、放して! 話すからまずは放して!」

 

「『話し』と『放し』をかけたダジャレですか?」

 

――ギュゥゥゥッ!

 

 

「んがあああああ! 私が悪かったから早く放してぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

涙目で懇願されたから、一旦ロックを外した。

それにしても、さすがゴローちゃんのアームロック。学園最強(パンフレットにそう書いてあった)をも泣かせるとは、見よう見まねで覚えて良かったな。

 

「うう~……女の子になんて事するのよぉ……」

 

「それで、俺に何用ですか? 更識パイセン」

 

もうパイセン呼びでいいやこの人。最初に初対面を揶揄おうとした時点で、『会長』って呼んで敬う気も失せた。

 

「簪ちゃんについて、聞きたかったのよぉ」

 

「簪について?」

 

何で知り合ったばっかの俺に、姉であるパイセンが聞くんだ?

 

「簪って呼び捨て……貴方、簪ちゃんに一体何をしたのよぉぉぉ!」

 

と、俺の簪呼びが気に食わなかったのか、胸倉を掴みかかろうとしたから

 

――バッ! ギュッ!

 

 

「があああああああ!」

 

 

さっきより、気持ち強めにアームロックをキメた。

というか、学習してくれよパイセン……

 

 

 

 

「つまり、妹と同室になった男がどんな人間か気になって、尾行していたと」

 

「はい、そうです……」

 

腕組んで仁王立ちしてる俺と、その眼前で正座しているパイセン。普通立場逆じゃね? いや、俺が正座したいわけじゃないが。

 

「そんなに妹の事が気になるなら、自分で……って、それは無理か」

 

それが出来てるなら、ここまで姉妹の仲が拗れてないわな。

 

「簪ちゃん、貴方に色々話したようね……」

 

「まぁ、人様の家庭事情に首突っ込む形になったのは、申し訳ないとは思ってますがね」

 

まさか、『IS作りを手伝おう』から、こんなデカい不発弾(更識姉妹の不和)が埋まってるとは思わんかったよ。

 

「ホント、不躾なんだから」

 

「否定できませんね。っとそうだ、不躾ついでに、一つお願いがあるんですが」

 

「何よ?」

 

「簪の専用機が完成した暁には、あいつと……決闘してほしいんです」

 

「決、闘?」

 

パイセンが呆けた顔をした。いきなり妹と決闘しろとか、意味わからんか。失敗失敗。

 

「あいつは、ずっと比較対象にされてきた姉、パイセンに追いつこうとしています」

 

「ええ、知ってるわ。()()()()()()()()打鉄弐式を引き取って、私と同じように一人で組み上げようとしていることも」

 

やっぱり知ってたか。

 

「これは簪本人にも言いましたが、仮に一人で組み上げても、周りはまた『楯無の妹だから』と言って終わるだけでしょう」

 

「それを簪ちゃんに言ったの?」

 

「睨まんでください。だから提案したんですよ、『お前の姉ちゃんとISで勝負して勝てばいい』って」

 

「はぁっ?」

 

まぁ、普通ならそういう反応になるよな。一国の代表に、候補生が勝てって言ってんだから。

 

「でも、それぐらいしないと、簪はずっと貴女の背中を、影を追うだけになってしまいます」

 

「それは……」

 

「だから、もし打鉄弐式が完成したら、簪と勝負してください。お願いします」

 

俺はパイセンに頭を下げた。

 

「な、なんで貴方が頭を下げるのよ?」

 

「『出来る限り協力する』って言っちまってるんで。俺の頭一つ下げて上手くいくなら、いくらでも下げますよ」

 

簪との約束を守るためなら、頭一つぐらい軽い軽い。

 

「……貴方にとって、簪ちゃんって、何なの?」

 

パイセンが慌てた顔から突然、真顔になる。

 

「少なくとも、パイセンが思ってるような仲じゃないですよ。クラスメイト兼ルームメイト兼同志、は言い過ぎか」

 

「同志……」

 

「『更識楯無に勝とうぜ』っていう同志ですよ。もっとも、今は俺が勝手に思ってるだけですけど」

 

なにせ、まだ返事を保留されてる状態だからな。

 

「勝手に思ってるだけで、ここまでやるの?」

 

「そうですね。もしこの後簪に拒否られても、俺の下げた頭一つが無駄になるだけですから」

 

「……そっか」

 

俺の回答に満足したのか、パイセンは苦笑しながら

 

「それが聞けただけでも、今回は悪くない収穫だったわ」

 

と、苦笑しながら踵を返して

 

「もし簪ちゃんの専用機が完成したら、その勝負、受けるわ」

 

元々生徒会長は生徒からの勝負を拒めないしね~、と手をひらひらさせながら去っていった。

ええ~……つまりどうあっても勝負自体は受けてくれたのかよ……頭下げ損じゃん。

 

「……ま、まぁ、約束は果たしたってことで、な?」

 

そうやって自分に言い訳しつつ、簪が待ってるであろう整備室への移動を再開した。

……悪ぃ、やっぱ辛ぇわ……

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

私は一人で整備室にいた。

陸には少しの間、外に出てもらった。これは、私達2人の、ううん、私が解決しなきゃいけない問題なんだから。

 

「かんちゃ~ん……?」

 

今朝メールを送っていた時間通りに、本音が整備室にやってきた。

不安そうな顔をしてる。それはきっと、私との過去のやり取りがあってから、ずっとそうだったんだろう。

 

「ひ、久しぶり、だね?」

 

「う、うん。そうだね~……」

 

違う、そうじゃない。言うべきはそうじゃないでしょ、私!

 

「本音……」

 

「何~……?」

 

 

「ごめんなさい……!」

 

 

「か、かんちゃん~!?」

 

驚く本音をよそに、私は本音を抱きしめていた。

 

「今まで、本音は私の心配をしてくれてたはずなのに……せっかく手を伸ばしてくれてたのに……」

 

そうだ。私の従者で、私の親友の彼女は、あの時だって手を伸ばしてくれた。誰も私を見てくれなかった時も、()()()()が……。

その手を、私が払ったのだ。もしかしたら、心の底では恨まれてるかもしれない。それでも――

 

「ごめん、ごめん、本音……」

 

「かんちゃん……」

 

何に謝ってるのか分からないはずなのに、本音は私を抱きしめ返すと

 

「かんちゃん、私のことを嫌ってたわけじゃなかったんだね~……」

 

「嫌いなわけない……!」

 

それは間違いなく言える。私は本音が嫌いであんなことをしたわけじゃ……!

 

「良かった~。私、かんちゃんに、嫌われて、避けられ、てた、わけ、じゃ……!」

 

「本音……!」

 

気付けば、私も本音も泣いていた。二人で抱き合いながら、涙を流し合っていた。

でもそれは、悲しい涙じゃない。

やっと謝れた喜びと、やっと本心を聞くことが出来た喜びの、涙だったんだと思う――

 

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