「申し訳なかった!!」
あ……ありのまま、今起こった事を話すぜ!
『地獄の期末テストが終わり、さぁ夏休みだと思った矢先、織斑先生から呼び出しを受けて簪と学園長室に来てみたら、日本国の首相に頭を下げられた』
な……何を言ってるのか分からないと思うが、俺も簪も何をされたのか分からなかった……。
頭がどうにかなりそうだった……ドラマの撮影だとかパイセンの仕掛けたドッキリだとか、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わってるぜ……。
「今回のことは、完全にこちらの落ち度だ」
そうして目の前の男(首相)は、事の顛末を話し始めた。
倉持技研に唆されて、政府から俺に支払われる補助金が打ち切られた件。これは政府側の担当者が独断でやらかしたことらしい。
今回、俺と簪が自由国籍取得を考えてることについても、当初は『どうしていきなり?』という感じだったそうだ。で、そこで初めて補助金打ち切りの件を知ったと。ねぇねぇ君達、監査って何のためにあると思ってるんだい?
そして担当者を締め上げたところ、さらにとんでもないことが発覚した。その独断君と倉持の上層部には、『女性権利団体』という共通点が見つかったのだ。
もうお察しだろう。そう、今回の一件は『
「現在、倉持技研を始めとしたIS関連機関や政府機関から、女権団関係者の掃除を行っている最中だ。今後はこのようなことが無いと誓おう」
「はぁ」
「君が被った被害についても、きっちり補償する。だから自由国籍の件、考え直してくれないか?」
あ、やっぱ着地地点はそこなんだな。
織斑先生と学園長に視線を向けるが……特に反応なし。完全に傍観者に徹するつもりらしい。
「(どうする簪)」
「(私としては、陸に付いていくだけだから、日本国籍のままでも構わない。もちろん今後、同じようなことが起こらないことが前提だけど)」
「(だな。なら……)」
「分かりました。自由国籍の件については、一旦取りやめようと思います」
「そ、そうか……! ありが「ただし!」あ、ああ……」
「次にまた女権団ないし政府が何かやらかしたら、俺と簪はオランダ辺りにでも鞍替えしますので」
「わ、分かった。肝に銘じよう……」
こうして、俺と簪の日本脱出計画は、一時保留となったのだった。
首相の言ってた補償とやらで、俺には今まで払われなかった補助金が、延滞金と謝罪金込みで振り込まれることになった。……デュノア社へ売った設計図の代金の方がデカいのは、言っちゃいけないお約束か。簪も、担当企業を倉持技研から好きな企業に変える自由をもらっていた。これで名実ともに、倉持とはおさらばだ。
ちなみに、今回の一件でやらかした倉持技研の第一研究所所長は、首がポロリしたらしい。……社会的にだよな?
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「ありがとう簪ちゃん宮下君~!!」
「うわっぷ!」
「お、お姉ちゃん、く、くるしい……!」
約束通り、自由国籍を保留にしたことをパイセンに伝えたら、簪ともども抱きしめられたんだが。
そろそろ簪がマジで危なそうなんで、離してもらえます?
「二人が日本に留まってくれるおかげで、私と織斑先生の胃が救われたわ!」
「ここ数日、お嬢様と織斑先生の胃薬消費量は異常でしたから……」
おいおいマジかよ……俺も簪も、まさかここまでの騒動になるとは思ってもみなかった。
「第3世代機を一人で組める陸が自由国籍になるとか、騒動になって当然」
「ええ~……」
訂正、騒動になると思ってなかったのは俺だけらしい。
「いいえ、すでにお嬢様にも勝てる簪様も、騒動の種になってます」
「ええ~……」
さらに訂正、やっぱり簪も思ってなかった。
「あ~、やっとあの胃痛から解放されるのね~」
パイセン、なんつー清々しい顔してやがる。……そんなに俺達、気苦労掛けたのか?
「と、とりあえず、俺達はこれで……」
「ええ、報告ありがとう」
ハイテンションになってるパイセンを虚先輩に任せて、俺と簪は生徒会室を後にした。
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「まったく、困っちゃうわね……」
アメリカ西海岸のとあるマンションの一室――秘密結社『
「どうしたんだ、スコール?」
「これ見てよ」
そう言って、私はオータムに端末を渡した。
「なんだこりゃ。日本の中枢にいた女権団の連中が、一斉にこっちに流れ着いてきたって?」
「そうなのよ。どうも例の"2人目"の件がきっかけで、一斉摘発がはいったようね」
「で、追い出された連中が、ってか。しかもこいつら、団体からは尻尾切りにされたんだろ?」
「ええ。『今回の件は一部の過激派が独断で行ったことで、我々は一切関与していない』ですって」
「正直、いい迷惑だな」
「まったくよ」
オータムが言うように、そんな簡単に切られるような無能を取り込んだところで、実働部隊の私達としてはいい迷惑でしかない。
だってそうでしょ? 実働部隊に回ってきたら、無能すぎて使えないどころか足を引っ張られそうだし、幹部会に入った日には、彼女達考案のお馬鹿な命令がこっちに回って来る。ホント、いい迷惑よ。
「それで、私達はどう動く?」
「しばらくは待機よ。エムがイギリスで"荷物"を受け取るまでは、ね」
「はっ! あのガキ待ちかよ! つまんねぇなぁ」
「はいはい、拗ねない拗ねない」
「スコール……」
さっきまで拗ねていたのに、オータムってばすぐ甘えてくるんだから。可愛い可愛い、私の恋人……。
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日本脱出計画を保留した日の晩、食堂で一夏達も交えて晩飯を食っていた。
「倉持技研、本当に大丈夫か……?」
「大丈夫だって。白式を担当してるのは第二研究所って話だから、今回粛清を食らった第一とは別らしいぞ」
「そ、そうなのか。それなら一応安心、なのか?」
一夏にとっては気が気じゃねぇだろうな。今でさえサポートらしいサポートがねぇのに、ここで開発元が無くなったら目も当てられない。
「ねぇ更識さん! 担当企業を変えられるなら、デュノア社とかどうかな!?」
「
「あ、あざといさん!?」
「あ、やべ、主音声と副音声逆だった」
「宮下君!?」
「ほらシャル、落ち着けって」
「一夏ぁ……」
いやいや、そうやって一夏にべったりなるから、あざといんだって。
「宮下をドイツに迎えれば、名誉挽回できると思ったのだがなぁ……また司令部からお小言をもらうのか……」
ボーデヴィッヒ、そんな遠い目しないでくれ。なんか俺が悪いことしたいじゃねぇかよ。
「だぁもう、悪かったよ。ほら、これやるから泣き止めよ」
「べ、別に私は泣いてなど……! で、これはなんだ?」
俺がボーデヴィッヒに渡したのは、握り拳大の、淡青色の正八面体。
「綺麗ですわねぇ」
「それで、これ一体何なの?」
「劣化版ISコア」
「「「ファーッ!?」」」
「試しに作ってみたんだが、束の作った正規品の5割程度しか性能が出なかったんだよなぁ」
貰ったISコアを解析したら、ブラックボックスの多いこと多いこと。で、そのブラックボックスの部分を推測で作ってみたんだが、結果はさっき言った通り。やっぱ束はすげぇわ。
「劣化版とはいえ、ドイツのISコアが増える……ふ、ふふふふっ、ふはははははっ! これで先の失態をチャラにできるぞ!」
「うわー、ラウラ嬉しそー……」
「それにしても宮下さん、まさかISコアまで作ってしまうなんて……」
「宮下……自制してくれ……」
あれ? 凰もオルコットも篠ノ之も、なんでそんな目で見んだよ。それ失敗作なんだぞ? 分かってる?
「陸、またやらかしたの?」
「そうみたいだ……」
その後、俺が何か作ったら、簪のチェックが必須になった。俺、どんどん簪の尻に敷かれてくなぁ……。
ファントム・タスクの面々って原作でも出番が多くないから、口調や性格が把握し切れてなくて大変です。
さぁ、次回からやっと夏休みだよ!(遅い)