(もし読み応えが無かったらスンマセン)
夏休みも終盤に差し掛かった頃、俺、簪、のほほんは整備室にいた。
「なんだろうな、夏休みを満喫してたはずなのに、ISの整備をしてる方が落ち着くって」
「分かる」
「りったんもかんちゃんも、ほとんど職業病だね~」
「そういう本音も、ここに来てる」
「チョコバー、美味しかったよ~」
チョコバー1本で釣られてくるのほほんも、俺達のこと言えないと思うぞ。
「よし、陰流はこれでいいな。そっちはどうだ?」
「もうちょっと~」
「あと、左スラスターだけ」
「分かった。そんじゃ片付けはこっちでやっとくな」
工具箱を持って立ち上げると、のほほんも一緒に立ち上がった。
「え~悪いよ~。かんちゃん、りったん手伝ってもいい~?」
「うん、スラスター片方だけなら、私だけで大丈夫」
「というわけで、私も手伝うね~」
「そうか。ならこっちの頼むわ」
「りょうかい~」
のほほんに工具箱を持たせ、俺はパーツの入った箱を持って収納場所へ。工具置き場も同じ方向だから、俺の後ろをのほほんが付いてくる形だ。
「ねぇりったん~」
「なんだ?」
「覚悟、決めた~?」
「……今日だ」
のほほんの目的語のない問いに、ごく自然に答える。
「そっか~」
それぞれの収納場所に着いて、それぞれの場所に仕舞う。
「この間は、協力サンキューな。正直俺には専門外だったからな」
「あの位、全然だよ~。というか、私もお姉ちゃんも、専門ってわけじゃないんだよ~?」
のほほんはそう言うが、俺にとっては結構重要だった。ある意味、今までで一番のほほんに感謝したことかもしれない。
「……りったん」
「ん?」
振り返ると、
「……かんちゃんのこと、よろしくね~」
まるで慈愛に満ちたような顔で、のほほんに言われたのだった。
ーーーーーーーーー
晩飯を食って部屋に戻る。帰り際、のほほんの奴、めっちゃニコニコいてやがったな。こっちは内心緊張しっぱなしだってのに。
「陸、先にシャワー使うね」
「おう」
タオルやら着替えやらを持ってシャワールームに入る簪に返事をする。
(まだ言えないのか、俺の馬鹿野郎)
のほほんには『今日だ』と言っておきながら、自分の度胸の無さに自己嫌悪しかねぇ。
「少し、頭冷やすか」
ベランダに出て夜風に当たる。夏だから少し生ぬるいが、熱帯夜ってほどじゃない。風呂上りでもなければ、特に問題ないだろう。
そうして、空を見上げて星空を眺めていると、この外史に来てから今までのことを思い出す。
最初は脇役でいるはずだった。原作主人公である一夏とも一切接触せず、ただただISを弄るだけの生活を続けるはずだった。
だが、それも簪と出会ってから変わった。いや、変われたんだ、俺自身が。だから俺は、簪に伝えないといけないんだ。
(いや違う。
「俺は変わるよ、刹那。お前がロックオンの旦那の代わりに変われたように」
ーーーーーーーーー
シャワーを浴びて部屋に戻ると、陸の姿が見えなかった。
「陸?」
もう一度見渡して……いた。
「陸」
「おう。いくら夏だっていっても、シャワー上がりだと風邪ひくぞ?」
「大丈夫」
そう言って、私はベランダに立っていた陸の横に並んだ。
「ったく……ほら」
そんな私に、陸が着ていた制服の上着をかけてくれる。
「それで、陸は何してたの? こんな夜にベランダに出て」
「俺か? 自分の度胸の無さに、少しばかり自己嫌悪してたところだ」
「……何の冗談?」
「おい」
陸に度胸がないって、これまでのことを振り返っても、あり得ないんだけど……。
「だぁもう……あれこれ頭ン中で堂々巡りしてる俺が馬鹿みてぇじゃねぇかよ」
「ふふっ、陸らしくない」
「わぁったよ。そこまで言われて、逆に吹っ切れたっつーの」
苦笑いしていた陸が、急に真顔になる。なんだろう、緊張してる?
「臨海学校の最終日、覚えてるか?」
「うん。忘れようがないよ」
陸の過去を知った日。彼と
「俺さ、正直悩んでたんだ。あれだけ泣いてて何をって思うかもしれねぇけど……このまま簪と一緒にいていいのか、簪を巻き込み続けていいのかって」
「……」
そんなこと、考えなくていいのに……。これは私が決めたこと、私が選んだことなんだから。
「ロキに俺と一緒にいることについて、泡沫の夢だと指摘された時も、実は覚悟してたんだ。これで簪の心が離れても、仕方ないってな」
「でも私は言ったよ。例え泡沫の夢だろうと、陸と一緒にいることが、私の望みだって」
「ああ。それを聞いた時、めちゃくちゃ嬉しかったんだ。簪が、ここまで覚悟を決めてくれていたことに」
「陸……」
「だから……俺も、覚悟を決めたんだ」
そう言って、陸は私の右手を取り、
「最期まで、俺と一緒に歩んでほしい」
薬指に、瑠璃色の石が乗った銀色のリングが収まった。
「これって……」
指輪に驚いている私を、陸が優しく抱きしめる。
「気の利いたセリフが出てくれば良かったんだけどな……他に、言葉が見つけられなかった……」
震える声で、けれどハッキリと――
「愛してる、簪」
「り、く……」
嬉しいのに、涙が止まらない……。すごく驚いてるのに、心が温かいよ……。
「ダメ、か?」
ダメかなんて、聞かないでよ。ダメなわけ、ないよ。どうしてそんなこと聞くの? 陸の馬鹿……。
「私も……」
「私も愛してるよ、馬鹿ぁ……!」
喉を枯らしそうなほど泣きながら、私も陸を抱きしめた。離したくない、ずっと一緒にいたいと想いながら……。
ーーーーーーーーー
私のくしゃみで色々我に返った私達は、そそくさと部屋の中に戻った。
「でも、私の指のサイズ、よく知ってたね?」
陸に教えたことも、測られた覚えもないけど。
「そこは布仏姉妹に協力してもらった。のほほんに指のサイズ、虚先輩に店の場所とかな」
「本音もグルだったんだ……」
「グルって言うな、グルって」
晩御飯を食べた後、何故かいつもよりニコニコしてたのは、そういうことだったんだ。
「この石も虚さんの?」
「いや、石は俺が選んだ。やっぱダイヤの方が良かったか?」
「ううん! 全然!」
ただでさえ指輪を薬指にはめられて心臓バクバクなのに、ダイヤモンドリングだったりしたら……いつかはもらいたいけど……。
「おーい、簪?」
「だ、大丈夫! それで、この石って、ラピスラズリ?」
「そうだ。俺も最初は無難にダイヤにしようと思ったんだがな……宝石言葉とやらを聞いて、こっちにしたんだ」
「宝石言葉?」
花言葉みたいなもの?
「ああ。ラピスラズリの宝石言葉は……」
『永遠の誓い』
「……」
「簪?」
「もう……陸は……」
これ以上私を嬉し泣きさせて、どうするの……?
「ずるいよ陸は……ホント、ずるい……」
さっきとは逆に、私から陸を抱きしめる。
「何度でも言うよ。私は陸を愛してる。永遠に、未来永劫、何があろうと」
「簪……ああ、俺も簪を愛してる。永遠に、未来永劫、何があろうと」
陸と私。どちらからということもなく、顔を寄せ合い、唇を重ねていた……。
この曲を聴きながら書いてました。youtubeとかで是非とも聴いてみてほしいですね。
曲名:愛の詩
アーティスト:末廣優里