(つまりギャグパートが始まるということ)
第49話 愛の暴走列車
夏休みが終わり、二学期の初日。IS学園を揺るがす発表がなされた。
『国連および国際IS委員会の合意により、織斑一夏に特例で重婚を認める』
「一夏との、重婚を認める……?」
「つまり、わたくし達全員、一夏さんと……?」
「うそぉ……」
「さすが私の嫁だ」
「一夏のお嫁さんに……」
一夏ハーレムの面々は驚きながらも、内心では皆同じ事を考えていた。
(((((つまり、私(僕)(わたくし)達5人の中で、誰が正妻になるかの勝負……!)))))
さらに
(((((これ以上嫁候補が増えないように、全員で協力しないといけない)))))
奇しくも陸が予想していた通り、一夏ハーレムがハニトラ要員を弾く役割を果たすのだった。
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ついに一夏の重婚許可が正式発表がされたわけだが、4組は比較的静かなもんだ。
いつものように簪と教室に入り、いつものように席に着く。帰省してた連中同士で自国のお菓子を交換してるのが、いかにもIS学園らしい。
「ねぇねぇ宮下君、1組の織斑君の話聞いた?」
「重婚許可ってやつか?」
「そうそう! 宮下君にはないの?」
「あるわけないだろ。ありゃ一夏の関係者と繋ぎを作りたい各国が結託した結果だぞ」
「うわー、宮下君夢がないこといわないでよぉ」
夢も何も、それが事実だからな。
「SHRを始めますよー」
教室にエドワース先生が入って来て、いつも通りのSHRが……
「みなさん、1組の織斑君に重婚が認められたことは知ってると思いますが、この度宮下君にも同様に重婚が認められました」
「……パードゥン?」
どゆこと? 俺が重婚? エドワース先生、エイプリルフールはとっくの昔に終わってますが?
「「「「え~~っ!?」」」」
「ちょっと待ってください! それって一夏が
「そうだけど……宮下君、貴方も篠ノ之博士と繋がりがあるでしょう? 臨海学校のこと、国の偉い人達の耳に届いてるわよ」
「ガッテム!」
あの紫兎ぃぃぃ!!
「それが無かったとしても、第3世代機の設計図をデュノア社に売った時点で手遅れね」
「ぬおぉぉぉぉ!」
それは完全に俺の投げたブーメランだぁぁぁ!
「へぇ、それじゃあ私もお嫁さん候補に立候補してみようかな~?」
「織斑君のようなハンサム系もいいけど、宮下君のようなワイルド系もいいよね~」
近くの席の女子達が、ニヤニヤしながらそんなことを口にする。揶揄い半分だろうから、別に気にもしないが。
「先生、ちょっといいですか?」
「あら、更識さん、どうしたの?」
先生からの問いには答えず、簪は席を立つと、俺の方に歩いて……
「んっ……」
「………むぅ!?」
「「「「え~~っ!?」」」」
か、簪! 舌! 舌入れるのはなしだって……!
「ぷはっ!」
「あらあら~」
あらあらじゃねぇって先生! 周りもみんな、唖然としてるだろぉよ!
「か、簪……」
「陸は誰にも渡さない。それでも引かないなら、私がいつでも相手になる。臆さないなら、掛かって来るといい」
「さ、更識さん、かっこいぃ……」
「お姫様の宮下君を守る騎士って感じ?」
あれ? 俺と簪の立ち位置、おかしくなってね? 簪がナイト役なん?
「あれ? 更識さんの薬指、指輪が……」
「もしかして……」
女子の一人が目ざとく指輪を見つけ、周囲も簪に視線を向ける。
「……陸との、誓いの証///」
簪よ、恥ずかしくて顔が真っ赤なのはいいが、どうしてそこで体をくねらせる。いや、全然この状況はよくねぇんだが。
「なーんだ。もう更識さんが独占購入してたんだ」
「さすがにこれには勝てないわぁ……」
そんな言葉を漏らしながら、みんなぞろぞろと自分の席に戻っていく。
「……」
「簪、お前も戻れ」
「嫌」
嫌じゃないが。なんでだよ。
「先生……」
「仕方ないから、更識さんは宮下君の膝の上で授業を受けてね」
「はい」
「おぃぃぃぃ!?」
仕方ないって何!? 簪が自席に戻れば済む話だろ!? なぁ!
「陸の膝の上♪」
「ええー……」
「それじゃあ、このまま1時限目の授業を始めますねー」
「「「「はーい」」」」
「マジかよ……」
そうして1時限目のIS理論の授業は、簪を膝の上に乗せて受けることになったのだった……。
「はい、正解です。宮下君、更識さんの頭を撫でてあげてね」
「なんでさ!」
エドワース先生もみんなも、悪ノリしすぎだろ!!
「陸ー」
「お前も撫でてほしそうにすんなよ!」
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疲れた。法関係の授業は無かったはずなのに、めっちゃ疲れた……。
這う這うの体で食堂に辿り着き、のほほんと合流。何とか昼飯にありつけそうなわけだが……。
「かんちゃんの大演説、1組でも大反響だったよ~」
「どうしてあんなことしたんだろう……」
かき揚げうどんを前に頭を抱える簪に、追加攻撃を加えるのほほん。
脳内麻薬が切れてもその時の記憶はあるらしく、まるで初めての飲酒で酔っ払ってやらかした新社会人のようだ。
「そんなに後悔するなら、やらんでくれよ……」
もう一生分は揶揄われた気がする。もういらん。
正直、目の前にある唐揚げ定食を完食できるかも分らんくらい疲れてんだ。
「よう、陸……」
「……一夏、何があったのかは聞かん」
「そうしてくれ……」
以前、一夏を中心に篠ノ之、オルコット、凰がくっ付いて、ファイナルフュージョンでもするかのような有様だったが、今回はさらにデュノアとボーデヴィッヒが追加され、専用機持ちのリアクティブアーマーと化していた。
「で、お前らは一夏と重婚する気満々なんだな?」
「「「「「もちろん!」」」」」
一夏の展開装甲になっているハーレム5人の声がハモる。お前ら、そういう時だけ団結力高ぇのな。
「ということらしいぞ、一夏」
「ああ……それについては、もう腹を括ったよ」
そう言う一夏の顔は、疲れた苦笑いといった感じだ。少なくとも、こいつらとくっ付くことを嫌がってるわけじゃなさそうだ。
「一夏もこう言ってるわけだし、あんまり喧嘩せず、それでいて他のハニトラ要員は排除するように頼むな」
「「「「「おー!」」」」」
「なんか、陸の方がうまく操縦できてね?」
「そん代わり、俺はこいつの操縦が出来そうにない」
視線を簪の方にずらす。だから、頭抱えたいのは俺なんだって……。
「更識さんの演説は俺も噂で聞いた。お前、重婚許可されても絶対更識さん以外とは結ばれない。間違いなく」
「いいんだけどな、簪以外とくっ付く気はないし」
「うわっ、この期に及んで惚気かよ!?」
もう惚気るしかねぇんだよ。惚気まくってこの状況に早く慣れねぇと、恥ずか死ぬ。
「一夏、そろそろ私達もお昼を食べないと」
「そうですわ。また織斑先生に怒られてしまいます」
「そうだな。それじゃ陸、また放課後」
「おう」
ぞろぞろと、一夏ハーレムが券売機に向けて大移動を開始する。
「おりむー、5人いっぺんにお嫁さんとか、すごいね~」
「だな。俺は簪一人だけだから、そこまででもないが」
とりあえず、あの5人の誰かから刺されないことを祈るしかないな。
「さて、そろそろ予鈴が鳴りそうだし、教室に戻るか」
「そうだね~」
「あうう、食べ終わるまで待って……」
「おい、食べ終わんのかそれ……?」
頭抱えてる間にうどんは伸び伸び、かき揚げは全身浴を通り越して汁の吸い過ぎで水中分解。ハッキリ言って大惨事だ。
「んぐぐぐ……! ぷはっ!」
「うわ~、かんちゃんほぼ飲み込んだよ~……」
のほほんが言うように、麺も汁もかき揚げも、全部一緒くたに飲み干しやがった。あ、やっぱ苦しそう。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫」
「ったく……ほら」
「うん」
仕方なく背中を向けて屈むと、簪もその背中にしがみ付いた。おんぶである。また教室に戻ったら色々言われるんだろうなぁ……。
「今日の放課後も、第3アリーナだよね~?」
「うん。夏休み中に積んだ装備のテスト」
「りったんもかんちゃんも、夏休みも変わらないね~」
のほほんの言うことも最もだが、もはやルーティンと化してるからな。機械弄りしない方が、却ってムズムズする。
「いつも通り、専用機持ちと模擬戦しながら動かしてみるか」
「うん。特にオルコットさんと戦ってみたいかも」
「あ~、今回の新装備、せっしーの装備に似てるもんね~」
「オルコットさんのブルー・ティアーズに、どれだけ迫れるか楽しみ」
さてはて、この夏休みの間に、一夏を始めとした専用機持ちがどれだけ強くなってるか、新装備が通用するか楽しみだな。
簪のキャラが暴走しました……。書き始めた時は、こんな感じじゃなかったんや……。