俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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学園祭まで、しばらく掛かる見込みです。気長にお待ちください。
と言いますか、この章は他より長くなると思います。(2倍で済むだろうか……)

そして、気付けばもう50話目(プロローグと閑話を除く)なんですね。『一なま』から比べるとゆったりペースですが、今後ともご愛顧いただけますと幸いです。


第50話 セシリア強化計画(強制)

宮下陸は激怒した。必ず、かのセシリア・オルコットの怠慢を除かなければならぬと決意した。陸には上流階級の生活がわからぬ。陸は、機械馬鹿である。図面を書き、機械を組み立てて暮して来た。けれども他人の成長度合いに対しては、人一倍に敏感であった。

 

……どうして陸が、そこまで怒ってるのか。

 

「どうして素人同然の俺に惨敗してんだよ! おらぁん!」

 

「ひぃぃぃっ!」

 

聞いての通り、陸とオルコットさんが模擬戦をして、オルコットさんが惨敗したからだ。

第3世代機に乗っているオルコットさんが、カスタム機とはいえ、第2世代機に乗ってる陸に負ける道理はない。でもあっさり負けた。しかも負けた理由が……

 

「てめぇ、どうして一夏とやりあった代表決定戦から何か月も経つのに、『ビットと自分を同時に動かせない』弱点がそのままなんだよぉ!?」

 

「そ、それは……」

 

「まさか、一夏との模擬戦ばっかやってて、弱点克服にリソース割いてないなんてことは、ないよなぁ?」

 

「そのぉ……実は……」

 

――ゴリィッ!

 

「みゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「成敗」

 

陸、両腕にお仕置きアームロックは酷だと思うなぁ……。

 

「腑に落ちんのだが、どうしてセシリアが弱いと、宮下がキレるのだ?」

 

「それはなぁボーデヴィッヒ、こいつが弱い状態で簪の新装備を披露すると、色々まずいからだ」

 

「どういうことよ?」

 

凰さんだけでなく、織斑君を含めた全員が首を傾げる。新装備の詳細を知ってるのが私達3人だけだから、当然と言えば当然だけど。

 

「なぁ陸、更識さんの新装備ってどんなものなんだ?」

 

「あ~……実際戦ってみた方が早いか。簪、悪いんだが模擬戦してくれねぇか?」

 

「うん。元々そのつもりだったから」

 

「それじゃあ、対戦相手は……」

 

「いや、一夏ハーレムの5人対簪だ」

 

「「「「「はぁ?」」」」」

 

うん、普通そう言う反応になるよね。

 

「まぁまぁ、騙されたと思って……」

 

「……いいだろう、宮下の戯言に乗ってやろう」

 

ボーデヴィッヒさんが対戦位置に立つと、他のメンバーも渋々といった表情をしつつ彼女の横に並んだ。

 

「そんじゃカウントするぞ。3…2…1…始め!」

 

陸のカウントが終わると同時に、オルコットさんとデュノアさん、ボーデヴィッヒさんが射撃態勢に入り、篠ノ之さんと凰さんが接近戦を仕掛けるために突撃態勢を取った。けど、遅い。

 

「行って、ファング!」

 

ミサイルポッドの裏側に増設されたバインダーから小型のビットが射出され、先端にエネルギー刃を形成してみんなに襲い掛かる。

 

「なぁっ!?」

 

「ビットだと!?」

 

「宮下の奴、とうとうBT兵装にまで手を出したのか!?」

 

射出された10基のビット、GNファングは1人に対して2基ずつに分かれ、背後や真下といった死角を狙って飛び回る。

 

「すばっしこくて、攻撃が当たらない……!」

 

「しかもこいつら、死角ばっか狙って……!」

 

みんな頑張って避けてるけど、

 

「ぐあぁぁっ!」

 

経験値が一番少ない篠ノ之さんがまず被弾。体勢が崩れたところに連撃を食らい、SEが0に。

そうなると、篠ノ之さんを攻撃していた2基が自由になる。

 

「きゃあぁぁっ!」

 

自前のビットで何とか迎撃していたオルコットさんも、ファングの増援を背後から受けて戦闘不能。

そうなっていくと、あとは自由になるファングがどんどん増えていき、

 

「ぐはっ!」

 

「う、うわぁぁぁっ!」

 

「あ~……ごめん、降参」

 

ボーデヴィッヒさんとデュノアさんが撃墜。ファング全基に囲まれた状態で凰さんが白旗を振って、変則模擬戦は終了した。

 

ーーーーーーーーー

 

「圧倒的だったね~かんちゃん」

 

「おう。自律制御システムも良好のようだし、成功だな」

 

「自律制御? セシリアのビットとは違うのか」

 

「そうだ。オルコットのビットはあいつ自身が操作してる。だからビット操作している間、本人は無防備になる。一夏も、そこを突いて代表決定戦では戦ったんだろ?」

 

「ああ」

 

当時のことを思い出しながらなのか、視線が上を向きながら首を縦に振って肯定する。

 

「簪のは完全自律制御、要は『簡単な指示だけして、あとの行動はISにおまかせ』ってことだ」

 

「え? それじゃあのビット、更識さんが操ってるわけじゃ無いのか?」

 

「違うんだよ~。山嵐のマルチロックオン・システムを流用して、ターゲットだけ選択したら、あとは撤収指示を出すまで全自動~」

 

「なんだろう……セシリアには悪いが、完全にブルー・ティアーズの上位互換じゃねぇか」

 

「そう。それが問題なんだよ」

 

「へ?」

 

一夏が『それの何が問題なんだ?』って顔になる。まぁ、普通は問題なんてないんだろうが、

 

「ここで俺がティアーズシリーズの上位互換を作ったって知られてみろ、今以上に面倒事が……」

 

「りったん、ラウラウに劣化版ISコアあげた件で、織斑先生にコッテリ絞られてたもんね~」

 

「ああ……納得」

 

昼休みに呼び出しを受けて生徒指導室に行ったら、

 

『宮下ぁぁぁ! 貴様またやらかしたなぁぁぁぁ!!』

 

って、鬼の形相しながらギャン泣きする織斑先生にエンカウントした時の恐怖といったら……その後めちゃくちゃ説教されたよ。

所詮失敗作だし俺個人だから大丈夫だと思ったんだが、そうは問屋が卸さなかったらしい。例え劣化版でも欲しがる連中は多かったらしく、世界各国がウチにも寄こせとクレクレ厨と化したらしい。

その所為で、アラスカ条約の第7項『各国家、企業、組織・機関でのコアの取引はすべての状況下において禁止されている』に『ここでいうコアとは、新たに製造されたものも含む』と付け加えられたそうだ。つまり、俺の劣化版ISコアも取引禁止、というか、織斑先生と簪の連名で製造禁止令が出た。どうやら俺の見込みが甘かったようだ。性能5割の不良品でも、供給が少ない希少品だとこうなるのか。

 

とか話してたら、簪と一夏ハーレムの面々が戻って来た。

 

「お疲れ、簪」

 

「かんちゃん、お疲れ様~」

 

「うん。GNファング、使えそうだね」

 

「おう。あの感じなら、特に修正も必要なさそうだな」

 

「ビット兵器……更識さんに先を越されて、わたくし、どうしたら……」

 

オルコットの目からハイライトが消えてんな。篠ノ之達も、どう声を掛けたらいいのか困ってる感じだ。だが問題ない。

 

「そんなオルコットに、ちょうどいいもんがあったから持ってきた」

 

「それ、さっき部屋に取りに行ってたやつだよね~?」

 

「なんか、VRのヘッドマウントディスプレイみたいだな」

 

のほほんと一夏が言う通り、俺が模擬戦中部屋に戻って取ってきた代物で、見た目はまんま、VRゴーグルだ。

 

「あの、それは一体……」

 

「まずはこれを着けまーす」

 

「えっ、ちょ――!」

 

有無を言わさず、オルコットの頭に装着。

 

「スイッチオン」

 

すると、カクンと糸が切れたように、オルコットの体から力が抜ける。

 

「うぉっと!」

 

「一夏、ナイスキャッチ」

 

「いやいや! 一体セシリアに何したんだよ!?」

 

フフフ、知りたいか? ならば教えよう!

 

「簡単に説明するとだな、こいつを装着すると、5分で1ヵ月分の経験を仮想世界で体験できる。そしてオルコットには1時間かけて、ビット操作に必須な並列思考(マルチタスク)を身につけてもらおうってわけだ」

 

「それって……」

 

「5分で1ヵ月なんだよね? それが1時間で12倍だから……」

 

「セ、セシリアは1年間、精神世界で並列思考の特訓を受け続けるのか!?」

 

「それ、ほぼ拷問じゃない……」

 

拷問とは失礼な。確かにある外史では、懲役刑の囚人にこれを使った例はあるけどな。30日間装置を付けさせて、懲役700年オーバーっていう終身刑も真っ青な刑罰にした例が。

 

――チョンチョンッ

 

「ん?」

 

「ねぇ陸、私、この装置について知らなかったんだけど?」

 

か、簪さん? 笑顔が怖いですことよ?

 

「いやこれ、前々からあった奴で、簪のチェック対象じゃ……あい、すんません」

 

セシリアが戻ってくるまでの1時間、俺は簪の前で正座させられたのだった。解せぬ。

 

――1時間後

 

 

「おほほほほっ! まだまだいきますわよぉ!」

 

「セ、セシリア! いくら並列思考を習得できたからって、飛ばし過ぎだよ!」

 

オルコットは無事(?)、並列思考を習得した。今ではほら、デュノア相手にビットをバンバン飛ばしつつ、自分もレーザーライフル片手に飛び回ってる。

 

「せっかく習得したんですのよ? ここで見せ場を……はれ?」

 

あ、精神力が尽きたみたいだ。って、落ちる落ちる!

 

「出番だ一夏!」

 

「お、おう!」

 

白式を緊急展開した一夏が瞬時加速(イグニッション・ブースト)をぶっぱして――ギリギリのところでオルコットをキャッチした。あっぶねぇ。

 

「ふわぁぁぁ、い、一夏さんに、わたくしぃ……」

 

聞こえるかどうかの小さな声で呟いて、コテッとオルコットの意識が落ちる。幸せそうな顔しやがってからに……。

 

「それにしても……これ、何かに使えそうよね」

 

凰が仮想空間潜入用ゴーグルをしげしげと見つめる。

 

「肉体的なフィードバックはないだろうが、精神修行の類には使えそうだな」

 

「ねぇ宮下君、これって並列思考習得以外のプログラムってないの?」

 

「あるが、図書館の仮想世界で本を読めるとかだぞ?」

 

「面白そう。ねぇ、この装置、貸してくれない?」

 

「あたしも! 本はともかく、仮想世界ってどんなのか実体験してみたい!」

 

「いいぞ。今んとこそれ1台しかないから、順番に貸し合って使ってくれ」

 

「「分かったわ(よ)!」」

 

 

 

こうしてオルコットは並列思考を習得、簪のGNファングもうまく動作して、めでたしめでたし……

 

「宮下ぁぁぁ! お前という奴はぁぁぁぁ!!」

 

……はい、翌日、あのゴーグルを使ったデュノアが仮想世界の図書館に入り浸ったせいで授業に遅刻して、なぜか製作者の俺も一緒に怒られました。解せぬ。これはマジで解せぬ。




というわけで、オリ主にはISコア製造禁止令が出ました。
さすがに量産されるとシナリオ的にもマズそうなのでね。感想欄からご指摘センキュー!
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