「それでは第3回、打鉄弐式改造大会を始めまーす」
「わー」
「前回はGNドライブを付けたけど、今回は?」
「もう『改造大会って何!?』ってツッコミはないのか」
簪も大分染まってきたなぁ。嬉しいような、寂しいような。
「今回はある意味大規模だな。地味だが」
「地味なの~?」
「おう。なにせこいつだからな」
そう言って俺が取り出したのは――
「……GNドライブ?」
「陸、まさかもう1基付ける気……?」
「そうだ。2つのGNドライブを同期させて、相乗効果で膨大なエネルギーを生成するって寸法だ」
「ツインドライヴシステム……」
「ああ」
かつて俺がソレスタルビーイングに所属し、開発に関わっていた、ダブルオー・クアンタに搭載されたシステム。
あの時のことを思い出すのが怖くて、今まで目を背けていたシステム。だが、もういいだろう。いい加減、過去にびくつくのはヤメだ。
「というか陸、それ後いくつあるの……?」
「これか? 残念だがこれで看板だ」
「そうなの? 他にもあったら、みんなのISにも付けられたかもしれないのにね~」
のほほんはそう言うが、俺は簪の弐式以外に付ける気はない。この前のオルコットの件は勢い余って強化しちまったが、本来簪のブリュンヒルデへの道を険しくする行為は避けないといけないからな。……デュノア社に設計図売った時点で、説得力無いけど。
「そんじゃのほほん、簪、前回より慎重にやってくぞ。特に同期周りは神経使いそうだからな」
「りょうか~い」
「分かった」
――3時間後
「ふぃ~、疲れた~」
「集中しすぎて、目がシパシパする……」
「あ~、俺も久々にキテるなぁ」
元々付いてたGNドライブと新しい物を両肩装甲に移し、ISコアと同期するように設定した。その所為か、見た目はダブルオーガンダムに近くなっている。クアンタは胸部の前後にGNドライブがあったからな。
「実際の動作テストは明日にして、今日はマッチングテストだけして終わろう」
「分かった。GNドライブとISコアが同期してるのを確認するんだよね?」
「ああ」
「私はいつも通りアリーナの予約に行ってくるね~」
俺が計器を用意、簪が弐式に乗り、のほほんが整備室を出て行く。
「簪、準備はいいか?」
「うん。いつでも」
「それじゃあ始めてくれ」
「ツインドライヴ、起動」
打鉄弐式の両肩から、緑色のGN粒子が放出される。それと同時に、弐式の機体出力も上がっていき……
「想定出力に到達。よし、うまくい――なっ!?」
「ど、どうしたの?」
出力が、まだ上がる……!?
「弐式の出力、想定値の1.7倍……いや、2倍に到達……!」
「2倍!?」
「まさか、ISコアが増幅してるのか……?」
「陸、どうするの?」
「……一旦これで止めとこう。起動と同期はうまくいったんだ、これ以上は危なそうだ」
「分かった」
GN粒子の放出が止まったのを確認して、弐式を待機状態に戻す。
「それにしても、想定値の2倍ってすごいね」
「ああ。俺もまさか、こんな現象が起こるとは……」
もしこれで、トランザムを使ったらどうなるのか。とにかく今は、予定より上手くいったことを喜ぼう。
「二人とも~、明日第4アリーナが空いてたからそこにしたよ~」
「おうのほほん、ご苦労さん」
いつも通りトテトテと走ってきたのほほんに対して、頭を撫でてやった。いつもはそんなことしないが、たぶんツインドライヴが上手くいってテンションが上がっていたんだろう。
「えへへ~、りったん珍しい~」
のほほんも嬉しそうだし……(くいくいっ)ん? 簪、頭を指さしてどうした?
「はよ」
……簪の頭も撫でてやる。
「~♪」
最初に会った時から、簪も変わったなぁ……。そんな簪を可愛がるのも吝かじゃないが。
ーーーーーーーーーーーーー
翌日、第4アリーナで俺達を待っていたのは
「見学者よ」
「……」
「お姉ちゃん……」
「たっちゃん、天丼はどうかと思うな~」
何なんだ、生徒会長ってドヤ顔して登場しないといけない規則でもあんのか?
「本音がアリーナを予約した時点で、私が監視するのは確定なのよ。学園上層部からも言われてるし……」
「あ~……」
毎度おなじみパイセンの遠い目に、何と言えばいいのやら。
「それと簪ちゃん」
「何?」
「その薬指……」
パイセンが指さす先には、簪の右手薬指に収まっている、瑠璃色の石が乗ったリング。
「うん。陸からもらった」
「そう……宮下君」
「はい」
「簪ちゃんを泣かせたら、承知しないからね」
「肝に銘じておきます」
真正面から見合うこと数秒、先に目を離したのはパイセンだった。
「はぁ……本格的に、簪ちゃんが取られちゃったのね……」
「お姉ちゃん、取られたって……」
「ねぇねぇ、動作テストしないの~?」
「そうだな。さっさと準備すっか」
「うん。そうしよう」
「ちょっと3人とも!? さらっと流すとか酷くない!?」
唖然とするパイセンを放置して、俺達はテストの準備をし始めた。
「それじゃあ簪、前回以上に気を付けてな」
「うん。もう壁にめり込みたくないから(ジトー)」
「いやあれ俺悪くないやん」
GNドライブを初めて付けた時のテストで俺が注意する前に壁に突っ込んだ件、まだ根に持ってるのかよ。
「武装は夢現だけだ」
「了解」
簪の周りには、山嵐のテストでも使ったドローンを20機ほど展開している。これを夢現だけで全機撃破してもらう。
「それじゃカウント始めるぞ」
今回は口頭のカウントではなく、公式の機械を使って行っている。
俺の端末と同じように、簪の方にもカウントが流れているはずだ。そしてそのカウントが0になった瞬間、
――ドドドドドドォォォンッ!
「え……?」
パイセンの声だけが、その場に響いた気がした。
……簪が動いたと思った瞬間、20機のドローンが全て消えていた。
「す、スローモーションは~?」
「お、おう」
のほほんに促されて、記録用カメラの映像をスロー再生するが……
カウント0と同時に簪の姿がブレたと思ったら、次のコマではドローンを夢現で切りつける姿が。
「何、これ~……」
「もうこれ、
「マジっすか」
パイセンの言ったことが本当なら、GNドライブ起動時の弐式は常時瞬時加速状態ってことだ。……反省もしないし後悔もしてない。
「陸、システムに追加されてるのがあるんだけど。"トランザム"って」
「あっ、それは触らんでくれ」
「うん、分かってる。ここで使ったら危ない」
「理解してくれてるようで何より」
「「???」」
よく分かってないのほほんとパイセンには悪いが、使用も説明も出来ない。
トランザム。GNドライブ内のGN粒子を全面開放することで、機体出力を跳ね上げるものだ。ただし時間制限がある上、使い切ったGN粒子の再チャージに時間を要するデメリットもあるが。それだけならのほほん達に見せても問題ないんだが、これがツインドライヴシステムとなると話が変わる。
ツインドライヴシステムでトランザムを使用した場合、放出される膨大な粒子の影響で、機体周辺で意識の共有が起こるのだ。さすがにそれはアカンだろう。
「とにかく、動作テストも問題なさそうだな」
「成功っていうか~……」
「もう全部簪ちゃん一人でいいんじゃないかしら……」
パイセン遠い目、のほほん引きつった笑顔。
「陸、ハイパーセンサーが機体速度に付いていけてない。改修が必要」
「マジか。って、そんな状態でよくあんな機動出来たな」
「うん。だから……もう限界」
「お、おい」
弐式を待機状態に戻したところで、簪が膝から崩れ落ちた。
「頭がくらくらする……陸、おんぶ」
「まぁ、今回は仕方ないな」
簪も頑張ったことだし、今回は要望通りにしてやろう。
「(これからかんちゃん、誰と模擬戦すればいいのかな~……?)」
「(少なくとも私は無理。瞬殺はないにしても、勝てるビジョンが見えないわ。織斑先生を第3世代の専用機に乗せて互角……になるかしら?)」
「(もうかんちゃん、ブリュンヒルデになったも同然だね~……)」
「(本音、それは言わないお約束よ……)」
簪最強伝説が、今始まる……。
ここまで来ると、束を除いたら亡国機業ぐらいしかラスボスになりそうなのががががが。