ラウラのフリフリメイド服の再来を熱望している方々、もうしばらくお待ちください。
(作中で書くとは言ってない)
とある夜、俺は以前オルコットに使った、仮想空間潜入用ゴーグルを複製していた。
ただし、5分を1ヵ月に伸ばすとかじゃなく、単純に仮想空間にダイブできるだけのダウングレード版だが。
「どうしてそんなものを作るの?」
今回はちゃんと簪に事前申告したところ、そんな質問をされた。
「ちょっと試したいことがあってな」
「試したいこと?」
「いつぞやの授業で習った内容で、ISには意識に似たようなものがあるって」
「1学期で習った内容だね」
ISには意識、つまり自我のようなものがあるってことだ。なら……
「ISコアにダイブしたら、その意識とやらに会えるかな、と」
「……」
「簪?」
顔を上げると、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「陸、本気?」
「一応本気だが? 簪はISには自我がないと思ってる口か?」
「そういうわけじゃないけど……」
「よし、こんなもんかな」
改造を加えたゴーグルを持ってベッドに横になり、増設したケーブルと待機状態の陰流を繋げる。(繋げるといっても、ケーブル先端に取り付けたバンドを、待機状態の腕輪に巻き付ける形だが)
「そんじゃ簪、ちょっくら実験してみるわ」
「え? ぶっつけ本番!?」
「まぁ死にゃしないだろ」
タイマーを30分に設定し、ゴーグルを被ってスイッチを入れると、手足の感覚や視覚が一瞬無くなり――
気が付くと、俺は寮の部屋ではない、別の場所に立っていた。
「ここが、ISコアの中……」
一面に草花が咲き、遠くには東屋のような建物も見える。俺は、ここを……知っている。
「アリエスの離宮……」
そうだ。かつてルルーシュが暮らしていたという、あの離宮だ。だが、どうして……
――ガサッ
「っ! 誰だ?」
「ひっ!」
声のする方を向くと、そこにいたのは
「……子供?」
見た目女の子っぽい何かが、草垣に隠れるようにしてこっちを見ていた。……気のせいでなければ、めちゃくちゃ怯えてるような……。
「あ~、デカい声出して悪かった。とりあえず、そこから出て来てくれねぇか?」
「……」
しばらくして、長髪の女の子が草垣からゆっくり、警戒するように出て来た。
「確認なんだが、ここはISコアの中でいいのか?」
「う、うん……ここは私の中……」
「私? ってことは、お前は……」
「わ、私は、『陰流』、です。ご、ご主人様……」
「そうか、やっぱISには自我があるのか。……ご主人様?」
「貴方がわ、私の操縦者だから……」
なるほど。しかし、こんな小さい子供にご主人様って……背徳感が半端ないんだが。
「それで質問なんだが、どうしてここはアリエスの離宮にそっくりなんだ?」
「そ、それは、ご主人様の記憶に強く焼き付いていた風景だから……」
「俺の?」
「ご、ご主人様のことを知りたくて、記憶の中を覗いた時に、綺麗だったから……」
確かに俺の記憶の中で、ここは特に印象があるだろうよ。なにせ俺はここで、『ゼロ・レクイエム』の詳細を聞いたのだから。
「というか、俺の記憶を覗いたのか」
「ひぃっ! ご、ごめんなさい!」
「ああ、怒ってねぇから、そんなに怯えんな」
なんか俺が悪いことしたみたいじゃねぇか。ほら、頭撫ぜてやっから。
「あ、あうぅ……」
ああそうか。こいつ、昔の簪そっくりなんだ。少しオドオドしてるところとか、頭撫ぜると恥ずかしがるところとか。
「それで……お前のこと、何て呼べばいいんだ?」
「わ、私は『陰流』……」
「いや、それは機体名であって、コアであるお前の名前じゃないだろ」
「そ、そんなこと言われても、私は陰流以外、名前が」
「マジで?」
参ったなぁ。ISコアがこんな小さな子供だって知ってたら、もっと別の名前を付けてたんだが……。いや、あんまり可愛い名前をISに付けたら、周囲に変な目で見られてたな。うん、仕方なかった。
「……ソフィアー」
「え?」
「これからお前のことを、ソフィアーって呼ぶ」
ふと思いついたのは、ルルーシュ達とは別の外史で知り合った、とある女性のコードネーム。本名の『ヒカリ』よりはそれっぽいだろう。
「ソフィアー……」
「
「わ、私に、二つも名前を……あ、ありがとう、ご主人様」
「すまん、ご主人様も無しで頼む。さすがに背徳感がきつ過ぎる」
「え、えっと、それじゃあ……マスター?」
「……そっちの方がマシだな」
と、色々あったところで、本題に入ろう。俺がわざわざISコアの中に入った理由を。ただの好奇心だけじゃないのかって? それ
「なぁソフィアー、お前は自分達の現状を、どう思ってる?」
「現、状?」
「お前達ISは、元はと言えば宇宙空間での活動を想定して生まれた存在だ。それが今じゃ、世界最強の兵器だの競技用飛行パワード・スーツだの、当初と全く違う使われ方をしてるわけだ。それに対して、何か思うところは無いのか?」
「む、難しいことは分からないけど……」
うーうー唸りながら頭を抱えていたソフィアーだったが、
「私はマスターと空を飛ぶの、楽しいよ?」
「束を、恨んだりはしてないんだな……」
「ドクターを恨む? ど、どうして?」
首を傾げる。その顔は、本当に疑問に思ってる感じだ。
「お前達が兵器として扱われたのは、束が『白騎士事件』をやらかしたからだ」
10年前、世界中の軍事基地がハッキングを受け、日本に2000発以上のミサイルを発射、それを謎のIS『白騎士』が迎撃した。さらにその白騎士を捕獲もしくは撃破しようとした各国の軍隊を、白騎士は死者を出さずに返り討ちにした。それが『白騎士事件』。
ハッキングを束がやったかどうか、それは俺には分からない。だが、この事件の所為で、ISは『兵器』としてしか見られなくなった。
「でも、ド、ドクターが私達を生んでくれたんだよ? そのドクターを恨むって、よ、よく分からない」
「そっか……」
その回答を聞いて、また頭を撫ぜてやる。
「えへへ……」
なんか俺、誰かの頭を撫ぜることに抵抗が無くなってるな。
「ところで、今言ったことはお前の意見か? それとも、コア・ネットワークでコア同士で情報共有をした結果、つまりISコアの総意か?」
「ちゃんとはわ、分からないけど、今までドクターに対して否定的な意見は無かったはず」
「ふ~む……」
「マスター?」
「なぁソフィアー、お前に頼みがあるんだ」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「――というわけだ、頼めるか?」
「う、うん。や、やってみる」
「頼むぞ」
また頭を撫ぜてやろうと左手を上げると、指先から光の粒子が舞っていた。
「あっ……」
「そうか、もう30分経ったのか」
「マスター……」
「そんな悲しそうな顔すんなって。また会いに来てやっから」
「ほ、本当?」
「おう、ホントだホント。だから、またな」
「うん……またね、マスター……」
涙で潤んだ目をしたソフィアーに見送られる形で、俺の意識は再度無くなり――
「……おお」
体中の感覚が戻りゴーグルを外すと、目の前に俺の顔を覗き込む簪が見えた。
「陸、大丈夫? 何ともない?」
「問題ない。いや、色々ありすぎて頭の整理が必要そうだが」
「何かあったの?」
「ああ、実はな……」
俺は簪に、ISコアの中であったことを話した。
「というわけだ」
「陸、本音だけじゃなくて、ISコアの頭も撫ぜるんだね……」
「気になったのそこかよ!?」
「しかもソフィアーなんて名前まで付けて……」
「あのー、簪さん?」
「嫁として、今晩ハグして寝ることを要求する」
「簪さん!?」
わけがわからないよ!
「ぎゅ~」
とか思ってる間に、仰向けに寝てる状態から上に乗られたんですが!?
「おやすみ」
掛け布団も一緒に掛けられ、そのまま明かりを消される。
「陸もハグ」
「は?」
「はよはよ」
「はぁ……」
ため息をつきながらも、結局は簪の背中に腕を回すのだった。
「幸せぇ……」
「ホント、簪も変わったよな」
「"想いを伝えないと、人は分かり合えない"って、陸の記憶で学んだから」
「原因は俺かよ」
「陸は、幸せじゃない?」
「……その質問は卑怯だぞ」
そんなやり取りをしながらも、俺達は温かい、心が温かくなる一晩を過ごした。
さて、そんじゃ、その幸せのお裾分けでもしてやろうか。あの馬鹿兎に。
実はこれ、束シナリオの準備回です。
次でシリアス回をやって、学園祭に移る想定です。(移れるとは言ってない)