俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

55 / 182
前回から準備した、束回です。
本当にいるかどうかと言われたら……作者のただの自己満足です。はい。

そして高評価ありがとうございます。バーが黄色くなったぞー
∩( ・ω・)∩ばんじゃーい


第53話 ありがとうを貴女に

「……よし、準備完了っと」

 

「陸、今度は何をする気?」

 

首を傾げる簪の前には、先日改造したゴーグルが3つ。あれから2つほど追加作成していて、今さっき完成したわけだ。

 

「ちょっとこれで、とある兎にサプライズをな」

 

「兎?」

 

――バンッ!

 

「はーい! りったんに呼ばれた兎さんだよー!」

 

「し、篠ノ之博士!?」

 

おう、今回は正面から入って来たか。……俺が呼んどいてなんだが、本当に大丈夫か? いくら相手が大天災・篠ノ之束とはいえ、IS学園のセキュリティガバガバやん。

 

「それでりったん、サプライズって何かなー?」

 

「二人には、俺と一緒にこれを付けてもらう」

 

そう言って、完成したばかりのゴーグルを手渡した。

 

「私も、ISコアの中にダイブするの?」

 

「えっ、コアにダイブ!? 面白そー!」

 

とりあえず、束はノリノリなようで何よりだ。

 

「そんじゃ始めて行こうと思うんだが、ダイブ中は感覚が向こうに行っちまうから、出来るだけ寝た状態になってくれ」

 

「りょーかい! とう!」

 

さっそく束が俺達のベッド(2つくっ付けたもののど真ん中)にダイブしていた。おーい、俺と簪も寝るんだから、大の字になってスペースとんなー。

 

「ケーブルと陰流に繋いで……準備OKだ。ゴーグルの右こめかみ部分にスイッチがあるから、各自押してくれ」

 

「分かった」

 

「りょーかいだよー!」

 

二人とも素直に押したのか、そのまま脱力したようにベッドに仰向けになっていた。

 

「そんじゃ俺も、行きますか」

 

前回の30分から1時間にタイマーを延長されているのを再度確認して、俺もゴーグルのスイッチを押した。

 

 

 

 

2度目のダイブ、今度は寝転んだ姿勢で目を覚ました。

起き上がって見渡すと、やはり見覚えのある庭園、アリエス宮だった。ということは、今回のダイブも成功したわけだな。

 

「陸」「りったーん!」

 

「二人とも、無事ダイブできたようだな」

 

「うん」

 

「へぇ、ISコアの中ってこうなってるんだぁ! これは束さん、好奇心が爆発寸前だよ! りったん、こんなサプライズありがとう!」

 

「いやいや、本命はこれからだぞ」

 

「そうなの?」

 

ほら、また草垣がガサガサと揺れ出した。

ソフィアーがおっかなびっくり、草垣からひょっこり顔を出す。

 

「あ、可愛い」

 

「あ、あうぅ……」

 

「おおっ! まさかあの子がISコア!?」

 

「ひぅ!」

 

あ、束の声に驚いて引っ込んだ。

草垣に近づくと、ビクビクしながら頭抱えて丸くなっていた。

 

「ほら、あの兎は、怖くない兎だからな」

 

「うぅ……うん……」

 

差し出した俺の手を掴んで、なんとかソフィアーが立ち上がる。

 

「改めて、陰流こと、ソフィアーだ」

 

「は、初めまして……」

 

「この子が陸のISコア……私のコアも、ランディさんが混じらなかったらこんな子だったのかな?

 

「どうした簪?」

 

「う、ううん! 何でもない!」

 

? まぁいいか。

 

「ふむふむ、やはり『ISコアには意識めいたものが存在する』っていう束さんの推測は正しかったね♪ いやぁ、これはとんだサプライズ!」

 

ソフィアーを前後左右からくまなく観察する束。その動きがピタッと止まり、顔から笑みが剥がれ落ちる。

 

「それで? りったんはこの子を見せて、どうしたかったのかな?」

 

笑みが剥がれ落ち、能面のような顔を俺に向ける。

 

「その前にいくつか質問させてくれ。『白騎士事件』、軍事基地にハッキングして、日本にミサイルを放ったのは束、お前だな?」

 

「そうだよ」

 

「その理由は、発表当時見向きもされなかったISを表舞台に上げるため、そうだな?」

 

「そうだよ」

 

淡々と、ひたすら淡々と俺の推測を肯定していく。

 

「聞きたいことはそれだけ?」

 

「いや、最後に一つある」

 

もはや興味もないとばかりに、束が俺から視線を外す。

 

「その白騎士事件によって、ISは兵器として認知された。それも、お前の――」

 

 

――バキッ!

 

 

言い切る前に、俺の視界は右に向かって一回転し、そのまま空を見上げる形になった。殴られた左の頬が時間差で痛み出す。

 

「陸っ!」

 

「マスター!」

 

「大丈夫だ」

 

頬の痛みを無視して立ち上がれば、俺を殴った姿勢のままの、怒りで顔を歪ませた束がいた。

 

「"理解者になり得る"と思った、束さんが馬鹿だったよ……」

 

「……」

 

「『ISが兵器として認知されたことも、思惑通りだったか?』そんなわけねぇだろ! 私は宇宙(そら)を飛ぶためにISを作ったんだ! あんな、凡愚共の玩具にしたかったわけじゃない!」

 

「ああそうさ! 私の所為だよ! 私がISを兵器にした! 宇宙(そら)を飛べなくした! 本来の存在意義を否定したんだ、コアにも恨まれてるだろうさ! さぁどうだ! これでお前は満足か!?」

 

それは作り笑いでもなく、他者を見下すものでもない。正真正銘、篠ノ之束の本音だった。

自分で自分の夢を壊した。自分が作ったものの存在意義を否定した。その事実を認識して、抱え込んで、それをおくびにも出さず、本心の見えない微笑を貼り付けて生きて来たんだろう。

 

「……それが聞けて良かった」

 

「は?」

 

俺の言葉に束が怪訝な顔をして固まる。

 

「ソフィアー」

 

「うん」

 

ソフィアーがトテトテと束に近づいていく。何かあると思ったんだろう、束が身構えたところで

 

 

 

「わ、私達を生んでくれて、ありがとう。ドクター」

 

 

 

「……えっ?」

 

演技でも何でもない、本当の素の声を出して、束が固まった。

 

「なんで……そんな言葉が出てくるのさ……私は、お前達の存在意義を奪ったんだよ……? それなのに、どうして恨み言の一つも言ってこないのさ……?」

 

「恨むとか、存在意義とか、む、難しいことはよく分からないけど……」

 

束のエプロンドレスを握りしめながら、

 

「私はマスターと空を飛ぶの、楽しいから。だ、だから、ありがとう」

 

「……とんだ茶番だ」

 

「え?」

 

ソフィアーを引き剥がす束。

 

「ISコアに演技させるなんて、ずいぶんとつまらないマネするんだね」

 

「篠ノ之博士……」

 

まぁそうなるよな。なまじ頭が良すぎたせいで、誰もお前の考えを理解できなかった。理解できないから、否定され続けた。そしてお前は……一人になった。

篠ノ之束は、肯定されることが無かった。だから疑う。理解されると露程も思っていないし、思えない。

 

「ソフィアー、頼んでたもの、出来てるか?」

 

「う、うん」

 

「やってくれ」

 

 

 

「みんなー、あ、集まってー」

 

 

 

ソフィアーの声と共に、俺達の周辺が光り始める。

 

「これは……」

 

「束、お前はさっき、ソフィアーの言葉を『俺が演技をさせたもの』って言ったな?」

 

「それが?」

 

「たわけ。あれはソフィアーの気持ちでもなければ、ましてや俺が教え込んだ演技でもない」

 

光が徐々に人の形を取り始める。

 

 

 

「あれはISコアの総意、お前の『娘達』の本心だ」

 

 

 

光が収まると、そこにはソフィアーのような子供から、大学生ぐらいの女性まで、ずらりと俺達を囲んでいた。

 

「まさかこれ、全員ISコア……?」

 

「おう。前回ダイブした時に、ソフィアーに頼んで繋ぎを付けてもらってたんだ」

 

俺と簪がそう言ってる間にも、ISコア達は束に近づいていく。

その先頭には、騎士甲冑と兜を付けた奴がいた。

 

「白騎士……」

 

「お久しぶり、というべきでしょうか。博士」

 

「君は恨んでるはずだよね? あの事件が終わってすぐ、初期化してポイした束さんのことを」

 

「そうですね……ですが、今の操縦者(織斑一夏)が成長していく姿を見るのも一興。そこそこ楽しんでいますから、恨む気はない……というか、そんなこと考えたことも無かったですよ」

 

「え……」

 

白騎士の回答に理解が追い付かなかったのか、束の言葉も表情も全てが止まる。

 

「おそらく、他の皆も同じでしょう。 宇宙(そら)を飛べないのは残念ですが、それ以外の楽しみを見出していますから。だからその機会をくれた、ISを生み出してくれた博士に対する気持ちはやはり……ありがとう、でしょうか」

 

「……ハハハハ、アハハハハハハハッ!」

 

「ひぅ!」

 

突然狂ったように笑い出す束に、ソフィアーを含めた子供組が怯えて他のコア達にしがみ付く。

 

「そっか……他の楽しみを見出してるのか……。なんだよ……束さんだけが、あの日から止まってたんじゃないか……ダッサイなぁ……」

 

「博士……」

 

「"娘達"がこんなに世界を楽しんでるのに、私だけが不貞腐れた顔で生きて来たとか、ホント、ダッサイ……」

 

膝から崩れ落ち、天を仰ぐ束を、周りにいたコア達が抱きしめる。

 

「……簪、俺達はちょっと移動しよう。どうも雨が降り出しそうだし」

 

俺は簪の頭を撫ぜると、東屋のある方を指さした。

 

「移動するのはいいけど、雨なんて……」

 

「いやいや、降りそうだろ?」

 

俺の向けた視線を追った簪は

 

「……そうだね」

 

そう頷いて、東屋に向かって歩き出した。

 

「急ぐぞ、もう降り始めてるからな」

 

 

 

憑き物が取れたような、朗らかな顔になった束の頬に、"雨"が伝い始めていたから――




さぁ自己満足で束回入れたら、本格的にラスボスがいなくなったぞぉ!
え? ここの束、情緒不安定過ぎないかって?
(; ̄з ̄) ~♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。