俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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第5話 そっちから来られたら回避不可能

打鉄弐式の組み上げがほぼ終わった翌日、俺は昨日と同じく食堂で昼飯を食っていた。

ただ、昨日と違う点がある。それは……

 

「簪はかき揚げはつゆに浸して食う派か」

 

「違う。たっぷり全身浴派」

 

「お、おう。別の派閥なのか……」

 

「かんちゃん、いつもその食べ方だよね~」

 

簪とのほほん、この2人が一緒にいるってことだ。

何か教室出る時、他のクラスメイトがヒソヒソしてたんだが……変な噂はやめてくれよ……?

 

「ところでのほほん、今日の飛行テストで使うアリーナの予約、出来てるか?」

 

「ばっちり~。ただ、訓練機は全部予約がいっぱいだったから、本当に飛ぶだけになるかな~」

 

「そっか。出来れば実戦データも軽く取っておきたかったが、仕方ないな」

 

「だね~」

 

「普通、そんな簡単に出来るものじゃないはずなんだけど……」

 

俺とのほほんのやり取りに、簪が遠い目をしながらボソリと溢す。

フレーム部分はちゃんとあったし、でかいロボット(モビルスーツ)作るわけじゃないから、あんなもんじゃねぇの?

 

 

「なぁ、ちょっといいか?」

 

「ん?」

 

食っていた唐揚げを飲み込んで顔を上げると、

 

「あ、おりむーだ~」

 

「のほほんさんも一緒だったのか」

 

いかにも好青年ですと言わんばかりの奴が、のほほんと話していた。そして俺以外に男と言えば、もはや1人しかいないわけで……。

……これ、『原作主人公に極力接触せずにいろ』に抵触してねぇよな? 本人から接触してきたんだから、ノーカンでいいよな?

 

「俺は1組の織斑一夏だ」

 

ああやっぱり、原作主人公ですか……。

 

「4組の宮下陸だ」

 

「よろしくな陸。俺の事は一夏って呼んでくれていいから」

 

「そうか。よろしく一夏」

 

そう言って握手をすると、一夏は元居た席に戻って行った。

 

いやまぁ、いきなり下の名前呼び捨てってのはどうなんだ?

……なんて言っても、高校生になったばっかの奴なんだし、そこまで目くじら立てるもんでもないか。俺は別に気にしねぇし。……いい大人がやったら制裁もんだが。

 

「か、かんちゃん……」

 

のほほんの声に、簪の方を見ると、簪が一夏の方を睨みつけていた。

が、しばらくすると深呼吸をして

 

「……大丈夫」

 

それだけ口にすると、再びうどんをすすり始めた。

 

ーーーーーーーーー

 

放課後、アリーナで準備をしている簪とのほほんを待ってる間(ISスーツに着替えてるところに男がいるとかダメだろ?)、俺は生徒会室に寄っていた。

 

「ということなんですが、何か知りませんか?」

 

「そんなことがあったのね……で、どうして私の左腕を取ってるの?」

 

「いえ、はぐらかそうとしたら、昨日みたいに……」

 

 

「何かある度にアームロックしようとしないでくれる!?」

 

 

そんなやり取りの後、パイセンから簪の専用機に関する経緯を聞いた。

一夏の専用機を倉持技研なる機関が引き受けて、先に委託されていた簪の専用機は人員を全部持ってかれたと。

 

「普通そういう場合、他の委託先を決めるもんじゃないんですか?」

 

「初めての男性操縦者かつ織斑千冬(ブリュンヒルデ)の弟ってネームバリューで、みんな浮足立ってるのよ。だから普通とは言い難いわね」

 

「プロとしてそれはどうなんだよ……」

 

「それは私も言ったわ」

 

言ったのかよ。言った上でこれとか、倉持技研と日本政府、度し難いな。

 

「別に一夏が専用機を強請ったわけじゃ無いんですよね?」

 

「それは無いわ。だから織斑君が悪いわけじゃ無いって、簪ちゃんも分かってはいるんだろうけど……」

 

理性と感情は別物、か。

 

「ところで、簪ちゃんの専用機、もう組み上がったんですって?」

 

「おや、どうしてそれを?」

 

打鉄弐式が組み上がった時、俺達3人以外は整備室に居なかったはずだが……。

 

「それは私が確認したからです」

 

そう言って奥の部屋から出てきたのは、眼鏡にヘアバンドをした女生徒だった。

 

「紹介するわ。私の従者、布仏虚よ」

 

「よろしくね」

 

「はい、よろしくお願いします……布仏?」

 

「ええ。今後も妹の本音と仲良くしてあげてね」

 

「妹……妹ぉ!?」

 

つまり、のほほんのお姉さん!? ……って、冷静に考えたら簪とパイセンだって姉妹なんだし、のほほんと虚先輩が姉妹ってのもアリか……。

 

「なーんか、失礼な事考えてない?」

 

パイセンが怪訝そうな目で見てくるが、気にしない気にしない。

 

「それで、決闘の約束ですが……」

 

「分かってる、今更反故になんてしないわよ。ただねぇ……」

 

パイセンはそう言うと、持っていた万年筆で額をコツコツ叩いた。

 

「決闘するためにはアリーナをまるまる借りる必要があるんだけど、先約がねぇ……」

 

「先約?」

 

「お嬢様の代わりに私が説明します」

 

虚先輩が引き継ぐ形で、先約について説明してくれた。

 

 

「つまり、1組のクラス代表を決めるはずが、なぜか一夏とイギリスの代表候補生の決闘騒ぎになったと」

 

「そうなのよ……だから簪ちゃんとの決闘は、来週行われるクラス代表決定戦以降になるわね」

 

「なるほど……」

 

そういうことなら仕方ない。それまで打鉄弐式の強化をしてればいいか。

俺はその説明に納得していたが、パイセンはそこからため息をついて、

 

「しかもその時、お互い相手の国を侮辱するような事を言ってね……」

 

そう言って、パイセンは決闘騒ぎになった原因を話してくれた。

 

 

……『文化としても後進的な国』に『世界一料理が不味い国』って、ガキの喧嘩か。いや、まだ高校生だからガキか。

これがただの高校なら、それこそガキの喧嘩で終わったんだろう。問題なのは、ここがIS学園で、2人の立場がやばいってことだ。

片やイギリス代表候補生。片や希少なIS男性操縦者。穿った見方をすれば、『イギリスの代表』と『世界の男性代表』が揃って失言したと言える。下手すりゃ日英の外交問題に発展しかねない。

 

「しかも、その場で喧嘩両成敗にでもして発言を撤回させれば良かったんだけど、織斑先生がそのままスルーしちゃったから……」

 

「織斑先生って、一夏の血縁者ですか?」

 

「お姉さんよ」

 

「……普通、生徒の血縁者は担任にならないよう配慮するものでは?」

 

「そうなんだけどねぇ……」

 

それだけ言って、遠い目をしながらパイセンは顔を窓の方に向ける。その遠い目だけは姉妹そっくりだな。

何らかの力が働いたってことか。ブリュンヒルデのネームバリューはすごいな。

いやいや、褒めてどうすんだよ。1年1組は生徒から担任まで猪揃いか。

 

「まぁいいです。俺には関係なさそうですから」

 

「貴方はいいの? 同じ男性操縦者なのに、自分だけ専用機をもらえないなんて」

 

「別にいりませんよ。あれば簪の専用機と戦って、実戦データを取るのに丁度いいかもってだけで。無いなら無いで、訓練機を借りれば事足りますから」

 

「はぁ……聞いてた通り、根っからのエンジニアなのね」

 

感心したようで、実際は呆れたような顔をされた。解せぬ。

 

「聞きたいことも聞けたんで、ここらでお暇させてもらいます」

 

あんまり簪達を待たすのも悪いからな。

 

「ええ。決闘の日程が決まったら虚に伝えに行かせるから」

 

「分かりました。虚先輩、よろしくお願いします」

 

「ええ、本音にもよろしく言っておいて」

 

最後にパイセンと虚先輩に会釈して、俺は生徒会室を後にした。

 

ーーーーーーーーー

 

「彼、なかなか特徴的でしたね」

 

「いきなり私にアームロックをキメようとするんだから、普通じゃないわね」

 

「……私もお嬢様が何かやらかしそうになったら、アームロックで――」

 

 

「お願いだから止めて!?」

 

 

この学園はISの操縦方法とかを習うところであって、アームロックを習う場所じゃないわよ!?

折れちゃうから! 私の腕と心が折れちゃうから!!

 

「それでお嬢様、本気で簪様と戦われるおつもりですか?」

 

「……」

 

虚ってば、唐突に痛いところを突いてくるわねぇ……。

 

戦えるんだろうか、私に。簪ちゃんを前にして、本気で。

 

「やるわよ」

 

本当は嫌だけど、簪ちゃんを傷つけかねない事なんて、したくないけど、でも……

 

「そうじゃないと、簪ちゃんが納得しないだろうから……」

 

「お嬢様……」

 

「それに……」

 

「それに?」

 

 

「これは、私が支払うべきツケだから」

 

簪ちゃんに嫌われるのが怖くて、お互いの本音を、想いを伝え合うことを今まで避け続けて来た私の、負の遺産。

だからここで清算しなければならないんだ。彼と幼なじみ(宮下君と本音)が、その機会をくれたのだから。

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