俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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サブタイ通り、エム"が"簪"に"蹂躙されるお話です。


第59話 蹂躙

「なに、この劇……」

 

生徒会の出し物『観客参加型演劇・シンデレラ』の会場である第4アリーナは、とんでもないことになっていた。

 

「一夏ぁ!」

 

「わたくしに」

 

「その頭に乗ってる」

 

「王冠を」

 

「渡すんだぁ!」

 

逃げる織斑君、武装して追いかけるハーレムの面々。さらに、さっきまで観客席にいた生徒達もシンデレラ姿で追加され、もはや収拾がつかなくなっていた。

 

「お姉ちゃん、これどうするの……?」

 

「いやぁ、ちょっとやり過ぎちゃったかも」

 

頭掻いて誤魔化そうとしてるけど、あとで織斑先生に怒られる覚悟は必要だよ。

 

「っと、織斑君が見えなくなったわね……」

 

「え?」

 

お姉ちゃんにつられて見ると、確かに舞台の上はシンデレラだらけで、王子様の姿が見えなかった。

まさか……。

 

「こんなこともあろうかと!」

 

そう言って、お姉ちゃんがどこからか端末を取り出した。そこには、点滅する赤い光点が。

 

「お姉ちゃん、まさか織斑君に発信機を?」

 

「せいかーい! 王子様のジャケットにね。念のために付けてたんだけど、ビンゴだったわね」

 

移動を続けていた光点が止まった。場所は……更衣室?

 

「簪ちゃん。お願いがあるの」

 

「お願い?」

 

「これから私は織斑君の援護に向かうんだけど、敵が単機とはどうしても思えないの。だから――」

 

「増援の警戒?」

 

「うん。ISの使用許可はもらってるから、打鉄弐式を展開してアリーナの上空から警戒してほしいの。ここには宮下君もいるから、狙うとしたらここのはずよ」

 

「分かった」

 

頷くと、私は一度アリーナを出てから弐式を展開して飛翔した。そしてアリーナ上空についてしばらくすると、ハイパーセンサーが高速で移動するISを補足した。接敵まで、あと30秒。

 

(実戦は初めてじゃないけど……)

 

初めてではない。けれど、今までが特殊すぎた。クラス対抗戦の時は、相手が無人機だった。臨海学校の時は、有人だけど暴走状態だった。だからある意味、今回が本当の意味で"初めての実戦"なのかもしれない。

撃てるんだろうか? 私に、人を……

 

(ううん、私は躊躇わない。だって、そのせいで、陸を失いたくないから)

 

そのためなら……

 

("討った事実"を受け止める覚悟は、返り血を浴びる覚悟は、出来てる)

 

かつて弐式のISコア(ランディさん)の前で切った啖呵を思い出しながら、私はGNドライブを起動させて、

 

 

そして――メメントモリのリミッターを解除した。

 

 

ーーーーーーーーー

 

(上空に、IS反応?)

 

IS学園に向かっている途中で、その反応があった。オータムがドンパチを始めた頃合いだろうから、大方増援を警戒したのだろう。

 

(だが、1機だけ上げたのは失敗だったな)

 

確認した機体は第3世代機の『打鉄弐式』とやららしいが、所詮は第2世代の改造機。私に勝てるわけがない。

接敵まであと10秒、相手はまだ動かない。なにやら緑色の光が舞っているが、知ったことか。先日奪ったこの『サイレント・ゼフィルス』の動作テストをさせてもらうぞ。

 

「行け!」

 

6機のビットを展開、敵機に向けて――

 

――ドドドドドッ!

 

「なん、だと……」

 

突然、私の周りで爆発が起こった。それがビットが破壊された音だと認識するのに、数瞬の時を要した。

 

「そんな、あり得ん……」

 

「でも、これが現実」

 

オープン・チャネルなのか、相手の声が聞こえてきた。それと同じくして、奴――青髪の眼鏡女――の周りに何かが飛び回っているのも見えた。エネルギー刃を出した小型のビットが、いくつも。

 

「まさか、貴様もBT兵器を……!」

 

そんな情報はなかった。IS学園でBT兵器を使用しているのは、このサイレント・ゼフィルスの試験機であるブルー・ティアーズだけのはず……! そのはずだったのに……!

 

「そういう貴女も、もしかしてそのIS、イギリス辺りから奪ってきたもの?」

 

「そんな情報、ベラベラ喋るとでも!?」

 

手に持ったレーザーライフル『スターブレイカー』の引き金を引くと同時に、残った2基のビットからレーザーを放つ。このままでは簡単に回避されるだろう。だが!

 

(曲がれ!)

 

偏光制御射撃(フレキシブル)により、私から放たれた3条のレーザーは弧を描いて曲がり、敵ISの上と左右下の三方から襲い掛かる。これなら避けられまい!

 

 

――キィィィンッ!

 

 

「……は?」

 

その瞬間、私の頭はこの状況を理解することを拒んだ。

敵ISが……消えた。そして敵が消えた場所を、レーザーが素通りしていく。

 

「そんな馬鹿な! どこだ! どこに消え――」

 

 

――ガァァンッ!

 

 

「ぐぁっ!」

 

背後からの衝撃とSE減少のアラーム音でようやく、私は察した。奴は消えたんじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。

 

「何なのだお前は……一体何なんだ……!」

 

「そんな情報、ベラベラ喋るとでも?」

 

「くっ……!」

 

意趣返しなのか、さっき私が口にしたセリフを吐いて、薙刀のような武装を構え直す。

 

 

そこからは、もはや"蹂躙"と呼ぶに相応しかった。

こちらの攻撃は、残像すら残らない高速移動で当たらない。そして背後や真下等の死角に回り込まれ、高周波振動でもしているのだろう、薙刀の一撃を何度も受け……気付けばビットは全て落とされ、SEも限界値に近づいていた。

 

 

「くそっ! クズ一人攫うだけのはずが、何てザマだ……!」

 

私が吐き捨てるように愚痴ると、敵が高速移動をやめた。なんだ……?

 

「貴女、陸を攫うつもりで来たの?」

 

「陸……ああ、"2人目"がそんな名前だったか。だったらなんだと言うんだ?」

 

その時、私は失敗していた。そんな問答なんぞせず、さっさとスコールに一報入れて引き揚げればよかったのだ。どうせここまで足止めされた以上、作戦は失敗していたのだから。

 

「そう……なら」

 

 

「貴女には、ここで消えてもらう」

 

 

「……っ!?」

 

なん、だ……? IS学園の生徒など、ISをファッションか何かと勘違いした、ただ平和ボケしたガキ共のはずだ。なのに……なぜ私の腕は、震えているんだ……?

一瞬。ほんの一瞬。それが戦場では命取りだと、分かっていたはずなのに。

 

 

――ヒュンッ

 

 

「あ……」

 

気付いた時には、奴の右手が私の頭を掴んでいた。

 

「貴女が陸を害するというなら、私は貴女の存在を否定する。貴女の返り血を浴びてでも。だから」

 

 

「さようなら」

 

 

「が、ああああああああああああっ!?」

 

なんだこれは! ISの絶対防御を超えて、頭が……!

 

 

なんとか抜け出そうと、赤黒い光の点滅の中抵抗していた時、視界に入ったものを認識した私は青褪めた。

サイレント・ゼフィルスの装甲が、内側から盛り上がって、弾けて……。もしかして、本当の意味で絶対防御が抜かれたら、私の頭も……? いやだ……いやだいやだいやだ! まだ私は……私は……!

 

 

だが、そうはならなかった。

 

「っ!」

 

急に奴が私の頭から手を放し、距離を取ったから。

 

「エム、無事のようね」

 

「スコー、ル……?」

 

奴と私の間に割り込む形で、IS『ゴールデン・ドーン』に乗ったスコールの姿があった。どうしてお前が……。

 

「撤退するわよ、エム」

 

「分かった……」

 

普段の私なら、反論の一つもしていただろう。だが、今は頷くしかなかった。

 

「というわけで、ここは退かせてもらうわね」

 

スコールはそう言うが、果たして敵が簡単に逃がしてくれるものか……。

すると、こちらに注意を向けつつも敵の手が止まった。通信でもしているのか?

 

「……今回は見逃す。けど、次にまた陸を狙うなら……本気で消す」

 

「分かったわ。感謝しておくわね」

 

どういう理由かは分からないが、私とスコールはそのまま、追撃を受けることなく戦域を離脱できた。

 

「オータム……」

 

スコールの口から、苦し気な呟きが漏れるのを聞きながら――

 

ーーーーーーーーー

 

簪ちゃんとの通信を切って、私は宮下君が相手していた亡国機業のエージェント――オータムと名乗っていたらしい――を拘束した。

幸い、右腕が折れてる以外は致命傷も無く、十分尋問にも耐えられるでしょう。

 

「パイセン、簪は?」

 

「侵入してきたISを返り討ち。追加でもう1機来たんだけど、退きたがってたから見逃させたわ」

 

「そうですか」

 

宮下君は大きく息を吐くと、近くに設置してあったベンチに座り込んだ。私も彼の隣に座る。簪ちゃん、今回は宮下君の隣、借りるわね。

 

「安心した?」

 

「ええ。こんなことで、簪が手を汚す必要はありませんよ。そういうのは――俺だけで十分ですから」

 

「いいえ、貴方の手を汚すまでもないわ」

 

「そういうもんですか?」

 

「そういうもんよ」

 

実際、到着した私が止めなければ、彼はこの女の首をへし折ってたでしょうから。

普通『誰かの命を奪う』というのは簡単なことじゃない。例えそれが、自分のことを狙った相手だとしても。簪ちゃんや宮下君には、そうなって欲しくなかったな……。

 

「更識、宮下」

 

顔を声のする方に向けると、織斑先生が近付いてきていた。この女を回収する人員をお願いしていたんだけど、織斑先生が直々に来るとは思っていなかった。

 

「そいつが?」

 

「はい。オータムというコードネームらしいです」

 

「そうか」

 

それだけ聞くと、織斑先生は気絶して縛られたオータムを担ぎ上げた。俗にいう"お米様抱っこ"である。

 

「宮下、面倒事に巻き込まれて災難だったな。学園祭終了まであと1時間ほどあるから、更識……妹が戻ってきたら、ギリギリまで楽しんでくるといい」

 

最後に後ろ向きに手を振って、織斑先生は肩の荷物を物ともせずに去っていった。やだ、イケメンすぎ……。

 

 

それから簪ちゃんが戻ってくるまで、私は宮下君を弄って遊ぼうと思ったら

 

「今回、一夏を囮にしたように見られると思うんですよね。だから、一夏ハーレムの面々への言い訳を考えておいた方がいいですよ」

 

というアドバイスをされて、今更ながら頭を抱えることになった。どうやってあの子達を丸め込もう……。




オリ主のためなら、簪さん手を汚す覚悟OKになってます。ヤヴァイね。

次回は学園祭編ラストになる予定です。
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