俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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今回で学園祭編ラストと言ったな、あれは嘘だ。
……サーセン。ふと書きたいネタが出来てブッコミました。


第60話 想いのままに

学園祭に一夏を襲撃した亡国機業の構成員を捕縛して織斑先生に引き渡してからしばらくして、弐式に乗った簪がこっちに向かって降りて来た。

 

「簪ちゃん、お疲れ様」

 

「簪、お疲れ」

 

「うん。でもお姉ちゃん、あのまま逃がしてよかったの?」

 

簪としては、あのまま戦おうと考えていたようだ。

 

「いいのよ。織斑君と白式を守り切った時点でこっちの勝ちだわ。それに簪ちゃんが無理しなくても、宮下君が構成員の一人を捕まえたからね」

 

「別に無理は……」

 

「嘘言わないの。データを見たけど、相手はイギリスから強奪された『サイレント・ゼフィルス』じゃないの。しかもオルコットちゃんよりBT適性が高いのか、偏光制御射撃(フレキシブル)まで使えるって言うじゃない。いくら簪ちゃんでも二対一じゃ――」

 

 

「倒したよ?」

 

 

「……え」

 

簪の一言に、パイセンが固まる。

 

「簪ちゃん……サイレント・ゼフィルス、倒したの?」

 

「うん。その後金色のISが出て来たけど、最初のISは武装を全破壊したから、正味一対一で戦えてた」

 

「うそーん……」

 

ちょっと待てパイセン。まさか敵のデータだけ確認して簪の状態は確認せずに、絶好の好機を逃したのか?

 

「お姉ちゃん……」

 

「パイセン……一夏の件も含めて、やらかし過ぎだ」

 

「う……」

 

 

「二人ともそんな目で見ないで~~~~っ!!」

 

 

ちょっ! 顔真っ赤にしてすげー勢いで逃げて行きやがった!

 

「……どうする?」

 

「とりあえず、学園祭の続き、しよ?」

 

「……だな」

 

織斑先生にも残り時間を楽しめって言われてるし。

 

「あんま時間ねぇから、この辺でまだ見てない屋台でなんか買って、クラスの連中に配るか」

 

4組の様子を見に行くって言ってパイセンに捕まったからな。ちょうどいいだろう。

 

「それなら、この近くに"甘口メロンスパ"の屋台がある」

 

「なんて?」

 

今簪の口から、本当に食べれるのか疑う名称が出た気がしたんだが……?

 

 

 

とりあえずその屋台で"甘口メロンスパ"とやらを3,4パック買って、4組のクラスメイト達に配った。

 

「あの、これは……」

 

案の定、大半の連中は躊躇していたが、一部の好奇心が強いのが先陣を切って

 

「あんっまぁぁぁ!」

 

「温まったメロン臭がぁ……!」

 

このトンデモスパゲティの山を登ろうとしてリタイアし、

 

「生クリームが乗ってない分、本家より食べやすいかも」

 

簪を筆頭にごく一部の生徒だけが、残った麺をすすっていた。簪、将来一緒になっても、これは出してくれるなよ……。

 

「ところで、出し物は順調だったか?」

 

俺達が着いた時には学園祭終了間際で、教室に客はほとんど残っていない。さすがに常時これだけだったとは思いたくないが……。

 

「それなら全く問題なかったよ。むしろ30分くらい前まで、ゴーグル全稼働の満席状態だったから」

 

「そうそう。やっぱりISに乗ってみたいって人は多かったねぇ」

 

「入場チケットで来た人が大半だったけど、IS関連企業の人達もいっぱい並んでたもんね」

 

「ああ、やっぱゴーグルを量産して正解だったな」

 

豚のような悲鳴を上げそうになりながら頑張った甲斐があったな。

 

「宮下君じゃないか!」

 

「へ?」

 

突然声をかけられたと思ったら、さっきまでゴーグルをつけていた最後の客……ってぇ!

 

「ア、アルベールさん?」

 

フランスのデュノア社社長、アルベール・デュノア氏だった。え、なんでここに? 貴方の娘さんは1組ですよ?

 

「本来はシャルロットに会いに来たんだが、娘もクラスの出し物を頑張ってる手前、あまり長居も出来なくてね。それなら君にも会っておこうと思ってここに来たら()()だよ」

 

そう言って、アルベール氏はさっきまで装着していたゴーグルを指さした。

 

「これがあれば、テストパイロットの技術維持のために貴重なコアを割かなくて済むだろう」

 

訓練は仮想世界でやって、現実のテストに割り当てられたコアを全機投入したいってことか。知識としては知ってるが、やっぱ現場の人間から聞けば聞くほど、ISコアって需要と供給のバランスが悪いんだな。

だけど氏よ、申し訳ないが

 

「さすがにこれは販売出来ないと思います。前回の設計図の件で、織斑先生やその他大勢に釘刺されてるんで」

 

「そうだろうな……」

 

予想はしてたんだろうが、目の前のダンディなおっさんがしょんぼり顔を晒す。だがコロッと表情を変えると

 

「もし販売出来るようになったら、ここに連絡をしてほしい。私への直通だ」

 

俺に名刺を渡して教室を出て行った。うん、やっぱりあの人はアザトイさん(シャルロット・デュノア)の父親だ。押しが強ぇ。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

それから来場者が全員帰ったのを確認して、学園祭は終了した。

俺と簪は撤収作業も免除になり、みんなより先に寮の部屋に戻っていたのだが

 

――コンコン

 

「誰だ?」

 

片付けたゴーグルを返しにでも来たか? 明日回収するから教室に置いとくって話だったはずだが。

そう思ってドアを開けると

 

「えっと、恥ずかしながら帰って参りました」

 

「おうそうか。まあ上がれ上げれ」

 

「あれぇ!? なんかフツーに通されたんだけど!?」

 

「あ、篠ノ之博士。麦茶用意しないと」

 

「かんちゃんもその反応なの!?」

 

というやり取りがあって、束が部屋にやって来たのだった。

 

「はい、麦茶ですが」

 

「あ、どうも。って、前回の流れから感動の再会か険悪ムードになるんじゃないの!?」

 

「「なして?」」

 

「二人して首傾げたぁ!? あれ? これ束さんがおかしいの? 違うよね? 二人がおかしいんだよねぇ?」

 

頭を抱えて唸っているが、別におかしくねぇだろ。というか束、キャラがブレてきてるぞ。自由気ままキャラはどうした。

 

「それで今日はどうした? 屋台の貰い物なら残ってるが」

 

「……たこ焼きもらう」

 

そう言って、机の上に乗ったパックの中から、たこ焼きを取ってパクつき始めた。

 

「この前ISのコア人格と……白騎士と話してから、色々考えたんだ」

 

「うん」

 

「そうしたら、なんか馬鹿らしくなってね」

 

「馬鹿らしくなった?」

 

簪は首を傾げるが。俺は何となく分かるような気がする。

 

「ISは元々宇宙に出るために作った。けれど今はアラスカ条約によって、軍事兵器を経てスポーツになった」

 

「そうだけど……それがどうして」

 

「なら簪に問題だ。アラスカ条約を作ったのは?」

 

「それは各国政府が――」

 

「そうだな。で? ()()()()()()()()()は?」

 

「え?」

 

簪が固まる。

 

「そんなの気にせず目指せばいいんだよ、宇宙を。なんで束が、いつも『凡人』だの『凡愚』だの言ってる連中の決めたことに従ってんだ?」

 

「ええー……」

 

「あはは、やっぱりりったんは束さんの事をよく分かってるよ」

 

「誉め言葉として受け取っておこう」

 

簪はドン引きしてるが。

 

「りったんの言う通りだよ。あんな凡人共のルールなんか無視して、勝手にISに乗って宇宙探索でもしてれば良かったんだよ。それなのに、なーんか束さんも気付かない内に連中のルールに従って、つまんない人生を歩んでたわけ。ホント、ダサいよねぇ」

 

心底自分に呆れたという感じで、最後に大きなため息をついた。

 

「そんなわけで、束さんはしばらく宇宙開発に全力を注ぐことにするよ。りったんにはまたアドバイスもらいに来るからよろしくねー♪」

 

「あいよ。織斑先生に見つかって、アイアンクローを食らわないようにな」

 

「もち! あ、そうだ。りったんからちーちゃんに伝えておいてくれる?」

 

「何をだ?」

 

 

「箒ちゃんの経験値稼ぎのためにゴー君Ⅲ号(無人機)を送り込む気でいたんだけど、この子に太陽光パネルと送電アンテナを付けることにしたから計画中止にするよ♪ それじゃあ二人とも、また来るねー」

 

 

色々爆弾な言伝を残して、束はいつぞやのように窓を開けるとベランダを飛び越えて行った。

 

「相変わらず、嵐のような人だったね……」

 

「だな。さて、面倒事はさっさと終わらせるか……」

 

まったく気乗りしないが、俺はスマホを取り出すと、織斑先生に連絡を入れた。

 

 

「束ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

寮監室で、今日も呪詛交じりの悲鳴が上がるのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

学園祭の後片付けが終わった直後、あたしは一夏に呼び出されて誰もいない教室に来ていた。

 

「よぉ鈴。呼び出して悪かったな」

 

「別にいいわよ」

 

まぁ急に呼ばれたから、チャイナドレスを着替える暇が無かったんだけど。

 

「それで? 他の連中も無しで話って何よ?」

 

「いい加減、ちゃんと返事しようと思ってな」

 

「返事?」

 

何かあっただろうか?

 

「対抗戦の時のだよ」

 

「ああ……」

 

そういえばそうだった。あたし自身、一夏に言われるまで忘れていた。だって、()()()()()()()()()ようなものだったから。

 

「別にいいのに。あたしの告白、受けてくれるんでしょ?」

 

「ああ、それは間違いない」

 

「なら――」

 

「それでも俺は、鈴に『待ってくれ』って言ったんだ。なら、ちゃんと俺の口から言わなきゃいけないだろ?」

 

今日決心がついたんだけどな、って言って、はにかみながら頭を掻く一夏。

本当にこいつ、一夏なの? 数ヵ月前まで朴念仁で、告白をまったく理解してなかったのに……。

 

「そして……これが俺の答えだ」

 

「あっ……」

 

ぐいっと腕を引っ張られたと思った時には、あたしの体は一夏の腕の中に収まっていた。

 

 

 

「好きだ、鈴」

 

 

 

「……」

 

どうしよう、嬉しくて、胸の奥がいっぱいで、何を言えばいいか分からない……! 言葉にされるだけで、こんなに違うなんて……!

 

 

「鈴?」

 

あたしが何も言わないから、一夏が顔を覗き込んできた。だからあたしは――

 

「んっ……!」

 

「!?」

 

驚く一夏の頭に腕を回して、唇を重ね合わせた。言葉ではなく、行動で気持ちを伝えるために。

そうして、改めて理解する。あたし、一夏のことが好き……ううん、愛してるんだ。

 

「り、鈴……」

 

「ずっと、一緒にいてくれるんでしょうね?」

 

やっと出た言葉は、いつもの口調だった。我ながら思うところはあるけど、それでも今の一夏なら分かってくれる、そんな根拠のない確信が、あたしの中にあった。

 

「……ああ、もちろんだ」

 

ほら、今度は一夏の方から、唇を重ねて来てくれるんだもの――




鈴を正妻最有力にする、オルコッ党員にあるまじき所業。
ちなみに一夏の決心がついたのは、第二形態移行時の問答をした時に自分の気持ちを再認識したからです。(後付け)

……はい、次回こそ学園祭編最後にします。
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