「みんな、先日の学園祭はお疲れ様! それじゃあお待ちかね、『織斑一夏争奪戦』の結果発表でぇす!」
学園祭の翌日、またもや全校集会が行われ、一夏の命運が発表されようとしていた。
そこかしこで、生徒達が唾を飲む音が聞こえてきた気がした。
「栄えある一位は……! えっ? 虚、これ本当?」
おや? パイセンが何か後ろに立ってた虚先輩に確認しだしたぞ?
生徒達も、発表が止まってザワザワし始めたし。
「一位は……1年4組の『仮想世界でIS体験』!」
「「「え……?」」」
全校生徒総ポカン。数秒経って、我に返った一同から大ブーイングが巻き起こる。
「1年4組って部活じゃないじゃん!」
「なんでクラスの出し物に票が入ってるのよ!」
「私達頑張ったのに!」
うん、言ってることはごもっとも。パイセンも理解を示しているのか苦笑いで、まぁまぁと手で制した。
「私だって予想外だったのよぉ。まさか生徒外の、チケット参加者や来賓の方々の票が全部4組に行くなんて……しかも王冠もどっかいっちゃうし……」
『シンデレラ』の参加条件を『生徒会に投票すること』にしたから、いっぱい票が入るはずだったのに……と小声でこぼしたのを聞かれて、さらにブーイング。パイセン……。
確かに生徒1人に対してチケット1枚だから、その入場者全部が4組に入ったらどう頑張ってもひっくり返せないが……。なぜそんなに票が入ったのか。解せぬ。
体育館が混乱の極みに陥る中、簪が壇上に……何する気だ?
「簪ちゃん?」
「みなさん、4組のクラス代表として、提案があります。これは4組の総意と取ってもらって構いません」
え? 総意? 周りを見ると、クラスメイト達が首を縦に振る。俺聞いてないんだけど。
「今回の『織斑一夏争奪戦』ルール通りなら、織斑君が4組にクラス替えすることになります」
「そんなの横暴だ!」
「ありえませんわ!」
「そーだそーだ!」
案の定、1組(というか一夏ハーレムの面々)からブーイングが飛んでくる。
「もちろんそんなことをしても混乱を招くだけです。なので、1年4組は織斑君の所有権を放棄します」
「「「わ~~~~~っ!!」」」
「よく言った!」
「さすが日本代表候補生!」
「疑ってごめん!」
さっきまでのブーイングから一転、拍手喝采が巻き起こる。現金すぎるだろ。
それにしても所有権を放棄って……一夏、強く生きろ……!
「あれ? それなら織斑君はどの部活に所属するの?」
ふと気付いた生徒の疑問に、また全体がザワザワし始める。
「なので……織斑君、壇上に」
「え? お、おう……」
突然簪に名指しされ、よく分からないという顔をしながら一夏が壇上に上がる。
すると、壇の後ろにいたはずの虚先輩が、ガラガラと何かを押して来た。
これは、あれだな……ルーレットだ。しかも部活名がびっしり書かれた。
はい、と虚先輩が一夏にダーツを1本渡す。
「織斑君には今ここで、自分で所属する部活を決めてもらいます」
「え~~~っ!?」
「虚さん、回してください」
「はい」
簪の合図とともに、ルーレットが勢いよく回転を始める。これってつまり……
「「「○ジェロ! パ○ェロ!」」」
混乱する一夏をよそ目に、全校生徒からの大合唱。お前らノリ良すぎだろ! しかもそのルーレットにパジェ○はねぇよ! もちろんタワシもな!
「えっ、私何も聞いてないんだけど……」
壇上で一人だけ置いてけぼりを食らってるパイセン。って仮にも生徒会長なのに話通してないのかよ!?
「ほら、織斑君!」
「ええいっ! ままだ!」
簪にせっつかれて、ヤケクソになった一夏がダーツを投げる。幸いダーツはちゃんと刺さり、回っていたルーレットがゆっくりと止まる。
『剣道部』
「っしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間、篠ノ之から今まで聞いたことのない叫び声が発せられた。し、篠ノ之……?
「ほ、箒さん?」
「今の、雄叫び……?」
「それがお前の本性だったのか……」
「あっ……ゴホンッ!」
周りの視線に気付いて咳払いするが、もう遅い。だんだん周囲の視線に耐えきれなくなったのか、
「わ、忘れろ~~~~~~!!」
ガチ泣きしながら体育館を飛び出して行ってしまった。一夏と一緒が嬉しかったのはいいんだが、感情のタガを外したのは失敗だったな。
何はともあれ、『織斑一夏争奪戦』は一夏の剣道部入部で幕を閉じたのだった。
「簪ちゃん、虚、私何も聞いてない……」
最後まで壇上で放置されたパイセンが、妙に哀愁を漂わせていた。
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全校集会が終わり、俺も4組の教室に――戻れなかった。
「……で? 今度は俺、何で呼ばれたんです?」
教室に戻る途中で織斑先生に拉致られて、もはや勝手知ったる生徒指導室に連行されていた。簪も当然左腕装備の状態で。
「色々言うべきことはあるが、学園祭で使ったゴーグルについてだ」
「IS体験のゴーグルですか?」
「そうだ。宮下はあのゴーグルを学園祭後、4組に寄付すると聞いているが、事実か?」
「はい。クラスに5,6個提供します。エドワース先生も承知してますよ」
それを聞いて織斑先生、頭を抱えてデッカイため息。なんでさ。
「4組だけあのゴーグルを導入してISの訓練をしたらどうなると思う? 他のクラスとの差が広がり過ぎて不公平極まりなくなる。その辺り、エドワース先生に止めてほしかったんだがなぁ……」
あ、エドワース先生に対するため息だったのね。そう思ったら、ギロリと睨まれた。解せぬ。
「それで、織斑先生はどうしたいんですか? まさか、陸からあのゴーグルを没収するんですか?」
「それが出来れば一番楽なんだがな。一度許可を出したものを没収しては、それこそ示しがつかなくなる」
だから困ってるんだ、と織斑先生は再度頭を抱えてため息をついた。
「そこで、だ。宮下、あのゴーグルは全部でいくつある?」
「ざっと40です」
最初の10台と、直前のデスマーチの30台を足した数を申告する。予備もあったりするが、そこらへんはいいだろ。
「そうか……各クラスに3台ずつ、回してくれないか?」
「"各クラス"というのは、2,3学年も含めて、ということですか?」
「そうだ」
となると、2,3学年に3×4×2で24台、1学年の4組以外に3×3で9台、全部で33台。それなら1年4組に当初の予定通り5,6台回しても足りるのか。
「それと、現実世界と仮想世界の時間を合わせてくれ」
「それは"10分で1時間"ではなく、"1時間で1時間"にしろということですか?」
「ああ。そうでないと、仮想組の方が実機組より有利になるという逆転現象が起きかねないからな」
う~む。織斑先生の言ってることも分からんくはないが、当初の予定から大分ズレてくなぁ……。
「ちなみに、断った場合は?」
「その場合は申し訳ないが、先ほど言った『不公平』を理由に4組への寄付を禁止する」
「それ、選択肢ないじゃないですか」
簪の方を見ると、『仕方ないかも』と顔に書いてあった。はぁ……ここは譲歩するか。
「分かりました。各クラスに3台、提供しましょう」
「すまんな。あまり1クラスだけが突出すると、学園上層部からどうなってるんだ説明しろと催促が、な」
そう言って腹部を押さえる先生。どうやらブリュンヒルデすら、中間管理職の悲哀からは逃れられないらしい。
その代わり、当初の予定になかったゴーグル33台分については、『学園側が俺から買った』という形にするとのこと。金額については
「それぐらいが妥当だろう」
と言って、以前のバイト代と同じように振り込むということで片が付いた。
教室に戻り、クラスメイト達に説明。
「「「あ~……」」」
というのが、みんなの反応。『言われてみれば確かに』という感じだった。
「他のクラスとの経験値の差かぁ」
「訓練機の予約をしなくていいぐらいにしか考えてなかった」
「そりゃ10分で1時間の訓練になるなら、誰も実機に乗らなくなっちゃうかも」
等の声が出て来た。
「すまんな。なんか当初よりダウングレードを余儀なくされちまった」
「宮下君が悪いわけじゃ無いよ」
「そうそう。織斑先生が言ってたことも理解できるから」
「それに、ウチのクラスが他より台数多いのは変わらないし」
そこだけはな。他クラスが3台に対して、4組は6台を回すことにしてある。そこは製作者特権ってことで。
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後日、各クラスに仮想世界潜入ゴーグルが配布された。
貸し出されたゴーグルは寮への持ち込みも許可されたため、訓練機を予約できなかった生徒は寮の自室でゴーグルを使用して訓練を積むという選択肢が新たに生まれた。
それにより『今年はIS操縦カリキュラムの進捗がいいですね~』と某副担任がこぼすのだが、それは少し未来の話。
ちなみにその後日に、口座を確認した俺は
「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!?」
と叫んでいた。
学園から振り込まれた金額が……ゼロの数が……8個? ああ……前に売った設計図、本当に安かったんだなぁ……。
学園祭編、終了でございます。
あれこれネタ(束回とか)を入れようとした結果、他章より長くなっちゃいました。タハハ……。
『なんでチケット入場者に投票権があるんだ?』という疑問が出てきた人もいるかもしれませんが……気にするな!
次回からキャノンボール・ファスト編になります。
ちなみに3/14現在、亡国機業は出て来ない予定です。学園祭であれだけボコられたのにまた出てきたら、むしろ賞賛を送りますね。