『キャノンボール・ファスト』。それはISを用いて行われる、妨害アリの高速バトルレースだ。
本来は国際大会として扱われるが、IS学園があるここでは、市の特別イベントとして催されるそれに、生徒達は学校行事の一環として参加することになる。
とはいえ、専用機を持ってる方が圧倒的に有利なため、当日は専用機部門と訓練機部門の二つに分けて行われるのだが。
さて、今後行われるイベントについて長々と説明したわけだが、どうしてそんな説明をしたか。それは――
「い、一夏の誕生日!?」
「そういう大事なことはもっと早く教えてくださらないと困りますわ!」
「え? いや、そこまで大したことじゃないと思ってたんだが……」
「ふん。しかも、知ってて黙っていた奴もいたみたいだな」
「「うっ!」」
どうやら一夏の誕生日がキャノンボール・ファストの開催日と被ったらしい。しかもそれを知ってて黙っていた篠ノ之と凰が、他の3人から集中砲火を浴びていた。
「お前ら、篠ノ之と凰への追及は飯食ってからしてくれ」
「うん。周りからの視線が痛い」
「「「「「あっ……」」」」」
俺と簪の指摘で周りを見渡せば、『またあいつらか』という視線がこっちに向かって刺さること刺さること。その視線に気付いた一夏ハーレムの面々の声と体が縮こまる。
「当日は市のISアリーナでやるんだったか?」
「二万人収容可能ってやつだね~。いつだったか、とあるアイドルがライブをしたんだけど満席に出来なくて、それ以来キャノンボール・ファスト以外で使用されてないんだよ~」
「箱物行政」
「更識さん、辛辣ですわね……」
いや、IS以外で使えないアリーナとか、箱物以外に言い様がないだろ。
「そういえば、明日からそのキャノンボール・ファストのための高機動調整を始めんだよな? 具体的に何するんだ?」
「ふむ。基本は高機動パッケージのインストールだが、嫁の白式にはそれがないだろう」
「だから、各スラスターの出力調整とかエネルギーの配分調整になるかな」
ボーデヴィッヒとデュノアの言う通り、一夏の白式にはパッケージなんてものはない。というか、いい加減何か無いのか倉持技研。
「高機動パッケージって言うと、確かセシリアが以前……」
「ええ、ブルー・ティアーズには主に高機動戦闘を想定したパッケージ『ストライク・ガンナー』が搭載されていますわ!」
「臨海学校の時、篠ノ之博士の横槍で出番のなかった」
「ええ、ええ。本当はあの時にお見せしたかったですが……」
あ、オルコットの目のハイライトが消えそう。
「そ、それで! 鈴とかシャルとかラウラにもあるのか? パッケージって奴」
そこで一夏が無理矢理話を他の面子に振る。ナイスフォロー。
「あたしは無し。甲龍用の高機動パッケージは間に合わないって最近連絡が来たわ。うちの国何やってんだか」
「私は姉妹機である『シュヴァルツェア・ツヴァイク』の高機動パッケージを調整して使う予定だ。あちらの方が本国配備の分、装備開発がしやすい環境だからな」
「僕は……」
そこでデュノアが言い淀む。どうした?
「実は学園祭の日に、お父さんが来てたんだ」
「お父さんって……デュノア社の社長がか?」
「うん」
大企業の社長が秘密の来日をしていたことにみんな驚いていた。……俺と簪は普通に会った上に、名刺まで渡されたが。
「それで、ついに第3世代機の試験機がロールアウトしたからって、その時一緒にフランスから持ってきた機体に乗り換えたんだ」
「機体の乗り換えか……だが大丈夫なのか? 乗り換えたとなるとISコアの経験値も最初からになるだろう」
「それは大丈夫だよ。『どこかの誰かさん』が、ISのコア情報を入れ替えるって、頭おかしいことをしてくれたから」
「……」
途端に、全員の視線が俺に向かってくる。仕方ないだろアルベールさんから頼まれて報酬が良かったんだから。一応安全面も考慮して、事前に束にも相談したんだぞ。
「俺は悪くねぇ!」
「誰も宮下が悪いなんて言ってない」
「というか、どこから出して来たのよ、その赤髪のカツラ」
篠ノ之と凰からのツッコミを受けて、某主人公のコスプレ用カツラが頭から落ちる。
「つまり、シャルロットはその新型に乗って参加するということか」
「そうなるね。正直以前のリヴァイヴより機動性も上がってるから、結構いい成績を残せるんじゃないかな」
「これは明日が楽しみだな」
ボーデヴィッヒがニヤリと笑う。
さっき一夏が言っていたが、明日から高機動調整を行う予定になっている。そこで大々的にお披露目となるだろう。
その後はキャノンボール・ファストが終わってから一夏の誕生日会をしようということで話が着き、各自解散となった。
ーーーーーーーーーーーーー
翌日、高機動調整と訓練のため第6アリーナに集まった面々の視線は、今一点に集まっていた。
「あはは……みんな、恥ずかしいんだけど」
「それが……」
「フランスの第3世代IS……」
外見はラファールの面影を残しつつ、まるで天使の羽のような6基のカスタム・ウィングを広げ、大型のライフルを展開している。
「これが僕の新しいIS、『リィン・カーネイション』だよ」
「リィン、カーネイション……」
みんながデュノアの新しいISに目が行ってる間に、俺は陰流を展開、標準装備のアサルトライフルをデュノアに向ける。
「っ! 宮下!?」
――ドドドドッ!
篠ノ之の声を無視して引き金を引き、銃口から飛び出した弾丸はデュノアのISに――
当たることなく、まるで磁石が反発するかのごとく左右に逸れていった。
「なに、今の……?」
「弾が、逸れた……?」
今目の前で起きたことが信じられないと言わんばかりに、みんなが固まる。
「アルベールさんから話は聞いてたが、実際見るとすげぇな」
正直、俺も驚いていた。まさかこれほどとは。
「まさか、これが……」
「宮下君から手に入れた設計図を元に、デュノア社の技術開発部が心血を注いで生み出した装備――」
「『
俺が売った設計図は、ドイツのAICを解析したものだ。内容は物体加速度の低減。それをデュノア社はただ載せるだけでなく、そこから新技術まで持っていったわけだ。やるな、デュノア社。
そんなデュノアの新ISのお披露目を挟んで、さっそく高機動訓練を始めたわけだが
「う、うわぁぁぁぁぁっ!」
――ドゴォォォォォン!
コーナーを曲がり損ねた一夏が、そのままアリーナの壁に突っ込んでいた。やっぱそうなるよねー。
一緒に並走していたオルコットが、壁にめり込んだ一夏を引っ張って掘り起こす。
「いつつ……高速機動用補助バイザーってやつが慣れないんだよなぁ……」
「とはいえ、それが無いとまともに飛べませんから、頑張って慣れるしかありませんわ」
「おう、頑張る……」
「う、うわわわわわっ!」
――ドゴォォォォォン!
「……」
「箒、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ……」
篠ノ之も、一夏と同じように機体性能に振り回されてるな。本番までに間に合うのか? これ。
他のメンバーはどうしてるかな、っと……
「これがリィン・カーネイションか……! 確かに以前のリヴァイヴより機動性が高いな……!」
「ぐぬぬ……! 離されないようにするのがやっとなんて……!」
「やっぱり第3世代機だなぁ。カスタムⅡも機動性重視で頑張ってたけど、地力が違うや」
デュノアの後ろを、ボーデヴィッヒと凰が追う形か。今まで第2世代機というハンデを技量で補ってきたデュノアが第3世代機に乗ると、ここまで変わるんだな。
「みんな、楽しそう……」
「言ってくれるな簪……」
そんな中、俺と簪だけは一夏チームが飛んでる姿を眺めているだけだった。理由は簡単、最初に簪が飛んでみたところ
「「「「「「あんな機動するのと一緒に飛べるか!!」」」」」」
と総ツッコミを食らったからだ。いやまぁ、そうなるよな。簪も最初から飛ばしまくって、ただでさえ速い高機動状態からの瞬時加速とか、どないせいと?
「陸は飛ばないの?」
「俺か? 俺があの中に混ざってもなぁ」
陰流は打鉄のカスタム機、第2世代機だ。そして俺にはデュノアほどの技量も無いから、あの中に混ざる意味がない。どうせ途中で置いてきぼりになって、一人で飛んでるのと変わらなくなるだろうからな。
「なら、一緒に飛ぼう」
「簪と? それこそ置いてきぼり食らうだろ」
「陸と飛びたい」
「いやだから、どっかで置い「陸と飛ぶ」……はい」
根負けした俺は、そのまま簪と高機動モードで飛ぶことになった。で、なぜか簪が
「手、繋ぐ」
とか言い出して、飛び終わった後に
「アンタ達、本番でピーターパンでもやる気?」
なんて、凰に揶揄われた。こんな高速で飛び回るピーターパンとか、誰が見たがるんだよ……。
シャルパパと和解済み&オリ主設計図があればこんなもんよぉ!
ということで、シャルロットのISが『リィン・カーネイション』に変わります。
原作と違い、第3世代機『コスモス』とリヴァイヴの共鳴現象は発生していないので、コアは一つだけです。しかも『花びらの装い』がエネルギーシールドからAICと同じ結界型、なおかつIS前面をほぼ全部カバーできる範囲に。(ただし前面固定なので、シールドのような取り回しは不可)
簪インフレが止まらない(止める気が無い)から、ここらで一夏ハーレムにもテコ入れしようかと。