俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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まあ、そうなるな。(伊勢型戦艦2番艦風に)


第64話 出禁

宮下陸は激怒した。必ず、かのIS学園上層部の横暴を除かなければならぬと決意した。陸には学園運営の難しさがわからぬ。陸は、機械馬鹿である。機械を作り、打鉄弐式に組み込んで暮して来た。けれども不公平に対しては、人一倍に敏感であった。

 

……今度は陸が、何に怒ってるのか。

 

「簪が大会参加不可とか、どういうことだおらぁぁん!!」

 

「お、抑えろ陸!」

 

「そ、そうだよ~、落ち着いて~」

 

織斑君が今にも暴れ出しそうな陸を羽交い締めにしている正面、玄関前廊下に張り出された紙には、こう書かれていた。

 

=====================

キャノンボール・ファスト参加者について

 

今月開催予定のキャノンボール・ファストについて、以下の者の競技への参加を禁止とする。

 

対象者:1年4組 更識簪

禁止理由:専用機の性能が他と著しく乖離しており、円滑な大会運営に支障を来すため

 

上記生徒は、競技後のエキシビジョンに参加すること

=====================

 

「罪のない一生徒をハブるとか教育舐めてんのかクソがぁ!」

 

「いやいや、禁止理由読んだら分かるだろ! というかこれ陸が原因じゃねぇかよ!」

 

「なら弐式より高性能な専用機作れよ何国家が一個人に負けてんだよ!」

 

「正論だけど無茶言うな馬鹿野郎!」

 

……つまり、私と弐式が参加すると勝負にならないから、大会運営からお断りされたと。

 

「お前達、朝から何を騒いでいる!」

 

あ、織斑先生。

 

「千冬姉! ちょうど良かった! これを何とかしてくれ!」

 

「織斑先生だと何度言えば……宮下か……」

 

視界に陸が入った瞬間、手を目に当ててため息を一つ。

 

「こうなる予感はしていたが……教師部隊!」

 

「「「はいっ!」」」

 

織斑先生の号令で、どこからともなく先生達が……ってなんで刺又なんか持ってるの!?

 

「な、なんだ! お、おいっ!」

 

「確保!」「確保!」「確保!」

 

「よし! そのまま生徒指導室まで連行!」

 

「「「はいっ!」」」

 

刺又で三方から胴を押さえられた陸は、そのままどこか――おそらく織斑先生の言った生徒指導室――に連行されていった。

 

「あ、あの、織斑先生」

 

「ああ更識妹か……すまんが、今回の参加禁止については大会運営をしている市からの要望でもある、我慢してくれ」

 

「は、はぁ……」

 

織斑先生に頭を下げられて、私もどう返せばいいのか。確かに競技に参加できないのは残念だけど、エキシビジョンで弐式の性能をお披露目できればいいかなって思ってたから。

 

「宮下についてはこちらで対応する。エドワース先生にもこちらで連絡を入れておくから、お前達はそのまま教室に行くように」

 

私達の返事を聞く前に、織斑先生は生徒指導室のある方に向かって歩き出していた。

 

「かんちゃん~……」

 

「……とりあえず、移動しよう」

 

玄関前に立ってても仕方ない。今は織斑先生に言われた通り、教室に行っていつも通り授業を受けよう。ほら、織斑君も口ポカンしてる子達の後ろを教室に向かって押してるし。

 

 

 

陸が生徒指導室から戻って来たのは、2時限目が終わった直後だった。

 

「くそぅ……やっぱ大人は汚ぇ……」

 

(陸も前の外史では大人だったんじゃ……)

 

と思ったけど、周りの耳があるから言えない。陸って、そういうところは子供っぽいっていうか……けどそこも良い。(惚気)

 

「はぁぁぁ、なーんかモチベ下がっちまったなぁ……」

 

「仕方ない、というか織斑君も言ってたけど、陸が色々積み過ぎたのが原因」

 

「それ、先生達にも言われた……どうせ競技に出られないなら、いっそさらに改造してネクスト――」

 

「陸、よく分からないけど止めよう?」

 

それ以上言わせたらいけない気がした。本当によく分からないけど、傘のような外観の飛行要塞と対峙する光景を幻視したから。

 

「なら、別の方法でモチベ上げるかぁ……」

 

「?」

 

ーーーーーーーーー

 

――コンコン

 

「二人とも、ちょっといいかしゲホッ! ゲホッ!」

 

夜、簪ちゃんと宮下君の部屋のドアを開けたら、出迎えと言わんばかりの煙がやって来て噎せたんですけど!?

 

「お姉ちゃん、いらっしゃい」

 

「パイセン、煙が外に漏れるとマズいんで、さっさとドア閉めてください」

 

「え、ええ?」

 

何が何だか分からないけど、とにかく部屋の中に入ってドアを閉めた。そして二人の声がする方――煙の発生源――に向かっていくと

 

「……何やってるの?」

 

「何って、見ての通り焼肉だよ?」

 

床に敷かれたカーペットの上にローテーブルが置かれ、そのテーブルの上にはホットプレートとお肉や野菜の盛られた皿とお茶碗。それを座布団に座った二人が囲んでいる。しかも簪ちゃんの隣には、5合炊きぐらいの炊飯器まで。……うん、簪ちゃんの言う通り、確かに家庭の焼肉風景よ? でも……

 

「どうして寮の部屋でやってるのよ……」

 

ご丁寧に、天井の火災報知器にプラスチックのカバーまで付けて。あ、換気扇回してたから、ドアの方に煙が行ってたのね。

 

「簪、茶碗ってもう一つあったっけ?」

 

「ある。お姉ちゃんも食べてく?」

 

「……うん」

 

言いたいことはいっぱいあるけど、目の前の焼肉の魔力には勝てなかったわぁ……。

 

 

 

「(白米もぐもぐゴクン)それで、どうして寮の部屋で焼肉なんてやってるの?」

 

「陸のモチベを上げるため(肩ロースをトングで掴んでプレートにジュー)」

 

「弐式がキャノンボール・ファストに参加できないって聞いて、(玉ねぎ齧ってもぐもぐ)食いたいもん食ってモチベを上げようと」

 

「なるほどねぇ……あっ、そのハラミもーらい(ペチンッ)いたっ!?」

 

「お姉ちゃん、それまだ焼けてない」

 

「あ、はい。サーセン」

 

こんな和気藹々とご飯食べるなんて、久しぶりかも……。

 

「それで、パイセンは何の用があってここに?」

 

「う~ん、実はもう用事は済んじゃったのよ」

 

「どういうこと?」

 

「宮下君、今朝結構大暴れしてたでしょ? だから織斑先生から、様子を見て来てくれって頼まれたのよ。久々のタン塩美味しい」

 

「ああ~……」

 

簪ちゃんが納得する中、宮下君は解せぬって顔しながらお肉を頬ばっていた。うん、簪ちゃんの次ぐらいに可愛い……って何考えてんのよ私!

 

「でも、こうやって自分でモチベ管理出来てるなら問題ないわね。織斑先生にもそう伝えておくわ」

 

「そうしてください。もうそろそろカルビ焼けたか?」

 

「それにしても、なんか家族団欒って感じねぇ」

 

「感じも何も、家族団欒だよ?」

 

簪ちゃんが首を傾げて言う。

 

「だって私と陸が将来一緒になったら、お姉ちゃんは陸の義姉になるんだよ?」

 

「「……っ!?」」

 

私と宮下君はハッとした。そうよ、そうなるんじゃない! さっき宮下君が可愛いと思ったのは、義理の弟に対する感情ってこと! つまり家族愛ってことなのね!?

 

「いやまぁ確かにそうなるのか……となると、パイセン呼びも改めた方がいいのか……?」

 

「試しに、お姉ちゃんを名前で呼んでみる?」

 

「それやって、一度顔真っ赤にして飛び出していった前科が……」

 

「前科って何よぉ!」

 

確かに学園祭前にあったけど、あれは耳元で囁くのが悪いんじゃない!

 

「なら大丈夫。陸」

 

「う~ん、そんじゃ……」

 

簪ちゃんに促されて、半信半疑な顔をした宮下君が

 

「楯無さん」

 

と私を名前で呼ぶ。

 

「どう? お姉ちゃん」

 

「不意打ちでなければ全然問題ないわ」

 

呼ばれ慣れてないから、ちょっと気恥ずかしいけど。織斑君みたいに呼ばれ続ければ、その内慣れるでしょ。

 

「そっか。それなら……」

 

「それなら?」

 

「それならお姉ちゃんも、陸のこと名前で呼ばないと、ね?」

 

「あっ……そ、そうね」

 

言われてみればそうなんだけど、私も今更彼を名前で呼ぶって……なんか恥ずかしい。

 

「えっと……言う、わね?」

 

「はい」

 

もうっ、どうして私が恥ずかしい思いしてるのに、そっちはなんてこと無さそうな顔してるのよぉ。

 

 

「陸、君……」

 

 

あっ、これダメだ。すっごい恥ずかしい。

 

「陸もお姉ちゃんも、これからは名前で呼ぶこと。OK?」

 

「分かった。慣れるまで大変そうだけどな」

 

「えっ、あの簪ちゃん――」

 

「OK?(暗黒笑顔)」

 

「お、おーけー……」

 

簪ちゃんには勝てなかったわ……。う~っ! これから宮下君――陸君と顔合わせるの大変なんですけどぉ!!

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