大会前の日常回です。明日から本気(大会回)出す。
キャノンボール・ファストを来週に控えたある日、
「宮下、キャノンボール・ファストが終わるまで打鉄弐式の改造は禁止だ」
「ファッ!?」
という理不尽極まりない宣告を織斑先生から受けて、俺は膝から崩れ落ちた。なんて……なんて惨い仕打ちを……!
「それはやっぱり、先日の件ですか?」
「ああ。ただでさえお前をエキシビジョン・レースに混ぜて良いものか賛否がある中で、これ以上魔改造されては堪らん。最悪、選手が全滅して再起不能になりかねん」
「それは……否定できないかも」
「そう思える感性を、宮下にも分けてやれたら良かったんだがなぁ……」
なんすか織斑先生、俺が非常識だって言うんですか? ……否定はしませんが。
「しかしそうなると、簪が飛んでるのを眺めるぐらいしかすることないなぁ」
「あの……陸は競技に参加するんだからね?」
「前にも言っただろ、俺の陰流は第2世代機だから、あいつらとまともにやって勝てるわけないって。だからぶっちゃけ、訓練はさほど必要ねぇんだよ」
「そ、それでいいのかなぁ……?」
「というか、そんなセリフを教師である私の前でするのか……」
あまりに俺が堂々としてるから、織斑先生も怒る気力が無くなったらしい。まぁ?
ーーーーーーーーー
こうして何もすることが無くなった俺は、
「気晴らしに買い物行こう」
という簪の誘いで、最近行き慣れた感がある『レゾナンス』に来ていた。
「とはいえ、今日は特に買わなきゃいけないものはないんだがな」
「だから今日は、ウィンドウショッピング」
「つまり、ぶらぶら見て回ろうってことか」
「うん」
夏休みにも寄ったお店だったり、まだ見たことない店だったり。簪と手を繋ぎながら、色んな店を見て回っていると、見知った顔を見つけた。
「一夏?」
「おう陸。更識さんも一緒か」
一夏とデュノア、そして赤髪の2人組が立ち話をしていた。いや、2人組の片方は見覚えがあるな。
「確か、五反田弾、だっけか?」
そう、学園祭の時に奇声を上げて制圧された(というか俺がした)、あの男だ。
「おう。覚えててくれたんだな。えーっと……」
「宮下陸だ。好きな方で呼んでくれ」
「分かった。よろしくな陸」
差し出された手を握り返す。こんなに普通に対応できるのに、どうして学園祭では不審者ムーブかましてたんだ……?
「更識、簪です」
「ああ、よろしくな。こっちは俺の妹の――」
「五反田蘭です。よろしくお願いします」
ペコッとお辞儀する女の子。兄妹なのか、言われてみれば確かに似てるな。
「それで、これはなんの集まりなんだ?」
「集まりって言うか……」
「たまたま出会っただけだな」
弾は蘭の買い物の荷物持ち、一夏はデュノアと時計を買いに来たらしい。
「で、宮下君と更識さんはウィンドウショッピングなんだね」
「うん。今まで寄ったことのないお店とか回ってた」
「そっかぁ。二人とも、仲が良さそうで羨ましいなぁ」
「うぅ……私も一夏さんとこんな風になってみたい……」
と女子二人が羨ましがってるが、デュノアは一夏と手繋いでるだろ。というか、デュノア以外はいないのか?
「一夏、他の連中は来なかったのか?」
「ああ。本当は鈴も一緒に来るはずだったんだけど、急用が入ったって連絡が来てな」
「凰さんかぁ……」「凰かぁ……」
それを聞いて、俺も簪も遠い目になった。
「な、なんだ? 一体どうした?」
「凰の奴、候補生管理官?に引きずられてったぞ。なんでも急遽高機動パッケージが届いたとかで」
「マジか」
「鈴の奴、ちゃんと代表候補生やってんだな」
俺が今朝見たことを伝えると、一夏は口をあんぐり、弾は何やら感心したように頷いていた。
「それにしても……」
ん? 簪が俺に耳打ちを……なるほど。
「ねぇ蘭ちゃん、お兄さんを借りてもいいかな?」
「「え?」」
突然簪に聞かれて、五反田兄妹が目を見開く。その間に、俺はあるところに連絡を……。
「織斑君、デュノアさん。その間、蘭ちゃんと一緒にいてもらえる?」
「俺は別にいいけど……」
チラッと一夏がデュノアの方を見る。
「僕も構わないよ。蘭ちゃんはそれでいい?」
「だ、大丈夫です! よ、よろしくお願いします!」
顔を真っ赤にして、一夏達に頭を下げる蘭ちゃん。簪の言う通り、彼女も一夏狙いか。
「それじゃあ、色々見て回るか」
一夏の声に二人が頷き、それぞれ左右両側に並んで歩き出した。
「で、俺はどうすればいいんだ?」
今日知り合ったばかりの簪に突然借りられた弾は、自分を指さしながら聞いてきた。
「心配すんな。さっき連絡したから、もう少しで……」
「すみません。お待たせしました」
「あ」「あ」
俺に突然呼び出された虚先輩と弾が、お互いの顔を見て固まる。
「あ、あの、宮下君、これは一体……」
「虚先輩にお願いがあるって言ったじゃないですか」
「ええ、それでレゾナンスに来てほしいと……」
「ちょっとこれから、そこにいる弾とデートしてください」
「「ええっ!?」」
俺のお願いに、二人が顔を真っ赤にして顔を見合わせる。
これが簪が俺に耳打ちした内容だ。学園祭が終わった後、虚先輩が一夏に弾のこと色々聞いてたのも知ってる。だから俺達が二人のキューピッドになろうってわけだ。 なんでそんなことするかって? 面白そうだからに決まってんだろ?(暗黒微笑)
「二人とも……」
「「グッドラック! Σd(゚∀゚)」」
簪と二人サムズアップすると、顔真っ赤な二人を放置してウィンドウショッピングを再開した。いやぁ、良いことしたなぁ!
ーーーーーーーーー
虚さんと五反田君をくっ付けて、私達はジェラート片手にモール内を回っていた。前から思ってたけど、ここ、ホント広い。
そしてジェラートを食べ終わった頃、
「おっ、そうだ」
「陸?」
突然陸が、アクセサリーショップで足を止める。陸がアクセサリー?
「簪、ちょっといいか?」
「え? う、うん……」
戸惑う私を連れて、そのままお店の中に入る。
「いらっしゃいませ」
「ネックレスはありますか?」
「こちらのコーナーになります」
店員さんに案内されるまま、私達はネックレスが展示されているコーナーに。
「あの、陸?」
「これ……いや、こっちか?」
ショーケースに並んだネックレスを見比べて
「これください」
「はい」
なんかとんとん拍子で、アクアマリンのはまったネックレスを買ってるんだけど……。
「こちらで付けて行きますか?」
「ええ、そうします」
店員さんにそう言うと、陸は今買ったばかりのネックレスを
「あっ……」
私の首にかける。え? え?
「この前のゴーグルで臨時収入があったろ? で、毎回指輪ばっかりってのも芸がないと思ってな」
「陸……」
うぅ~! サプライズプレゼントとか卑怯! ここがお店じゃ無かったら、速攻ハグするところぉ!
「ありがとうございました」
店員さんに見送られてお店を出た瞬間、
「ぎゅ~!」
「我慢できなかったのか……」
陸も呆れた顔をしつつ、ハグを敢行した私の頭をポンポン撫ぜてくれる。周りの視線? し~らぬい。陸にハグする方が重要。
「あっ」
「どうした?」
「あれ」
私が指さした先を見た陸が、ニヤリと笑う。そしてスマホを取り出して、その現場を撮影する。
「これを楯無さんに送ればいいんだな?」
「うん」
お姉ちゃんに送信し終わると、私達はまたモール内を回り始めた。今度は腕を絡めて。
ーーーーーーーーー
宮下君に突然呼び出されたと思ったら、弾君とデートすることになった。
わ、私も何を言ってるのか分からないですが、気付けばこんなことに。いえ、別に嫌だったわけではないんですよ?///
そして学園に戻った時には、もう日が暮れていました。
「おかえり虚。陸君に呼ばれたみたいだけど、どんな用事だったの?」
「いえ、大した用事では無かったです」
生徒会室でお嬢様に質問されますが、適当に答えます。まさか本当の事なんて言えません……。
「へぇ、大したことないんだぁ?」
そう言って、お嬢様はさっきから見ていたスマホを私の方に向けて――
「……えっ?」
スマホに映っていたのは、私と弾君が喫茶店でメールアドレスを交換している場面だった。
「な、なな、なんで……」
「まさかあの虚が、男の子とデートなんてねぇ?」
「あ、ああ、ああああ……」
見られた……見られた……!
「虚?」
「お嬢様の……」
「お嬢様の、馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「え? ええ!? う、虚ぉ!?」
お嬢様に罵声を浴びせたような気がしましたが、そんなことを気にする余裕もなく、私はおそらく顔を真っ赤にしながら、生徒会室を飛び出してました。
虚先輩の口調がよく分からんです。
原作でも、キャノンボール・ファストから修学旅行の間に弾とずいぶん仲良くなってましたね。弾め、貴様もモテ要素持ってたんじゃねぇか……