俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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タッグマッチ編に入ります。


全学年合同タッグマッチ
第71話 国家代表


「宮下、お前の陰流は第3世代機だ」

 

「はい?」

 

キャノンボール・ファストの翌日、もはやいつものように呼び出された生徒指導室で、織斑先生が訳の分からないことを言い出した。

 

「織斑先生、もしかして胃薬の飲み過ぎで頭が……」

 

「違う! だからそんな憐みの目で見るな更識妹!」

 

「なら、なんでそんなこと言い出したんですか?」

 

陰流は打鉄のカスタム機、歴とした第2世代機だ。それが第3世代機とはどういうこった。

 

「そもそもの話は、宮下が先日のレースでビーム砲をぶっ放したことだ」

 

なんでも、俺が昨日のキャノンボール・ファストの専用機の部で○ィバインバ○ターをブッパした際、一夏とデュノア以外をエジプトの壁画にしたのが問題になったらしい。

 

『第2世代のカスタム機に第3世代機、ましてや操縦者が未熟だったことを勘定に入れても第4世代機が敗れるなんてあっていいわけがない!』

 

という頭パーな意見が続出したらしい。主に壁画になった国のIS委員会とIS関連企業(デュノア社を除く)から。

んで、自分達の頭の中だけを納得させるために『あの砲撃を放ったのは同じ第3世代機だから、同じ第3世代機が負けたのも仕方ない』と、今回織斑先生が言ったことを学園経由で命じてきたらしい。馬鹿? アンタらが命令したからって、陰流の性能が第3世代相当になるわけじゃねぇんだぞ?

 

「とりあえず、織斑先生が乱心したわけじゃないことが分かって一安心です」

 

「私は別の理由で心が病みそうだがな……」

 

なんで俺の方を見てそんなセリフ吐くんですか。解せぬ。

 

「とにかく、宮下の陰流はデータ上は第3世代機として扱うことになった。個人的には非常に馬鹿らしいがな」

 

「馬鹿ばっか」

 

「言うな更識妹。さらに斜め上の馬鹿もいるんだぞ」

 

「これよりまだ上がいるんスか……?」

 

「いるぞぉ……『女性権利団体』って大馬鹿共がな」

 

その大馬鹿達は『陰流とかいう機体を取り上げて、操縦者の男は解剖してホルマリン漬けにするべきだ!』とか言ってたらしい。IS学園に入る前はそう言う連中が大量に湧いてて、最近は鳴りを潜めてたと思ってたんだがなぁ……。

 

「当然、解剖もホルマリン漬けも却下された。そもそも女権団は以前やらかしてる上、連中より宮下を敵に回す方がまずいというのが日本政府の考えだ」

 

「陸の命を狙うなら、弐式で女権団の本部を()()()()

 

「……更識妹も敵に回ったら、国が終わるな」

 

「そんな大袈裟な」

 

いくら弐式だって、そんな国を丸ごと消すような武装は無い……はず、だぞ? 無いよな……?

 

「陰流については以上だ」

 

「その言い方だと……」

 

「他にも何かあるんですか?」

 

「ああ。更識妹、お前についてだ」

 

「私、ですか?」

 

首を傾げる簪。エキシビジョンのこと、まだ尾を引いてるのか?

すると、織斑先生はパイプ椅子から立ち上がり

 

 

「更識簪。右の者を、IS国家代表に任命する」

 

 

簪に証書みたいなものを渡した。国家代表?

 

「国家、代表……?」

 

渡された簪も、口をポカンと開けて固まっている。

 

「つまり、今日からお前は代表候補生から昇格して、日本代表になったわけだ。本来なら授与式をするはずなんだが、色々事情があってな。私が代読で証書を渡すことになった」

 

「え? ええ?」

 

「織斑先生、簪が国家代表になるのは良いんですが、前任者とか大丈夫なんですか?」

 

俺としては、簪が国家代表になるのは、ブリュンヒルデにするという約束を果たすという意味で大変プラスだ。だが、それで前任の国家代表から恨まれるのも面白くない。なにせ向こうからしたら、自分が座ってた席から追いやられた形だろうし。

 

「そこは問題ない。というか、な、前任者は私の後釜なわけなんだが、どうも『ブリュンヒルデの後継者』という周囲の期待でメンタルをやられていたらしい。度々辞退を申し出ていたのを何度も留意させていたんだそうだ。だから今回の件は大賛成していた。やっと辞めることが出来る、とな」

 

「あ~……確かに席を譲りたくもなるか。その点簪なら大丈夫ですね」

 

「ええ~……」

 

なんだよ簪。そんな『解せぬ』って顔して。

まぁ何はともあれ、これで簪は、再来年のモンド・グロッソに出場することが出来るわけだ。

 

 

「ああちなみに、次の第3回大会からは『GNドライブの使用禁止』とルール改定がされる予定だそうだ」

 

 

「Son of a b***h!」

 

 

ピンポイントで弐式をナーフしてくるとか卑怯だろうが!!

 

ーーーーーーーーー

 

「残当」

 

「酷くね?」

 

生徒指導室であったことを楯無さんに話したら、返答がこれである。解せぬ。

 

「そのGNドライブとやらが無くても、簪ちゃんなら国家代表に指名されて当然じゃない」

 

「お、お姉ちゃん……」

 

「そこは全面的に肯定します」

 

「り、陸もぉ!」

 

腕を組んでうんうんと頷く俺と楯無さんに、顔を赤くして反論しようとする簪。うん、可愛い。

 

「それにしても、再来年は簪ちゃんとモンド・グロッソに出場するのかぁ……」

 

「決勝戦で姉妹対決とか胸熱だな」

 

「あら、私も決勝まで行けると思ってくれてるのね」

 

「行かないんですか?」

 

「当然、行くに決まってるじゃない♪」

 

ニヤリと笑って、『再戦』と書かれた扇子を広げる。なるほど、楯無さんにとっては4月に簪と戦った時のリベンジってことになるのか。

 

「しかし、宮下君の陰流を第3世代機扱いするとは、IS委員会も何を考えているのか……」

 

「無駄よ虚。世の中には、自分の妄想と現実を区別できない人間がいるのよ」

 

「お嬢様、かなり酷いこと言ってますね……」

 

虚先輩苦笑い。俺と簪も生徒指導室で散々呆れ返ってたからな。

 

「ところでお姉ちゃん、国家代表になったら何があるの?」

 

「何って、何が?」

 

「え?」

 

「え?」

 

姉妹が顔を見合わせたまま固まる。

 

「代表候補生とは違う、国家代表特有のイベントとか無いの?」

 

「無いわね。精々、雑誌のインタビューとかが増えるぐらいかしら」

 

「雑誌のインタビュー……」

 

めちゃくちゃ嫌そうな顔するな。まぁ簪の性格からして、絶対好きそうには見えないがな。

 

「とりあえず、学園の新聞部には狙われるだろうから覚悟しておくことね」

 

「……来たらOHANASHIする」

 

「それはやめてあげて……新聞部に私の友達がいるから」

 

簪、そこまで嫌か。

 

ーーーーーーーーー

 

二人が出てから少しして、別の二人が生徒会室に入って来た。

 

「いらっしゃい、ダリル・ケイシー。フォルテちゃんも一緒なのね」

 

「もちろんっスよ。私とダリルは二人で一つっスから」

 

「それで、生徒会とは一番縁遠い自由人な貴女がどうしてここに?」

 

「頼みがあるんだ」

 

「?」

 

ホントに珍しいわね。独立独歩を旨とする彼女が、よりにもよって生徒会に頼み事なんて。

 

「ん~、とにかく、聞くだけ聞いてみましょう」

 

「司法取引がしたい」

 

「……はい?」

 

司法取引? 何言ってるの?

 

 

「オレの本当の名前はレイン。亡国機業のエージェント、レイン・ミューゼルだ」

 

 

「!?」

 

反射的に扇子を取り出し、ミステリアス・レイディをすぐに展開できるように動く。

 

「え? ダ、ダリル、何言ってるっスか……?」

 

「騙して悪いなフォルテ。つまりオレは、テロリストだったんだよ」

 

「う、嘘っスよね? そんな、そんなのって……!」

 

フォルテちゃんの取り乱しっぷりを見るに、本当に今初めて言ったのね……。

 

「嘘じゃねぇ。ただ『元』ってのが頭に付くがな」

 

「元……つまり組織を抜けた?」

 

「ああ。昨日の時点でな」

 

「もしかして……レースが終わった直後に通話してたのは……」

 

「組織に……叔母さんに決別文を、な」

 

「どうして、組織を抜ける気に?」

 

わざわざ学園に潜入までしてたのに、どうして組織を抜ける気になったのか。

 

「どうしてって、お前の妹だよ」

 

「は? 簪ちゃん?」

 

どうしてそこで、簪ちゃんが出てくるのよ!?

 

「ただのレース、お遊びですらあれだけボコボコにされたんだ。実戦であんなバケモノとやり合いたくねぇ」

 

「簪ちゃんがバケモノですってぇ!? 表出なさい!」

 

「実際そうじゃねぇか! アイアンクロー食らって頭をレンチンで吹っ飛ばされそうになる恐怖がお前に分かるか!?」

 

まだ言うか! あんなにキュートな簪ちゃんをバケモノ呼ばわりなんて、許さん!

 

「二人とも落ち着くっス!!」

 

「お、おう……」「わ、分かったわよ……」

 

フォルテちゃんに仲裁されて、私もダリルも取っ組み合いになる寸前でソファに座り直す。

 

「つまり、貴女は()()()を捨てて、()()()のままでいたいと?」

 

「そうだ。亡国機業にいた時の罪を不問にして、出来れば組織の報復から匿って欲しい。その代わり、オレは組織の情報を知ってる限り話す」

 

謎の組織の情報が得られて、向こうの構成員を一人離脱させられる。なるほど、悪くはないわね。

 

「要するに、な」

 

そこで言葉を区切ると、ダリルはフォルテちゃんの腕を引いて……てぇ!?

 

「ダ、ダリル!? またっスか!?」

 

またって、フォルテちゃんを胸の中にスッポリ納めるのがまた!?

 

「オレは叔母さんやミューゼル家の呪い、運命よりも、()()()を選んだってことなんだよ」

 

「……///」

 

百合だわぁ……デ○タル殿が尊死しちゃうわぁ……。

 

「んんっ! お嬢様、如何いたしますか?」

 

咳払いで、二人のイチャイチャを強制的に止めさせる虚。ナイスよ!

 

「更識としては、その取引を受けましょう。アメリカ側との折衝についても、こちらで引き受けます」

 

「すまん、頼む」

 

「その代わり、キリキリ情報を吐いてもらうわよ」

 

「そうっスよ。私とダリルが一緒にいられるかどうかが掛かってるっスから」

 

「分かってるって」

 

 

そうしてダリルから得た情報は、玉石混淆な物だった。

まず、学園祭を襲撃したIS、サイレント・ゼフィルス。あれは本当にイギリスから強奪されたものらしい。操縦者は"エム"と呼ばれる新参者で、アラクネの操縦者だったオータムとの仲は険悪だったとか。

そしてこれは新しい、そして頭の痛い情報だけど、陸君と倉持との一件で追放された女権団の残党が、亡国機業に合流したというのだ。その合流した連中の持っていた情報を元に、学園祭襲撃が決まったんですって。まぁ彼女達が政府中枢から追放された当時は、陸君も簪ちゃんも学年別トーナメント以外で公式試合に出てなかったし、まともな情報が無かったんでしょうね。それで襲撃してみたら撃退されたどころか、一時期は捕虜すら取られたと。

 

(この情報が確かなら、余計に時間的猶予がありそうね)

 

おそらく学園祭襲撃の失敗を受けて、組織内で内ゲバが起こる可能性がある。その間に、専用機持ち達の戦力強化とかできないかしら? この後織斑先生に相談してみましょ。




とうとう(やっと?)簪が国家代表に。日本政府からしたら、自由国籍の件をまた蒸し返される前に、国家代表にしてしまって所属を確定させたい狙いもあります。

そして本作では楯無さんの発案で、タッグマッチに持っていきます。
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