キャノンボール・ファストが終わって数日、玄関前の掲示板に貼られた紙をみんなが見ていた。
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全学年合同タッグマッチについて
今月末、全学年合同のタッグマッチを行う。
対象:1~3学年の専用機持ち
対象者は本日配布される用紙にペアを記載し職員室へ提出すること
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「タッグマッチねぇ……」
曰く、学年別トーナメントがボーデヴィッヒのIS暴走事件で有耶無耶になったから、専用機持ちに実戦的な模擬戦をさせて能力向上を目指しつつ、他の生徒にもそれを見学させることで知識の蓄積を図るんだとか。
どうせなら、そのトーナメントをやり直せばいいだろうに。日程の都合か?
「一夏は誰と出るつもりなんだ?」
ちょうど近くにいた一夏に話を振ってみた。
「まだ決めてない。というか……」
「「「「「最初はグー、じゃんけんぽん!」」」」」
一夏の視線の先には、玄関前でじゃんけん大会を始めたハーレムの面々。ここでやんなよ……。
「陸はいつも通りか?」
「ああ、たぶん俺も――」
「陸の分は私が出しておく」
「お、おう」
嫁の独占欲が強い。
「まぁ、元々そのつもりだからいいけどな……」
と思っていたのだが、1時限目の終わりに配られた用紙の一番下に、こんな文言が書かれていた。
『※ただし、1年4組の更識簪は参加不可とする』
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職員室で、私は山田先生の淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。
「それにしても、専用機持ち限定のタッグマッチですか」
「ああ、更識姉からの提案でな。また学園祭の時のような襲撃が無いとも限らんからな」
「そう、ですね……」
山田先生が暗い顔をするが、仕方あるまい。なにせ相手はテロリストだ。こちらの都合など気にせんだろうからな。
と、コーヒーを口に含んだところで
「織斑せんせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ぶふっ!」
職員室のドアが破壊しかねないほど勢いよく開かれ、さらに追加の怒声で吹き出してしまった。そして吹き出したコーヒーが山田先生の顔面にクリティカルヒット。すまん……。
「織斑先生!!」
「な、なんだ更識妹……」
「タッグマッチ、私が参加不可ってどういうことですか!?」
「お、落ち着け簪」
抑え込もうとする宮下すら引きずって現れた更識妹に、先生方は私を置いて職員室から退避し始めた。や、山田先生まで……ひどい。
だが、お前を参加不可にした理由はあるんだ。なぜなら……
「お前をこれ以上戦力強化する意味、あるか?」
「……え?」
私の指摘に、ピタッと更識妹が止まる。
「日本の国家代表になった時点で、お前は最強の一角になったわけだ。そんな奴を強化する意味があるか?」
「で、でも! それならお姉ちゃんも……!」
「姉の方まで抜けたら、タッグが組めない奴が出てくるから却下だ」
今年の専用機持ちは、1年が更識妹を含め8人、2年が2人、3年が1人の、計11人だ。そうなると、1人あぶれることになる。
「だから、一番戦闘力の高いお前を抜いた」
「ぐぬぬ……!」
「お前、そんなにタッグマッチで戦いたいのか? キャノンボール・ファストでケイシーをボコって、まだ足りないと?」
いつからこいつは戦闘狂になった? 宮下と知り合ってからか、愚問だったな。
「別に私は、好き好んで戦いたいわけじゃありません。弐式のお披露目も、先日のレースで終わりましたし」
レース? あれが、レース? ま、まぁ、とにかく更識妹の考えは分かった。なら、なぜそこまで今回の件でキレる?
「陸が他の子と組むのが嫌です!!」
「そんな理由かぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず私もキレてしまった。
「はぁ……宮下の方はどうなんだ?」
「俺ですか?」
「そうだ。お前は更識妹以外と組むことについて、問題はないだろう?」
「俺自身は何も問題は無いですけど……」
チラッと更識妹の方を見る宮下。今の発言にショックを受ける更識妹。仕方ない、妥協案を出すか。
「ならいっそ、織斑と組んだらどうだ?」
「一夏とですか……確かにそれなら角が立たなそうですね。……勝つ目途も立たないですが」
「まぁそうだろうな……」
なにせ一夏も宮下も高機動近接重視の機体だ。オルコットとデュノア辺りが組んだら遠距離から完封される可能性が高い。もちろんあの砲撃は禁止だ。また壁画を作られるわけにはいかんからな。
「陸と、織斑君を?」
「それならいいだろ?」
「……」
「簪?」
「陸が……陸が男色系にぃぃぃぃ!?」
「「ええ……」」
もうやだ。誰かこいつを何とかしてくれ……。
すったもんだの挙げ句、宮下は更識姉と組むことでまとまった。
「楯無さん、よろしくお願いします」
「いいわよ~。
それでも、途中まで『ま、まさかお姉ちゃんに陸が取られるなんてことは……』とか言っていた。もっと宮下を信用してやれ……。
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そんなドタバタ劇を職員室で繰り広げた簪(+俺)は、昼休みの食堂でのほほんと合流していた。ちなみに、今回は楯無さんもいたりする。
「かんちゃーん、もうちょっとりったんを信用してあげなよ~……」
「でも~……」
「逆に私が陸君に食べられちゃったら、姉妹丼――」
――ゴンッ!
「ぎゃふんっ!」
「何を言い出すんですかねぇ貴女は」
鉄拳制裁でトンデモ会長を黙らせる。ほら見ろ、簪の目がうさみちゃんになったじゃねぇか。
「陸……」
「無いから。あり得ないから」
「そこまで言う!? お姉さん、ちょっと傷ついたわ~……」
「どないせいと」
「分かった、頑張って納得する。けど……」
「けど?」
「例えお姉ちゃんでも、第2夫人だからね」
「おいぃぃぃぃぃ!?」
「簪ちゃん、それでいいの……?」
「かんちゃん、前に『陸は誰にも渡さない』って言ってたって聞いたよ~?」
ああ、
「本当は私だけ見てて欲しいけど、陸がどうしてもって言うなら、多少は譲歩しないといけない。それが長く付き合っていくコツだって、前にお母さんが」
「お母さぁぁん!?」
楯無さんが頭を抱えてテーブルに突っ伏す。まだ簪の両親と対面してない(一応、付き合い始めたことは報告・了承済み)から分からんが、どんな人なんだよ……。
「とにかく、俺は簪以外と付き合う気は今のところ無いから安心しろ」
「……本当に?」
「ああ」
「……分かった」
それだけ言って、うどんをすする作業に移行する簪。俺は織斑さん家の一夏君とは違うんです。違うんです。大事なことなので(ry
「おっ、噂をすれば」
ちょうど一夏とハーレム達を見つけた俺は、ちょいちょいと手招きをした。
「一夏、タッグマッチで組む相手は決まったか」
「ああ……結局あのじゃんけん大会で決まらなくて、最後はくじ引きでシャルと組むことになった」
「「「「ええ~……」」」」
聞かされたあまりな内容に、俺とのほほん、更識姉妹の4人がゲンナリ顔になった。
「それで、他の面々はペア決まってんのか?」
「ええ。わたくしと鈴さん、箒さんとラウラさんになりますわ」
「……学年別トーナメントのペアに、オルコットと凰が足されただけじゃねぇか」
なーんか既視感があると思ったら。
「安心しろ。あの時とは違って、臨海学校以来、ちゃんと連携も取れ始めているんだ。あの時のようにはならんさ」
「ラウラの言う通りだよ。というか、宮下君は大丈夫なの? 更識さんが参加不可って用紙に書いてあったけど」
「ああ、それな……」
俺は一夏達に、職員室であったことを説明した。さっきまでの、楯無さんの姉妹丼発言や簪の第2夫人発言は省略。
「「「「「残当」」」」」
「ひどいっ!?」
簪の参加不可について、一夏ハーレム全員からの回答がこちら。簪涙目である。
「それでも、学園最強が出てくるのもどうなの?」
「そこはそれ、なんちゃって第3世代機の俺と組むことでバランス取れるだろ。それとも、誰か俺と組んでくれるか?」
「「「「「更識(さん)に56されたくない」」」」」
「素敵な回答ありがとう」
「簪ちゃん、みんなからこう思われてるのね……」
「みんな酷い……」
「あははは~……」
のほほんよ、下手に空笑いするぐらいなら無言でOKだ。却って悲しくなってくる。
とにかく、楯無さんとペアでタッグマッチに出ることが決まったわけだが。さてはて、どうしたもんかなぁ……。
簪、またもやハブられるの巻。
そりゃ、開催目的からして対象外ですよ。むしろダリル姐さんみたいにトラウマを強化してどうするって話です。