亡国機業もゴーレムⅢもやって来ないので、決勝戦までキッチリやります。
タッグマッチ当日。第4アリーナで行うはずなのに、なぜか全校生徒がホールに集められた。
「それでは、開会の挨拶を楯無生徒会長からしていただきます」
壇上の虚先輩がそう言って、マイクを楯無さんに渡す。
「はーい皆、今日は専用機持ちのタッグマッチトーナメントですが、試合内容は生徒の皆にとって勉強になると思います。しっかりと見てください」
そこまでは良いんだが、その扇子に書かれた『博徒』の文字は何だ!?
「それはそれとして! 今回は生徒全員に楽しんでもらうために、生徒会でこんな企画を用意したわ! 名付けて『優勝ペア予想応援・食券争奪戦』!!」
わあああっ! と全校生徒が騒ぎ出す。マジかよ……。
「って、それ賭けじゃないですか!」
おおっ、ここからでも聞こえるぐらい大音量の一夏からのツッコミ。
「安心しなさい織斑君」
「え?」
「根回しはすでに終わってるわ!」
ドヤ顔の盾無さん。見渡すと、先生方から反対の声は出て来ない。織斑先生ですら、腕を組んで苦い顔を逸らしてる。
「それにこれは賭けじゃないの。食券を使って応援するゲームなのよ。そして優勝ペアを当てたら配当があるだけ」
「それを賭けって言うんですよぉ!」
「では、アリーナに移動しま~す!」
一夏のツッコミを華麗に無視して、全校生徒は会場に移動し始めたのだった。一夏、強く生きろ……!
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さて、ところ変わって第4アリーナ。到着と同時にくじを引かされて、リアルタイムで空中投影ディスプレイに対戦表が表示される。その結果――
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第1試合 織斑一夏&シャルロット・デュノア VS 宮下陸&更識楯無
第2試合 セシリア・オルコット&凰鈴音 VS 篠ノ之箒&ラウラ・ボーデヴィッヒ
第3試合 布仏本音&更識簪 VS ダリル・ケイシー&フォルテ・サファイア
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「初戦から陸と楯無さんかよ……」
「サクッと倒してやるわよ」
「ふっ、そううまくいくかな?」
「マジか……マジかよ……」
「ダ、ダリル! しっかりするっスよ!」
3年の先輩、完全にトラウマになってんな。
そしてどっかの生徒会長が更衣室に乱入してくるような珍事も無く、俺と一夏はそれぞれISを展開してピットを出て、それぞれのペアと合流していた。
「陸君、調子はどうかしら?」
「まずまずですね。一夏達には悪いですが、ウォーミングアップに付き合ってもらいましょうか」
「あら、勝つ前提で話をするなんて、余裕ね」
「勝たなきゃならんでしょう、簪達と当たるまでは」
今回のタッグマッチがトーナメント形式である以上、勝ち進まなければ簪達と当たらない。
「楯無さんだって、簪とのリターンマッチを望んでるんでしょう?」
「ふふっ、もちろんよ♪」
「シャル、何か俺達、軽く扱われてるんだが?」
「そうだねぇ、ちょっと許せないねぇ……」
おっと、一夏が頭に来たって顔してるな。デュノアは……なんか笑顔が怖いんだが。
「ここで陸達を倒して、みんなの予想をひっくり返してやるぜ!」
「その意気だよ一夏!」
「あらあら、意気込みは十分ね」
「なら、あとはぶつかるだけだ」
そして――試合開始のブザーが鳴ったと同時に、俺と一夏が鍔迫り合い、楯無さんとデュノアが銃撃戦となった。
――キャリリ……ッ! ヒュンッ!
「うぉっと!」
「ちっ、躱されたか!」
鍔迫り合いから長船の軌道を流されて、体勢が崩れかけたところへの追撃を何とか回避する。
「そうだった、お前も篠ノ之流だったな」
「おう。そういう陸も、学年別トーナメントで箒と戦ってたんだよな。そりゃバレるか」
そう、一夏の理合いは篠ノ之と同じ。対して一夏は俺のタイ捨流と最近対峙し始めた口だ。その差は小さくない。
「なら、これでどうだ!」
そう言って、いつものように上段から一夏が突っ込んで――
――ヒュッ ガキィィィンッ!
「ぬあっ!」
「くそっ! これも止められるか!」
止められるかじゃねぇよ! 一夏が、一夏が……!
「一夏が、フェイントを使い始めただと……!」
「いや、そこまで驚くか?」
「一夏がだぞ!? あの万年突撃しかして来なかった一夏がだぞ!? フェイントが卑怯っぽいとか頭お花畑なこと言ってた一夏がだぞ!?」
「驚くか貶すかどっちかにしろよ!!」
あ、やべ。怒りでブースト掛かり始めたっぽい。弄り過ぎたか……。
「けどな!」
――カァァァァンッ!
「なぁ!?」
そりゃ驚くだろ。まさかISで
「ツェァアアアアッ!」
――バシィィィン!
「ぐあぁっ!」
雪片弐型を弾かれてがら空きになった胴に、上段からの袈裟切りを叩き込まれた一夏が、アリーナ端まで吹き飛ばされる。
「くっそ!」
雪羅の荷電粒子砲で反撃するが、そう簡単には当たってやらん。いや、いくつか掠ったけど。そうしてる間に
「え、エネルギー切れ……」
「バカスカ撃ちまくるからだ。というか、模擬戦の時も雪片ばっか使って、そっちの練習をサボってたからこうなる」
「はい、ごもっともです……」
――ドドドドドドッ!
「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
デカい爆発音とデュノアの悲鳴に顔を向けると、どうやら楯無さんの
「シャ、シャル!?」
着弾地点に一夏が駆け寄ると、そこには目を回しているデュノアがいた。然しもの『花びらの装い』も、全方位からの水蒸気爆発には耐えられなかったようだ。
「どうする一夏?」
「降参はしねぇよ。例え勝負が見えてても、最後までやるさ」
ちゃっかり回収していた雪片を、中段に構える一夏。
「オーライ。なら、これで決めてやるよ!」
お互い刀を構えて、そして――
(悪いが一夏、長船の方がリーチが長い分、こっちの攻撃が先に届く――!?)
油断したつもりはなかった。だが、まさか――
――バシィィィィンッ!
まさか、SEがほとんどない状態で『零落白夜』を使って、しかもエネルギー刃で刀身を伸ばして陰流に届かせるとは……!
「一矢、報いてやったぜ……」
最後の最後で、白式と陰流が同時にSEが空になって戦闘不能になり、第1試合はミステリアス・レイディだけが健在という結果となった。
別にパーフェクトゲームを狙ってたわけじゃねぇが、悔しい。一夏にしてやられたぜ……。
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続く第2試合は、内容的にはほぼほぼ模擬戦と変わらなかった。が、
「くっ! セシリア! あの二人、結構やるわ!」
「ええ、まさかこれほど連携が取れるとは……!」
「こちらとて、日々一夏とイチャイチャしていたわけではないぞ!」
「いや箒、セシリア達だってそれは知っているだろう。ローテなんだから」
「冷静にツッコむな!」
どうやら漫才の連携も取れているようだ。
「ああもう! 鈴さん! ここは一気に行きますわよ!」
「ええ! 一夏の敵を討つためにも、こんなところで止まってられないわ!」
「「それは私達だって一緒だ!!」」
という、最後には一夏ハーレム(デュノアを除く)の大乱戦に発展した第2試合は
「な、何とか勝ちましたわ……」
ボロボロになったブルー・ティアーズだけが生き残り、オルコット・凰の勝利となった。
「凄かったわね。何が凄いって、気迫が」
「ええ。特にオルコットと凰の場合、学年別トーナメントからこっち、見せ場が全然ありませんでしたからね」
「ああ、そういえば……」
学年別トーナメントは更生?前のボーデヴィッヒにボコられて大会前に棄権、福音事件では出番無し、キャノンボール・ファストでは壁画になってと、いいとこ全然なかったわけで。
「これで本国に……女王陛下に顔向けできますわ……!」
ああ、オルコットは英国の貴族だから、その辺のプレッシャーもあったのか。大変だなぁ名門って。
「さあ、次は簪ちゃんの出番ね!」
「頼むからのほほん、フレンドリーファイアだけはしないでくれよ……」
隣でテンションの上がってる楯無さんを後目に、俺はのほほんがやらかさないことを祈っていた。
考えているシナリオ通りに進めつつ、オリ主無双にならない程度に一夏を成長させるってなかなか難しいです。
そして本作で、セシリアの戦績が悪すぎることに気付きました。というか、原作でもクラス代表決定戦からずっと公式の勝ち星ないやんけ。(大抵襲撃があって無効試合になる)可哀想なので、ここらで白星があげようと。
さーて、次回はダリルんトラウマ回……になるのかな?