「……(ブルブルガクガク)」
「ちょっとダリル、しっかりするっスよぉ!」
第3試合、本音と一緒にアリーナに入場したら、ケイシー先輩が震えだした。
なんだろう、すごーく申し訳ない気持ちになる。
「かんちゃーん、だりるん怯えてるよ~」
「だりるんって……」
仮にも先輩なんだから、あだ名は止めなさいって。それに怯えてるって、私は鬼でも悪魔でもないのに……。
「大丈夫っスよ! 聞いた話じゃ、更識のISはGNドライブ?あの肩についた永久機関の使用を禁止になってるって聞いたっスから!」
「そう、なのか?」
「ええっと、はい。織斑先生から、タッグマッチ中は使わないように言われてます」
そのために、陸にGNドライブを外してもらっている。だから、肩部装甲にあった円錐部分が無くなって平らになっている。
そう答えると、ケイシー先輩の震えが突然収まり
「そうか……そうか! なら、あの変態機動は無いんだな!?」
「誰が変態機動ですか!」
「かんちゃんだよ~」
「本音まで……」
簪です、2対2のタッグマッチのはずなのに、味方が一人もいないとです……。
「ダリルもやる気になったところで、そろそろ開始っスよ」
「おっと、なら更識妹に見せてやろうぜ、オレとフォルテの『イージス』を!」
「本音、お願いだからフレンドリーファイアだけは止めてね」
「前向きに検討した上で達成に向かって邁進・善処しま~す」
「『頑張る』って言ってよぉ!」
どうして本音の口から霞が関文学なんて出てくるのぉ!? しかもそれ、具体的な対応はしないって意味でしょう!?
「余裕だなおい!」
「わぁっ!」
試合開始のブザーが鳴ると同時に、ヘル・ハウンドから火炎弾が飛んでくる。
「今回は私もいるっスよぉ!」
サファイア先輩のコールド・ブラッドからも、こっちは大きな氷柱が連続して飛んできて、先ほどの火炎弾による熱膨張で爆発して氷の破片をまき散らす。
「本音、無事!?」
「な、なんとか~」
ちらりと本音の方を見ると、テールブレードが飛んできた破片を弾いていた。陸の言ってた、自動防衛モードが上手く働いているようだ。
「なら、今度はこっちから!」
――ドドドッ!
春雷の連射で、まずはコールド・ブラッドを――
「フォルテ!」
「了解っス!」
ケイシー先輩の合図で、サファイア先輩が周辺に氷の壁を生み出す。そこにヘル・ハウンドの火炎がぶつかり
「……消された?」
その瞬間、私の撃った荷電粒子砲は跡形もなく消え失せていた。
「これが、『イージス』……」
冷気と熱気による分子の相転移で、エネルギーを変換・分散させることにより、あらゆる攻撃を無力化する防御結界。話には聞いてたけど、実際に見るとこれほどとは……。でも、
「本音、当たらなくてもいいから、荷電粒子砲で二人を牽制出来る?」
「あ、当たらなくてもいいなら~」
「ならやって」
「わ、分かった~」
――ドドドドッ!
「おっと!」
「掠りもしないっスよ!」
二人に向けて撃った弾は、尽く回避される。けど、それでいい。少しだけ、私から視線を外してくれれば……。
――ガシッ
「えっ……?」
「フォルテ!」
「つ か ま え た」
「は、離すっスよぉ……!」
私の右腕に頭を掴まれたサファイア先輩がジタバタ暴れだすのを無視して、私は
「メメントモリ、起動」
必殺の武装を起動した。……と思ったけど
「フォルテを放せぇぇぇぇ!!」
――ガァァァンッ!
「ぐぅっ!」
「いっつぅ……! フォルテ、大丈夫か!?」
「な、何とか大丈夫っス……」
ケイシー先からまさかの体当たりを受けて、サファイア先輩を逃してしまった。
「それよりダリル、ヘル・ハウンドが……」
かなり無理な体勢から体当たりしたからか、ヘル・ハウンドの装甲はボロボロになっていた。特に肩部の、火炎を出す機構は使用できないだろう。弐式? 元々防御重視の打鉄から出来てるし、GNドライブを積む際にガッツリ補強してあるから全然問題なし。
「どうしてあんな無茶したんスか!」
「お前に、"あれ"を食らわせるわけにはいかないからな……」
「ダリル?」
「打鉄弐式のメメントモリを、フォルテには受けて欲しくねぇんだ。あんな恐怖は……」
「ダリル……」
……なんかいい雰囲気なんだけど、攻撃しちゃっていいのかな……?
「あの~、そろそろ再開していいですか~」
「「あ」」
「本音ぇ!?」
私ですら躊躇ってたのに、思いっきり踏み込んじゃったよぉ!?
「ん、んんっ! よっしゃあ! 仕切り直しと行こうぜ!」
「ダリル、今更そんなこと言っても締まらないっスよ……」
「うるせぇ!」
そんな漫才をしながらも、攻撃方法を火炎から大剣に切り替えたヘル・ハウンドと、後衛から氷弾を飛ばすことに専念し始めた二人。だけど、火炎が出せなくて『イージス』を発動できないならどうとでもなる。本当なら、コールド・ブラッドをメメントモリで先に倒す作戦だったけど、これはこれでOK。
「くっそぉ! やっぱ強ぇ!」
「いくらイージスが無いからって、私とダリルで押し込まれるなんてチートっスよぉ!」
春雷で追い立てながら、徐々にSEを削っていく。そして――
「山嵐、全弾発射ぁ!」
――ドドドドドドドォォンッ!
「ぐあぁぁぁぁ!」
「わあぁぁぁぁ!」
48基のマイクロミサイルが、春雷によってアリーナの端に追い立てられた二人に襲い掛かる。そして。
『ヘル・ハウンド、コールド・ブラッド、SEエンプティ。勝者、布仏本音、更識簪ペア』
「もうちょっといけると思ったんだけどなぁ……ああ悔しい!」
「これはもう、完敗っスよ」
「だな。けど、キャノンボール・ファストの時よりは善戦できたから良しとするか……でもやっぱ悔しい」
「ダリルぅ……」
サファイア先輩、ガンバ!
「まあいいや。更識妹」
「はい?」
「また次の機会があれば、お前に挑戦させてもらうぜ。"あんとき"のトラウマも、今回克服できたっぽいんでな」
「は、はぁ……」
トラウマ? 克服?
「そんじゃあな!」
「次の試合も、頑張るっスよぉ!」
私が首を傾げてる間に、二人はピットに引き上げていってしまった。
「まぁいいか。本音、私達も一旦ピットに……」
そう言って振り返った私が見たものは――
「の、のほほん族……!?」
地面に座り、足を伸ばし、体を支えるように手を後ろに付いて、首を左右にゆっくり振る本音の仕草は、まごうことなき『のほほん族』……!!
「あ、かんちゃん、お話は終わった~?」
「……」
――ギュ~ッ
「い、
「ピットに戻ろう」
「わ、
本音の頬を引っ張りながら、私達もピットに戻って行った。なんか、私だけ2人分戦ってた気がするのは気のせいなのかな……?
ーーーーーーーーー
さて、当初の3試合が終わって、勝ち残ったのが3組。そこからくじ引きで準決勝のカードを決めることになった。
「当たってしまいましたわ……」
「どうしてこんな時にくじ運良いのよぉ!?」
「し、仕方ないじゃありませんの!」
オルコット・凰ペアが当たりを引き、
「かんちゃーん、当たりだって~」
「本音、どうして連戦になったのに喜んでるの……?」
「「あ、終わった」」
若干不機嫌な簪を見て、そのまま悟ったような顔になった。
そして第4試合が始まったわけだが――
「ビ、ビットが! GNファングがどうしてぇ!?」
「ちょっとぉ! GNドライブは使用禁止なはずでしょぉ!?」
「だから陸に、大型のGNコンデンサーを付けてもらった」
俺としては妥協の産物だが、一旦GNドライブを外して、そこにGNコンデンサーを取り付けた。
無尽蔵とはいかないが、GNファングだけなら1時間は飛ばしていられる計算だ。
「これでミサイルまで飛んでくるなんて、卑怯すぎますわぁ!」
「セシリア!」
「あ」
――ドゴォォォォンッ!
自分で言ったそばから、オルコットが山嵐の直撃を食らって戦闘不能に。
「ええいっ! こうなったら一夏じゃないけど、一矢報いてやるわ!」
腹を括ったのか、凰が簪に向かって吶喊……せずに、のほほんに向かって吶喊していきやがった! セケェ!
「わ、わわわわわわわっ!」
「アンタ自身には恨みはないけど覚悟ぉ!」
テールブレードを青龍刀で捌きながら、衝撃砲をのほほんに向けて――
――ドドドドドドッ!
「ぎゃぁぁぁぁ! なんでよぉぉぉ!?」
「あ……当たった~……」
のほほんが苦し紛れに放った荷電粒子砲が、6発全て甲龍に直撃したのだ。なんでさ。しかも全弾装甲外に当たったらしく、凰のSEは空になった。
「ヽ(*≧∇≦)ノやったよかんちゃ~ん!」
「出来れば決勝でやって欲しかった」
「。゚ヽ(゚´Д`゚)ノ゚。辛辣だよかんちゃ~ん!」
嬉し泣きがそのままガチ泣きに移行したのほほんを放って、試合はとうとう決勝戦に移ろうとしていた。
「一夏ぁ……」
「一夏さぁん……」
「二人とも頑張った頑張った」
そして負けた二人は、一夏に慰めてもらっていた。おいお前ら、頭撫でられて滅茶苦茶顔がニヤけてるぞ。あとヨダレを拭け、一夏に見られる前に。
ダリルん、トラウマを克服するの巻。フォルテのためならえんやこら。GNドライブ外した状態だったし、そりゃ怖くないよね?
すまんなセシリア、鈴。更識姉妹リベンジマッチをパアにするわけには、いかないんだよ。でも、一夏からご褒美もらってるからいいよね?
決勝戦は、まさか○○○○がっ!?