こっちの世界の1032号室に通された後、私は夕食(食堂には行けないから、復活した楯無さんにテイクアウトしてもらった)を食べると、寝間着(カンザシさんから借りた)に着替えてベッドに潜り込んだ。
(う~……陸がいないベッド、寂しいなぁ……)
ほんの2,3日とはいえ、早く元の世界に帰りたい、陸にぎゅーしたい……。
と思いながら次の日を迎え、またもやテイクアウトしてもらった朝食を食べていると、今日は休日だったらしく、なぜか一夏ハーレムの面々(どうやらこの世界では、カンザシさんもメンバーらしい)がやってきて、突発の女子会に(強制)参加させられていた。
「ホンット、一夏ってば朴念仁なのよ!」
「うん、一夏は朴念仁」
「そうですわ! わたくし達がどれだけアピールしても気付きませんのよ!?」
「全くだ」
というか、ほぼ織斑君に対する愚痴になっていた。
「ねぇ宮下さん、何かいい案無いかなぁ?」
どうして私に聞くの? というかこのセリフ、元の世界でも聞いたような……。それなら
「いっそ織斑君に抱かれたら?」
「「「「「「ぶふー!」」」」」」
あれ? おかしいな……元の世界はこれで万事解決したのに。
「な、ななな、なにを言い出すんですの!?」
「そうだぞ! い、一夏に、だだ、抱かれ……!」
「はぅ……」
「いや、確かに一理あるかもしれんな」
「ラウラ!?」
みんな顔を真っ赤にして抗議する中、ボーデヴィッヒさんだけが腕を組んで首を縦に振っていた。
「嫁は朴念仁だ。そして突発性難聴なんじゃないかと思ってしまうぐらい、今まで私達のアピールをスルーしてきたんだ。なら、最後の手段として実力行使も選択肢に含めておくべきだ」
「そ、それはそうかもだけど……」
「みんなあまり乗り気じゃなさそうだから、ボーデヴィッヒさんだけ先行する? そしてそのまま正妻の座も……」
「おおっ! それは良い「「「「「抜け駆けはんたーい!」」」」」おい」
ボーデヴィッヒさんが半目で睨むと、大合唱していたみんなは明後日の方を向いて目を逸らす。この人達、こうやってお互い牽制し合ってるから、誰も織斑君との仲が進展しないんじゃ……?
「というかだ! 宮下の世界での一夏はどうなんだ!?」
「あ、それは気になる」
「う~ん、一応、織斑先生に聞いてからで。私の一存で、どこまで話していいか分からないから」
「話していいわよ」
「え!?」
突然の声に振り向くと、
「お、お姉ちゃん」
「会長、いつの間に」
そこには楯無さんが立っていた。『隠密』と書かれた扇子を広げられても……。
「いいんですか? あまり話を広めたくないから、わざわざ生徒指導室で話したんじゃ……」
「いいのよ。亡国機業とかについても、専用機持ちのみんなにはある程度教えてあるから」
「はぁ」
どうやらこっちの世界では、学園祭から続く襲撃で情報共有が進んでいるらしい。元の世界では一夏ハーレムの面々は知らないからなぁ。
「許可も出たところで、一夏について教えてよ」
デュノアさんの言葉に、他のみんながズズイッと顔をこっちに寄せてくる。近い近い。
「それじゃあ、結論から言うけど、織斑君は……」
「「「「「「一夏(さん)は?」」」」」」
「嫁が5人いる」
「「「「「「……は?」」」」」」
「篠ノ之さん、オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさんの5人を、まとめて娶った」
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
うん、いい驚きっぷり。
「私だけ、一夏の嫁じゃない……」
みんな顔を真っ赤にする中、カンザシさんだけ目のハイライトが消えていた。
「貴女は、一夏に選ばれなかったの?」
「ちょ、アンタ……」
わお、自分が含まれてなかったからって、酷い言い様。凰さんがドン引きするレベル。
「私には陸がいるから」
「陸?」
「2人目の男性操縦者」
「「「「「「えぇ!?」」」」」」
織斑君の嫁と聞いて浮かれていた面々も、再度大声を上げた。
「ふ、2人目の男性操縦者!?」
「そんな馬鹿な、男性操縦者は一夏一人だけのはず……」
「けど、向こうの世界では2人目が出てきたそうよ」
みんなが驚く中、楯無さんが説明を引き継いだ。
「それが……」
「宮下陸。私のルームメイト。そして……」
そこまで言って、私は右手薬指に嵌めている指輪を撫ぜる。陸から初めて貰った、誓いの証。
「「「「「「……」」」」」」
今度はみんな、口をアングリ開けて固まっていた。大声上げたり黙ったり、すごい忙しない。(棒)
「そう、なんだ……向こうの世界の私は、一夏とじゃなくて……」
「陸と出会わなければ、もしかしたら私も貴女と同じだったかもしれない」
生徒指導室で楯無さんから聞いた話では、打鉄弐式が完成したのはタッグマッチの直前。つまり、それまで意地を張って一人で動いていたらしい。そして、本音を始めとした整備科の人達の手を借りるきっかけを作ったのが、織斑君だったと。もし元の世界に陸がいなければ、私も織斑君に……どうだろう、正直分からない。少なくとも、4月の本音との和解は無かっただろう。
「ちなみに凰さん」
「え、あたし?」
「私の世界では、"酢豚事件"は解決済みです」
「ふぁっ!?」
あ、凰さんが自身を指さしたまま再度固まった。
「酢豚事件?」
「なんですのそれ?」
「もしや……」
篠ノ之さんだけがピンと来たようだけど、他は何それって顔。
「そ、そそそ、それで、結果は……」
凰さんがガクガク震えながら聞いてきたので、
「織斑君に告白されて、ゴールイン」
「――っ!!」
――バタンッ!
「り、鈴!?」
「倒れた! 鈴が顔面沸騰させながら倒れたぞ!?」
しっかり仕留めておいた。
幸せそうな顔してるだろ。ウソみたいだろ。気絶してるんだぜ。それで。
「けど、最終的には5人まとめて、織斑君に
「「「「「へっ?」」」」」
「えっと、宮下さん? それって……」
「みんな翌日は、足腰立たなくて授業を欠席したって本音から聞いた」
――バターンッ!!
「み、みんな!?」
こっちの世界の更識姉妹を除いて、全員が凰さんの後を追った。違うのは、鼻血を流しながら倒れたところだろうか。
「ち、ちなみに、宮下さんは……?」
「私も次の日は、陸におんぶしてもらって授業に出た」
「……へぅ」
「簪ちゃ~ん!?」
残念、カンザシさんも耐性が無かったようだ。というか、元の世界では陸に影響されて、みんなメンタル強くなり過ぎたのかも。
「あの~、私はそういうのは……」
「ないです」
「私は仲間外れなのね……」
「たぶんこっちの世界でも同じかと思いますけど、虚さんは弾君といい感じになってます」
「チクショウメェ!!」
涙目で扇子を床に叩きつけた。その衝撃で扇子が開き、『完全敗北』の文字が。泣いてる割には余裕あるなぁ。
「ちなみに楯無さんは、織斑君と?」
「え~っと……みんながいない時に『刀奈』って呼んでもらってる……」
「ファッ!?」
今度は私が大声を上げていた。
そもそもお姉ちゃんの『楯無』って名前は、更識家当主が代々襲名しているもので、本名は別にある。それが『刀奈』。本来、家族以外には教えないものを、この人は……
「織斑君に、真名を教えたんですか……?」
「う、うん……」
「それでいて、織斑君とゴールインしてないと?」
「うぐっ……」
何をやってるんだろうこの人は。
「もういっそ、楯無さんも織斑君に食べられ「わー! わー!」
顔を真っ赤にして遮ろうとしてくる
「こっちの世界の更識楯無もヘタレか……」
「ヘタレって言わないでよぉ!」
反論は織斑君としっかりくっ付いてから、どうぞ。
そして決めた。元の世界に戻ったら、お姉ちゃんを陸か織斑君とくっ付けよう。このままじゃ、目の前の中途半端ダメ当主みたいになっちゃうから。
「なんか私を貶すようなこと考えてない!?」
「(ヾノ・∀・`)キノセイキノセイ」
「ちっとも信用できない!?」
「というかですね、この状況どうしましょう?」
「え? ああ……」
改めて見回すと、気絶者が6人(内、鼻血4人)も出てるわけで。
「とりあえず……そのまましときましょ?」
「ええ~……」
とはいえ、6人も担いで部屋まで送るのは難しい。しかも私は他の寮生に見られると不味いから、余計に高難易度。それなら、本人達が目を覚ますまで放置するしかないか。
それから私達は、気絶したみんなが目を覚ますまで、(一夏ハーレムの面々によって)持ち込まれたお菓子を摘まんでいた。そして全員が目を覚まして自分の部屋に戻った頃には、昼を回っていたのだった。
会長が『刀奈』を教えるのはワールド・パージ編だろうって?
こまけぇこたぁ
いいんだよ!!
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| ̄二つ /⌒⌒\
| 二⊃/(●)(●)\
/ ノ/ ⌒(_人_)⌒ \
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