俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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今回で、オリチャー終了でございます。


第86話 出会いが突然なら、別れも突然

こっちの世界で篠ノ之博士から強襲を受けた翌日、何もすることが無い私のスマホから着信音が。

 

「もしもし?」

 

『やあやあ、平行世界はどうかな?』

 

「どうも何も……早く陸のところに帰ってギューしたいです」

 

『oh……開幕惚気られたよ』

 

「そして陸の匂いをクンカクンカしたいです」

 

『ちょっと君、何言ってるの?』

 

本音を正直に言ったら、通話先の相手、ロキさんにドン引きされた。解せぬ。

 

『そんな君に朗報。そっちの世界で今日の20時に、二つの外史の再調整が終わる予定だよ』

 

「つまり、元の世界に戻れる?」

 

『いえ~す!』

 

「そうですか……」

 

予定通り戻れると聞いて、少し気が抜けたかも。

 

『そっちの時間だと、今は9時過ぎだっけ? 20時までまだ時間があるから、最後の挨拶ぐらいはしておくといいよ』

 

「そうしようと思います。というか、神様でもそういう考えってあるんですね」

 

『そりゃあるよ。特に今後会うことは無いと思って手を抜くと、たまたま再会した時にネチネチ言われるんだから……』

 

ものすごい暗い声からして、実際にやらかしたんだろうか? 神様といえど、コミュニティの中ではそういうのはあるらしい。

 

『再度確認するけど、今日の20時にカンザシを元の世界に戻す。一応、そこの世界の人間を巻き込まないように、20時には一人でいてくれるとベストだね』

 

「分かりました。この部屋に一人でいればいいんですね?」

 

『そういうこと。それじゃあ最後の平行世界を満喫してね~』

 

通話が切れる。平行世界を満喫って、何をしろと……。

 

「……まずは楯無さんに伝えておこう」

 

元の世界で登録したお姉ちゃんのアドレスが、この世界では楯無さんに繋がるのは、やっぱり平行世界特有のご都合主義なのかな?

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「今日の夜に帰っちゃうんだ……」

 

私のお昼ごはんを持ってきてくれたタイミングで、楯無さんがそう切り出した。

 

「了解したわ。簪ちゃんから借りたパジャマとかは、洗ってベッドの上にでも置いててちょうだい。20時を過ぎて、貴女が元の世界に戻った後に私の方から返しておくわ」

 

「色々お世話になりました」

 

鯖味噌煮定食を食べながら頭を下げると、楯無さんもアジの開き定食をつつきながら

 

「いいわよ。こちらとしても、別世界のISデータを採取する機会が得られたんだから。……正直、凄すぎて参考になるかは怪しいけど」

 

何でも、打鉄弐式のデュアルコアありきの機動は参考にならないそうで……なるとしたら、最後に楯無さんをヤムチャにしたメメントモリぐらいなんだとか。

 

「あれは凄かったわぁ……もう二度と食らいたくないわ」

 

「そうですか? 織斑君や一夏ハーレムの面々は、毎日の模擬戦で何度も受けてますけど」

 

「……やっぱり貴女の世界、おかしいわ」

 

チベットスナギツネみたいな目をされた。解せぬ。

 

「そんなだから、こっちの一夏君達より強くなってるのかしら」

 

「どうでしょう、特にデュノアさんとかは機体自体違いますし」

 

「『リィン・カーネイション』デュノア社が開発した、第3世代機か……」

 

楯無さんが遠い目をするのも分かる。分かるけど……

 

「ミステリアス・レイディを一人で組み立てた楯無さん(お姉ちゃん)がそれを言います?」

 

「ちょっとちょっと! 私だって元々ロシアが設計した『グストーイ・トゥマン・モスクヴェ(モスクワの深い霧)』をベースに組んだのよ? それに比べたら、向こうの"2人目"は個人でコア作成から全部やったんでしょ?……やっぱりおかしいわ」

 

またチベットスナギツネになっちゃった。でも確かに、世間一般からしたらISを一人で作るとか、大天災と呼ばれている篠ノ之博士ぐらいにしか出来ない所業。それをやったとなれば、チベットスナギツネぐらいなるかも。

 

「まぁ陸の場合、篠ノ之博士にすら『おかしい』と言わしめたぐらいですから」

 

「……敢えて内容は聞かないでおくわ。怖いから」

 

「あ、はい」

 

そんな話をしていて思い出した。そういえば、劣化版ISコアの話をしてなかったっけ。

 

「あの、楯無さん――」

 

「いい。言わないで」

 

「でも、洗いざらい話すように言ったのは――」

 

「聞きたくない! もうお腹いっぱい!」

 

手で耳を塞いでイヤイヤと首を振る楯無さん。えっと、ISの機能を使って……

 

『楯無さん、聞こえますか…あなたの心に直接呼びかけています……』

 

「やめてぇ! ISのプライベート・チャネル使ってまでぇ!」

 

『陸は当初、本来必須な鉱物なしでISコアを作ろうとしました。結局それは失敗に終わったのですが』

 

「だから聞きたくないからぁ!」

 

『後日、設計図を見た篠ノ之博士の目からハイライトが消えました。曰く『これでどうして正規の5割も性能が出せるか分からない』だそうで』

 

「全部喋られたぁぁぁぁ!!」

 

よし、これで洗いざらい全部話した。楯無さんがorzってるけど、これはコラテラル・ダメージ、必要な犠牲だったということで。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

そして時間は流れ、19時54分。あと5分ちょっとで、私は元の世界に帰ることになる。

 

「洗濯したパジャマ良し、書置き良し」

 

最後にやり残したことが無いのを指さし確認して、私はベッドに腰かけた。

 

「あとは、ロキさん次第かぁ……」

 

あれから特に連絡が無かったから、おそらく予定通りことが進んでいるんだろう。と思っていたら

 

「あっ……」

 

爪先や指先が、GN粒子のような光を散らしながら、ゆっくりと透明になっていく。

 

「これが、世界を渡るってことなのかな……」

 

自分という存在が、この世界から消えていく。でも、怖くはない。

 

(久々に、陸に会える……)

 

それ思いながら、私は机の上に置いた書置きをチラッを見た。

 

(最後に爆弾を投げ込みたくなるのは、陸に似たんだろうなぁ)

 

偶々自分の拡張領域に紛れ込んでいた、()()()()()の荷物。おそらく私が去り、これを使った後は大事になるだろう。けれど

 

(それでも、前には進むべきだと思うから……)

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

――コンコン

 

20時10分。1032号室のドアを叩いても反応がないのを確認して、私はドアを開けた。

 

「……本当に、帰っちゃったのね……」

 

時間にして、わずか2日。それでも、とても印象に残る出会いだった。

最初は自分の妹と瓜二つで驚き、平行世界の人間だと告げられて驚き、そのISの機体性能に驚き、全てに驚くばかりだった。

だからかしら。ちょっとだけ、"寂しい"と思ってしまうのは。

 

「さて、寝間着とかも回収したし、あとはこれを簪ちゃんに返して……あら?」

 

お願いした通りにベッドの上に置かれたものを回収した私の視界に、机の上に置かれた紙と、何か焼き物っぽいものが入った。

 

「何かしら……『更識楯無さんへ』って、これ、私宛て?」

 

 

『短い間でしたが、お世話になりました。お礼と言っては何ですが、この香炉を差し上げます。中に入ってるお香を、織斑君と楽しんでください』

 

 

「香炉……この焼き物、香炉だったのね」

 

蓋の部分を開けてみると、確かに何かを磨り潰したようなものが入っている。これがお香ってことね。

 

「まったく……こんなことしなくてもいいのに」

 

それでも、厚意は有難くもらっておきましょう。

 

「そうだ。宮下さんのことを話すのに、みんなを一夏君の部屋に集めましょう。お香も、その時に使ってみればいいわね」

 

 

 

 

その判断を、私は後に非常に後悔した。

どうして、平行世界の一夏君が5人もの女の子を嫁にするに至ったのか。そして、どうやってみんなを()()流れになったのか。

それに気付かずに、渡されるままお香を使ってしまったことを……。

 

「でも……すごく幸せな気分なのが悔しい……」

 

翌日、8人全員が死屍累々な状態の1025号室で、私は全裸のままそう呟いていた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

――女性権利団体本部、代表執務室

 

一方元の世界では、女権団のトップである山崎敏美が、配下からの説明を聞いていた。

 

「アメリカ政府はこちらの提案を飲んだのね?」

 

「はい。あちらとしても、このまま学園に『アラクネ』のコアを放置しておきたくないそうで」

 

「そんなのどうでもいいわ。こちらが必要なのは、あの薄汚い『ゴミ』を始末する人員、それだけよ」

 

「それはもちろん。こちらの『襲撃の際、ISコアの奪還に合わせて"2人目"を処分せよ』という要求も、あちらは飲んでいます」

 

アメリカ政府は『返せ』と言えないアラクネのISコアを、女権団は宮下の命を。それぞれが奪いたいものがIS学園にあったため、両者は手を結んだのだ。

 

「その際、こちら側で学園に対して陽動をしてほしいとのことですが」

 

「私達に働かせようとか、いつからホワイトハウスのゴミ男共は勘違いしているのかしら?」

 

「それを容赦するのも、我々選ばれた者の度量というものです」

 

「ふんっ、そのくらい分かっているわ」

 

配下のヨイショと諫言に鼻を鳴らしながら、山崎は先を促す。

 

「そこで、()()を使います」

 

「ああ、ドイツ支部から献上された玩具じゃないの。それ、使えるの?」

 

「はい。有効範囲が短めですが、これのISは()()()()()ですから、警備の目を抜けて範囲内に近づけられます。そしてこれを、亡国機業の連中に渡します」

 

「亡国機業? もしかしてあの負け犬連中、まだ生き残ってたの?」

 

これには山崎も素直に驚いた。

かつてゴミと倉持技研との揉め事から発展して、日本の中枢から追放された非主流派の残党が流れ着いた組織、亡国機業。どうせそこでも無能を晒して、勝手に粛清されるだろうと放置していたのだが……

 

「連中、どうやら内部抗争に勝って、逆に旧上層部を粛清したようです。今、彼の組織の上層部はほぼ女尊男卑主義者で固められているそうで。そうした中で、こちらにコンタクトを取ってきました」

 

「なんと?」

 

「『今回の作戦に参加して成功した暁には、再び女権団への復帰を確約してほしい』と」

 

「負け犬風情が、虫のいい話をする。いいわ、その玩具を連中に渡しなさい」

 

「分かりました。ちなみに、連中を本当に復帰させるのですか?」

 

「馬鹿言わないで。作戦が終わったら、余計なことを吠え出す前に消しなさい。学園襲撃の主犯としてね」

 

内部闘争に勝つ能力があるなら使い道も……と一瞬思った山崎だったが、そんな連中を復帰させたら、今度は自分が抗争で蹴落とされかねないと思い直し、処分を命じた。

 

「承知しました」

 

恭しく頭を下げる配下が持ってきた玩具。自立思考を止めるための装置を頭に被せられた、銀髪の少女の目――黒い眼球に金色の瞳――には、何も映ってはいなかった。




最後に特大の爪痕を残していく簪様。み~んな幸せにな~れ♪(ちーちゃんを除く)

そしてワールド・パージ編をやるために、とってもゲスい流れでくーちゃんがエントリーです。というわけで、次回からワールド・パージ編が始まります。
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