俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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シリアス要素補給。
そして唐突なクロスオーバー要素。


第8話 真紅の(あかい)

夢、なんだと思う。

眼下に広がるのは、ヨーロッパを思わせる街並み。いや、規模からして村になるのだろうか。その村の一画にある木造の店だろうか、その建物が、燃えていた。

そしてそこから少し離れたところに誰かが、()()()()()()()が落ちていた。あれは、おそらく……

 

(何……これ……)

 

どうして、私はこんな夢を見ているんだろう……。

気持ち、悪い……。

夢の中なのに、なぜかIS学園の制服を着ていた私は、自分の肩を抱いてガタガタと震えることしかできなかった。

 

「おっと、楽しくないもんを見せちまったな」

 

突然どこからか声がした。すると、さっきまでの光景が消えて、辺りが真っ暗になった。

ううん。1カ所だけ、明かりがあった。その明かりの下に誰かがいた。

Yシャツとネクタイにジャケットを羽織った、私より一回り年上に見える、赤髪の男の人が。

 

「貴方、は……?」

 

「俺か? 俺はランド――いや、ランディとでも呼んでくれや」

 

その人――ランディさん――は、気さくに答えた。

 

「今のは、貴方が?」

 

「いやいや、ホントすまん。女の子に見せるもんじゃねぇよな」

 

そう言って、ランディさんは頭を掻いた。それにしても、この人の声、どこかで……それよりも、

 

「ここは、どこなんですか?」

 

「ここか? どう言ったらいいもんか……かっこよく言えば、『心の世界』ってやつだ」

 

「心の、世界……?」

 

「そう。本来、個人で閉じて誰とも交わらない世界のはずなんだが、偶々嬢ちゃんの世界と俺の世界が近づいたんだよ。こうやって会話も出来るぐらいにな」

 

あり得ない……けど、ただの夢にしては出来過ぎてる気もする……

 

「原理とかは聞くなよ。俺も偶然()()()に飛ばされて、やっと状況が掴みかけたところなんでな」

 

「こっち?」

 

どういう意味だろう?

 

「まぁ気にしなさんな。で、今嬢ちゃんが見たのは、俺の記憶、俺の過去だ」

 

「貴方の、過去……」

 

もしかして、あの火事の生き残り……?

 

「それは違う」

 

思っていたことが顔に出ていたのか、ランディさんは首を横に振る。

 

「俺は……焼いた側の人間だ」

 

「っ!?」

 

「まぁ引かれるよな普通。俺は昔、とある猟兵団に所属していた」

 

「猟、兵?」

 

「ああ、そっちの世界には無いのか。要はすげー強い傭兵みたいなもんだ」

 

「傭兵……それより、"そっちの世界"って?」

 

"裏"の世界ってこと?

 

「そのまんまの意味さ。俺は嬢ちゃんとは違う世界、所謂『異世界』ってやつの住人だ」

 

「異世界……」

 

正直信じられない……けど、嘘にしては"猟兵"なんて単語が出てくるものだろうか?

 

「で、だ。さっきのは、俺が昔与えられた任務での出来事でな、敵対していた猟兵団の部隊を、俺の隊だけで殲滅しろって任務だった。倍近い戦力差、だがこちらは奇襲と地形を利用出来る強みがあった。奇襲による陽動、意図的に崖崩れを起こすことでの分断、各個撃破。全ては順調に進んだ……はずだった」

 

そこで言葉を切ると、ランディさんは天を仰いだ。

 

「作戦なんて予定通りいかないもんでな。民間人に犠牲者は出さないつもりだった。だが現実は、戦闘地点が近くの村寄りに大きくずれ込み……一軒の雑貨屋を巻き添えにした」

 

飄々と話してるけど、その顔には、後悔しか感じ取れなかった。

 

「多分、猟兵仲間以外で初めてダチと言えるやつだった。いずれ自分の店を持つのが夢だって言ってたんだ。その夢も、命も、全て俺が奪ったんだ……そして分からなくなっちまった。俺の猟兵としての人生と、あいつの店を持つって些細な夢、果たしてどちらに意味があったのか」

 

「……」

 

「これは俺の背負った"業"だった。猟兵でありながら修羅になり切れなかった、中途半端に戦場に生きてきた俺の、な」

 

「業……」

 

「幸い俺にも仲間がいてな。そのおかげで"業"を断ち切ることが出来た」

 

だからな、とランディさんは私の頭に手を置いて

 

「嬢ちゃんも、誰かの助けを借りてでも、()()()()自分の"業"から逃げるんじゃないぞ」

 

"業"から逃げるなって……

 

マタ、ニゲルノカ?

 

まさか!?

 

「貴方は、あの時の声――」

 

ーーーーーーーーー

 

「っ!」

 

IS学園の学生寮の自分のベッド。つまり、いつもの場所で私は目を覚ました。

まだ部屋が暗いところを見ると、夜中に起きちゃったんだろう。

 

「夢……」

 

あまりにもリアルな夢だった気がする。さっきから動悸が激しくて辛い。

 

「すぅ……はぁ……」

 

何度か深呼吸をすると、何とか動悸が収まってきた。

 

("業"から逃げるな、か……)

 

私が、何から逃げてるというんだろう。本音と和解し、打鉄弐式もほぼ完成している今、一体何から……。

 

(ダメ……何も思いつかない)

 

とにかく、今は無理にでも寝よう。

 

ーーーーーーーーー

 

「1組の連中、アリーナに集まってる頃か」

 

「うん、多分……」

 

いつもの放課後、整備室で打鉄弐式の調整をしている俺と簪。ただ、今日はのほほんはいない。1組のクラス代表決定戦を観戦してる頃だろう。

 

「それにしても簪、大丈夫か?」

 

「何が……?」

 

「いや、妙に頭がフラフラしているというか……」

 

「大丈夫。ちょっと寝つきが悪かっただ……け……」

 

「うぉっと!」

 

突然カクンと倒れそうになった簪を慌てて支える。あっぶな!

 

「だ、大丈夫だから……」

 

「ダメだ。こんな状態で作業したら、パイセンとの決闘する前に怪我すっぞ」

 

せっかく専用機は完成したのに、パイロットが怪我で不戦敗とか悲しすぎんだろ。

仕方ない。この前アドレス交換したのほほんにメールしてっと。

 

「よっこらせ」

 

「えっ?」

 

端末を仕舞うと、俺はきょとんとする簪をおんぶした。

 

「ま、待って……!」

 

「いいから部屋に戻って寝ろ」

 

「じ、自分で戻れるから……!」

 

「そう言って、さっきまでフラフラして倒れそうだったやつが言っても説得力無いぞ」

 

「そ、それはそうだけど……!」

 

「安心しろ。極力人に出会わないルートを通っから」

 

「ほ、ホントに……?」

 

「おうよ」

 

そう言って、俺は学生寮に向かって歩き出した。……途中、エドワース先生にだけは出会ってしまったが。

 

ーーーーーーーーー

 

「着いたぞー」

 

「うう~……」

 

寮の部屋に着いて簪をベッドの上に降ろすが、まーだお冠のようだ。よほど先生に見つかったのが恥ずかしかったと見える。……俺も恥ずかしかったがな。

 

「ほれ、いいから一旦寝ろ」

 

そう言うと観念したのか、簪は掛け布団を被ると、そのままベッドに横になった。

さて、今日は今まで取ったデータの整理でもすっかなー。

 

「ねぇ、陸」

 

「どした? 寝つけねぇのか?」

 

「うん……変な夢を見そうだから」

 

「変な夢?」

 

「異世界人が出てくる夢」

 

「それはまた……ファンタジーだな」

 

正直、簪らしくないジャンルだと思うな。てっきり戦隊シリーズの世界に自分が入り込んだ夢とか見そうなイメージだったが。

 

「だから、眠くなるまで話に付き合って……」

 

「話なぁ……まぁいいか。で、何の話をするんだ?」

 

「戦隊ものの話……」

 

「……別にいいが、話に熱中して眠くなくなるとか無しにしてくれよ」

 

 

結局簪が寝付くまで、恐竜がモチーフの戦隊ものの話を1時間近くする羽目になった。だから熱中するなと……。

 

その後、のほほんからメールが来た。

 

『おりむー、自滅してせっしーに負けたよ~」

 

ええ~……

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