最近PCを買い替えたせいか、今まで駆逐した誤字変換が復活しとる……。あうあ~……。
第87話 一難去って、また一難
平行世界から戻ってきた時、元の世界はタッグマッチの翌日、つまりほとんど時間が経過していなかった。
一応、陸には本当のことを話したけど
「そっか、お疲れ様だったな」
とだけ言って、頭を撫ぜてくれた。本当なら突拍子もない話だけど、ロキさん達のことを私以上に知ってる陸からしたら、今回のことは普通に納得できることだったみたい。
「まぁ結果的に問題が無かったとはいえ、今頃駄女神は主神からお説教だろうな」
ニヤリと陸が笑う。あ、そうか。それで今回、ロキさんだけが通話してきたんだ。
「とりあえず、だ。おかえり、簪」
「うん。ただいま、陸」
そう言って、私の主観時間で2日間お預けされていた分、陸にギューと抱き着いた。
ーーーーーーーーー
「倉持技研……うん、合ってるな」
念のため、事前に渡された地図と看板を確認したが、ここで正しいようだ。
倉持技研。白式の開発元だ。今回俺は
「……どうやって入るんだ?」
ゲート前まで来て辺りを見渡すが、目の前には取っ手のないドアがあるだけで、チャイムの類は見当たらない。
――さわさわっ
「のわぁっ!?」
し、尻触られた!? ち、痴漢か!?
「いやぁ、未成年のお尻はいいねぇ」
「な、なななな……っ!」
振り向くと痴女がいた。いや、痴女としか言い様がない。
こんな山奥で紺色のISスーツを着て水中眼鏡を付けて、片方の手には銛、もう片方の手には持っている銛で獲ったであろう魚を持っている女性が、普通なわけがない。
しかも、魚を採るために川にでも潜ったのか、全身水浸しだし。うぅ、濡れた手で触られたから、ズボンが濡れて尻が冷たいし気持ち悪ぃ……。
そんなことお構いなしに、その痴女はズズッと顔を突き出してこちらに迫ってきた。
「ふーむ」
「あ、あの……」
「ああゴメンゴメン、自己紹介がまだだったね」
そう言うと、水中眼鏡を外した痴女は
「私の名前は
「しょ、所長!?」
こんなヘンテコな恰好した人が!? 突然他人の尻を触る痴女が!?
こんな人に白式を任せて、本当に大丈夫なんだろうか……?
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
痴女、もといヒカルノさんに案内されて、俺は研究所の中を歩いていた。ちなみに、今のヒカルノさんは水浸しじゃない。……エアシャワーだっけ? あれって服に付いた埃や汚染物とかを落とすために使うんであって、全身を乾燥させるのに使うものじゃないはずだよな……?
「はぁ、ヒカルノさんって千冬姉や束さんの同級生だったんですか」
「まぁね。とはいえ、ただ同じクラスにいただけで、交友関係は無かったけどね」
あの大天災と仲良くするのは難易度が高すぎるよ、とヒカルノさんは笑った。う~ん、確かに束さんは今も昔も、興味ない人には塩対応どころか対応すらしないからなぁ。
「さて、到着したよ」
部屋に入ると、そこは学園の整備室に似ていた。いや、もっと大型機材が所狭しと並んでいる。
「それじゃあさっそく、白式を展開してちょうだいな。データ採取をしつつ、ついでにシステムの最適化とかもやっちゃうから」
「分かりました」
意識を集中して、白式を展開する。それと同時に、ヒカルノさんも空中投影ディスプレイを呼び出す。
「ふーむ。細かいダメージが蓄積してるねぇ。こりゃ、一旦小規模メンテナンスしてからデータ採取した方がいいね」
「ダメージですか……」
考えてみれば、セシリアとの決闘以来、無人機、暴走した
「それって、どれぐらい時間が掛かります?」
「ダメージ自体はそうでもないから、データ採取も含めて半日ぐらいかな?」
「良かった。『数日かかるから泊っていくと良い』とか言われたらどうしようかと」
「君が望むなら、ここで私と一緒にお泊りしてもいいんだよ? そして深夜の研究室に二人っきりで、手取り足取り腰取り尻取り……」
「結構です!」
前言撤回、半日でも不安だ……。
ーーーーーーーーー
昼休み。私達3人が食堂に入ると、一夏ハーレムの面々がつまらなさそうに食事をしていた。
「どうしたの?」
「ああ、更識さん。実はね……」
デュノアさんが言うには、織斑君が倉持技研に呼び出されて、今朝から不在らしい。なんでも、
「むしろ、今まで所員がこっちに来ても分からないから、設備のある研究所まで来いという話らしい」
「まぁそうなるか」
篠ノ之さんの補足に、陸が納得したように頷く。
「一応一夏の白式は、倉持技研から回されて来てるもんだからな。来いと言われたら無下に断れないか」
「そういうことよ。というか、打鉄弐式がそういう柵と無縁なのが異常なのよ」
「ははは……更識さんの場合、向こうから不義理をしたわけだし」
「そうだな。しかも自由国籍の一件で、所属企業を選ぶ権利すら得たんだろう?」
「うん。今はまだ無所属扱いだけど」
最初は何社か手を挙げていたんだけど、弐式のGNドライブを見た途端、『ウチでは手に負えません』って言って、みんなそそくさと帰っちゃったっていう……。
「ホント、宮下君は技術者泣かせだよ」
「いやいや、この程度で泣き出す根性なしが悪い。『お前の技術を盗んでやる』ぐらいの気概を見せろって話だ」
「いや、お前の技術を下手に盗んでも、気付かぬ間に自爆しそうなんだが……」
ボーデヴィッヒさん、正解。
前に陸からこっそり教えられたんだけど、弐式に付いてる武装類には、抵抗器に見せかけた極小回路が入ってるらしい。その部分をただの抵抗器だと思ってコピーすると、回路内が焼き付いてボンッ! 回路を流れているエネルギーを丸々使った爆弾と化す。
「まぁそれはいいだろ。要は、一夏が学園にいないから、イチカニウムが不足してイライラしてるんだろ?」
「何その謎成分」
「おりむー、麻薬成分になっちゃったんだね~」
麻薬成分って……でも依存性が高いのは同じかも。
なんて、呑気な話をしていた時だった。
突然、食堂の灯りが落ちた。ううん、ここから見える限り、食堂だけでなく廊下の方も全部。しかも、それだけでなく
――ガシャンガシャンガシャンッ!
「防御シャッター!? なんでこんなものが降りてくるのよ!?」
凰さんの叫びに答えられる人がいないまま、最初に灯りが落ちたのも含めて、食堂内は真っ暗になった。
「……ラウラ」
「ああ、緊急用電源に切り替わる様子もなければ、非常灯も点かない。全員、ISのセンサーをONにしろ」
ボーデヴィッヒさんが率先して、専用機の各種センサーを起動させる。それに倣って、私達もセンサー類を動かす。同時に暗視界モードに切り替えると、やっと周囲の様子が見えるようになった。
他の生徒は突然の出来事に、けれど真っ暗だから、不安そうにしながらもその場から動けずにいた。
「それでどうしますの? まずはみなさんを、校舎の外に誘導を?」
「そうだな。セシリアの言う通り、まずは生徒達の――」
そこに、プライベート・チャネルで通信が入ってきた。
『専用機持ち達は全員、今からマップを転送する地点へ集合。途中で防壁が降りていた場合は、破壊も許可する。可及的速やかに集合しろ』
織斑先生からの指令と共に、マップが転送されてくる。でも、これって……。
「なぁ簪。俺の目が悪くなければ、この集合地点って……地下か?」
「うん。間違いなく」
転送されてきたマップに赤く光る集合地点。普段、立ち入り禁止区域になっている地下の領域だった。
ワールド・パージを解決するために、一夏には原作通り2時間以上の道のりを30分で戻ってもらいます。(オニチク