「状況を説明する」
途中隔壁を2,3枚ほど(凰のガス抜きも兼ねて)吹き飛ばし、IS学園の地下区画、その一番奥の部屋で、織斑先生と山田先生、それに楯無さんが待ち構えていた。
どうやらここだけは完全独立で動いているらしく、灯りも点いていれば、旧式ながらディスプレイにも様々な情報が表示されている。
「現在、IS学園の全システムがダウンしています。緊急システムも起動しないことから、電子的攻撃……つまりハッキングを受けていると断定します」
山田先生が現状説明をし始める。ハッキングねぇ……。
「(篠ノ之博士、かな?)」
「(どうだろうな。前に聞いた感じじゃ、試作無人機を高軌道上に乗せたって話だったからな)」
束が全力を注ぐと宣言した太陽光発電計画。今はある意味、その計画の一番重要なフェーズのはずだ。そんな時期に、こんなことを起こす暇があるのか疑問だ。
「えっと、現状について質問はありますか?」
「はい」
さっそくボーデヴィッヒが挙手する。さすが現役軍人、有事に対する動きが機敏だな。
「ハッキングを受けたとして、敵の目的は?」
「それが分かれば苦労はしない。ここはIS学園だ。各国から操縦者の卵も、専用機も集まっている。ヒト・モノ・情報と、貴重品はいくらでもあるからな」
それはそうだろう。ボーデヴィッヒの方も、スッと手を降ろした。
「それでは、篠ノ之さん、オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさん、宮下君の6人はアクセスルームへ移動、そこでISコア・ネットワークを利用した電脳ダイブを行ってもらいます。更識簪さんは皆さんのバックアップをお願いします」
山田先生の説明に、一夏ハーレムの面々はお互い顔を見合わせる。
「電脳ダイブというと……」
「学園祭の後に導入された、あのVRゴーグルみたいな……?」
「原理としては似たようなものだ。そして、ダイブ中は無防備になる点もな。だから布仏と更識姉には、万一の場合に備えて防衛戦力として待機してもらう」
つまりハッキングを陽動として、直接戦力を投入してくる可能性があるってことか。
「あの~、私が防衛戦力でいいんですか~?」
おずおずと、のほほんが挙手した。
「お前が狭い通路上でテールブレードを振り回すだけで、一定の効果はある」
「なるほど、攻性防壁としてはアリですね」
「ラ、ラウラウ~!?」
のほほんが情けない声を上げるが、確かにそれなら荷電粒子砲が当てられなくても戦力になるか。いや、狭い通路上なら、ナインテールの拡張領域に入れてある"
「こういう時に、フォルテちゃん達が本国に戻ってるのは痛いわね……」
そんなのほほんを見て、楯無さんが苦い顔をしていた。間の悪いことに、3年のケイシー先輩も含め、専用機持ち2人がオーバーホールのために帰国しているのだ。だから今回は、のほほんも戦力に数えるしかないわけだ。
「ところで織斑先生。わざわざ専用機持ちを6人も投入する必要があるんですか? 他に対処方法は?」
「他の方法はない。ISコアと専用機持ちが現状、最も処理能力の高い、言い換えればハッキングに効果のある代物だからだ。そして相手の能力の上限が分からん以上、システム上同時に電脳ダイブ可能な6人を投入することに変更はない」
なるほど。学園の警備担当として、これしかないと判断してのことなら仕方ない。そう納得して、手を下げる。
「よし、それでは作戦を開始する。各人所定の場所に移動しろ」
織斑先生の号令で、俺達は移動を開始した。
ーーーーーーーーー
アクセスルームとやらは白一色の内装で、6台のベッドチェアが中央の太い柱を囲むように配置されていた。
「みんなはこの椅子に。私は向こうのデスクで、バックアップをするから」
簪に促されて、俺達はベッドチェアに横になると、それぞれのISをベッドチェアに内蔵されている端末部に接続した。
「今までゴーグルを被ってたから、ある意味新鮮だね」
「シャルロットは呑気ねぇ……。というか、こんな大規模装置と同じことがゴーグルサイズで出来るって方がおかしいんだけど」
「宮下さん「ノーコメントで」あ、はい」
オルコットの疑問に対して、インターセプトして強制終了させた。
「あの部屋のディスプレイからして、この地下区画は学園建造当初からあるんだろうよ。なら、こっちの装置の方が古いんだから、デカくても仕方ないんじゃねぇか?」
「言われてみれば、あのディスプレイ、空間投影型じゃなかったわね」
「そう考えれば、ここも当時の最先端技術だったんだろうな」
凰と篠ノ之が納得した声を出すと、他の面子もこれ以上の追及は無かった。
「ゴーグル使用時と違って、中の仮想世界は現実に即してない可能性が高いです。こちらでバックアップするので、みんなはシステム中枢の再起動に向かってください」
「おう。ナビゲート頼むな」
「うん。それじゃあ、ダイブ、開始!」
簪の宣言とともに、システムの接続が行われて――次の瞬間、意識が落ちるような、ある意味慣れた感覚に包まれた。
ーーーーーーーーーーーーー
IS学園地下区画の真っ暗な通路を、米軍特殊部隊『
この部隊は米国防総省のデータベースにも存在しない、名前通り『名も無き』存在である。その証拠に、彼女の纏っているISには部隊章等の、身元を示すものはない。
「……」
目標は、米国の第2世代機『アラクネ』のISコア。かつて米軍基地から強奪された機体をテロリストが使用、IS学園を襲撃したのが先々月。そして逆にテロリストを撃退したIS学園が、コアを保管しているらしい。
政府としては返却を要求したいが、IS委員会に『ISが奪われた』と報告していないため、今更言い出すことは出来ない。だからこそ、『アンネイムド』が投入されたわけである。
「……?」
前方にセンサーの感があり、ファング・クエイクの浮遊による前進を停止する。その瞬間、
――カンカンカンカンカンカンッ!
「何っ!?」
何かが壁を跳ね返りながら、ファング・クエイクに向かって飛んでくる。そして、その何かがファング・クエイクのシールドに当たった瞬間――
――ドドドドドドッ!!
「がぁっ!」
1つ1つは大したことは無い爆発が、ファング・クエイクの前面と側面から大量に発生し、爆風に煽られて壁に叩きつけられる。
「なに、が……」
1回。たった1回の攻撃でSEを削り切られ、意識も削り切れられそうになっている隊長が、最後に見たのは、
「こういう狭いところでりったん謹製の『反跳炸裂弾』を使えば、私でも当てられるんだよ~」
左右3門ずつの砲身をこちらに向けた、事前情報に無かったISの姿だった。
『アンネイムド』の隊長は、それどころかアメリカ政府は知らなかった。
IS学園で、新しい専用機が作られたことを。そのISが、条件次第で大火力を叩き出す機体であることを。
ーーーーーーーーーーーーー
本音と一緒に侵入者の迎撃に出た私は、地下区画の上層を進む敵影を発見。本音と織斑先生に下層通路の防衛を任せて、敵影を確認していた。
(
周囲に付いた枯草のような特殊フィルムが、稼働時には服に密着して周囲映像を映すことで、迷彩効果を発揮するって代物ね。
でも残念。
「どっかーん」
――ドドドドォォォォンッ!!
「う、うわぁぁ!?」
「なんだ! 何が、ぐぁぁ!」
そこにはすでに、私がアクア・ナノマシンを散布済み。だから
「アルファチーム! くそっ! 敵はどこに――!?」
あら、別チームも合流してきたわね。でも、やることは変わらないわよ。それじゃあ、アクア・ナノマシン、散布開始~。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「こんなもんかしら」
特殊ファイバーロープで侵入者達を縛り終えた私は、ふぅと一息をついた。ざっと10人ぐらいは縛ったかしら。
そうしてから、私は侵入者の持っていた装備を確認した。
(最新型の迷彩服に、特殊合金製の強装弾を射出するアサルトライフル。間違いなくアメリカの兵士ね。問題は、このハッキングもこいつらの仕業なのか……)
「本音の方は大丈夫かしら?」
敵がこれだけとは思えない。もしかしたら、さっき合流したのとは別部隊が本音とぶつかってるかもしれない。
「様子を見に行きますか」
そう言って、私はISを待機状態に戻した。
――パスンッ
「……え?」
腹部に熱と痛みを感じて、そこで私は初めて自分が撃たれたことに気付いた。力が入らず膝をつき、そのまま倒れこんだ。
「やっと隙を見せたな……!」
(しまっ、た……)
拘束していたはずの男の一人が、片手にプラズマカッターを、もう片手に拳銃を持っていた。私としたことが、隠し持ってた武装を解除し損ねるなんて……。
その男が他の連中の拘束を解くと、私は10人近い兵士に囲まれていた。
「どうしますか?」
「アラクネのISコアが目標だったが、思いがけない拾い物だな」
「では?」
「止血と応急処置をしたら、モルヒネを投与。ブラボーはこの女とISを持って撤収、アルファは
「了解」
リーダー格の指示を受けてから、兵士達の動きは早かった。
私は自殺防止用に猿轡を噛まされ、首筋に無痛注射を打たれた。おそらくそれがモルヒネだったんだろう。腹部の痛みは引いていったけど、一緒に意識も薄れていく。
(かんざしちゃん……りく、くん……)
無意識のうちに二人の名前を呼んで……そして、私の意識は落ちた。
原作では、一夏達のISは無人機との戦いでダメージを負って展開不能のため、ダイブ組に回されています。本作では全員問題ないですが、オリ斑計画のためにダイブしてもらいます。(え
さらにイージスの2人がいると、襲撃側との戦力差が大きくなりすぎるため、ハンデとして帰国してもらいました。(オイ
うわっ…アンネイムドの隊長、弱すぎ…?
逆に考えるんだ、『簪すら倒した本音を相手に、よく頑張った』と考えるんだ。