俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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ここら辺で、原作8巻の半分ぐらいですかね。

4/24追記
なんか、日曜に評価とお気に入り登録がガバッと上がってるんですけど、どうしたんです……?


第90話 英雄の帰還

私の人生は、更識家の長女として生まれた時から決まっていたのかもしれない。

更識は国の裏側、諜報を司る家系。故にその当主には様々な技術や身体能力が要求される。私がマーシャルアーツや古武術、カポエラなどの格闘技を習得したのも、当主候補として身体能力を高める、その延長からだった。

私はそのために努力したし、お父さん――先代の更識楯無――も、そのつもりで私を鍛えた。二人とも、簪ちゃんに更識の重荷を背負わせたくなかったから。ただ、それが逆に簪ちゃんに劣等感や苦手意識を植え付けてしまったのは誤算だったけど。

そして私が中学生の時、先代から"楯無"を襲名した。そのこと自体に後悔は無い。ただ、もし我が侭が言えるなら……

私は――

 

 

 

ゆさゆさと体が揺られる感覚で、私は目を覚ました。

 

「……ここ、は?」

 

「目が覚めましたか、楯無さん」

 

「陸、君……?」

 

体が怠い、声を出すのも億劫だ。私、どうしてたんだっけ……?

 

「今は何も考えず、ゆっくりしててください」

 

「ごめんなさい、そうさせてもらうわ……」

 

そう返事してから、私は初めて陸君におんぶされていることに気付いた。でも、嫌じゃない。

 

「陸君の背中、あったかい……」

 

「また寝ててもいいですよ。少し揺れますけど」

 

「うん……」

 

(こうやって、誰かにおんぶしてもらったの、初めてかしら……)

 

少なくとも物心がついた時には、お父さんとは師弟の関係だった。それ以外の男の人も、大抵は更識家当主と部下の関係で。

そこまで思って、さっき目が覚めるまでに見ていた夢を思い出した。

 

(そっか……私、一度でも()()()()()欲しかったのかも……)

 

更識家の当主でなく、IS学園最強の生徒会長でもない。一人の女の子、更識刀奈として。

 

ああ、一定テンポの揺れに、また私、眠くなってきた、か、も……

 

ーーーーーーーーー

 

楯無さんを背負ってオペレーションルームに着くと、織斑先生と山田先生、のほほん、それに後ろ手に拘束された見知らぬ女が。

 

「宮下君、無事で――ひっ!」

 

「り、りったん~……?」

 

俺達の姿を見た二人が、恐怖を顔に貼り付かせてる。

 

「宮下、更識姉の治療はこちらに任せて、一度顔を洗ってこい」

 

そう言って、織斑先生は楯無さんを引き取ると、親指で部屋の隣にある手洗い場を指した。

 

「はぁ……?」

 

意味が分からんが、とりあえず指示に従って手洗い場に行き、洗面台の鏡を見た。そこでやっと理解した。

 

「……そりゃ、山田先生とのほほんが怯えるはずだ」

 

そこに映っていたのは、返り血を被った俺の顔。憎悪と殺意をぎらつかせた、人殺しの目だった。

 

「こんな顔で、簪と会うわけにもいかんよなぁ……」

 

まずは顔に付いた返り血を洗い流す。次いで、何度も何度も深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせる。もう、大丈夫だ。楯無さんを傷つけた連中は、()()()()()()()んだから……。

 

 

 

「大分マシになったな」

 

部屋に戻ると、織斑先生からお墨付きが出た。山田先生達の前にも出てみたが

 

「あの、宮下君、さっきはすみませんでした……宮下君だって頑張っていたのに……」

 

「りったん、さっきは怖かったよ~」

 

山田先生には謝られ、のほほんには安堵された。

 

「それで織斑先生、楯無さんは」

 

「安心しろ。腹部に銃撃を受けたようだが弾は貫通してるし、敵が連行しようとしたのか応急処置もされていた。先ほど医療用ナノマシン注射もしたから、安静にしていれば問題ない」

 

「そう、ですか……」

 

それを聞いて、途端に気が抜けちまったのか、俺は床に座り込んじまった。情けねぇなぁ……。

 

「ところで、篠ノ之達はあれから変わらずですか?」

 

俺が聞くと、織斑先生はまた難しい顔になった。

 

「ああ。相変わらずだ。通信は途絶したまま、5人とも起きる気配もない」

 

マジかぁ、どうしたもんか……試してみるか?

 

「おい宮下。スマホなんぞ取り出して、何をする気だ?」

 

「お、ここでも電波通じてんのか。いえ、ちょっと助っ人を呼ぼうと思いまして」

 

「助っ人だと?」

 

「ええ」

 

このまま5人が自力で罠を突破出来ないなら、別の人間を送り込むしかない。あいつらに特効がある人間を。

 

 

「5人の眠り姫を起こす、白馬の王子様を呼ぶんですよ」

 

 

ーーーーーーーーー

 

小規模メンテも終わり、今は白式を展開状態にしてデータ収集をしつつ、俺自身は椅子に座ってヒカルノさんとコーヒーをすすっていた。

 

「今回は結構いいデータが取れそうだよ」

 

「そうなんですか?」

 

「そうだよ。そもそも第二形態移行(セカンド・シフト)したIS自体、世界でも10機に満たないぐらい希少だからねぇ。その稼働データなんて、喉から手が出るほど貴重なものなのさ」

 

「へぇ」

 

――♪

 

「おや、君のスマホかい?」

 

「あ、すみません」

 

一言謝って、ポケットからスマホを取り出す。……陸から?

 

「もしもし?」

 

『一夏、お前の嫁達がピンチだ。急いで学園に帰って来い』

 

「はぁ?」

 

嫁って、箒達のことか? ピンチってどういうことだよ?

 

『理由を説明する時間も惜しい。早く帰って来い』

 

「あの、ここから学園まで、2時間以上かかるんだが……」

 

『心配するな。学園外でのIS飛行許可は、織斑先生が何とかするって話だから』

 

「いやでも、今はまだ白式のデータ収集をしてる途中……」

 

『織斑先生の出席簿アタックで顔の表面積を2割増しにされたくなかったら、四の五の言わずとっとと帰って来い!!』

 

「い、イエッサー!」

 

あまりの剣幕に反射的に答えると、陸からの通話は切れた。どうなってんだよ……。

 

「あの、ヒカルノさん、申し訳ないんですが……」

 

「ここからでも聞こえてたよ。最低限必要なデータは取れてるから、帰っていいよ。急がないと、織斑千冬から折檻を受けるんだろ?」

 

「ありがとうございます!」

 

持っていた紙コップの中身を飲み干してテーブルに置くと、急いで白式を待機状態に戻す。近くの窓を開けると、そこから外に向かって飛び込む。そして再度白式を展開して、スラスターを全開にして一気に飛び立った。

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

瞬時加速を繰り返し、30分でIS学園に辿り着いた。

そして学園に入った瞬間、異変に気付いた。

 

「停電? しかも、防御シャッターまで……」

 

校舎内は真っ暗な上、窓には防御シャッターが降りていた。しかも、ところどころ隔壁まで。

 

「いや、今はそれよりも、千冬姉達のところに行かないと……」

 

飛んでる途中、追加で陸から送信されて来たマップデータを元に、学園の地下区画をフル・ブーストで飛翔する。

 

「ここか!」

 

パネルを操作してドアを開けると、

 

「来たか一夏」

 

「織斑君!」

 

そこには千冬姉と更識さん、そして眠っている箒達が。

 

「えっと、陸から箒達がピンチだって聞いて……」

 

「そうだ。説明するからよく聞け」

 

そう言って、千冬姉は箒達が置かれている状況を説明してくれた。

 

「つまり、箒達はVRゴーグルを付けた時の仮想世界みたいなところに幽閉されちまったのか」

 

「うん。だから織斑君には同じように電脳ダイブして、みんなを救出してほしい」

 

「とりあえず分かった。分かったけど……ダイブってどうするんだ?」

 

「大丈夫」

 

そう言うと、更識さんが俺の後ろに回り込んで

 

――ドッ

 

「へっ?」

 

首への衝撃。遠のく意識。

それが首トンだと認識する前に、俺の意識は落ちた。

 

ーーーーーーーーー

 

更識妹が一夏に首トンした時は驚いたが、とりあえず電脳ダイブには成功したようだな。

 

「織斑先生、お願いがあります」

 

「なんだ?」

 

「織斑君のナビゲート、代わってもらえませんか?」

 

「……私が代わって、それでお前はどうするつもりだ?」

 

何となく予想はつくが、聞くだけ聞いてみる。

 

「おそらく今回電脳空間に罠を張った敵は、学園の近くに潜伏していると思われます」

 

「……だろうな」

 

それは私も薄々考えていたことだ。

これほど大規模かつ長時間、電脳空間を掌握するとなると、電脳戦特化のISを使用している可能性が濃厚だ。そして実行するなら、学園から近いほどやりやすいだろう。

 

「であれば、みんなの救出と並行して、敵の撃破に動くべきだと考えます」

 

「……筋は通っている。だがお前をナビゲートから外すのは」

 

「お、織斑先生!」

 

オペレーションルームにいたはずの山田先生が、こちらの部屋に飛び込んできた。

 

「み、宮下君が……!」

 

「宮下が、どうしたんですか?」

 

「『ちょっと野暮用済ませてきます』って言って、刀を持ったままどこかに行っちゃって……!」

 

「何ですって?」

 

「陸が……っ!」

 

「おい、待て更識!」

 

私の制止を振り切り、更識妹が部屋を飛び出していった。くっ!

 

「山田先生、すみませんがダイブしている織斑のナビゲートをお願いします」

 

「は、はい! わかりました! それで、織斑先生は?」

 

「私は更識妹の後を追います」

 

山田先生にそう伝えて、私も急いで部屋を出て行った。

 

二人とも、頼むから早まった真似はするなよ……!




この時点では、ちーちゃんはオリ主のやったことを把握し切れていません。(精々、侵入者を撃退したぐらいに思ってる)
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