俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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前回シリアス終了と言いながら、今回ギャグとシリアスのごった煮になっとります。


第93話 似たもの姉妹

「ん…んん……」

 

顔に当たる光が眩しくて、私は目を覚ました。

 

「ここ……医療室?」

 

保健室とは別にある、治療施設のベッドの上に私はいた。

 

「私……どうしてここに……」

 

まだぼんやりする頭を働かせて、これまでのことを思い出す。

 

「侵入者を撃退したと思ったら返り討ちに遭って、それから陸君におんぶされて……?」

 

おかしい。どうしても、思い出せる記憶の前後が繋がらない。

私が返り討ちに遭ったのはいい。そこから、どうして陸君が出てくるの? だって、もしその間に何もないなら、あの米軍の特殊部隊を思われる侵入者は、陸君が――

 

「お姉ちゃん!」

 

「簪ちゃん!?」

 

突然部屋のドアが開いて、簪ちゃんが私に向かって飛び込んできた。

 

「良かった、無事で良かったよぉ……!」

 

「簪ちゃん……心配かけちゃってごめんね……」

 

泣きじゃくる簪ちゃんの頭を撫でる。

 

「お姉ちゃん、怪我の方は大丈夫なの?」

 

「全然問題ないわ。今もこうやって――いたたたっ!」

 

力こぶをしようとしたら、腹部の傷が攣ったみたいで刺すような痛みがががががが

 

「アホなことしないで下さい。一応、銃弾で腹に穴開けられてるんですから」

 

「陸君……」

 

陸君が、両手に持ったパイプ椅子をベッドの近くに置く。それに簪ちゃんが座ると、彼ももう片方に座り込んだ。

 

「織斑先生曰く、弾は貫通していて医療用ナノマシン注射もしたそうなので、2,3日で動けるようになるって話です」

 

「そう。撃たれた割には軽傷で良かったわ」

 

「もう! お姉ちゃん!」

 

「あ、はい。すみません……」

 

簪ちゃんに怒られた。そしてそれも、簪ちゃんが私のことを心配してのことだって分かるから、素直に謝るしかない。

 

「まったく……今は自愛しといて下さいよ」

 

そう言って、今度は陸君が私の頭を撫ぜてきた。少し荒っぽいけど、優しい手つき。

 

「ところで、何か欲しいもんあります? 俺か簪で持ってこれるもんなら取ってきますけど」

 

「うん、遠慮せず言って。……みんなに迷惑かけない程度に」

 

「簪ちゃん、釘刺さなくっても……」

 

欲しいもの、か……うん。もう、素直になってもいいわよね?

 

「それじゃあ陸君、ちょっと」

 

「はい?」

 

私の手招きで、陸君が近づいてくる。そして手が届くまで近づいたところで、私は彼の腕を掴むと、そのまま勢いよく引き寄せると

 

「んっ……!」

 

「んん!?」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

陸君の顔に両手を回して、彼の唇を自分の唇に押し付けると、胸がドキドキして止まらない。でも、苦しくは無い。温かくて、すごく嬉しい気分……

 

「ぷはっ! た、楯無さん……!?」

 

「刀奈」

 

「はい?」

 

「私の本当の名前。簪ちゃん以外に人がいない時は、その名で呼んで?」

 

「お姉ちゃん……本気なんだね?」

 

簪ちゃんが、真剣な顔をして聞いてくる。そうだよね、でも、ごめんね。

 

「本気よ」

 

「……そっか」

 

私の答え(覚悟)を聞いて、簪ちゃんの顔が優しいものに変わる。

 

「いやあの、簪? 何がなんやら分かってねぇんだが、説明求む」

 

「お姉ちゃんの"楯無"は、代々更識家の当主が襲名する名前。本当の名前は刀奈。家族以外には決して教えてはいけない名前」

 

「はぁ……ん? ならどうして今、その名前を? 遠くない未来、楯無さんとは義姉弟になる予定なんだから……って、まさか」

 

「うん、そのまさかよ」

 

「うわっ」

 

一度は離れた陸君の体を、再度引き寄せて、抱き締める。

 

「最初はね、義姉弟の関係でもいいと思ってた。けど、簪ちゃんを通して一緒にいる内に我慢できなくなってきちゃって……そして今回の()()で、もう、自分の気持ちを抑えきれない、嘘をつけなくなっちゃった……」

 

だから――

 

 

「私、更識刀奈は、貴方のことが好きです」

 

 

言った。更識家当主ではない、一人の女である、更識刀奈として。

 

「……楯無さん、いや、刀奈さんは……簪はそれでいいのか?」

 

陸君が、真剣な顔をして私を、そして簪ちゃんを見る。

 

「私は構わない。というより、こうなると思ってた」

 

「え、ええ?」

 

ど、どういうこと?

 

「だから、私言ったよ? 『例えお姉ちゃんでも、第2夫人だからね』って」

 

「お前、それマジで言ってたのかよ……」

 

簪ちゃん、以前(第73話で)言ってたの、こうなることを見込んで!?

 

「だから、後は陸の気持ち次第」

 

「だー……こんな重要な決断を、俺に振るなよなぁ……」

 

いくら織斑君と同じように重婚の特例が出てるって言っても、難しい、か……

 

「そうよね……ごめんなさい、陸君。今の話は――っ!?」

 

言い切る前に、陸君に引き寄せられて、胸元に顔が埋もれるように抱き締められた。

 

「簪にも言ったが、クーリングオフは受け付けないからな」

 

 

 

「だから、覚悟しておけよ――刀奈」

 

 

 

「……ええ、もちろんよ……!」

 

腕を背中に回して、思い切り抱き締め返した。腹部の痛みなんか感じないぐらい、幸福を感じるために――

 

ーーーーーーーーー

 

二人の抱擁は、お姉ちゃんが私に見られてることを思い出して終了。今は顔を真っ赤にしてシーツにくるまっている。

 

「それにしても、お姉ちゃんに対してため口なんだね」

 

「そこは勢いというか、自分の女に敬語っていうのがしっくり来ないというか……もちろん、周りの目があるときは"楯無さん"呼びで敬語を使うがな」

 

「呼び間違えないように」

 

「鋭意努力する」

 

陸なら大丈夫かな。万一口が滑っても、うまく逃げ切れそうだし。

 

「それで、お姉ちゃん」

 

「簪ちゃんに見られた簪ちゃんに見られた簪ちゃんに見られた……」

 

「てい」

 

「きゃんっいたたた!」

 

シーツの上から脇腹だろうところを突くと、くすぐったさで悶えた時に傷口が攣ったのか、今度は痛みの方で悶え始めた。

 

「それでお姉ちゃん」

 

「な、何かしら……」

 

「これを付けて」

 

そう言って、私が拡張領域から取り出したのは

 

「……簪、それってゴーグルだよな?」

 

「陸君が作ったっていう、電脳ダイブと似たことが出来るって奴よね? 私のクラスにも数台入ってきたけど」

 

そう、例のアレ。

 

「これの中に入ってるデータを、お姉ちゃんに見てほしい」

 

「はぁ……」

 

最初は訝しんでたお姉ちゃんだったけど、最後はゴーグルを受け取って被ると、ベッドに横になってスイッチを押した。

 

「なぁ簪、このゴーグルには何のデータが入ってるんだ?」

 

 

「陸がロキさんの部下になってから、今日までの記憶」

 

 

「簪さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」

 

 

目を見開いた陸に、両肩を掴まれた。

 

「何してくれちゃってんのぉぉぉぉ!? というか、そんなデータどうやって用意したんだよ!?」

 

「陸が寝てる間にゴーグルを被せて、データ送信の向きを逆にして抽出した」

 

陸が寝てから仕掛けて、起きる前に回収する必要があったから、あの日は寝不足で大変だった。

 

「俺のプライバシー……」

 

あ、陸がorzった。

 

――♪

 

そして鳴り出すスマホ。

 

「もしもし?」

 

『何してくれちゃってんのぉぉぉぉ!?』

 

予想通り、ロキさんからだった。

 

『言ったよね!? 外史の人間には現地作業員の素性はバレないようにするルールだって! 何事故でもないのにバラしちゃってんの!?』

 

「お姉ちゃんが陸のお嫁さんになるには必要」

 

『無いよね!? 必要性無かったよねぇ!? また僕が主神に折檻されるって分かってる!?』

 

「コラテラルダメージ」

 

『みぎゃぁぁぁぁぁぁ!!』

 

受話器の向こうから、ロキさんが頭を搔きむしるような音が聞こえてくる。あんまりやると頭皮に悪いですよ?

 

『リク! 一体どうすんのさこれ!』

 

 

「あ~……コラテラルダメージ」

 

『おまっ ごぽっ』

 

……すごく汚い水音を最後に、通話が切れた。たぶん陸のセリフで、ロキさんの胃が限界値を超えたんだと思う。

 

「うぅ……」

 

そしてちょうどいいタイミングで、お姉ちゃんも起きた。ゴーグルを外して頭を振るお姉ちゃんの頬には、涙が伝った跡があった。

 

「今のって、陸君の記憶? 本当に?」

 

「ああ。信じられないだろうが」

 

「……ううん、信じるわ。陸君の目、嘘を言ってるようには見えないもの」

 

そう言ってお姉ちゃんは目頭を袖で拭くと、私の方を向く。

 

「簪ちゃんがこれを見せたのは、私の覚悟を見るため?」

 

「うん。陸の苦しみを知って、その上で陸を支えるために並び立つ覚悟があるのか」

 

「それだと俺、なんか精神的ヒモじゃね?」

 

陸、そんな微妙そうな顔しないで。

 

「陸からは幸せを貰ってる。なら、こちらから陸に何かをあげるのが当然」

 

「それが簪ちゃんが言う、支えるってことなのね?」

 

「お姉ちゃん、その覚悟、ある?」

 

「馬鹿言わないで。これでも簪ちゃんのお姉ちゃんなのよ?」

 

「きゃっ」

 

「ま、また!?」

 

腕を引っ張られて、私と陸がお姉ちゃんにまとめて抱き締められる。

 

「支えて見せるわよ。陸君も、簪ちゃんも。更識家当主の……お姉ちゃんの名に賭けて」

 

 

 

やっぱり、私とお姉ちゃんは似てるのかもしれない。こうやって抱き締めるのが好きなのも――男の人の趣味も。




姉妹丼(超下品)
企画当初、たっちゃんは一夏組にと考えていました。それが学園祭辺りから脳内軌道が曲がっていき、今回思いっきり路線変更しました。さてはて、今後のプロットがどうなることやら……。

簪さん、とうとうやらかすの巻。オリ主や神様すらぶん回す原作ヒロイン、新しい。もうね、オリ主のためになるなら何だってやります。

次回は明るい(?)拷問回です。オータムのアットホームな悲鳴にご期待ください。
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