それと業務連絡です。GWにつき、明日から更新ありません。
再開は5/8の00:15を予定しとります。
4/28追記
推敲中に消し忘れてた箇所をちょっと修正。
IS学園地下区画。オペレーションルームとは別の領域に、昨日捕らえた亡国機業の2人が収監されているらしい。
織斑先生の後ろをついて部屋の中に入ると、ガラス窓の向こうに、手足を拘束されたオータムがパイプ椅子に座らされていた。
授業はいいのかって? 昨日あれだけのことがあって、授業なんかやれるか。(凰が吹き飛ばした)隔壁の修理やら、セキュリティのアップデートやらで、今日は休校だ。
「これ、向こうからはこっちが見えないってやつですか?」
「そうだ。よくあるドラマの取調室だな」
「取り調べねぇ……」
「なんだ。不満か?」
「正直、何か有益な情報を吐くとは思えないんですけど」
曲がりなりにも秘密結社のエージェントだ。しかも以前捕まえた時だって、何も吐かなかったんだろ?
「確かにそうだな。で? そうと分かっていながら、どうして奴を尋問したいなんて言い出した?」
「まぁ、大したことじゃないんですがね」
「昨日は織斑先生に止められて、フラストレーションが溜まってるんですよ。だからちょっくら、奴さんには酷い目に遭ってもらおうかと……」
「はぁ……いくらテロリストが相手とはいえ、拷問の類は許可できんぞ」
「そんなことしませんって。少なくとも昨日みたいに、流血沙汰にはしませんから」
「……本当だろうな?」
「はい」
頷く俺の顔を見た織斑先生は、しばらく考える仕草をしていたが
「……いいだろう。ただし、やり過ぎだと私が判断した時点で、尋問は終了だ。いいな?」
「了解です」
大丈夫。手傷を負わせるようなことはしない。そう、肉体的な傷は、な……。
「気分はどうだ?」
「良いわけあるか、クソが」
「つれないな。せっかく左足もくっ付けてやったのに」
オータムをおちょくる織斑先生。よく見ると、確かに俺が斬り飛ばした足がくっ付いていた。
「宮下に感謝しろ。こいつが綺麗に斬り飛ばしたから、ぴったりくっ付けられたんだ」
「誰が感謝するかよ!」
そりゃそうだ。
「で? 何か喋る気になったか?」
「はんっ! お前達如きに、このオータム様が話してやるようなもんなんかねぇよ!」
「そうだろうな。曲がりなりにも秘密結社の一員だものな。ハハッ」
「てめぇ、私を馬鹿にしてんのか!?」
うわー、織斑先生弄り倒すねー。
「それに……」
苦虫を嚙み潰したような顔で、俺のことを睨みつける。
「おうおう、昨日はあれだけ怯えてたのに、今日はずいぶん威勢がいいな」
「うるせぇ!」
「……宮下、さっきも言ったが、やり過ぎるなよ?」
「分かってますって」
どうだか、と漏らして、織斑先生は部屋から出て行った。たぶん、さっきの部屋に戻って俺とオータムを監視するんだろう。
「へっ、てめぇが尋問官ってか? 生憎、素人に屈するほどヤワじゃねぇんだよ」
「そうかい、失神エージェント」
「黙れクソガキぁぁぁ!」
椅子に固定されている中、俺に嚙みつくかのように暴れまわる。俺が刀持ってないだけで、ずいぶん強気じゃねぇか。ホント、文字通り見た目でしか判断できねぇのな。
「そんじゃ、さっそく尋問開始と行こうか」
そう言って、俺は拡張領域から掃除バケツを展開すると
――バシャァァァァッ
「うわっぷ!」
中の液体をオータムにぶっかけた。
「てめぇ! 何しやが……っ!?」
怒鳴ろうとしたオータムの動きが止まった。それどころか、カタカタと小刻みに震え始める。
「な、なんだこれ……からだが……」
おーおー、いい感じに効いてきたな。
「如何かな? 北海道は北見産の、ハッカ油の味は」
「なん、だと……!?」
ハッカ油。あのスースーするやつだ。風呂に数滴入れると清涼感が得られたり、エタノールや水で薄めてスプレーに詰めれば、消臭や虫よけにも使える優れもの。
「本来は数滴単位で使うもんなんだが、今回は特別だ」
「まさか……あれぜんぶ……」
「正解。バケツいっぱいのハッカ油なんて、贅沢だよなぁ」
「さ、さみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
悲鳴を上げると同時に、さっきよりもガッタンガッタン椅子ごと暴れ始める。
そりゃ、風呂に数滴入れるレベルのハッカ油を、原液でバケツいっぱい被ればそんなもんよ。
「
「てめぇぇぇぇぇぇぇ!! さみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
さっきまでの威勢はどこへやら。体の震えと一緒に、歯もガチガチ鳴らし始めやがった。
「こ、こんなことで、私が情報を、ゲロするとでも、お、思うなぁ!」
「そうかそうか。それなら、そんなオータム様の根性に敬意を表して」
拡張領域から、ハッカ油と一緒に用意したものを展開。
「……あ……」
それを見た途端、ただでさえオータムの顔から失せていた血の気が、完全に消えた。
「いやぁ、今のご時世でも、まだまだ現役なんだよなぁ。こ・い・つ」
かつての夏の風物詩とも言える、こいつの名は……扇風機!
エアコンが普及し切った現代においても、家電量販店の一角に生存しているタフガイだ。屋外で使うには、こっちの方がいいんだよな。
「そしてこいつを倍率ドン! さらにドン!」
合計4台の扇風機を、オータムを囲うように設置する。そして
「や、やめ……」
「一斉にスイッチオーン!」
――ブォォォォォォォォ
「◎△$♪×¥●&%#?!」
オータムの口から、解読不能な叫び声が垂れ流される。どうやら気に入ってもらえたようだ。
あ、椅子が倒れた。でも大丈夫、最近の扇風機は賢いから、対象を追尾して風を当てる首振り機能が付いてるんだよ。……生前の俺の世界でも欲しかったな、この機能。
「やめて、やめてぇぇぇぇ、しゃべもごっ」
慌ててオータムの口に布切れを詰め込んで、情報をゲロできないようにした。危ない危ない、もう少しで尋問が終了するところだった。
ついでに倒れた椅子もオータムごと元に戻して、今度は倒れないようにしっかり足元を固定した。これで体いっぱいに風を浴びることができるよ。やったね。
「それじゃ、これからお前が連れてた女の子の見舞いがあるから、しばらくそうしててくれよ」
それだけ言い残して、俺はオータムを放置して部屋を出た。
それと同時に織斑先生も隣の部屋から出てきたんだが、形容し難い顔をして俺のことを見てきた。
「宮下、お前ってやつは……」
いやいや、そんな目で見んで下さいよ。
ーーーーーーーーー
場所は変わって、学園の医療室。刀奈の病室とは別の部屋の前に、簪とボーデヴィッヒが立っていた。
「陸」
「教官。それに宮下もか」
「おう」
「だから織斑先生と呼べと……まぁいい、ボーデヴィッヒ」
「はい!」
「今回お前を呼び出したのは、昨日の事件で捕らえた……いや、保護した者が、お前と関係あるからだ」
「は? 私と関係、ですか?」
身に覚えがないからか、ボーデヴィッヒがキョトンとした顔で織斑先生を見返す。
「追々分かる」
そう言って、織斑先生がドアをノックすると『どうぞ』と返事があり、ドアを開ける。
病院個室のような部屋のベッドの上で、昨日見た女の子が上半身を起こして、目を閉じたままこちらに顔を向けた。頭につけていたサークレットみたいなのも、今は無い。
「気分はどうだ?」
「分かりません」
「そうか」
織斑先生の問いにそれだけ答える。
「……ボーデヴィッヒさん?」
「簪、どうし――ボーデヴィッヒ?」
「そ、そんな……そんなはずは……」
女の子を指さすボーデヴィッヒの体が、カタカタと震えていた。
織斑先生はそんなボーデヴィッヒをそのままにして、
「お前自身のことで、覚えていることを全部話してくれ」
「はい」
再度問われた女の子は頷くと、
「私は、ドイツの
「……っ!?」
女の子の口から語られた内容に、簪は絶句した。
「遺伝子強化……つまり、デザインベビーってことか」
「はい。そして……」
女の子の視線が、ボーデヴィッヒの方を向く。
「ラウラ・ボーデヴィッヒになれなかった、失敗作」
「っ!」
「やはりか」
織斑先生が納得する中、ボーデヴィッヒの顔が、苦痛で歪む。ちょっと待て、どういうことだ? まさか……
「もしかして、ボーデヴィッヒさんも……」
「ああ……」
まるで観念したかのように、ボーデヴィッヒが苦笑する。
「私も
「ふ~ん、で?」
「「「「は?」」」」
あれ? 簪も織斑先生もボーデヴィッヒも、ベッドの女の子すら、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して固まってんだが。
「陸、ボーデヴィッヒさんがデザインベビーって聞いて、それだけ?」
「ああ」
「宮下、お前は正気か? 気持ち悪いとか、感じないのか?」
「別に? ボーデヴィッヒがデザインベビーだって判明したからって、付き合い方を変える気はねぇぞ。それに一夏と揉めたくねぇし」
うん、あいつなら『ラウラを差別してんじゃねぇぇ!』とか言って殴りかかってきそうだし、そんな揉め事はごめんだ。
というか、こちとらイノベイドっていう人造生命体と殺し合ったり手を組んだりしてたんだ。今更デザインベビーぐらいなんだって話だ。
「……」「これが宮下か……」
「その反応は解せぬ」
特に織斑先生、貴女の弟さんも、その辺は俺と同類ですよ。間違いなく。
「それで織斑先生。実際のところ、彼女はこれからどうなるんです?」
「正直、困っている」
ホント困ってそうな顔してますな。
「こいつの体内には、生体同期型のISが埋め込まれている。故にそのまま放逐というわけにもいかん。無論、人道上の理由からもな」
「そうですよね。それに彼女は、ボーデヴィッヒさんと姉妹なわけですし」
「し、姉妹ぃ!?」
簪の発言に、ボーデヴィッヒが目を見開いて再起動した。確かにそうなるか。
「姉妹か……なるほど」
あ、織斑先生の口角が上がった。ありゃ何か企んでる顔だぞ。
「きょ、教官?」
「安心しろ。悪いようにはしない」
「「はぁ……?」」
「私に任せておけ」
そこで検査の時間になり、話は強制終了となった。
「織斑先生、どうする気なんだろう?」
「教官は宮下と違って、トンデモなことはしないと思うが……」
「おいこらどういう意味だ」
『早速準備をするか』と言って颯爽といなくなった織斑先生に対して、各々疑問と不安な気持ちを抱いたのだった。
あれ? なんか忘れてるような……まいっか。忘れるってことは大したことじゃないだろ。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「フゴゴフゴゴフゴゴゴゴォォォォォォォ!(誰か風を止めてくれぇぇぇぇぇぇぇ!)」
ーーーーーーーーー
ハッキング事件から2日経って、やっと授業が再開した。一般生徒には事件のことは知らせず、老朽化した一部システムの異常ということになっているらしい。
「それにしても、みんなが俺のことをあんな風に思っていたなんてな……」
「ち、違うぞ一夏! いや、違わないんだが……」
「あ、あははは……」
電脳ダイブして、みんなを救出するっていうのは良かったんだけどな……。知らない方がいいことって、あるんだな……。
「……」
「ラウラ?」
「な、なんだ?」
「ボーッとして、どうかしたか?」
なんか上の空というか。昨日は千冬姉に呼び出されてたみたいだし、なんかあったのか?
「べ、別に、どうもしてないぞ?」
「お、おう」
そうこうしているとチャイムが鳴って、山田先生と千冬姉が教室に入ってくる。あれ? 山田先生、すげぇどんよりしてる?
「今日はですね……みなさんに転校生を紹介します……」
「「「「ええ~~~!?」」」」
「転校生ですか!?」
「デュノアさんとボーデヴィッヒさんが入って、またですか!?」
マジか!? というか、どうして1組にばっか転校生が入ってくるんだ!?
「それでは、入ってきてください……」
「失礼します」
そう言って教室に入ってきた女の子。背はラウラと同じか、少し低いぐらい。そして、腰まである銀色の髪を太い三つ編みにしているのが特徴的だった。
教壇の前に来るまで目を閉じてるけど、目が悪いんだろうか?
「クロエ・クロニクルです。これからよろしくお願いします」
――パチパチパチ!
ペコっと頭を下げると、クラスのみんなが拍手で迎える。
「あ、ああ……」
「ラウラ?」
どうしたんだ? 口をアングリ開けたまま固まってるけど。
「クロエさん、他に何か言っとくことない? 趣味とか特技とか」
「何か、ですか……ああ、そういえば言い忘れていました」
クラスメイトからもう一言を催促されて、クロニクルさんは
「血縁上は、ラウラ・ボーデヴィッヒは私の妹になります」
特大の爆弾を投下した。
「「「「ええ~~~!?」」」」
その日、1年1組の窓ガラスはみんなの絶叫によって、半分以上が割れた。
負けたらギャグ要員。某蒼き鋼からの伝統ですね。
そしてクロエに関しては、こんな感じにしてみました。試験体番号は適当です(ラウラよりは若い番号)。この後、原作通り束のところに行くか、はたまた一夏ハーレムに巻き込まれるかは、なーんにも考えてません。(オイ
さらにここから、エム(マドカ)への対応もあるんですよねぇ……。