英雄の夜明け、古き時代の終焉   作:シャッチトムソン

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なんとなく書きたくなったので初投稿です。


プロローグ

 

 

 

 

 

 

数多の飛竜を駆逐せし時

伝説はよみがえらん

数多の肉を裂き 骨を砕き 血を啜った時

彼の者はあらわれん

 

土を焼く者  【くろがね】を溶かす者

水を煮立たす者  風を起こす者

木を薙ぐ者     炎を生み出す者

 

その者の名は ミラボレアス

その者の名は 宿命の戦い

その者の名は 避けられぬ死

 

喉あらば叫べ 耳あらば聞け 心あらば祈れ

 

ミラボレアス

 

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

 

ミラボレアス

 

天と地とを覆い尽くす

彼の者の名を

彼の者の名を

 

 

黒龍伝説。

この世界に伝わる有名な童話。お伽話である。

 

神が地上に降り立ったとされる日より遥か昔

まだ神すら存在しなかったといわれている謎多き世界の話

 

その歴史を象徴するモノは今の世には失われており、有るのは世界各地に残骸と化し滅びを示唆させる朽ちた建物のみ。

奇跡的に残された書物さえ時に焼かれ隠され秘匿され故に誰も当時を知る者はおらず、時代の流れと共に忘却された記憶。

がそれは現代まで跨ぎ人から人へと伝説となり言伝として受け継がれた。

 

今の世を生きる者達が知ることのない忘れ去られし歴史

しかしそれは確かに存在した時代なのである。

 

 

「──数多の飛竜を駆逐せし時

伝説はよみがえらん

 

──蘇りし伝説は

無限の勇気を持つ英雄により

打ち滅ぼされる

 

──伝説が終焉を迎える

 

地は揺れ

木々は焼け

小鳥と竜は消え

日は消え

古の災いは消え

 

──新たなる夜明けを迎えるだろう。」

 

風の音さえ感じ取れる静かさに心地よい美声が響き渡る。

精霊達はその声を歓迎するかのように風は木々を揺らし大地は揺れ、水は溢れて火は煌めく、光と闇の主張は辺りを点滅させた。

雷は声の主の側に居たのだろうか、瞬く間に身体に電気を纏うとバチバチと音をたてる。がそれを声の主は咎めると雷は悲しそうに空を鳴らした。

 

 

そこは大聖樹と呼ばれエルフの王族と王族に管理を任された一族のみ立ち入ることが許されたエルフの聖域のさらに奥の誰も踏み入れてはならないとされる禁域。

その木の中に作られた塔からその声は聞こえた。

 

所々朽ちているものの古の時代に建てられたとされる割には外の世界の瓦礫と化した古代の建造物に比べて損傷もなく、天を貫かんばかりのその高い塔を大聖樹の幹が成長の過程で一部塔を侵食しているものの幹が塔を避けるように成長したその光景はある種の神聖なものを感じさせる。

その神秘的な場所は今では作られた当時を生きた者は土へと還り今古塔を知るものは代々教えを受け継ぐ王族のみ

 

 

その古の塔の頂に言葉を紡ぐ存在はいた。

 

エルフ達の信仰する教えに神と評される生き物。

 

その存在は雪を思わせるような白き髪に赤き瞳。

服装には白いドレスのみ。しかしそれはパッとみては宝石などの目に見えて価値のあるものの様には見えないけれども、近づいてみれば細部にまで繊細な装飾がされており、よほどの価値があるものだろうとわかる。身に付けているものはそのドレス以外は見られない。 

服から伸びるヒューマンのような細い手足。顔は幼さを感じさせるものの非常に整っており、表情は成人エルフ顔負けの気品を感じさせ、見る者には将来はこの世界でも有数の美を手に入れるだろうと思わせる。

耳は尖っており、その耳を見ればその存在はヒューマンではなくエルフである事は一目瞭然であった。

 

 

 

ヒューマンを基準とするならば歳は14くらいと言ったところだろうか?

エルフは長寿であり成長速度も遅い為、人間の成長速度と歳をあてにすることは出来ないが、成人したエルフと違いその容姿はエルフの中でみてもまだ成長途中であり、小さき背丈がより幼さを感じさせる。しかし未成熟と言えどその身体は女を感じさせる起伏と丸みを持っており、彼女が少女であるとわかる。

大人の気品と子供の未熟さ両方を持ち合わせ白いドレスを着た少女は幻想的でありより少女を神秘的にみせた。

 

 

 

 

「しかし暇になったものだ、、、」

 

少女は娯楽に飢えていた。

もはやいつこの場所にやって来たのかも少女本人が思い出せないくらいエルフが数代と変わるくらいの長い時間この場所でエルフを見守ってきたのだ。その甲斐あってかあの時絶滅寸前であったエルフも滅ぶことなく今ではこの地に国を築ける程に繁栄することができた。

 

 

まだ地上にモンスターが溢れていた時はまだよかった。

この地に定期的に押し寄せくるモンスターを撃退する事で暇を潰すことが出来た。       

しかし神が降りてきて以来()()()()以外のモンスターは地下に居場所を移してしまいここ地上では普遍的な日常が繰り返されるようになった。

 

神が降りてくる前。

地上にある英雄が生まれたと言う風の噂を聞いた時は寝れない日が続くほどワクワクしたものだが、かの英雄が黒龍を撃退することで力尽きてしまったと聞いた時はガッカリしてとても寝れるような気分ではなくなり寝れない日が続いたものだ。

 

 

エルフ達も繁栄から衰退に徐々に移行しようとしていた。

元々個人差はあれどエルフという種族は自らの種族に誇りを持ち。伝統を重んじ古きを良きとし、他の種族に蔑視の目を向ける排他的な種族ではあった。

古の出来事によりその要因が増えたとは言え。

信仰する教えとして神として位置付けられた自分という存在が少なからずエルフと外の世界の融和の枷にもなっていることを少女は理解していた。

 

だか良い点もある。

モンスターが居なくなり、外に関心を向けて飛び出すエルフも増えたことだ。

その中にはエルフの地を離れ外の世界で運命と言うべき相手をみつけヒューマンと共に歩みハーフエルフの子を成す者もいるにはいる。

が、エルフの寿命と人間では絶望的にも差がある為、遅かれ早かれ時が2人を別つことになる。エルフは種として見ると圧倒的に数は少なくその容姿からも嫌でも目を引いてしまう為、外で暮らし続けることは難しく残されたエルフは子供と共に安住の地である里へと帰ってくるが、一部のエルフはハーフエルフの存在を認めず親子は里の中では細々と暮らすことになってしまう。

 

「外に出るとするか。」

 

少女は思った。

仮初とは言え平和となった今、自分という存在はもはや不要であると。

むしろ自分という存在がエルフの繁栄の道を閉ざしてしまうのだと。

少女は外へと飛び出す理由を作った。

 

 

そう思い立つと少女の行動は早かった。

部屋着で使っていたドレスを脱ぐと棚からお気に入りの洋服とスカートを取り出し着替え足に白のニーソを履くと靴に足を入れる。最後に緑のフードを羽織り頭に被せると完成である。

白と青を基調とした洋服の首元と緑のフードには王族エルフの印が刻まれており、エルフにとっての最高級品であるとわかる。

旅の支度とはいっても供物として祭壇に捧げられた衣類を妖精に作らせたバッグに詰めていくだけのことではあったが、準備を終えると部屋と精霊に別れを告げる。

ベッドや椅子などの最低限の家具と捧げ物だけが置かれた趣味嗜好のない部屋ではあるが、数千と暮らせばいやでも愛着というものはできてしまうものではある。

 

 

塔の頂にて少女は空を見上げる。

精霊たちが騒ぐ。

それは自らも連れて行けと言っているようであったが、少女はそれを許さなかった。

 

「お前たちにこの地を任せる。なにもうここに帰ってこないというわけではないよ。もはやここに翼を畳むことはないけれど、旅の区切りがつけばまたここに足を運ぶとするよ。その時は外の土産話の1つや2つは期待しててね。それまでの少しの別れだ。」

 

精霊達は惜しむように少女に触れるともう何も言うことはなかった。

 

「じゃあ行くとするよ。」

 

言葉と同時に少女の身体がふわりと宙に浮くと次には一瞬にして掻き消えた。

 

少女は空にいた。

翼を持つものに許された場所を少女は駆ける。

久しぶりの飛行は少女は気分を良くしさらに加速し音をあっという間に置き去りにした。

 

「ふむ。そうだな。今代の王には挨拶しないとな。離れた後で騒がれても面倒だ。」

 

少女はまずエルフの里を出ることにしていたが、長年仕えてくれたエルフに礼の一つもないまま去るのはいささか冷たいと感じ、進路を変えてエルフの王の元に降り立った。

 

 

 

 

そらから何者かが降ってきた。

エルフの王は急に空から現れた小さな存在に驚くも瞬時に警戒の顔に変えて衛兵を呼びよせ緑のフードの被る不審者をみた。

 

「貴様何者だ。」

 

そうして衛兵は詰め寄ると顔をみようと乱雑にフードを捲り上げた。

そこから出てきたのは白い髪の持ったエルフだった。

それをみた王は一瞬にして顔を青くし椅子から立つと地に頭を下げた。空から現れた者は自分達が信仰し王族の責務として代々語り継がれる尊き存在であったからだ。

 

王は容姿こそ知れどこの世に生を授かり先代から受け継いでから現在に至るまで尊き者をこの目で見たことはなかった。

しかし王はその顔を見た時に目の前のエルフが尊き者であると理解した。自らに流れる血がそうさせたのだろう。

衛兵達も呆然とし遅れながらもいやその場にいた全てのエルフがその顔が現れるなり頭を地につけ皆が身体を震わせた。

崇める者に触れあまつさえぞんざいな態度をとったから?いやそんなことをしたのならそれを知ったエルフ達に非難され明日を迎えることなくその身は引き裂かれることだろう。

エルフ達はその顔をみるまで尊き者であると分かることの出来なかった己にエルフの誇りが砕けエルフの本能が嘆いていたのだ。

 

その行いは一族の恥であることは明白であった。

命令されなくとも罪を償う為、この場で命を絶つ事にエルフ達は躊躇はなかった。いやそうしなければ僅かに残ったエルフとしての矜持を失ってしまうだろう。それは誇りに生きるエルフにとって死ぬことよりも恐るべきことである。

 

「顔をあげて」

 

少女から放たれた言葉は許しであった。

 

少女は今のこの状況に頭を抱えた。

彼らが突然現れた不審者に対してとった行動は間違いでは無い。

だがどうであろうか適当に扱った者が実は自分達の存在意義であり、崇める神であったのだと知れば。

相手が悪かったのだ。

 

少女も久しぶりの外に浮かれており、近く精霊以外と触れ合うことがなかった為、自分自身がどう思われているのかを失念してしまっていたのである。

 

自分の軽率な行いが生んだ惨状をなんとかすべく放った言葉だが、それを聞いた相手はどう思うだろうか?

命で償うことすら難しい無礼な態度を取ったにも関わらず、それを何事も無かったかのように許されたのだ。

エルフ達は思った。なんと寛大なる妖精神様なのだろうと、我々の神は取るに足らないエルフにさえ救いの手を差し伸べてくれるの存在なのだろうと、少女の何気ない言葉は元々盲目的で狂信的であるエルフの信仰心を更に焚きつけるには充分であった。

 

だかそれはそれこれはこれである。

神に行った無礼も神が許すなら罪は消えるだろう。

しかしそれでのうのうと生きようものなら先祖に家族にどう顔を向ければいいのだろうか?エルフとしての自分を許すことはできないのである。

少女の側で跪いていた衛兵が顔を上げると腰のナイフを抜きナイフを首に当てるが、少女は瞬時にそれを奪い取る。

 

「私が許すと言ったのだから、この件は無かったことにする。

私の言葉を聞かずにまだこの件でことを繰り返すと言うのなら私はそれを生き恥とするでしょう。」

 

そう言われてしまえばエルフ達にはもうこの件に触れることはできなくなってしまった。尊き者自身の恥になるなど、それは例え自らのエルフの矜持が無くなろうともあってはならない事なのだから。

エルフたちは立ち上がり謝罪の言葉を口にするとそれ以上はこの事について言うことはなかった。

 

「それでは、、妖精神ルーツ様。私めに何用なのでしょうか?貴方様が降りてくる事など大聖樹に何かあったのでしょうか?」

 

王は先ほどの事などなかったかのようにルーツと呼ばれた少女に用件を聞く。

 

「大した用事では無いわ。私今日でこの地を出て旅に出るからその挨拶をしにきただけよ。」

 

「、、、え?」

 

その言葉を聞いた瞬間王は気を失った。

その後意識を取り戻した王に最終的には説得できたものの泣きつかれ足に引っ付く王を見てさっきまでの無礼だなんだはなんだったのだろうかとミラは思った。

 

 

 

 

 

 

 




続かない!!
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