英雄の夜明け、古き時代の終焉   作:シャッチトムソン

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久しぶりにモンハンの世界に入ったら野良にはちみつねだられて、お返しに秘薬くれたので初投稿です。


戦争遊戯

 

「戦争じゃあぁ!!」

 

夜のファミリアにヘラの声が響く。

 

時計の針は11を差し、寝ている者半数を占める中で主神の号令がかかる。中には就寝時間にはまだ早く、寝ずに過ごしていた者もいる。が、大半は床に就き一日を終えていおり、ファミリア内も常夜灯が灯る静かな時間帯。

 

しかしそれもヘラの呼びかけによってファミリア内に伝わり一つまた一つと明かりが点いていくと30分後には広間に眷族達が集合して壇上で怒り狂うヘラを見上げていた。

 

 

 

 

「ミラ、今日の神の宴は貴方を連れて行くから」

 

呼び出しを食らったと思えば唐突に結論だけを告げられた。

準備しておきなさい。と自信満々に発する声には否定されることなど微塵も考えていないのだろう。相変わらず他人の事情など気にしない自由な女神様である。

 

そんな女神の気まぐれの被害者のミラは当然、今日どころか今この場でそれを初めて知り、自身の予定を勝手に決められたことにため息こそ吐けど、拒否はしない。

どうせ行きたくないと言ったとしても無駄だというのもあるが、それ以前に今日の夜はたまたま予定が何も無かったからだ。ミラもミラでどうせ暇なのだから行ってもいいかな?くらいの感覚で、両者の利害が奇跡的に一致したということもあり、その場は穏便に済まされた。

 

「いつもは団長さんを連れて行ってるのに急にどうしたの?それに私は絶対に連れて行かないって言ってなかったっけ?」

 

ミラは確か・・・と思い返す様にヘラに言うとヘラにも理由はあるらしい。

 

「あの子、今日はダンジョンに行ってて連絡が着かないのよ。それに今日の宴はアイツが絶対に来ないから貴方を連れて行って大丈夫なの」

 

そう語るヘラは神の宴など数えられないくらい行っているはずであるのに、まるで初めて行くかの様に嬉しそうに見えた。

 

 

そして夜を迎えれば約束通りヘラに手を取られるがままに神の宴の場へと赴く。

 

バベル塔の上層、ここが今回宴に選ばれた場所であり、そこには文化の違う神の肥えた舌を満足させるようにと彼等に合わせた古今東西、オラリオでも最高の様々な料理が運び込まれていた。そしてそれを餌にして酒を食らい、神達は旧知の神はたまたあまり関わりのない神と親睦を深める為に雑談に興じる。

 

 

神の宴。

その名の通り不定期に開かれる神達による神の為のパーティー。

 

参加者はもちろん神。それと自らのファミリアの眷族を一名の同行させても構わないという決まりがある。

 

神だけの宴の名目上、連れてくる眷族は一応として各々の主神の護衛とされているが、それは体のいい形だけの理由に過ぎなかったりする。

 

宴の席の中、隣に立つ己が眷族を得意げに話す神達。

 

神は他の神達に見せびらかしたいのだ。

自慢の家族、我が子供を神の集まるこの場で。

 

そう。この場所は互いに交流を深める場であると同時に神としての己の器を主神としての格を競う場でもあるのだ。そしてその筆頭が我らが主神ヘラである。

 

 

ヘラの考えなど気にもせずミラはなんとなく暇だから着いてきたというだけだったが、しかし来てみればどうだろうか、テーブルの上に所狭しと置かれた見るからに美味しそうな数々の料理の群。

 

ミラは願ってもいなかったご馳走にありつけた事にヘラに着いてきて良かったと考えを改め、彼女に感謝すると自分を今も待ってくれている彼らに心躍らせ取り皿に手を伸ばし取ろうとした。

でも取り皿はミラの手から逃れるかの様に遠ざかる。

 

そんなバカなことはない。と頭を振り払えばミラは取り皿を伸ばす手とは反対側が勢いよく引っ張られていることに気付いた。足元を見れば勝手にズルズルと後ずさる。料理が自分から逃げているのではなく、自分が離れて行っているのだ。

 

背後に目を向ければ案の定もう片方の手をヘラが引いていた。

 

ヘラが引っ張る方向は残念ながらテーブルとは反対、ミラは最後の抵抗とばかりに楽園に未練がましく手を伸ばしたがもはや届くわけもなく「あぁ,,,」と情けない声が漏れるとヘラに引きずられパーティーの中に消えていった。

 

 

それからは悲惨だった。

目に見える直ぐそこに考えられる限り最高の料理が待っていると言うのにホールドされた腕が許してくれない。ヘラはヘラで参加している神を転々と、宴の場を縦横無尽に走り回り横に立つミラをどうだと、まるで自分の事の様に心底ご満悦そうに見せびらかす。

 

食事なんてどうでもいい。もう解放してくれとあれ程喜んでいたはずの気持ちは反転し、もう帰りたいと顔がやつれてくる。そうこうしていれば急に馴染みある顔が現れた。

 

「やあこんばんわ。いつ見ても可憐だね妖精姫(ティターニア)

 

「あら。流石はオラリオ最強の人ね。そんな言葉が簡単に出てくるなんて女を口説くのもお手のものかしら?」

 

そこにいたのは年頃の女性が見つけるなり揃って黄色い声を投げかけられそうな優男。そんな優男はミラに声をかければ、彼女達を一発で昇天させてしまいそうなイケメンスマイルでニッコリと微笑んでいた。

 

彼こそが今代の最強の眷族と謳われる者。

ゼウス・ファミリアの団長にして『マキシム』の二つ名を持つLevel 8 の冒険者である。そして、

 

「いや〜それ程でもないかな。・・・いや、僕のイケメンぶりだとそうなのかもしれないね」

 

自他共に認める重度のナルシストである。

 

自分に浸り出したこいつのペースに付き合うのもバカバカしい。ミラはウンソウダネと思考を停止して生返事を繰り返していると、話が逸れてしまったね。と自己陶酔から覚めると向こうも仕切り直すようだ。

 

「ヘラがまさか君を連れてくるなんてね。おかげで今日は珍しいものが見えた。来てよかったよ」

 

「そう?確かにここに来たのは初めてだけど、貴方が喜ぶことなの?」

 

英雄はまるでお姫様に送る言葉で着飾ったミラの容姿を褒める。

 

普段は無秩序に広がっている腰まで伸びた髪も今は後ろで纏められシニヨンスタイル。その結び目には白い髪に映える清純さを感じさせる水色のリボンに身体を包むのはまるで処女性を連想させるヘラとお揃いの汚れ(穢れ)無い純白のドレス。

 

視線に入るだけで神さえも思わずため息を漏らしてしまう地上に降り立った天使は、彫像の様に完璧な美しさを持つ女神達とは違い、完全な様で垣間見える人じみた不完全さは彼女が地上の子である事の表れ、それは天上の神が人の身に落とそうとも決して手に入れることの叶わない地上の子の特権。

 

天と地の両方を宿す彼女は神すらも差し置きまさしく会場の主役だった。

 

 

ミラも褒められて悪い気はしない。

むしろ彼の言葉で苦労が報われたと思った。

 

なにせこれは数時間に渡ってヘラ監修のもと行われ、他の団員達もそんな面白い事をみすみす見逃すわけがない。あのミラがパーティーに行くと聞いた団員達は颯爽と現れ、これは着せ替え人形をやらされた結果の集大成。特にあの時のエルフ達の熱量と圧は凄く、ミラは嵐が鎮まるのを待った。

 

でも彼の反応を見る限りその甲斐はあったということだろう。

 

「君が考えている以上に、君は女神ヘラに想われているってことだよ」

 

何を言いたいんだと眉をひそめてジト目になる。

そんな愛らしい彼女を見て助言をしてしまうのは致し方のないことだ。

 

「ヘラ・ファミリアの秘蔵っ子、そんな呼び方をされているってことも君は知らないだろ?プライドの塊のヘラが表の場から隠したがるなんてよほど他の神に触られたく無いのだろうね。相当だよ」

 

横に目を向ければヘラはヘラで白髪の老人と何か言い合いをしていた。いや言い合いと言うよりヘラが一方的に言葉を浴びせているだけにも見えたが、、、

 

「お互い神様は話に夢中みたいだね。ここで立ってるのもなんだし、僕達は僕達でパーティーを楽しもう」

 

神様いいかな?と老神に聞けば、「おう。いってこい」と気前のいい返事が帰ってくる。

 

「ミラ。貴方も行ってきなさい。

ゼウスの子、ミラに辺な虫が付かない様、くれぐれも頼んだわよ」

 

ヘラも老神であるゼウスから何やら話があるようで、男に釘を刺すとミラに楽しんできなさいと上機嫌そうに送り出してくれた。

 

ゼウスの不満を愚痴を常日頃言っているヘラではあるが、楽しそうに話す姿を見ればなんだかんだ言いつつやはり夫婦なのだろうとミラは思った。

 

 

 

さて、晴れて自由の身、そう決まれば第一にやる事は食事である。

取り皿を手に取り、何から取ろうかとワクワクしているミラにこれだけあるのだから遠慮する必要はないと声がかかると、それもそうかと空いていた席を占有し、料理を手にテーブル間を忙しく走り回るミラの姿が見られた。

 

輸送が終わり席に着くとふぅと達成感に込み上げる。

待ちに待った食事の時間である。

 

「・・・本当にその量を食べるのかい?」

 

驚愕の表情でこちらを見てくるのは人類最強の護衛だ。

正面に座る男のテーブルには一切れのケーキとコーヒーが一杯。

 

対してミラの前には料理の山、山、山。

それは少女の体に入りきる量ではないのは誰の目から見ても明らか。

 

全く無茶をすると呆れ半分、ここにある最高の料理を全て食べて見たいというその気持ちはわからないでも無いと思う少年心が半分。

 

たが、男の心配は杞憂に終わる。

 

口いっぱいに頬張り膨らませる少女の姿は実に愛くるしかった。

が、山が無くなると男の顔は子供を見守る大人の瞳はあり得ないものにでも遭遇したかのような驚愕に染まる。

 

山は一つ一つ確実に攻略され気がつけば全てが更地となっていた。

その時には男の瞳も驚きから好奇心へとまた移り変わる。

 

そして男は思った。

コイツは一体どれだけ食べれるのだろうかと

 

紳士的な優男はもういない。

そこにいたのは数々の未知を踏破してきた冒険者であった。

 

「待て、僕が取ってこよう。何が欲しい」

 

皿を持ち立ち上がろうとするミラに手をかざし静止を促すと、自らが空いた取り皿を手にして立ち上がる。

それにはミラも代わりに取ってきてくれるならばと、どれも美味しかったが特に気に入った料理を男に告げると男はわかったよ。とだけ口にして料理の置かれた場所目指して歩いて行った。

 

 

 

 

「流石に食べすぎた....けっぷ

 

緊急開催されたフードファイトはミラの勝利で幕を閉じた。

決着は意外にもいきなり訪れる。この日の為に動員された精鋭料理人達がミラの元にやってきてはもう勘弁してくださいと泣きが入ったのだ。

 

というのも食材はあるが止まることのない消費量に供給が追いつかず120%で対応していた料理場で何人かぶっ倒れたらしい。会場のテーブルには気持ちいいくらいに何も無かった。

 

ミラが食べ進めればその場で立ち止まる足は増えてゆく。一つ食べ終わるとおぉ〜と感嘆の声と拍手が巻き起こり、最後の一皿を完食する頃には周りを囲んだ神達が彼女の偉業を大歓声が讃えたのだった。

 

すっかり膨らんだお腹を撫でながら、休憩も兼ねてバルコニーの外にでるとそこに広がるのはオラリオの夜景。普段はここに住む神達にしか見ることのできない貴重な景色である。

 

久しぶりに空から見下ろす地上はやはりいいものであり、そうして眺めれば昔とはまた違った印象を受けた。それに何か感慨深いものを覚えると、ミラは心地よい夜風に吹かれながらずっとオラリオを眺め続けた。

 

「お隣、いいかしら?」

 

物腰柔らかい女性の声に振り返ることなく了承すれば隣に大人がやってきた。

 

肩が触れ合いそうな距離、、、厳密には身長差から肩が触れ合うことはないがそこまで狭く無いバルコニー。来訪者はミラ本人が許可したとはいえ、わざわざミラにピッタリ引っ付くような幅寄せでならばと一歩横に引けばあちらも一歩寄ってくる。

 

どうやら確信犯である。

 

 

ミラと同じ白い髪にこの世のものとは思えないほどの容姿を持った女性がそこにはいた。もうすっかり大きくなり逆の立場になってしまったがアルフィア達を妹とするならば、彼女はきっと母親枠だろう。

 

その人物の色香は視界に入るだけで魅了し心を奪う。

会場に来ている数多の容姿端麗な神々を凌駕するそれは一言で表すならば美。

 

現実離れした容姿で神に間違えられるミラでも相手が悪いとはこのこと。ミラと女性、美しさの方向性こそ違えど、こと美において競うなら彼女に勝てるものは存在しないだろう。

 

彼女の名前はフレイヤ。

フレイヤ・ファミリアを治る美の神である。

 

 

 

 

本当は戻る予定はなかった。

 

砂漠の国を後にし、今頃はまた別の場所で探し物を探しているはずだった。でもそうはならなかった。だからフレイヤはオラリオにいる。

 

一通の文がフレイヤの元に届けられたのだ。

そこに書かれていたのはフレイヤが国を巻き込み起こした騒動に対してのオラリオのファミリア代表としての見解。要するに脅しだ。

 

フレイヤとてその程度で旅を辞めるつもりはない。

例え最強のファミリアと言われる主神からの指示だとしても目にした瞬間くだらないと手紙を捨てようとした。

でも目に入った一文でそういう訳にはいかなくなった。

 

 

そうしてオラリオへと足を向け、今、現在に至る。

神の宴に来たのも旅を中断させられて空いてしまった時間を補う暇潰しに過ぎなかった。

彼女に会うまでは

 

 

会場に訪れた時、いつもなら呼んでも無いのに寄ってきてはフレイヤの美しさを褒め称える神達は今日に限ってフレイヤの所に誰一人として来なかった。

 

飽きるくらいに聞いた言葉も無いは無いで今度は自身を蔑ろにされている気分になり不満が出てくる。

 

そうして会場を見渡せばある一角に神達が集まり盛り上がっていることに気付いた。彼等はそれに夢中で訪れたフレイヤの存在すら認知していなかった。

 

自分を差し置く程の何かがあるのかと拝見すればそこにいたのはただ大量の食べ物を食べ続けるエルフの少女。

 

確かに面白い事に敏感な神達が釘付けになるのも分かる。

フレイヤもあの小さな身体の何処にあれ程の料理が収まるのか、果たしてどれだけ収まるのか、気が付けば一員になって少女の行く末を見守っていた。

 

そうして催しが終わる頃にはフレイヤの口は弧を描いていた。

今しがた抱えていた些細な問題などはもうどうでもいい。フレイヤは少女を追いかけるようにバルコニーに向かった。

 

 

「ねえ、貴方の名前はなんて言うのかしら?」

 

「ミラよ」

 

「そう。貴方の名前はミラって言うのね。ミラ...いい名前ね」

 

それからはたわいの無い話をした。

話をする中でミラが世界の国に興味があることが分かると、フレイヤは旅で訪れた国の事について話をした。それにミラは興味深そうに耳を傾け、気になる所はフレイヤに質問するとフレイヤは答えた。

 

ついつい喜ばせてしまいたくなる子供のような無邪気さと時折、顔を出す大人のような成熟した精神。そして何より、話の中で神であるはずの自身が地上の子である彼女の言動に対して嘘か真かを見破ることが出来なかった。

 

____そんな事はあり得ないはずだ

 

瞳にはミラしか映っていなかった。

 

フレイヤもこんな気持ちは初めてだった。

焦がれる思いとはこの事を言うのだろう。

 

話続ければ話す程にフレイヤの中でミラという少女の存在は大きくなっていく。そしてフレイヤ自身も気付かず無意識に思ってしまった。

 

この子がなんとしても欲しいと。

 

 

「私のものになりなさい」

 

 

口を開き放った言葉にフレイヤはしまった。と思うがもう遅い。

無意識に放たれた言葉は制御などされない。その言霊にはフレイヤの昂る感情が、本気の魅了が乗っていた。

 

美の女神たるフレイヤの魅了を受けた者は彼女の言う事を聞く操り人形と化す、それが本気ともなれば例え神であろうと抗えず傀儡になる。だが、それはフレイヤの望むところでは無い。

 

自分の意思を、心を失い。相手の望む事だけを口にする存在など、それはただ虚しいだけだ。鏡に話しかけるのと何も変わらない。

 

 

フレイヤもまた他の神と同様。

各々理由は違えど地上に求めて降り立った身の上。

 

彼女にとっての魅了とは、フレイヤという存在の始まりであり、フレイヤという概念、その全て。

 

だが、だからこそその最も身近な己が半身は、時として地上を目指す為に願った祈りさえ否定する最も忌むべきものになる。

 

美を司り、魅了を権能とするフレイヤだからこそ至った境地だ。

 

 

しかし無意識とはいえ、かけてしまったものはどうしようもない。あれ程までにときめいていたフレイヤの心から急速に熱が引く。

 

 

「えっ、いやだけど」

 

消えかけた心の熱は業火となってフレイヤを包み込んだ。

 

 

もはやフレイヤを止めるモノは何も無い。止まる気もない。フレイヤはミラを胸にギュッと抱きしめた。絶対に離さないと固く固く抱きしめた。

 

ようやく見つけた。

これまで何度も旅したが、探し物は足元にあったのだ。

 

 

白きエルフの少女ミラ。

彼女こそが自身にとっての_____

 

 

「…ねぇ?私の子供をそんなに大事そうに抱えて...

たかが美の女神の一柱に過ぎないお前が、一体何様のつもりかしら?」

 

底冷えする声が静かな夜に響いた。

 

 

 

 

 

「相手はフレイヤ・ファミリア。加減はいらないわ。

私の子供に手を出した事、あのいけ好かない顔を,,,後々まで後悔する様にアイツのファミリアを徹底的に潰しなさい」

 

主神からの免罪符はおりた。

 

久しぶりの闘争に叩き起こされ、あくびしていた眷族たちも今は檻から解き放たれた獣の如く雄叫びをあげる。

 

目標はフレイヤ・ファミリア。

その名の通り主神のフレイヤのファミリアである。

 

 

さて、ファミリア間が争うことは滅多に無い。

というか、そんな事が頻繁に起きるならとうの昔にオラリオという都市は地上から名前を消している。

 

人並外れた恩恵を持つ眷族達がファミリアという規模で争うのである。それは大なり小なりオラリオ全体にまで影響を及ぼす。

 

例えばオラリオ最強の二柱。

ゼウスとヘラのファミリアが何かの拍子に全面抗争を起こし、どちらかが壊滅したとすればどうだ?

 

それはオラリオに住む者達が考えられる最悪のケース。

 

最高の戦力を半分失ったオラリオの均衡は間違いなく崩れ去る。秩序は崩れ、争いの火種はそこら中に撒き散らされ、突如として空いた空席に座ろうと他のファミリアは躍起になるだろう。

 

闇派閥も大きな抑止力を失って制御を失うオラリオを黙って見守るわけがない。それはオラリオを転覆させるまたとない好機。そうして待ち受けるのは全土を巻き込んだ全面戦争、オラリオは一夜にして火の海に呑まれる。

 

だから普段はギルドという存在がファミリアの上に立つことで総括、監視、ファミリア間の緩衝材として必要あらば制裁を下す。

もしギルドが特定のファミリアに対して制裁として探索を制限すれば、ファミリアはダンジョン探索を諦めざるおえない。それは己や眷族が路頭に迷う事を意味する。

 

ならば不服としてギルドに逆らうのか?

それもいいだろうが、冒険者達の業務を一任しているファミリアにとってギルドが無くなることは大問題である。ギルドの存在を疎ましく思い潰そうとしても彼等にも生活がある。だからこそ他の全てのファミリアが黙ってはいない。

 

最強と謳われるヘラ・ファミリアとて全ての派閥が相手となれば流石に分が悪い。とは言ってもギルド側にとっても女神ヘラの存在とそのファミリアの影響力は絶大であり、幾度となくオラリオを救ってもらった恩もある。

だからこそヘラの気まぐれで起こされる派閥闘争をギルドは黙認しているきらいがあるが、今回行われる戦争遊戯はギルド公認。

 

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)とは

ファミリア間の争いにルールを設け必要以上に被害を出さない為の取り決めである。

 

まず、主神は相手方の主神に宣戦布告を行いそれを了承することで始まり、後日他の神達を交え、公の場でルールを制定する。敗者から勝者への賠償は制定する時に決まる事が多いが、宣戦布告の時点で望みを告げる神も多い。簡単に言えばギルドと他のファミリアの認知の元で行われる戦争。

 

正に名前の通り恩恵を授けられる神のみに許された。神々の遊びである。

 

 

言わずもながらヘラ・ファミリアは最強と知られるファミリア。ならば相対するフレイヤ・ファミリアはどうかと聞かれると、2大ファミリアの下に位置する中の上という位置付けのファミリアである。彼女が決して弱いと言うわけでは無い。むしろ大神と女王のファミリアが突出して強いのだ。

 

現に彼女のファミリアも探索のトップファミリアの一つとしてオラリオで数えられる有力ファミリア。

だが、相手がヘラと知った時、口にはしないが、神の誰もが無謀だと思った。それ程に頂に立つファミリアとその他のファミリアには埋めようがない開きがあり、次元が違う。

 

 

しかしフレイヤは受けた。

 

自身の望みを果たす為、そして何よりフレイヤは誰が相手だとしても最後には自分の子供が勝つと信じて疑わなかった。

 

 

かくして1人のエルフを中心に火蓋は切られたのである。

 

 




セルレギオスを倒せたら
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